町田 千春 著

染色師 ネナ2   TOP

 

アグスの館では使用人達が陽気に酒を飲み、馳走を頬張り、中には酔って歌い出したり、踊り出す者すらいたが、アグスはそんな彼らを咎めるのではなく、むしろ盃片手に楽しそうに眺めていた。

 

今晩ネナの夫であるアグスが館で内輪だが急遽使用人を労う宴を催しているのには訳があった。

 

今日の午後ネナとアグスは揃ってオクルスの王宮に招かれたのだが、二人は王妃様から直々にお褒めの言葉を頂戴しただけでなく、同席して茶を囲むという栄誉にまで恵まれたのだ。

 

王妃様がセルシャの国の王妃に贈った衣が大変喜ばれたそうで、その功を労いたいという名目で王宮に招かれたが、実はそれだけでなく美しく賢いネナを王妃様はいたく気に入ったようで、アリナ。これからもまたこうやって度々王宮に来て欲しい。そなたの着こなしや衣の色や柄の合わせについての意見はとても参考になる。頼りにしているぞと声を掛けた。

 

美しく賢いネナを妻に持っている事が誇りで自慢のアグスにとってもこの国で一番高位の女性である王妃様にネナが認められた事はこの上もない喜びであった。

 

この事は明日には王宮に仕える者達からすぐに世間に広まるであろう。その事を思い浮かべるとアグスは胸がすくほど爽快であった。

 

また俺をやっかむ者が出てくるのだろうな。と面白そうにアグスは心の中でほくそ笑んだ。

 

実際同業者達は皆美しいだけでなく、アグスの仕事に的確な意見を述べて支えてくれる良き右腕であるネナを羨んだ。

 

こんな素晴らしい女とどこで知り合ったのだ、アグス?と聞いてくる者も多かったが、アグスはいつも天から降ってきたと言ったり、山の奥の洞窟で宝の箱を開けたら出てきたなどと言って、どこで知り合ったのか決して明かさなかった。

 

ただまことしやかにネナは元はセルシャの国の大きな織物工房の家の出の娘で王宮に刺繍侍女として仕えていた時に偶然アグスと出会いアグスが一目惚れして王宮から強奪したという噂が流れていたが、アグスも笑ってそれを否定しなかったので、どうやら皆その噂を信じているようだ。しかもその噂には実は美貌からセルシャの王の従弟に妃の一人にと望まれていたのをアグスが無理やり強奪してきたという尾ひれまで付いていた。

 

まあ王宮云々は別としても半ばネナを強引に花の蜜の館からかっ拐うようにして自分の妻にしたのには違いないが。そしてネナ自身が自分の過去について口にしないのも、そういった理由があると周りは思っているのだろう。

 

すっかり鼻高々で王宮から館に戻る馬車の中でアグスはネナに、お前に何か贈りたい。何がいいか?と問うた。実際ネナが望むならどんな高価でも手に入れるのが困難な物でもネナに与えたかった。

 

アグスの予想に反してネナはそれなら一つ頼んでもいいか?と口ごもりながら言う。勿論だとアグスが満面の笑顔で大きく頷くと、あたしの代わりにいつも仕えてくれているみんなを存分に労って欲しいんだ。

 

そう言い出した。

 

自分で言うのも何だが仕えている者達には充分な給金は与えているし、たまに厳しい事は言うが粗略に扱っているつもりはない。

 

アグスが怪訝な顔でネナを見つめると、ネナは小さく頷いて、あんたはいい主だよ。でもね、と言うと、あたしは急に見ず知らずの国にやって来て右も左も分からなかった。そんな時イモラやザズキやクリナやカザイにサンナ、その他にも館に仕えてくれている皆がどこの出とも知れぬあたしを優しく迎えてくれて何くれとなく親身になって世話をしてくれて、おかげであたしは今こうやってあんたの側にいられるんだ。みんなに感謝してもしきれないよ。だからみんなにいつもの礼を兼ねて労ってやりたいんだ。と言うとだめかな、アグス?と尋ねるとじっとアグスの瞳を覗き込んだ。

 

アグスは思わず苦笑いを浮かべた。

 

無論アグスには異論はなかったが、こんな表情でネナにだめかな?と問われて、自分がだめだと言えるはずがない。しかもいいかな?と聞くのではなく、だめかな?と下手で聞かれればそんな事はないと優しく言うしかないだろう。

 

まったく。俺の心を煽るのがうまいな。

 

そう苦笑しながらも、勿論だ。お前が望むなら。

 

そう答えるとネナはほっとしたように溢れるような笑顔を浮かべた。

 

その笑顔に視線を釘付けにされたアグスはネナの頬に優しく口づけると宴の後は分かってるな?とわざと艶っぽい声で耳に囁く。

 

その言葉にネナは少し頬を染めながら、小さくこくりと頷くとアグスの手をぎゅっと握り締めた。アグスもネナの手を強く握り返すとそのまま館まで着く間、二人は無言でただお互いの手を握り合っていた。

 

さあ、俺達は休むとするか。お前達は今日は存分に楽しんでくれ。そうアグスはにこやかに伝えると椅子から立ち上がるとネナの腰に手を回し、二人の寝室に向かって歩き出した。使用人達は口々にお休みなさいませ、旦那様、奥様と口にする。ネナ付きの侍女頭のサンナがちらっとネナに視線を送った。

 

ネナはサンナにに頷くとサンナも、ではアリナ様、私も下がらせて頂きます。おやすみなさいませと膝を折って挨拶すると自分の部屋に下がって行った。

 

館の一番奥まった所にある二人の寝室に入り、扉を閉めると遠くから広間の楽しそうなざわめきが微かに聞こえてくる。

 

先に大股で寝台に歩み寄ると寝台の端にどっかりと座り、自分の衣の襟元を寛げたアグスが無言でネナに向かって手を差し伸ばす。

 

そして愛しそうにこう呼んだ。

 

さあ、ネナ。来いよ。

 

そんなアグスに向かってネナは一歩ずつ歩み寄るとどっかりと座ったアグスを見下ろすようにアグスの前に立つとそっと自分からアグスの唇に自分の唇を重ねるように顔を近づけてきた。二人の唇が触れ合った途端、アグスはネナの腰にぐっと手を回すとネナを更に自分の方に引き寄せた。

 

軽く触れ合う口づけを数回繰り返すと、アグスはネナの腰に回した手を支点に手早くネナを寝台に軽く押し倒すとネナに覆い被さり、今度は深い口づけを交わす。舌をネナの口内に差し入れネナの舌と絡ませる。ぺちゃぺちゃという少しねばついた水音がこれから起こる淫靡な時間を予感させ、早くもアグスの男はいきり立ち始めていた。

 

しかし夜は長い。今夜は存分に楽しまなくては。

 

アグスとの深い口づけで心持ち顎が上向いてきたネナの唇を舌の先でちろちろと軽く舐めると、視線でネナを促す。誘いに応じてネナが舌を出してきたのでひときわねっとりと自分の舌を絡ませて、お互いの舌が卑猥にうねうねと絡まり合う。

 

舌を絡ませ合いながらもアグスの大きな手のひらはネナの衣の襟元を寛げると帯も手解き、ネナの白く柔らかくずっしりと心地よい重みがある二つの丘を下から持ち上げるように左右それぞれの掌中に収めると、その柔らかくも暖かい双丘の感触を確かめるようにゆっくりと、しかし確かな強さで揉み始めた。

 

あ。ネナの唇からは早くも艶っぽい吐息が溢れてきた。もっとその声が聞きたくてアグスは一定の速度で強く優しく揉みほぐしながら舌も絡めていく。

 

ネナは早くもアグスによって感じ始めているが舌を絡めてられている為に声が出せずに、鼻を抜けるような苦しそうな、しかし何ともなまめかしい声を上げる。

 

アグスは名残惜しげに絡めていた舌も解くと自分の身体を少し提げると双丘の頂の赤く色づいた果実に指先を近づける。そこは既に硬く立ち上がり存在を主張していたが、アグスは更に親指と人差し指できゅっと摘むと両指の間でくりくりと軽く捏ねてみる。

 

ああっー。ネナは更に艶っぽい声を上げ、無意識にだろう。首を左右に振っていた。

 

双丘の頂の赤く色づいた果実はネナの快楽の源の一つだ。それが分かっているのでアグスは一際丹念にそこを可愛がるのだ。

 

ネナの声に気を良くしたアグスはもう片方の果実に唇を近づけると最初は焦らすようにちろちろと果実の先端に触れるか触れないかのように優しく、時にはからかうように舌を触れさせる。しかしもう片方の果実は更に指の間で果実の奥の芯を摘まみ出すように何度も指で弾くように摘まんでいく。

 

直接的な強い刺激と緩い触れるか触れないかの二つの異なる刺激に早くもネナの身体は困惑したように乱れていく。

 

あああ、アグス。泣き声のような吐息混じりの声でアグスにねだってきた。

アグスはにやりと笑うと果実を口に含むとじっくりとその味を堪能するように優しく吸いあげた。時には強く吸ってみたり、軽く歯を立てるといよいよネナは極まったような声を上げる。

 

もっと聞かせてくれ、ネナ。そうネナの耳に吐息を吹き掛けながら囁く。吐息にくすぐったそうにネナが軽く身を捩らせた。

 

先程とは逆の頂きの果実を口に含むと舌を絡らめたり、吸い上げたり時には軽く噛む。先ほど唇で丹念にほぐしたもう片方の果実は親指と中指でそっと挟むように摘まむと果実の割れ目に人差し指で爪を立てるようにして、やわやわと揺らすとそのむず痒いような刺激にネナはついに甘い声を漏らすだけでなく、腰をもじつかせた。

 

アグスはしばらくの間ネナの快楽の源である白く柔らかな双丘と頂きの果実を思う存分堪能した。その間もネナは何度も極まったような途切れ途切れの声を上げていて、アグスにとってはそれが心地よい。

 

己が存在でネナに悦びをもたらしているという男としての自信とネナの女としての柔らかさ、温かさを堪能でき、男としての本能が満たされるのだ。

 

ネナの身体に舌と唇、そして指を這わせながら双丘から腹を伝い、そして柔らかな茂みにたどり着くと髪と同じように茂みを優しく撫でてみる。

茂みに指を絡めるように撫で上げるとこれから起こる事を身体が既に記憶しているのか、ネナの腰はひくひくと小さく波打って、アグスを淫らに、しかし何とも蠱惑的に誘ってくる。

 

ネナの身体を這っていた自分の身体を一旦起こすとネナの両足の間に自分の身体を挟み込ませると両手でネナの足を更に大きく開く。

 

何度身体を重ねても人は普段は決して人に見せる事のない秘められた場所を晒すのに羞恥を感じるのか、ネナも恥ずかしそうに目を閉じて、軽く首を振りながら

 

いや。と恥じらった声を上げたが、その声は甘く潤んでいる。本当に嫌がっているのではない。

 

その証拠にネナの茂みの下にある秘密の花園の泉は既に沸きだしていて、アグスを迎い入れる準備は整っているようだ。しかしもっとネナを感じさせたいし、自分もネナを味わい尽くしたい。

 

アグスはネナに見せつけるように自分の人差し指を舐めるとその濡れた指をネナの泉の中にそっと差し入れる。その途端ネナはああっ。と一際高い声を上げる。

 

しっとりと湿って温かく狭い道に指を這わせながら、時折双壁を軽く擦るとネナは声を上げ、腰を揺らし、内から沸き上がってくる快楽の波に耐えようと眉根を寄せながら首を横に振る。1本では足りなそうなので

 

アグスは一旦指を引き抜こうとするとネナの双壁は逃すまいとするように蠢いて指を締め付けてくる。

 

しかし指を引き抜くと、ああーと少しもの悲しそうなネナの声が上がった。

 

ネナが自分を欲しがっている事が嬉しく、身体をずり上げてネナに口づける。軽くネナの唇が開くと自分の舌を差し込みネナの舌と絡ませ合う。

 

そして同じようにそっと開いた足の間で潤んでいる花園の泉に今度は人差し指と中指の2本を差し入れると狭い通路の中で指を開いてそれぞれの壁を突っついたり、擦るとネナは快楽の波の強さに耐えられないのか一際激しく激しく腰をうねらせる。

 

アグスは舌と指の動きを重ねて、ネナの上の口と下の口を同じように愛撫する。

 

舌と舌が絡まり、飲みきれない唾液のぴちゃぴちゃした水音と下肢の秘密の花園の泉の水が捏ねられる唾液より粘ついた二つの水音。そしてネナの深く甘い吐息と二人の重みを受けて止めて時折カタカタと寝台が鳴る音だけがこだましていた。

 

ネナはアグスによって絶え間なく送られる快楽の渦に巻き込まれないよう必死に抗おうとするが、それは無駄な抵抗であった。

 

濃密で細やかな愛撫にすぐ陥落してしまい、切れ切れの甘く潤んだ声を上げ続け、身体中のどこもかしこも貪欲にもっともっととアグスの愛撫をねだっていた。

 

アグスはいつもは他人の手前自分をアリナと呼ぶが、二人きりになった途端、元の名前のネナと呼ぶ。

 

ネナも今のアリナという名前も気に入っているが、やはり自分は産まれた時からの名前のネナの方が本当の自分の気がしてしっくりくる。

 

アグスにネナと呼ばれると、そう。いつもはアリナという衣を身に纏っているが、それを脱ぎ捨ててネナという産まれたままの姿に戻る。そんな感覚なのだ。

 

勿論他人にむやみに素肌を晒さないように自分の素性を明かさないが、アグスは全て知っている。

 

この男は自分の過去を知っているし、これから未来に向かって一緒に歩いていくだろうし、そして何より今この瞬間、この男と共に生きているのだ。

 

アグスに抱かれて己が身体の感覚が俊敏になっている時にネナは強く自分が生きていると感じられる。

 

自分の心も身体も強く一人の男、そうアグスを求めていて、同じようにアグスも自分の心も身体の丸ごと強く求めてくれているのを実感できるのだ。

 

花の蜜の館にいる時が幾人もの男達と肌を重ねたが、所詮身体のみの交わりで心は交わらない。生きる為に快楽に慣らされた身体は熱く燃えて潤んでいくが、心は冷めて虚しく乾いていく一方であった。人知れず自分が心と身体。真っ二つに割かれていくような虚しさを心の奥底に抱えて生きていたが今は違う。

 

心も身体も繋がって、更にアグスという一人の男を求めているのだ。その喜びにアグスが自分を愛撫すると自然と甘い吐息が漏れ、身体は開いていき、中から潤ってくるのだ。

 

気がつくとアグスは秘密の花園に咲く花の花弁や普段は花弁達に隠されて守られている小さな快楽の源の果実をそっと指で摘まむとそれをれろっと舐め上げた。普段は守られ隠されている敏感な果実を剥き出しにされて舐められてはネナもひとたまりもない。狂ったように首を激しく振りながら襲い来る快楽の渦に耐えられないように声を上げてしまう。

腰も足もガクガクと震えているがアグスに両足をしっかりと捕まれているので逃げる事もできずにただ成されるままに絶え間なく襲ってくる激しい快楽の波に翻弄され続ける。

 

アグスはネナの快楽を限界まで高める為にだろう。

 

ネナの足を自分の背中に絡ませるようにすると、舌を下肢の秘密の花園の息ずく快楽の源の果実に這わせると両手をネナの双丘の頂きに息ずく赤い熟した果実に伸ばし、指で摘まむとこりこりと摘んでいく。

 

あっ。あーーー、アグス。ネナはアグスから与えられる直接的過ぎる強い快楽の渦に翻弄され、よがり狂う。

 

アグスの細やかで淫靡な愛撫で身体は芯から溶けていくが、ネナの中で一つの想いが沸き上がってきていた。

 

アグスが愛してくれるように自分もアグスを愛したい。ただ一方的に愛されて感じているのではなく自分もアグスを愛して感じさせたい。

 

ネナは乱れる息の中で、アグス。と名を呼んだ。

 

その声にアグスは一旦動きを止めてネナを見つめた。

 

あたしにもあんたを愛させて欲しい。

 

そうネナが囁くと一瞬アグスは苦い顔をした。

 

花の蜜の館にいた時に早く男達を満足させる方法としてネナは口や手で男を悦ばせる技を身につけていた。

 

しかしその時代を思い出させない為だろう。

 

アグスと結ばれてからアグスはネナにそういった事を決して要求して来なかったし、むしろネナに奉仕させるような事は一切せずにネナを感じさせる事に専念していた。

 

無理するな、ネナ。アグスはそう言いネナの頬を優しく撫でたが、ネナは小さく頭を横に振ると、違うんだ、アグス。あんたがあたしを可愛がってくれるようにあたしもあんたを愛したいんだ。

 

そう言うとじっとアグスの瞳を見つめると、

あんたが欲しいだ。あんたの隅々まで深く知りたいんだ。そう言うとネナの熱い眼差しに圧倒されたようにアグスが小さくごくりと息を飲み、ふーっと大きく息を吐くと分かった、ネナ。でも無理はするな。止めたくなったらいつでも止めていいからなと優しく微笑みながら言った。

 

嫌になる訳ないじゃないか。あんたなんだから。

 

ネナは心の中でそう呟くと寝台から起き上がり、逆にアグスに寝台に寝そべってもらうとアグスの下肢に息づくアグスの男の印の剣に手を伸ばした。

 

元々太く大きくたくましいアグスの男の剣はより大きさを増し、腹に付くぐらい反り返って存在を主張していた。

 

自分を愛撫してアグスが興奮してくれている事が嬉しく、ネナは剣の根元に手を添えるとまるで母が我が子の頭を撫でるように優しく切先に向かって撫で上げていく。切先までたどり着くと片手で切先を上から優しくくるむと指先でやわやわと優しく揉み官能のさざ波を送っていく。

 

もう片方の手は剣の根元からゆっくりと剣の上下に指を滑らせていく。

 

うっ!時折アグスの切羽詰まったような声が益々ネナの興奮を高めていく。アグスの切先からは早くも刺激の先走りが溢れてきていた。

 

もっと、もっと感じて。

 

ネナは片方の手は根元に添えたまま、そそり立つ剣に舌を這わせていく。そして一番敏感な切先の窪みに舌を差し入れ、窪みやその回りを丹念に舐めていく。

 

わざと子猫が皿の水を飲む時のようなぴちゃぴちゃした水音を立てて、先走りの雫を舐めていくとアグスは直接的な刺激に耐えようと、うっと低く獣のような艶っぽい声を挙げ、腹筋に力を入れて堪えているのが分かる。

 

そんなアグスが可愛く、そして愛しく思え、ネナは更に剣の根元にある双球にも優しく指を這わせて撫でていく。

 

両手で双球と剣を撫で上げ、口と唇で切先を舐めたり、時には舌を巻き付けてねっとりとした感触を感じさせると益々アグスの剣は太く固く大きくなって、先走りの滴はみるみる溢れ出してきていた。

 

ネナが夢中になってアグスのたくましい剣を愛していると、アグスがネナ。もう限界だ。早くお前の中に入りたい。そう切羽詰まった少し上ずった声と熱い眼差しで求められた瞬間、ネナの泉からも一気に熱い新たな滴が溢れて出した。

 

あたしも早くあんたを迎い入れたい。ああ、来て。

 

ネナも口には出さなかったが想いのこもった視線でアグスを見つめ返すとアグスはネナの心の声を正確に読み取ったようで、猛った剣をネナの泉に刺し入れてきた。

 

優しく、しかし確実にアグスの剣を締め上げていく。

 

その締め付けにアグスはうっと小さな声を上げるのも心地よい。それに空洞を満たしてくれる熱く大きな刃の充足感が堪らない。泉の奥へと突き進んでいく途中で軽く双壁を擦っていくのにもネナは感じていた。

 

ついにアグスの剣が収まりきった時、アグスは少し乱れた息を吐いており、やはりネナもアグスが突き進む時に送り込まれる快楽のさざ波によって甘い声を上げてしまったので息が乱れていた。

 

アグスは腰を突き動かさず、ネナに包まれたまま動きを止めてた。まるでお互いの熱を、温かさを、充足感を存分に感じようとしているようで、ネナの双壁も無意識で今以上強くアグスを締め付けていて、アグスの熱さ、固さ、大きさを自分の身体に刻み込もうとしているようだった。

 

お互いを胎内で深く感じ合う。乱れた呼吸を少しずつ整えるとアグスがネナの指に自分の指を絡めるとその指先を自分の口元に導くとネナの指先に小さな口づけを降らしていく。

 

その暖かくもくすぐったい感触にネナが身じろぐと余計胎内にいるアグスを締め上げて、より深くアグスの存在を感じてしまう。

 

思わず情欲に潤んだ瞳でアグスを見つめるとアグスがネナの額、瞼、頬、そして唇に小さな口づけを降らしていく。

 

ネナもそんなアグスの頬に自分の頬を擦り寄せて、もっと口づけをねだってしまい、アグスの背に回した両手を強く自分の方に引き寄せる。

 

それに呼応したようにアグスがネナの両足を交差するように自分の腰にしっかり巻き付けると、最初は小さいが規則的な、しかし確実にネナの感じる部分を的確に狙って絶え間なく快楽の波を送り込んで来る。

 

あああー。ネナはそのさざ波の心地良さにうっとりとした甘い声を上げて、アグスの背に回す腕の力を更に強めて自分にもっと密着するよう引き寄せ、やはり胎内のアグスの剣も強く締め上げる。

 

絶え間ない心地良い波もいいが、もっと強くアグスを感じたい。

 

ネナは甘く乱れる吐息の中でアグスにねだった。

 

もっと。もっと強く、あんたを感じたい。突いて。

 

その声にアグスはにやりとしたり顔で微笑むと、しっかり掴まってろよ。とネナの耳に吐息混じりで低く囁くといきなり激しく剣を抜き差ししてくる。

 

その激しい抜き差しにネナは我知らず自らも腰をくねらせ、更に深い快楽を貪ろうとする。

アグスの胴に絡み付けた自分の両足を更に食い込ませるようにきつく組むと、一層強く胎内でアグスの剣の存在を感じる。更に自分の腰をくいくいと上下に揺らすと胎内にいるアグスも感じるのだろう。

 

うっという獣のような低く艶っぽい声を上げて、更に激しく前後にネナの熱い双壁を突いてくる。

 

ああー。ネナも我知らず夢中で頭を振り、狂ったようなよがり声を上げていた。

そしてネナの最奥がこれ以上耐えられないとばかりに歓喜の締め付けをすると、アグスの切先から熱い飛沫が勢い良くネナの胎内に注ぎ込まれる。

 

その瞬間、ネナはああああああー。と一際大きな声でよがるとがくがくと身体を弛緩させながら、いつしか意識を手放していた。

 

ネナは安心しきった寝顔で寝台の中で安らかに寝息を立てていた。

 

ネナの満ち足りたような安らかな寝顔を見つめているとアグスの頬は自然と弛んでくる。

自分の横でネナが安心して側にいられる。

 

アグスにとってはそれが何よりも嬉しいし、誇らしいし、これからもネナがそうしていられるようにしたい。それがアグスの生きる活力になっているのだ。

 

今回の事で益々我が家でネナの信奉者が増えるな。

 

思わずアグスは小さく苦笑した。

 

美貌のネナに男の使用人達が秘かに見惚れているのは分かるが、男の使用人だけでなく娘や中年の女の使用人達もぽーっと頬を染めてネナを見つめている。

 

当初は言葉も分からず、使用人達との会話はセルシャ語の話せるネナ付の侍女頭となったサンナかアグスの右腕であるイモラやセルシャ語が話せるザズキやクリナに頼っていたが、言葉はおぼつかなくてもにっこりと花が綻ぶようにネナが笑うと皆ネナの笑顔に見惚れていた。そしていつの間にネナを女主人と慕い、皆ネナに何か頼まれたり、声を掛けられると喜んで従っていた。

 

今まで自分が口うるさく身を固めろと言っても面倒だと耳を貸さなかったアグスがようやく妻を迎えると知ると両手を上げて喜んだ館の侍女頭でアグスにとっては母のようなカザイも相手がオクルス語も話せないネナだと知ると、当初は難色を示して他にもっといい相手がいるはずだ。自分ならもっと相応しい娘を知っている。今からでも遅くない。考え直せとネナを館に迎える直前まで文句を連ねた文を寄越して来ていた。

 

しかしアグスはネナを館に連れて来るや否や皆に挨拶させる間もなく自室にネナを連れ込んでしまったのだ。

 

オクルスでは愛娼は本邸とは別の館を与えられ、本邸の最奥にある主人の間で夜を共にできるのは正式な妻だけである。アグスはカザイが口を出せないように言わば既成事実を作ってしまったのだ。

 

翌朝アグスがようやくネナとカザイと引き合わせた時、カザイは館に使える者として表向きはにこやかに女主人としてネナを恭しく迎えたが、内心では苦虫を潰した気分であったのだろう。長年の付き合いでカザイの小さな変化も見過ごさないアグスはカザイの本心に気がついておいたが、敢えてそれをおくびにも出さずにネナを紹介したが心配な点もあったので、その場に何事も上手くまとめてくれるイモラも同席させた。

 

するとネナはアグスにではなくイモラに自分の言葉をカザイに伝えて欲しいと頼むとこう伝えたのだ。後でネナに聞くと、どうやら自分の言葉を都合良くアグスに変えてカザイに伝えられないようにという意味と主人であるアグスを立てるという意思をカザイに伝える為だったようだ。

 

自分はこの国の言葉もしきたりも全く分からない。アグスの妻として至らないだろうから、これからはあなたをこの国での母と慕い、教えを請いたいので自分に至らない所があったら遠慮なく叱って教えて欲しいと。

 

そしてカザイの目の高さに自分の腰を屈めて視線をしっかりと合わせるとにっこりと微笑みながらカザイの両手を強く握り締めたのだ。

 

これにはカザイも参ってしまったようで、今ではすっかり主のアグスよりも女主人であるネナ贔屓で、アグスとネナの意見が対立するとネナの肩を持つくらいだ。

 

まあ館の者達に慕われるのはいいが、これ以上本気でお前に惚れさせる者を増やしてくれるなよ、ネナ。

 

そう心の中で呟くとまだ眠っているネナの頬を優しく撫でる。

 

まあ誰がネナに惚れても誰にもネナは渡さないし、ネナが今以上に自分を好きになって離れられないようにすればいいだけだし、その自信はある。

 

お前は俺だけの宝だ、ネナ。

 

そうネナの寝顔に呟くとそっとネナの唇に口づけた。

 

 

 

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