めちゃくちゃ久しぶりに描いたBASARA絵。
てか、一年近く更新してなかったな、ゲームコンテンツ。
英雄伝面白いね。コタが使えるだけでウハウハ。
でもまだやりこんでないけど・・・
個人的に浅井さんちのシナリオ好きです。
長政様のツンデレ未満なガキくささかが可愛く思えてきました。
武田家の日常とか爆笑だったし。

で、今回は大好きなアニキとコタでクリスマス。

うちの設定ではこの二人は仲良しです。

アニキは小動物系が大好きだし、コタもアニキみたいな相手にはわりと懐くと・・・・

去年に比べて健全ですね。

小咄
※北条滅亡後、ギリギリまで闘ったコタは大怪我して死に場所探して彷徨っている所を利家に保護され、たまたま立ち寄ったチカに気に入られてテイクアウトされている。詳しくは年表参照。


小太郎に与えられたその部屋は、個人の居室としてはなんとも異様な風体をなしていた。
オカシなものがあるわけではない。乱雑に散らかっているわけでもない。もちろん怪しげな煙もたっていないし危険を感じるような異臭もない。
ただ、有り得ないほどに『モノ』がなかった。
炭のおきていない火鉢。きちんと畳まれた寝具一式。寝具と同様完璧に畳まれた衣服が数組。
それ以外何もないその部屋には、人が暮らしているニオイがまるでなかった。
そして部屋の主たる小太郎もまた、気配を絶ったまま何をするでもなく部屋の片隅に左足だけを伸ばす格好で座っていた。どうやら装具を外して休んでいるようだ。

「コタ〜俺だ!いるんだろ?」
「あーー・・−・・・・・」
小太郎は赤子がむずがるような声で元親に答えた。それが彼にできる精一杯の返答であった。
元親は小太郎を土佐に連れ帰ってすぐに、彼を城の典医に診せた。その際、全身に負った傷だけではなく舌と喉、耳も調べさせてみたのだ。
先天的な失語症と難読症。それが医師の出した診立てであった。
小太郎の発声器官には打撲と発熱による一時的な炎症以外これといった問題はなく、耳も正常に聞こえている。ただ、己の喉や舌を使って人の言葉を発する方法を知らず、文字を記号として記憶することはできても『言葉』として認識することができないのだ。通常それらは意識されることなく自然に身につくものなのだが、小太郎にはそうした感覚がどうしたわけかまったく欠如していた。更に悪いことに、今まで彼に『言葉』を教えようとした人間がいなかったのだ。
しかし元親はどこまでも前向きだった。

『だったら美味いモン喰ってのんびりして、俺がちょっとづつ喋り方教えてやりゃぁ治るよな!』
と、彼らしい答えを弾き出したのだ。
その甲斐あってか、最近の小太郎は少しだけ声を出して意思表示するようになった。まだ喋ると言う段階ではないものの、懸命に声を出そうとしているのが伝わってきて、元親をたいそう喜ばせている。気性が激しく豪放磊落な半面、元親という男にはえらく面倒見の良い(元就に言わせるとお節介極まりない)性質を持ち合わせてもいるのだ。

「よぉ、調子どーよ?」
毎日顔を合わせている相手に調子も何もなさそうなものだが、これが元親流の親しみをこめた挨拶なのだ。ちなみに、元就にコレをやると『我の体調ならばすこぶる良い。しかし、貴様には関係のないことだ。そんなこともわからぬとは、貴様の頭は今日も絶不調のようだな。痛ましいことだ』と、心を抉る言葉が立て板に水の勢いで返ってきたりする。

「あ・・・ぅ・・」
小太郎は元親に顔を向け、掠れ気味の声を出した。

「ん、いいみてぇだな」
そう助け舟をだしてやると、小太郎は少し嬉しそうに口角を上げコクリと一つ頷いた。
言葉だけでなく、近頃小太郎はとみに表情が豊かになったと元親は嬉しく思う。海賊も忍も侍も百姓も商人も、所詮は皆同じ人間なのだ。心がない者などあるはずがない。泣いて笑って怒ってまた笑う。それでこそ人は人たるのだ。

「けどよぉ、いくらなんでも寒すぎやしねぇか?」
寒さに弱い−そのくせ薄着を好む−元親はブルリと震えた。
たしかに南国土佐は冬でも比較的暖かいが、さすがに師走ともなれば肌寒い。

「それとも何だ?忍ってなぁ火鉢の使い方も知らねぇのかい?」
憎まれ口を叩きながら、元親は手際よく火鉢に火を入れた。忍として鍛え抜かれた小太郎にしてみれば、これしきの寒さはいかほどでもないのかもしれぬが、見ている元親の方が寒いのである。

「ほら、そんな隅っこ座ってねぇでこっちきて当たれよ」
部屋の角に丸まって座ったまま動こうとしない小太郎を呼び寄せる。

「う・・・・っ」
小さな声で答え小太郎は左手を壁につきながら立ち上がった。その仕草は伝説とまで評された手練の忍としてはあまりにぎこちなかった。

「脚、平気か?」
左脚を引きずって歩く小太郎を元親は少し心配そうに見上げた。
小太郎が全身に負った傷は既に癒えていたが、骨が砕け筋肉が潰れ、大切な腱も切れてしまっていた左足だけはどうにもならなかったのだ。むしろ医者は、元親お手製の装具をつけるだけで普通に歩き回る彼に驚いていた。

「へ・・・き」
「そっか」
フラつきながら数歩を歩き、自分の横に腰を下ろした小太郎の赤い髪を元親はクシャクシャと撫でた。

「身体、冷やすんじゃねぇぞ?随分良くなってるみてぇだけどな、病み上がりには違いねぇんだ。大事にしろよ?」
一介の忍、それももう第一線では働けなくなった言葉の不自由な忍に対して、元親は長年の友人に対するような気遣いを向ける。誰に対しても基本的に大らかで優しい元親の性質もあるが、小太郎の方にもどこかしら人を放っておけない気持ちにさせる何かがあるのだ。
その証拠に、あれだけ家柄だの出自だのにうるさい北条氏政から孫のように可愛がられ、誰にも心開かぬ氷の面の元就からも、顔を会わせる度に手ずから饅頭など与えられ元親を悔しがらせている。

「冷えると痛ぇだろ?つーか、足崩せって」
元親はかしこまって正座していた小太郎の足を伸ばさせた。傷めている足を軽いとはいえ自重で圧迫するのは大変よろしくないのだ。

「今日はな、ちょいと面白ぇモン持ってきたんだ」
そう言いながら、元親は『面白ぇモン』が入っていると思しき風呂敷包みを小太郎の眼前に広げた。

「う?」
現れた真っ赤な衣に小太郎は『何?』と首を傾げた。

「三田さんの衣装だ」
「う?」
ますますわからないというふうに、小太郎は更に首を傾げた。
明るく優しい元親を小太郎は好いていたが、時々といわず彼のやることなすこと言い出すことはわからない。

「こいつは俺が去年着たのを詰めさせたモンなんだがよ、今年はおまえがコレ着ねぇか?てか着ろ。決まりな」
「うぁ?!」
話の展開についていけず、小太郎は驚きと抗議の気持ちを込めて元親を上目遣いに見詰めた。そういう仔犬じみた仕草の犯罪的な可愛らしさを本人は知らない。そういう点では幸村や利家に似ているかもしれないと元親は思う。

「あ〜つまりな、俺んとこじゃぁ師走の24日ちょっとした催し事をすんだよ。西洋の行事でな、”くりすます”ってゆーんだ。デカイ木にいろいろ飾って、焚き火して、皆で美味いモン食って歌って踊って、日頃仲良くしてる奴とか好きな奴に贈り物する日なんだよ」
「ぁ・・う?」
わかるようなわからないような説明に、小太郎は困り果てた顔をした。
”くりすます”そのものは一応わかったが、それとこの派手な衣装の関連性、何より自分がそれを着ることの必要性がまったくもってわからない。

「”くりすます”には三田がつきモンなんだよ」
「さ・・・・た・・ぁ?」
「そう、三田だ。三田はな、くりすますに良い子に贈り物を贈る心優しい爺さんなんだ。つまり、くりすますの英雄だ」
「うぅ?」
子供に贈り物を配るのだから、きっとその三田とやらはとても心優しい翁なのだろう。小太郎はかつての主人を束の間思い出した。だが、英雄というのは微妙に違う気がする。それに、自分は三田になどなった覚えはない。第一、まだ老人という年齢ではないはずだ。

「去年はな、俺がその三田になったんだけどよぉ・・・・ナリの野郎が何が気に食わねぇのか俺の贈り物全力で拒否しやがって・・・・馬鹿だ田舎モンだ色狂いだの散々罵られるわ、ハタキでぶたれるわ、挙句勝手に日記読まれて輪刀で切り殺されかかるわ・・・・散々だったぜ」
元親は小太郎に説明しているのも忘れ、遠い目をした。三田に扮した己が、オクラ色の帯で飾られた元就を美味しく頂くはずだったというのに。昨年の悲惨すぎる顛末を思い出すと、今でも目頭が熱くなる元親であった。

「な・・・・・り・・・・」
小太郎は緑色の衣の良く似合う、隣国の当主の顔を思い描いた。
いつも酷くつっけんどんな態度で自分に菓子をくれる美貌の青年。幼馴染である彼を、元親が恋ていることを小太郎は知っている。否、小太郎だけでなく城中の者が、元親の妻子も含めて知っている。それほどまでに元親の元就に対する態度は明け透けなのだ。

「おこ・・・た?」
「あぁ、怒ったさ。そりゃぁもう鬼みてぇなツラで怒りくるいやがったぜ。ったく、どっちが鬼だかわかりゃしねぇよ」
般若の形相で輪刀を振り回す元就を鮮明に思い出し、元親はブルリと震えた。見るからに大人しそうな元就の凄まじいキレっぷりを元親は誰よりも知っている。というか、元就をそこまでキレさせるのはもっぱら元親本人なのだ。

「あ、てめ、何笑ってやがる?!小太郎のくせに生意気だぞ!そんな悪い口には折檻だ!」
クスリと笑いを漏らした小太郎の口を、元親は横に引っ張った。

「ご・・・め・・・・あ・・・ぃ・・き・・・ご・・め・・・」
肉の薄い頬を引っ張られながら、小太郎は素直に謝った。

「よし、反省したな?」
「ひぃ・・・・た・・・」
「ぷ・・・・おま・・・ホッペ赤ぇ!」
ようやく解放された頬を擦る小太郎に、今度は元親が噴出した。

「あ〜〜もぅ〜おめぇすげぇ可愛いな!うん、可愛い。コタは素直で可愛いぜ。ナリもおめぇの半分でいいから素直だったらなぁ・・・ま、あのツンなところも俺的には可愛いワケなんだけどよぉ〜」
愚痴と惚気を同時にかます元親を、小太郎は不思議なものを見るような目で見ていた。

何故対等の立場でありながら、元親は元就の下につくような態度をとるのか?
何故戦えば対等以上かもしれぬ身でありながら、いつも一方的に殴られて帰ってくるのか?
何故そんな相手を好きでい続けられるのか?
そして何故元就は好きな相手を嬲るのか?

男と女のことも、男と男のことも、小太郎にはわからないことだらけであった。

「そんなワケだから、今年はおまえが三田な」
「う・・・・」
どんなワケかはわからなかったが、小太郎は自分に拒否権がないコトだけはすぐさま理解した。

「いやぁ〜おめぇには悪ぃんだけどな、去年のコトがあっから、今年また俺が三田やったら、口開く前に焼け焦げそうでさすがに俺もおっかねぇんだわ」
「あ・・・ぁ」
やりかねない。元就ならばやりかねない。むしろやる。絶対にやる。

「けど、やっぱ俺としちゃぁこういう行事は外せねぇ。ナリに俺を恋人として認めさせるまでは終われねぇ。なぁ、そうだろ?男なら欲しいモンはどんな手使ってでもモノにするもんだろ?」
「うう・・・・・?」
そういうものなのだろうか?手段は選んだほうが良いのではなかろうか?
いや、手段を選ばん!と言っている割にはせせこましい手が多いのは気のせいか?

「諦めるなんて臆病な田舎モンのすることだぜ!」
田舎モンはこの際関係あるのか?

ツッコミどころ満載な元親の発言に、小太郎は心の中でだけツッコンだ。

「今年の”くりすます”はおまえが三田で俺は斗菜界。これで決まりだ!あいつああ見えて動物好きだから、斗菜界ならバッチリだぜっ!」
力強く宣言し、一人盛り上がる元親を小太郎は少し不憫に思い、良く分からない行事に良わからないまま付き合ってやることにした。