テーマは腰布。
メッセ&スカイプで「腰布はエライ。エロイからエライ。良いものだ!」という話になって。
個人的にデーボさんは腰布スゴク似合うと思う。
まず背が高い。そしてガタイいい割に腰が細い。
見た目もネイティブ・アメリカンでオサゲだし、ちょっと民族衣装っぽい着こなしイケルいけるはず。
自家発電もいいとこだけど、下絵から仕上げまで、やたら楽しかった。
デーボさんに夢見すぎだってのはわかってるけど、ドリームが止まらない。

欲情色を腰に巻け
〜ありきたりの日常〜

『あ?てめ、人が折角飯奢ってやるってのに、そのナリはねーだろ、そのナリは』
聞き様によっては、いや、よらなくても失礼な言葉をホル・ホースに吐かれたのはつい数分前。
呪いのデーボはところどころ血で黒ずんだ仕事着を脱ぎ捨て、私服に着替えるべくクローゼットを漁る。

「ちっ・・・何が何だかだぜ・・くそっ」
毒吐くデーボの思いの先は、乱雑に突っ込まれ無造作に吊るされた衣服なのか、唐突に夕食に誘ってきた挙句、人の服装にケチをつけてきたホル・ホースなのか。

「これでいいか・・・?いや、いい。どうでもいい」
奢りだかなんだか知らないが、いきなり恩着せがましいことを言い出す女垂らしと出かけるのに一々衣服に頓着するなど馬鹿馬鹿しい。
暗い色合いの赤紫のシャツを羽織り、繰り返し洗って色落ちした黒のストレートジーンズを履く。どうでもいいと言いながら、悪くない組み合わせだ。何よりもデーボに良く似合っている。
少し考えブラックレザーのベストを合わせ、いつものメッシュグローブも外した。

「・・・・・」
長袖のシャツであらかた隠れてはいるが、露出した手首から先の損傷は一目瞭然だ。
デーボにコンプレックスはない。ホル・ホースも気にしない。このDIOの館でそういったことを気にする人間はいない。
だが、世間一般ではそうはいかない。世の中の人間の大半は異形に対し容赦のない好奇心を浴びせかけ、時に蔑み嫌悪する。
デーボは風呂とベッドの中意外ではグローブを外さない。気に病まないことと不快感をまったく感じないこととは別問題なのだ。下らない意地で無用な不快感に晒されて日常を送るほどデーボは子供ではない。その奇行癖から推測されるよりも、彼はずっと冷静で物事に折り合いをつけることに長けていた。
故に、今も極自然に外したメッシュグローブの代わりに、ベストど同素材のショートグローブをはめた。

「ん?」
ふと目に付いた艶めく赤。
それは女性であれば上半身を覆えるほどの大きさの布だった。
いつどこで何を思ってこんなモノを買ったのか。
デーボにはまったく心当たりがなかったが、不思議とその色と光沢は彼の関心を引いた。

(血の色だ)
幾重にも重なり合った色の濃い部分は、時間がたって黒ずんだ血の赤。
-俺の身体に染み付いて落ちねぇ色。

少しだけ重なった色の明るい部分は、頚動脈から迸る鮮やかな血の赤。
-俺を狂喜させる色。

一重の透けるような色の部分は、削ぎ切りされた直後の肉に滲む血の赤。
-俺が見飽きた色。

スクンと下肢が疼いた。

(おいおい・・・・こんな布切れ一枚に欲情してんのか?随分安いじゃねぇか)
そんなに溜めてるワケでもねぇのにとデーボは自嘲した。自嘲しながら欲情の色を躊躇いもなく腰に巻きつける。コーディネートだの何だのを考えてのことではない。ただ、本能の赴くままにそうしていた。


「待たせたな」
「気にすんな。美人の身支度待つのは男の楽しみだぜ」
「馬鹿野郎が」
ホル・ホースの頭のオカシイ軽口に素っ気無く返す。もう慣れっこで鳥肌は立たなくなっている。

「ふーん・・・・」
「何だ?」
「似合うじゃねぇか」
「あん?」
主語のないホル・ホースの思わせぶりな言葉にデーボの眉が上がる。

「そいつだそいつ」
ホル・ホースが咥え煙草の先で指したのは、デーボの腰に纏いつく鮮やかな赤。

「別に・・・・」
深い意味があって巻いたワケじゃねぇよと、デーボは何故か言い訳じみた台詞を口の中でモゴモゴと呟く。
服装の趣味を面と向かって褒められたことなど終ぞなかったというのに、よりにもよって同性のむさ苦しい男に・・・・デーボの心中を何とも言えない感情が渦巻いた。

「やっぱ俺の趣味は最高だ」
「・・・・・は?」
言葉の意味がわからず、デーボは素で聞き返した。

「ん?何だよ忘れちまったのか?」
薄情な野郎だと文句を垂れるホル・ホースに、デーボはますますわけがわからず眉間の皺を深くする。

「土産にやっただろうーが、土産によ」
「あ・・・・・っ」
そこまで言われてデーボはようやく思い出した。
確かいつだったか、一仕事終えたホル・ホースに『土産だ、やる』と無造作に放られた赤い布。
女じゃあるまいし、こんなもの何にどう使うのだと、クローゼットに突っ込んでそのまま忘れ去っていた赤。

(何てこった・・・・っ)
デーボは己の迂闊さに歯噛みした。
土産を買ってきてくれたホル・ホースに悪いと思ってのことでは無論ない。嫌なのはこの後確実に来るであろう、ホル・ホースのウザったいポジティブ勘違い攻撃だ。

「それとも忘れた振りか?可愛いトコあんじゃねぇか」
(始まりやがった・・・)
上機嫌で話しかけてくるホル・ホールからデーボはそっと視線を反らす。相手のしている勘違いが手に取るようにわかるだけにいたたまれない。

「恋人から誘われたディナーに、忘れたフリしてた土産物を恥かしそうに巻いてくるなんざ、今時女でもなかなかしてくんねぇぜ!」
(しねぇだろな。しねぇに決まってるだろ。恥かし過ぎるぜぇ)

「しかも腰っておめぇ・・・!」
(そこで感極まってんじゃねぇよ変態)

「すっげぇエロくせぇっ!!」
「エロイとか言うなっっ!」
布切れ一枚に情を催していた先の己の痴態を思い出してか、デーボは赤褐色の肌を更に赤く染め上げた。

「照れてんのか?照れてんだな??あぁ〜おめぇすっげぇ可愛いな」
「・・・・・いっぺん死ね。むしろ殺す」
「デーボ。おめぇには赤が、この血の色が最高に似合うぜ」
恋人の物騒な殺人予告は軽くスルーし、ホル・ホースは赤を纏ったデーボの腰を、慣れた手つきで撫で上げる。

「血の色で欲情するなんざ。俺ら人殺しにピッタリじゃぁねぇか」
「そう・・・・だな」
答えるデーボの腰は、赤に包まれたまま再び熱を帯疼き始めていた。