本誌の竜宮城エピソードの頭のアレです。マダオが自然賛美で全裸でシュタタタポーーーーンしたアレ。
もしも、無人島に流れ着いたの鬼兵隊だったら・・・という妄想から始まりました。
SSにするほどの話じゃないけど、妄想を書き連ねたい気持もあるので、お暇潰しにどぞ。
鬼兵隊
高杉
言わずと知れた『最も危険な男』『過激派テロリスト』『黒い獣』さん。
もしこいつが無人島に流れ着いたら・・・・なんか動かない気がする。
口は達者。カリスマもある。頭もキレる。行動力だってないわけじゃない。ただ、如何せんお坊ちゃまくさい。子供の頃の姿も、上等の羽織などみにつけ、見るからにいいとこのボン。上級武士の子弟といった気位の高いオーラ出まくり。
過酷な攘夷せんそうを生き抜いたのだから、サバイバルにも長けてるはず。理論上は。
ただ、彼の場合、過酷な戦場にあってすら周りが彼を甘やかしたような気がする。才色兼備のカリスマ少年でありながら、良家の子弟らしく世間知らずな面や不器用な面があって。ヅラや坂本はじめ鬼兵隊の面々が「晋助」「晋坊」「総督」「高杉さん」と放っておかない。それに対し高杉は「うっせー」「うぜぇ」「ガキ扱いしてんじゃねーよ」と悪態垂れながら、彼らのサービス(言い方は悪いけど)を鷹揚に受けてそう。
孤独を愛し馴れ合いを嫌う。干渉などされようものなら、即座に癇癪を起こす。我侭で気難しい男。そのくせ放置されるのはすこぶる面白くない。適度にチヤホヤされ、適度に追い払い、適度に追い縋られる。そういった本人以外解からないような微妙すぎる精神状態で生きてる人っぽい。ただの女王様体質とも言えるけれど。
そんな彼だから、無人島に一人ボッチとなると、途端に無気力になる。壊す対象も憎む対象もないから。流れ着いた海辺に寝転がり、満ちてくる潮を身体に感じながらぼーっと寝てる。思うは先生やヅラや銀時や坂本といった過去のことばかり。
三人で野山を駆けて遊ぶうち、一際小柄で二人に追いつけなくなった自分だけが迷ってしまったこと。
泣きそうになっている自分に、「すまなんだ」と手を差し伸べた桂。
その手を払いのけた己。そーいやヅラの奴、泣きそうな顔しやがったな。
「おせーよチビ杉」と頭を小突いてきてクソムカツク天然パーマ。野郎は昔から気にくわねぇ。
それから・・・ギャイギャイと言い合いながら戻ってきた三人を力強く、それでいて限りなく優しく暖かい腕で抱きしめ、言葉空くなに「心配したのですよ」とだけ言った先生。
先生・・・・・
以下、先生との思い出に三時間耽る。
そしていい加減立ってから万斉のことを思い出す。(酷)
「野郎、何ボサっとしてやがんだ。さっさと迎えにきやがれ」
と、何様?!なことを毒づき、銜えた煙管が湿ってて吸えないことにさらに苛立つ。八つ当たり決定。
・・・・・なんか結構マジに書いたけど、案外卍解の練習とか必死にしてるかもしんない。彼、ドリーマーだから。
万斉
音楽お兄さんつんぽさん。なんかコイツは無人島に流れ着いても動じなさそう。
「ふむ、だれもおらぬ島でござるか・・・しからば一曲」
何が『しからば』なのかわからんけど、電波さん的にはそれが自然。だんだんマジになってくる。
「無人島などというシチュはめったにない故、せっかくだから新曲の一つもこさえるでござる」と、三味線かきならしながら、電波EXな歌詞を口ずさむ。海に下半身浸かりながら、ハードロッカー気取りでシャウト。
「おまえのにーちゃん ひきこもぉぉぉーーーーりっっ!!」
そして高杉とご対面。
普通ならば気まずさに後ずさる場面だが、マイワールドの住人万斉は退かぬ!媚びぬ!省みぬ!
実に堂々と聞くよ。
「おお、晋助ではござらぬか。拙者の新曲如何でござろう?」
・・・・しばかれろ。
「てめぇふざけんな」
「何をそんなに怒ってるでござる?」
「今まで何してやがったんだ!」
「あぁ!これはすまなんだ!!寂しかったでござるか。晋助はほんに可愛らしい」
暮れなずむ海の中、抱き合う二人のシルエット。
遠くから見れば映画の中のワンシーンのように美しい。近づくと高杉が万斉の鳩尾殴ってるけど。
武市先輩
「ふむ・・・ここは無人島・・・・ですか?」
おもむろに当たりをきょろきょろ。
「高杉すぅわーん」
沈黙
「また子すぅわーん」
沈黙
「ま、いいか」
あっさり。イノシシ女がいても別にね・・・くらいな。
「万斉さぁぁぁーーーーーんっっ!!!」
沈黙
「マズイですね・・・マズイですよ?」
焦り始める。武市さん、実は万斉のことをかなり頼りにしてる。ていうか、鬼兵隊の中で知識としてだけでも『常識』を知っていて、冷静沈着に策をろうし、外交できるのは万斉くらいだし。高杉はカリスマではあっても、細かい計画性とかはない。あっても発揮しない。面倒だから(ある意味マダオだ)
「ついでに似蔵すわぁーーん」
彼にこういった状況でまともに役立ってもらおうとは思わない。むしろ放置しておくと厄介だから回収してバカやらないようにしないと、的な親心。
(悪い子じゃないんだけど、頭は著しく悪いですからねぇ〜)
さりげなく失礼かつ的を射たことを考えつつ、持ちの中を冷静に地図を描きながら散策。先輩は武士の嗜みとして筆記用具持ち歩いてる。幼女好きのフェミニストだけど、基本的に紳士ですよ先輩は。無駄に残酷なこともしたくないってタイプだと思うし。
穿った見方するなら、高杉のカリスマと衝動の激しさに、日本を変革する力を見出して配下につくと同時に、無駄な犠牲を出さない作戦を影で練ってるような気すらする。そういう意味でも外交こなせて高杉にモノ申せる万斉は貴重。
「しかし・・・おかしいですね。地図が一周してしまいました」
論理は得意だけど、実地が苦手な先輩萌。
一人遊びはコックリさん。美少女の霊を呼び出そうとしてるよ。
また子
「え・・・マジすか?マジ無人島すか・・・」
しばし考え込む。
「晋助様ーーーー晋助様ぁぁぁぁーーーー」
オーソドックスに高杉を探して歩き回る。
30分後。
海に向かって高杉への愛を赤裸々に絶叫。
が、赤裸々なつもりになってるのは本人だけ。日常的に言ってるから。声、デカイから。
とにかく消極的にならない。悲観しない。メソメソしない。心に晋助様、両手に拳銃があれば彼女は真っ直ぐ立ってられる。
単純故の強さ。単純故の純粋さ。是非はともかくとして、信じられるモノが一つある人間は強い。かつて『先生』『国』『侍』『仲間』を背負っていた頃の高杉がそうであったように。
そしてそういう人間は危険。自分のよりどころをあまりに何かに依存しすぎているから。銀さんもヅラも仲間を大事にして仲間のためなら身体も命もはれる連中だけど、依存はしてない。
大事にすることと依存。紙一重だと思う。あまりに純粋な子供の心のまま、知性と戦闘力、そして恐るべきカリスマのみを発達させていった高杉の悲劇を彼女が繰り返さないことを願う。哀しいほど一途に女なだけに、最悪自害という結末もありうる娘だともうから。
高杉リスペクトのあまり、痛々しいポエムを読むも、
晋助様・ラブラブラブラブラヴィン・ユー的な某ゴリラ局長レベルだったら愛しい。
似蔵
「ここは・・・・どこだぃ?・・・人の気配がまったくしないねぇ・・・・」
見えないだけに突然ワケわからん環境に放り込まれるのは、正直かなりの恐怖。それでもパニックになるほど脆弱なタマでもないから、残された器官をフル活用して自分の放り込まれた世界を探る。
「まいったねぇ」
参ったと言いつつ、あまり焦りが見られない。感情が出にくい性質というのもあるが、もともと貧乏暮らしが長かったためか、寝食に多大な不自由をすることにさしたる恐怖がない。本当にヤバイ、ギリギリのラインを身体が知っているから、比較的余裕をもって落ち着いていられる。
紅桜侵食前の、盲目である以外はいたって健常であった頃ならば、さしあたって雨風凌げるヤサになるような場所を探して落ち着き、翌日から散策して役立ちそうなものを集める。
狼煙を上げて助けを呼ぼうという発想はハナからない。彼は根本的に他人を当てにしない。子供の頃から伸ばした手を邪険に叩き落とされ続け、10にも満たぬ頃には他人に助けを求めることすらしなくなってそう。
さしあたって雨風凌げるヤサになるような場所を探して落ち着く。翌日からは役立ちそうなものを集めたり、食べられそうなモノ(あくまで似蔵基準だから、雑草的なものも含まれる)を探す。そうこうするうちに仲間と合流。
問題は、これが侵食後だった場合。
流れ着いた地点で、かなり体力ゲージがヤバイことになってると思われる。利き腕が欠損している上に、残った左腕もアレだけ変形してれば無事とは思えない。骨も腱も筋肉もズタズタになってそう。一応日常生活を送れるくらいには回復していても、海で泳ぐには心もとない筋力だろう。それは全身に言えることで、侵食後の彼は無理の出来る身体ではないと思われる。
海に放り出され波にもまれ、グッタリと打ち上げられている似蔵。そそるよ。
(俺は生きてる・・・のかい?)
頬をくすぐる寄せては引く波の感触にぼんやりと意識を取り戻しながら、なんとなく自分の置かれた状況を理解するも、起き上がる気力がわかない。
全身が熱を孕んで鈍く痛み、手足が酷く重く感じられる。まるで枷だ。
それでも
(あの人も流されてるかもしれないねぇ)
と、挫けそうになる心を励ましヨロヨロと起き上がり、おぼつかぬ足取りで海辺を離れ、比較的大きな木の下に腰を下ろす。
寝床を探すべきなのはわかっているが、もうどうにも身体が動かない。限界だ。
「高杉さん・・・・」
死ぬのが怖いとは今更思わない。死ぬよりも苦しい状態を知っている身としては、一瞬で苦痛から解放される死など恐れるものではなかった。
ただ、死ぬ前にもう一度あの人の声を聞きたかった。名を呼ばれたかった。許されるならば、その肌に触れてみたかった。触れられてみたかった。
「高杉さん・・・・」
小さく呟き、見えていたころほんの少しだけ習い覚えた下手糞な平仮名で、崇拝してやまぬ神にも等しい男の名を繰り返し地面に綴る。
たかすぎさん たかすぎさん たかすぎさん たかすぎさん
子供よりも下手糞なその字には、しかし確かな情念が篭っていた。言葉に魂が宿って言霊となるならば、似蔵の綴る文字はさしずめ文霊といったことろか。
「高杉さん・・・・」
会いたい思いが募り、少し泣きそうになるのを慌てて堪え、苦笑する。
ココには誰もいないのだ。何を恥じることがある?みっともなく涙を流そうが喚こうが、見咎める者とてないというのに。
「会いたいねぇ・・・・」
「それは奇遇。拙者も会いたかったでござるよ」
「っ?!」
「似蔵殿にかように思われ嬉しい限り」
「よぉ似蔵。おめぇ万斉に惚れてたのか?ちぃと意外だったがいいぜ?俺はこう見えても心が広いんでね。たまになら貸してやるぜ?」
いつからいたのか?何故気づかなかったのか?涙を見られはしなかったか?
しかしそれより何より何より、とんでもない誤解をとくのが先決だ。
「ち、違うよぉ〜俺が惚れてるのは・・・・・あ・・・いや」
「ん?誰に惚れてるって?はっきり言いやがれ」
「・・・・・・・・・・すんません」
似蔵はヘタレでいい。