SH4の素敵なお兄さん。

青いコートを翻し、綺麗な金髪地に染めて、青い瞳にや溢れる狂喜。

その余りに不幸な生い立ちと、長じて後のエキセントリックな言動に曹牙は激しく惹かれた。曹牙はこの手のタイプ好き。アメコミのクリードさんにも通じる。

名門と呼ばれる大学を主席で卒業するほどの明晰な頭脳を持っていながら、人生の最初(臍の緒ついた赤子の地点!)から捻じ曲げられた彼。
彼の人生に「やり直し」とか「チャンス」とか「自由」といった希望的なワードはまったくない。

「恐怖」「束縛」「洗脳」「強迫観念」「寂寥」

そんな鬱ワードだけで構成された人生。
そして彼はそれを「不幸」と認識することさえできない。それが彼にとっての「普通」。

彼をそう造り上げたイカレた教団は、それが彼の使命だとし、彼に儀式のための連続殺人を命じる。
使命を果たすことは崇高な行いであり、達成後には魂の救済があると信じて殺人を繰り返す彼。

この「救済」ってのがまた泣ける。
彼は捨て子だ。まだ臍の緒のついた状態で、あるアパートの一室に捨てられていたのを、管理人が見つけて病院に。そこから教団が運営する孤児院にもらわれていった子供。それが彼、ウォルター・サリバンだ。
孤児院での生活は最悪。人としての扱いですらない。誰もが経験する愛も少しの甘やかしも経験せずに、ミスの赦されない世界で体罰やら監禁やらを受けて育つ。
そんな彼の心の拠り所は『母』だった。
顔も知らぬ母。生まれたばかりの嬰児を、死んでも可笑しくない状況の中に置き去りにして消えるような女。
そんな女でも、彼にとっては唯一の救いともいえる『聖母』なのだ。
教団はそんな淋しい子供の母を求める心を最大限に利用した。
彼が捨てられていたアパートの302号室を『母』だと教え込んだのだ。人間どころか生物ですらない『部屋』という無機物に母性を託すというのは普通に考えればありえないような話だと私は思うのだが、いろいろな意味で極限状態にあったであろう子供は与えられた『母』にすがった。
儀式を完遂した暁には、『母』との永遠が待っていると信じていた彼。何の根拠もないのに。馬鹿といえば馬鹿かもしれないが、私は彼の心を思うと胸が痛くなる。
10人殺した所でよりにもよってスプーンを首に刺して自殺。ゴーストとなって異世界をつくり、そこに犠牲者を引きずりこんでまた殺す。
彼にとって殺人は『母』にいたる至福の道だったのだろうか?
それとも心のどこかではこんなことをしても無駄と感じつつ、そこから目を背け、狂った救いを信じずにはいられなかったのか?

いずれにしろ彼の人生を振り返ると、可哀想という月並みな言葉しか出てこない。
アメコミのクリードさんも相当気の毒な人だが、「自由」を求める気力を持ち、「楽しい」や「キモチイイイ」を知っている分いくらかましかもしれない。・・・もっとも、彼は記憶弄られてるせいで過去の時系列一部グチャグチャだったり、自分のことでありながら確証を持てない苛立ちで荒れたり、ケモノじみた容貌と化け物じみた能力と抑えがたい殺傷本能に苛まれて荒れたりもしてるからいい勝負か?実の子を「ん化け物!」と呼んで地下室に監禁して鎖で繋いで残飯与えて暴力振るうような父と、父を止められず息子が怖くて仕方ない弱い母を持ち、限界突破したある日親殺し。以来殺し屋汚れ仕事専門。本能と罪悪感で内部崩壊しそうになりながら、何とか生きてる。あぁ・・・やっぱり相当彼も気の毒だ・・・。