北海道で描いていたアナログ絵に、COMICBURUSH24色で着色。
・・・・だめだ。曹牙、アナログでカラーなんてかけねぇズラ!
難しいよ。CGだとごまかせる所がごまかせない。失敗したらそこで終わり。好き勝手色作るのに慣れてるから、24色組みあわせるのが難しい難しい。
しかも、スキャナで読み込んだらなんか汚いし・・・・
いや、もともとが汚いんだけどさ。
でも、折角の北海奇行の記念だからとっとくんだv

『身体を動かすのもたまには良い物だ。久しぶりに羽を伸ばすとしよう』
そんな風に嘯いて、ルガールは真っ直ぐに伸びた背中をオルガーに向けて確固たる足取りで歩いていった。

ルガールならば大丈夫。何があっても無事に戻ってくる。

そんな根拠のない楽観と、けれどひょっとしてもしかしたら?という獏とした不安を胸に、オルガーは唇を噛み締め大きな瞳を見開いたまま広い背中を見送った。

ルガールはオルガーの元に戻ってきた。
『ただいまオルガー君』。
気軽な外出から戻ってきたかのような、何気ない挨拶。真っ直ぐに伸びた広い背中も、豪奢な金髪も、左の口角が吊りあがる不遜な笑みも変わらない。
けれど、彼の右腕にはあるべきものが存在しなかった。

「ルガール!」
待ち人の異変をみてとったオルガーが、悲鳴のような声で愛しい男の名を叫ぶ。
ルガールの右腕は二の腕の半ばから先が消えていた。

「ルガール・・・・腕・・・・ッ・・・・腕がっ・・・!」
オルガー目はどす黒い血を滲ませるルガールの右腕に釘付けになっていた。

「ああ、これかね?気にすることはない」
今にも泣き出しそうなオルガーに、ルガールは場違いなほど悠然とした口調で告げる。

「だって・・・・腕がっ!」
「落ち着きなさい」
興奮して叫ぶオルガーの肩を、ルガールは無事な方の左腕で抱き寄せた。オルガーの身体に過度の興奮やショックは毒なのだ。ルガールにしてみれば、彼自身の腕のことなどよりそのことのほうが余程気になるようだ。

「私の右腕は君も知っての通りもともとが義手だ。今更もげた所で何ほどのこともない。ただ単に機会が故障したに過ぎんのだよ」
ルガールは半分の事実と半分の嘘をスラスラと語った。
彼の右腕が義手であったことは紛れもない事実だ。故に、この場合右腕を失ったわけではなく、あくまで義手が一本『壊れた』だけというのも嘘ではない。
しかし、何ほどのことでもないというのは嘘であった。主観的にはたいしたことではないのかもしれないが、客観的に見てルガールの身体は相当のダメージを受けていた。彼自身、苦痛を感じていないわけではない。

「嘘」
「嘘?私は君に嘘をついたりはしない」
「ルガールの嘘つき」」
ルガールの白々しい台詞を、オルガーは子供の頑なさで跳ね除けた。

「だって・・・・血が出てるよ?」
「あぁ、これか。気にする必要はない。技手が壊れたときに接合部がすれただけだ」
ルガールの説明は酷く控えめだった。実際にはすれただけなどという可愛いものではない。格闘用に強固に接合されたままの義手を、力任せに捻じ切られたのだ。生身の肉の中に埋め込まれたパーツが周辺組織を抉り取りながら回転した際のおぞましい痛みは、剛毅なルガールをして絶叫苦悶させたものだ。
だがルガールはそれをオルガーに伝える気はサラサラなかった。この痛みを知りすぎるほどに知っている子供は、他人の痛みにも鈍感ではいられないのだ。

「ルガール・・・・」
オルガーはルガールの機械と生身がグロテスクに融合してしまったような傷口にそっと触れた。

「痛かったよね、これ」
軽く触れた腕は熱病患者のように熱く、発達した筋肉の張りとは異なる異様な緊張を見せていた。

「オルガー君、義手痛覚は・・・・」
「ルガール!」
「っ・・・・何だね?」
珍しく声を荒げたオルガーにルガールは少しばかり驚いた。

「嘘は止めて。お願い、僕には、僕にだけは嘘を吐かないで」
苦しげに、しかし静かに訴えるオルガーの横顔が、いつになく大人びた憂いに縁取られていることに気づきルガールは息を飲んだ。

(今すぐ君を抱き上げて寝室に行きたいと思うのは、些か不謹慎だろうか?)
と、悪いオトナは不謹慎極まりないことを考える。もっとも、相手がオルガーでなければルガールはとうの昔に欲望の赴くままに行動していたであろう。

「ルガール・・・・僕の話、聞いてる?」
「あ・・・あぁ・・・・聞いている、聞いているぞオルガー君」
脳裏に浮んだ不純な妄想を慌てて打ち消しながら、ルガールはできうる限り真面目な、誠実に見えそうな表情を作る。慣れていないだけに非情に難しかった。

「ねぇ、腕、平気?」
「そうだな・・・・」
ルガールは答えるべき言葉を探した。
オルガーは幼さこそあるものの、愚鈍ではない。むしろ感は鋭い。理屈ではなく本能で真実を見抜く力に長けているようにすら思える。
事実をありのままに告げる気にはやはりなれなかったが、嘘をつき通す気ももはや萎えていた。

「全くの平気とは言い難いが、君と接吻を交わしてからドクターのところに行く程度の余力は残っている・・・信じてもらえるかね?」
「・・・・・・・うん。信じる・・・・」
嬉しさとはにかみの入り混じった表情で頷いたオルガーの頬は淡い薔薇色に染まっていた。