医療萌の性を爆発させてみた。
何となく、オルガー君もダークも呼吸器系弱いイメージがある。
多分、あのごついマスクのせい。いくら爆発物扱うからって、あれ常につけて闘うって普通に考えたら不自然だった。苦しいし視界にチョロチョロ入ってウザイし。
説明書のせいで、精神的にゾーンに入ると目剥きっぱなしってイメージもできたし。
結膜炎になるって、あれは。

息が苦しい。
頭が痛い。
目の前がやけに眩しくて吐きそうだ。

(息を吸わなきゃ)
息が止まったら、死ぬ。

(嫌だ。
死にたくない。)

呼吸困難から半ば朦朧となりながら、それでもオルガーは生を望んだ。

ファビィ・・・ケン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ルガール・・・ルガール・・・

大切な者、愛しい者の名を声にならぬ声で唱えて、飛びそうになる意識を捕まえる。
死にたいとはもう思わない。苦しくても辛くても生きていたいと思う。

『生きてりゃ絶対イイコトあるって。死んだらそこで終わりだぜ!』
力強く言い切ったケンの言葉の意味が、今ならば良くわかる。
一緒に過ごしたい者がいる。もう一度・・・・・何度でも会いたい者がいる。たくさんの話したいこと聞きたいことがある。
だからまだ死にたくはない。生きたい。生きていたい。
生きているのは良いコトだ。
今のオルガーにはそう言い切れるだけの強さがある。

過去、ダークであった頃もオルガーは懸命に生にしがみついていた。けれども、その目標は復讐の一事に絞られ、それ以外には何もなかった。
楽しい・嬉しい・心地良い。友人・恋人・隣人。
何もない。ダークの名が示すように、あの頃のオルガーにあったものは、どこまでいっても復讐という名の闇のみであった。
復讐を果たした後どうするのか。
そんな行為の後に必ず訪れる現実すらも考えてことがなかった。正確には、復讐を果たした後にも『生』が続くという認識すらなかったのだ。
一つのことにのみ集中し充実しながらも、底なしに虚しい日々であったと今ならばわかる。
オルガーには過去の記憶が断片的にしかない。ドクトリン・ダークという名にも覚えがない。己の身体が酷く不自由であることの理由もわからない。
それでも、自分が恐ろしく昏い闇の底で這いずっていたことだけは感覚的に理解できた。
オルガーは闇が恐ろしかった。かつて己が身を置いていたであろう、あの深く冷たい底なしの闇に再び取り込まれそうな気がしてならないのだ。
だからオルガーは目を見開く。
闇ではなく眩い光だけを見据えようと、大きな瞳を更に見開き光を網膜に焼付け続ける。

「・・・・・っ」
乾ききり潤いをなくしたオルガーの目に、ピリピリとひりつくような痛みが走った。

「痛・・・い」
目を押さえたオルガーの手が、溢れ出る涙で濡れた。
人間の瞳と言うものは、常に薄い涙の膜で覆われ湿っていて然るべきものなのだから、見開いたままでは痛んで当然である。

「・・・・痛い・・・よ・・・ルガール」
目だけではない。必死で空気を求めて収縮を繰り返す肺も、咳き込み続けた喉も、目と同様干上がった口内も
全てがヒリヒリとオルガーの身体を内側から炙り苛んだ。

「う・・・・・あぁ・・・・っ・・・・闇が・・・・闇が・・・・来・・・るっっ」
血を吐くような声で一声叫び、オルガーは恐怖で全身を痙攣でも起こしたかのように震わせたまま意識を手放した。