好きだ。とにかく好きだ。
決して賢くない。イイヒトでもない。前向きでもなければ生産性もない。
あるのは破滅願望と確実にくるであろう破滅と迷惑な破壊衝動とある種の諦めと無意識の他力本願的依存。
・・・・マダオかもしんない。
けど、妙に可愛いというかほっとけないというか気になると言うか。

彼の生い立ち、失明時期、状況などについては一切語られていないから、まさに妄想し放題。好き勝手なプロフィールをでっち上げてみる。

まず生まれは彼のモデルである岡田以蔵がそうであったように、貧しい家で両親と彼の三人でつましく暮らしていたことにする。
父親はかつての戦で満足に働けず、母は家計のやりくりと父の世話で疲れた顔をしている。
この段階で早くも倫理観以上に『強くないと駄目だ。弱いと惨めだ。金がないのは苦しいことだ』と身にしみる。
ろくに学校にもいけず、むろん剣術道場に通う金もない。貧乏侍の子とからかわれながら、やった後のこと(主に両親のこと)を考えると手出しもできずに堪える日々。実力とは別の『身分』という価値に苛立つ。これが後の『侍に必要なのは剣のみさね』に繋がっていく。彼が高杉に仕えているのも、士道だの節義だのではなくて、高杉の放つ強烈な『光』に惹き付けられる蛾の性分故。
何にしても、無邪気で楽しい子供時代などもてなかった人だと思う。

13くらいで家を出て、独学の野剣で15前後で攘夷戦争参戦。
思想のためではなく、学も家柄も金もない己が唯一『侍』たるを証明できる剣をふるって生きられる場は戦場だけだったから。国のためではなく、己のための戦い。
荒削りながらも天賦の才を持つ彼の剣筋は、過酷な戦場の中で日ごと磨かれていく。彼にとって剣とは始まりの日から『喧嘩』ではなく『殺し合い』の手段だった。
いつしか人斬りとしての名が広まり始めた丁度その頃(高杉らが攘夷戦争にうって出る少し前くらい)に発病。医者も薬も全てが窮乏しているなか、目に違和感を覚えたまま戦い続け手遅れに。医者からそう遠くない将来完全に失明すると告げられ戦線離脱。朝目覚めるたびに狭まり明度を失っていく視界に一人怯えながら今は遠い戦場で活躍する少年4人の噂に身を焦がす。20代にして孤独・恐怖・困窮・不完全燃焼といった4重苦を嘗め尽くし、『夢』希望『』『未来』といった前向きワードを己の辞書から抹消する。

独自の居合い術を極め、人斬り似蔵として恐れられるようになった頃、10歳ほど年下の高杉に拾われその光に狂う。

以上。妄想。