町田 千春 著 |
染色師 その後のタツルス TOP タツルス様、失礼致します。 キチがお目通りを願っております。 侍従長の声にタツルスは読んでいた税に関する報告書から視線を上げた。 ああ、通してくれ。そう声を掛けると侍従長は一礼すると一人の男を王の執務室に通した。 キチは表向きは王宮に仕える馬丁の一人だが、実は裏でタツルスが内密に調べて欲しいという事を調べる密偵であった。 どの王国にもそういった影の仕事を担う者がいる。 キチもその一人だ。キチの本来の役目を知っている者はこの王宮ではタツルスの他に侍従長と副侍従長の二人だけだ。 キチはタツルスの前に立つと静かに一礼して、タツルス様。ご命令についての報告です。と言うと懐から丁寧に数枚の書面を取り出すと恭しくタツルスに差し出した。 キチはこういった内密な件に関わる為か普段から口数が少なく表情も感情を悟られないようにか無表情である。タツルスの指示があるまで自分から口を開く事もなく無表情のまま静かにタツルスの傍らに控えた。 タツルスが王の座に着いてほどなく一年になる。 新しく王座に着いた王の慣例として国中を視察に回るが南と北、そして東の領地への視察は無事終わり、残すは西の領地だけである。 この視察の順番にもいろいろな政治的な思惑が絡んで調整に難航したが結局王妃のレナミルの出身であるという理由で一番最初に南を周り、次に南と常に対立している北も軽んじていないと示す為に南の視察より大編成で異母弟の王子のサジカルも同行させ、その次は妃の一人であるグリソルの出身である東の領地への視察も無事終えた。 タツルスにとっては周りには決して明かせないが西には特に深い思い入れがあった。西の一番端にあるパルハハ領のゾルハの村には今も自分が秘かに愛しているジユが暮らしている。ジユも自分を深く愛してくれていたが自分を王座に着ける為に身を引いてくれたのだ。 タツルスには一つの夢があった。自分が王として無事国を守り支える役目を終えた暁には王の座を息子に譲って心行くまでジユと愛し合い共に暮らしたいと。 自分と別れた後のジユについてカジグルから一回だけ話を聞いた事があった。カジグルは一時実家の大臣家を飛び出し商人として市井の人として暮らしていた為か顔が広く、いろいろな人と通じていて様々な情報に精通しており、その情報に助けられる時も多い。 自分が王座に着く直前の事であった。ある日急にカジグルが予定もなく自分の元を訪ねて来た。今日は会議の予定はなかったはずだが何かあったのか?と尋ねるとカジグルは一礼してタツルスの側に歩み寄ると、タツルス様。即位の式典にはどうぞこの染めで仕立てた衣をお召しください。そう言うと静かに小さな包みをタツルスにそっと大切そうに手渡した。 重臣から王に何か献上するという事はなきにしもあらずだが普段からおべっかを使い自分の機嫌取りなどしないカジグルはそういった事はしない。そんなカジグルが自分に物を渡すとは?しかもカジグルは染めと言った。 染めと言えば! その言葉にタツルスは、はっと息を呑むと急いで、しかしどこか慎重な優しい手付きで包みをほどいた。 ? 包みがとけると中からは色鮮やかな、それでいて品のある今まで見たことのないような見事な紫の染めの絹の布が姿を現した。 ? ?文など着いていなかったがそれが誰からで何を伝えたいかタツルスにはすぐに分かった。思わずカジグルに視線を送るとカジグルは無言で大きく頷くと小さく一礼して部屋から下がっていった。自分が記憶の中のジユと語り合うと分かっているのだろう。同じジユを愛した同士とも言えるカジグルの気遣いにタツルスは心の中で礼を言うとジユの姿を想い描いた。照れたようなはにかんだ笑顔、抱き合った時に見せるはっとさせられるような艶姿、少し得意気な顔をして心持ち顎を上げて微笑む時のいたずらっぽい視線、そして涙に濡れながらも毅然とした最後に別れた時の自分を包み込んでくれるような優しさに満ちた笑顔。どの姿も今もまざまざと脳裏に浮かんでくる。 ジユが染めてくれた布地で仕立てた着物で王位に着く儀式や式典に挑んだ。常に自分の傍らにジユがいてくれる気がして心強かった。もちろん自分の傍らに王妃としてレナミルでなくジユが立っている姿を想い浮かべてみたが、ジユが豪華な着物を着させられ黙って自分に付き従っている姿など想像できなかった。 やはりジユは自由に輝いてこそジユなのだ。そして その命の輝き故に自分を魅了するのだ。タツルスは やはりジユの決断は正しかった。そう痛感した。 式典の後の少し落ち着いた頃にカジグルにどこからあの紫の染めの布地を手に入れたのかと尋ねると、カジグルは小さく微笑むとパルハハのゾルハの村にはこの国では珍しい女の染師がいるのでございます。その女がタツルス様が王座に着かれると聞いて、タツルス様に王としての役目をしっかり果たして頂かなくてはと献上したのでございます。かの女染師の兄が私の元を訪ねて来て私に託したのでございますとまるで物語でも語るようにおかしそうに微笑みながら話すと急に表情を改めると優しい眼差しでタツルス様。ジユは今も元気でゾルハの村で毎日染めを行い暮らしております。そう伝えると微笑んだ。 その言葉を聞いた瞬間にタツルスの脳裏にはジユの姿がはっきりと、まるで目の前にいるかの如く浮かんでくる。 化粧もせず素顔のままで癖のない長い黒髪を無造作に一つに結び、少し色褪せた黄色の簡素な着物に刺繍も刺されていない茶色の帯を短めにぎゅっと締め、所々様々な色の飛び散った衣の袖を捲り上げて真剣な眼差しで染めの液の入った樽に布を潜らせている。その額には汗が滲み、爪の先は紫に染まっている。 作業が一段落すると安堵したように作業の間中、ずっと詰めていた息を大きく吐くと、額の汗を手の甲で拭った。 豪華な着物や帯、装身具など身についていなくても どんな姿でもジユのその生きざまがジユを輝かせている。タツルスもジユの姿を思い浮かべるだけで思わず自然と笑みが溢れてきた。 今回西に視察に行くに辺り、ジユに会いたいと思うのは自然な成り行きだろう。 できるならば人目を避けて一人でゾルハの村に向かいたいが王となった今ではそれは不可能であろう。 それならばせめて一目でもジユに会いたい。王となった自分の姿をジユに見せたい。ジユが染めてくれた紫の染めの衣を身に纏い王として王座に着いた姿を見たらジユはどう思うだろう。 そこでタツルスは秘かに一計を案じた。 各領地に行くと国や領地に対して功績を上げた者達を招いて領主が宴を開催する。そこにジユを招けば良いのだ。この紫の見事な染を行った功績を称えて招いたすれば周りは誰も疑わないだろう。 タツルスは以前ジユと逢い引きをする時に協力してくれたパルハハの領主宛に今回の視察でのパルハハの宴の際はぜひジユを招いて欲しい。優れた女染師がこの国にはいるのだと皆に知らしめたいのだ。そう秘かに文を送った。 しかしタツルスの想いとは裏腹にパルハハの領主からの返事は何とも要領を得ない返事だったのだ。 ゾルハの村に使いを送ったがジユは今は染を行っていないので今回の宴には申し訳ないが参列できないと返事をして来た。なのでタツルス様のお望みにはお応えできず申し訳ございませんと書かれていたのだ。 今は染を行っていない?数ヶ月前にカジグルから聞いた話ではジユは元気で今もゾルハの村で染を行っていると言っていた。ジユの兄から聞いたと言っていたので確かな話だろう。 そして何より自分と会えないと? ジユ。いったい何があったのだ! タツルスは不安に駆られ急ぎキチを呼び、パルハハのゾルハの村にいるジユという女の染師について調べるよう命じた。 この数ヶ月の間に体調でも崩したのではないか。 染めの仕事は重労働で本来男のする仕事とされている。寝食も忘れ染めに集中するあまりに身体を壊してしまった事もジユならあり得る。もしそうならば秘かに王宮に仕える腕の良い薬師を今回の視察に随行させジユを診させよう。 それとも考えたくはないがジユは他の男の元に嫁いで行ってしまったので染めを行っていないのでは。 ジユ自身が望んで他の男の元に嫁いで行く事はあり得ないが、親の破産など家の状況で泣く泣くどこかに嫁がされて行く娘もいる。まさかジユの身に。 タツルスは慌ててキチから差し出された書面に目を通した。 え? 冒頭からにわかにタツルスには信じられない一文が記載されていた。 パルハハ領ゾルハ村のジユ、昨年のゾクの日に病で死亡(ゾルハの村の戸籍で確認) 昨年のゾクの日に病で死亡? ジユが死んだ。 タツルスはその一文の意味を理解をした途端、自分がどこにいるのか、今何をしているのかすら分からなくなっていた。急に視界が狭くなり目の前の世界から光が消えた。 ジユが死んだ。 急に血の気が引いたように青ざめた顔をして本人は気がついていないのだろうが小さく小刻みに唇がわなわなと震えている姿に思わずキチはタツルス様、大丈夫でございますか?ご気分が優れないのでしたら急ぎ薬師を呼びますがと声を掛けた。 キチの声にタツルスは我に返り、大きく息を吸うと 本当なのか?と思わずキチに尋ねていた。キチは小さく頷くとはい。とだけ短く答えるとタツルス様がお尋ねになると思い、亡くなる前の状況や亡くなった直後の家族の様子なども調べてここに記しております。 亡くなる前の状況はかつてジユの兄弟子として同じ工房にいた者から聞き出しましたので間違いないかと。 ただえらく口が重く聞き出すのに難儀しましたが。 そう口にした。 タツルスは心を沈めようと大きく息を吸って吐くとキチにご苦労だった。もう下がって良いと伝えるとキチは小さく一礼すると部屋から下がっていった。 タツルスは気がつくと自分の指先が小刻みに震えているのに気がついたが、その震える指先で慌ててキチの報告書の続きに目を通した。 いったいジユ、何があったのだ! ジユの兄弟子から聞いた話としてこう記されていた。 五年前の暖かい秋の、記憶違いでなければチダの日に 突然工房に二十人ほどの賊の一団が現れた。もちろん工房の高価な絹の染物などを狙う賊がいない訳でもないが、それならば工房を襲うよりも納入された布地がある商人を襲う方がまだ理解できる。しかし賊の一団が工房に現れたのだ。中には奪った後に口封じの為に火を放つ賊もいると聞いた事がある。賊の数人は手に松明を持っている。 工房の男達の間に緊張が走った。何としても染めを、この工房を守らなくては! 中から賊の頭と思われる一人の若い長身の男が歩み出でくると、おい!ここに若い男が一人、ジユという染師の女を尋ねて来なかったか!そう言うと正直に言わないとただでは済まないぞ!と言ったのだ。 ジユの所に若い男?賊の目的は染めではない? 肝心のジユは今朝は何やら具合が悪いのか作業に集中できずに手元が狂ってしまい、それをジユの祖父で師匠でもあるグジに咎められ作業を止めて午後になっても工房に戻って来なかった。きっと具合が悪いので部屋で休んでいるのだろうと思っていたが若い男が尋ねて来ている? その後弟子達を守るようにグジが歩み寄り、賊の頭にその若い男がジユを連れて逃げた場所を示すと賊達は慌てて工房から立ち去り、グジが工房に火を付けられていないか確かめろと皆に言ったので皆慌てて工房の周りを確かめた。 夜になってジユが一人で工房に戻ってきた。ジユと一緒に逃げた若い男は賊に殺されてしまったのか、それとも捕らえられてしまったのか、そしてジユ自身も賊に辱しめを受けてしまったのだろうか。 ともかく魂が抜けたような様子で戻ってきたが、あの時のジユは痛ましくて見ていられなかったし、そんな痛々しい様子のジユに何があったのかとても尋ねられなかったと記されていた。 魂が抜けてしまったようなそのジユの痛々しい姿が脳裏に浮かんだ途端、タツルスの胸にも鋭い痛みが走った。 自分の為に身を引いてくれたジユだが、その陰でどれだけ一人でその辛さ、心の痛みを秘かに抱えてくれていたのか。 タツルスは悔しさ、哀しさを堪えるように思わずぎゅっと拳を握ると、 ジユ。 思わず胸の底から絞り出すような苦しみと嘆きの声でもうこの世にはいない愛しい人の名を呼んでいた。 その後グジが孫娘のジユの為に皆を巻き込んでしまった事に自責の念に駆られて、工房から全ての弟子を返す決定をしたそうだ。皆このままグジの元に残る事を切望したがグジの決心は揺らぐことはなく結局皆後ろ髪を引かれる想いで故郷に戻ったり、昔グジの元で学んだ事のある者の工房に移っていった。 偉く口が重かったと言っていたが、恐らくキチは少々手荒な方法を使ってでも今回の件を探ったのだろう。 工房から離れた後も弟子達はその後のグジやジユの様子を気に掛けていたようで、この兄弟子も故郷のセズトロの実家の工房に戻った後も頻繁にジユの兄嫁で修行中にも世話になっていたカクに文を送って工房や一家の様子を尋ねていたようだ。 ジユはあの後体調が優れないという返事をカクから貰っていたそうだ。ただそんな中でも一家に慶事はあったようでジユの兄のヌクとカクの間に四番目の子であるキリが産まれたそうだ。ジユにとっては甥だ。 その後もジユはずっと体調が優れなかったとその兄弟子はカクから聞いていたそうだ。 そんなある日、ちょうど一年ほど前に彼の元に急にジユから文が届いた。慌てて文を読むと見覚えのあるジユの筆跡で今紫の染を行っているが自分の想い描く紫に染まらない。そこでセズトロに自生するセルチの実を乾燥させた物を送ってくれないかと記されていた。 時候の挨拶も自分の近況を知らせる前置きも記されずにただ必要な要件だけ記された文に思わずジユらしいと苦笑したが、この文を読むとジユはまた元気を取り戻し、染めを再開したようだ。ジユの染めの才能を知り尽くしている兄弟子はジユの才能がこのまま埋もれてしまわない事に喜んですぐに赤の染料の材料となるセルチの実をパルハハのジユの元に送ったそうだ。 その後ジユからお礼の文や染めについて尋ねる文は届かなかったが、きっとそれは染めに集中しているあまりに他の事に気が回らない為だろうと兄弟子は思っていたのでジユから返事がない事は深く気に止めていなかったそうだ。 そして半年前に噂でこの度のタツルス様の新王に即位の儀式の際に身に纏った紫の絹の染めが素晴らしかったと聞いたのでちょうどジユが自分に文を送ってきた時期と照らし合わせるとそれはジユの染めではないかと思い、パルハハのジユに文を送ったそうだ。 そしてパルハハからの返信の文を受け取って、文を読み驚愕した。 文の差出人はジユではなく、共にグジの弟子として工房で働いていたジユの兄のヌクからでジユが急に病で亡くなった事のみが記されていたそうだ。 なのでタツルス様が即位の儀式の時に身に纏った紫の 衣を染めたのはジユなのか確証がないと最後に兄弟子は伝えたようだ。 どうやらキハはタツルスがジユについて調べろと命じたのは即位の儀式で纏った紫の染めを誰が行ったか確かめたいという意図だと思ったようだ。 そうであろう。まさか王とこの国の西の外れのゾルハの村の染師の女が愛し合い、その女との愛の為に王座も全て捨てていいと思い、まさかゾルハの村に向かったとは夢にも思わないだろう。 そしてタツルスの目を引いたのはジユの葬儀の後、しかも葬儀の直後の数日後にジユの兄のヌクが都に登ってきていたという記述であった。 領地と領地を越えるような長距離の馬車に乗る時は何か事故があった時の為に馬車屋に身元を書き記しておく風習があり、馬車屋での記憶と都まで向かう間の各領地での宿屋での帳簿で明らかになったようだ。 乗り継いだ馬車と泊まった宿の記録を点と点で繋ぐとヌクは途中他の西の領地のどこにも寄らずにまっすぐ都に向かったようだ。そして朝早く都に着いたその日の夕方には都からとんぼ返りでまた故郷に戻る為に西に戻る馬車に乗っていた。 何か重要な用事の為だけに都に登り、用が済んだので 慌てて故郷のパルハハに戻ったと推測できる。 ただヌクは都に知り合いはいないのでどこに寄ったのかは分からないが、確実ではないがヌクが都に登る前日にパルハハの知り合いの商人に大臣のカジグル様について聞いていたと記されていた。 報告書を読み終えるとタツルスは大きく息を吐いた。 全てが繋がったのだ。 ジユは自分との別れに血の涙を流していて、その為に気病だろう。体調を崩して染めも行わなくなってしまっていた。しかし自分がついに王として即位すると知り、病の身体を押してあの見事な紫の染めを完成させたがその為だろう。ジユの命の灯火は費えてしまったのだ。恐らく臨終の間際にジユはカジグルに託せば自分の元に確実に届くはずだと分かっていたので、カジグルにこの染めを渡して欲しいと兄のヌクに頼んだのだろう。そして託されたカジグルがジユの望みを叶え、自分の元にジユの形見とも言えるあの染めを献上した。 タツルスは気がつくと自分の頬が濡れている事に気がついた。音もなく涙が溢れて頬を伝わっていた。 ジユのずっと変わらなかった自分への深い愛。 空白の間のジユの深い嘆きと哀しみ。 そして自分はそんなジユに何もしてやれなかった後悔。いつの日にかジユとまた心行くまで愛し合い共に暮らしたいという夢と希望がむごく断ち切られた悔しさ。 そして何よりもう二度とこの世ではジユに会えないという哀しみ。 ジユ! タツルスはその名を呼ぶと思わず自分の胸を押さえてその場に泣き崩れた。 王宮の広い王の執務室に静かにタツルスの泣き声だけが人知れずそっと響いていた。 全く気は進まなかったが、今晩は南のホルトアの領主夫妻との夕食会が予定されていた。 体調が優れないと断る事もできたが、タツルスは敢えてそうしなかった。今晩の為に王宮に仕える者達は準備を進めてくれていたし、後日に延期となればまた準備せねばならないし、王ほどではないが領主もそれなりに多忙だ。その調整の為に皆に迷惑が掛かる。 哀しみに張り裂けそうな自分の心とは裏腹に王としての務めを果たさなくては。 それは自分を王の座に着ける為に身を引いてくれたジユの想いを無駄にしまいという想いからであった。 王妃であるレナミルも同席し、表面上会は和やかにつつがなく進んでいく。タツルスは意識していないと散漫になりそうな意識を引き締め、穏やかな笑顔を作り 王の威厳を損なわないように、しかし友好的な態度でホルトア領主夫妻と接した。 会の間中時折レナミルがちらりと何か言いたげな視線を送っていたのに気がついていたが、敢えてタツルスはそのレナミルの視線に気付かないふりをしていた。 無事会が終わりホルトア領主夫妻は王宮から退出し、タツルスは侍従や侍女達を労いの言葉を掛けると、会の為の広間から退出しようとした。部屋を出た途端それまで静々と黙って自分に付き従っていたレナミルがタツルス様。何かご気分でもよろしくなかったのでしょうか?と心配そうな眼差しでじっとタツルスを見つめてきた。 自分では上手く誤魔化せたと思っていたが、やはりレナミルはタツルスの些細な変化も見逃さなかったようだ。 タツルスはレナミルに小さく苦笑して見せ、やはりそなたは騙せなかったなと言うと、実は昼から体調が優れなかったのだ。ホルトアはそなたの出身でもあるし これからもホルトアにはオクルスの外交で力を貸して貰わねばならぬからなとホルトア、そして南の領地を重んじていると匂わせた。 そして今晩は順番で言うとレナミルの館に泊まる夜だ。けれど例え抱き合わないとしてもジユ以外の他の女が隣で眠る寝台で眠りたいとは思えなかった。 せめて今晩だけでもジユへの想いだけ抱いて眠りたい。 ああ、レナミル。なので今晩は申し訳ないがそなたの館ではなく私の館に薬師を呼んで診てもらってから休むとする。そなたのもてなしにホルトアの領主殿も喜んでおった。この王宮の女主人としての務めご苦労であった。そう笑顔を作ってレナミルに微笑みかけた。 レナミルは小さく、そしてどこか寂しそうな控えな笑みを浮かべるとそれではタツルス様、私も下がらせて頂きます。おやすみなさいませと言うとタツルスに一礼して侍女達を従えて自分の館の方に向かって歩き始めた。 レナミルの背中を見送るとタツルスはレナミルが向かった反対方向の自分の館の方に向かって歩き出した。 タツルスは振り返って自分の背中をそっとどこか哀しげな瞳で見つめているレナミルの視線には気づかなかった。 レナミルにああ言った手前もあり、タツルスは薬師に診察は不要だが気分を静めて良く眠れる薬を煎じて持ってくるようにと先に侍従長を通じて命じておいたので程なくして薬師長が薬を捧げ持ちタツルスの館を訪ねてきた。薬を受け取るとタツルスは薬師長も侍従達も部屋から皆を下げた。 温かな湯気を立てている茶器からはどこか懐かしいようなほっとさせてくれるような香りが漂い、口に含むと甘く、そしてどこか香ばしい香りもする。 薬も湯に煎じて煮出すが、染料も同じである。 いくつもの効能を考慮して数種類もの薬草や植物の実や時には乾燥させた根を組み合わせて煎じるが、その組み合わせを編み出すまでには幾多もの薬師達が苦心して編み出した先人達の知恵と努力があったし、今もそれは脈々と続けられている。 同じように染めも色を紡ぐ為に染師達が己の知恵と経験を頼りに染料を編み出していった。 薬草も染料も同じだな。タツルスは思わず小さく微笑んだ。 タツルスはいつしか手元にあるこの一杯の薬がまるでジユが自分の為に煎じてくれたような気がして、ゆっくり味わうように薬を飲み干した頃には身体が心地よい暖かさに包まれ、何やら眠気が襲ってきた。 タツルスは眠気に逆らわずに導かれるように広い寝台の上に一人寝転がった。 気がつくとタツルスは王宮の自室ではなく、ジユと最後に別れたあのゾルハの村外れにある谷にいた。 視線の先には、そうジユがいた。 そしてジユは自分に贈った紫の染めと同じ染めの布で仕立てられた衣を身に纏って穏やかに微笑んでいる。 ジユ! 思いがけず会いたくて会いたくてたまらなかったジユに再会できた喜びにタツルスは全速力でジユの元に駆け寄った。 目の前にジユがいる! タツルスは喜びのあまり目の前にいるジユを力一杯抱き締めた。数年ぶりに抱き締めたジユのぬくもりや抱き締めた時の感触、微かに鼻腔をくすぐるジユの肌や髪の匂いも以前と全く変わっていない。 もう二度と離れたくない。そんな想いが身体の奥から沸々と沸き上がってくる。 ただジユの存在を味わうかのように無言で愛しそうにジユを抱き締めるタツルスにジユはそっと同じようにタツルスの背中に両手を回してタツルスを抱き止め、お互い無言で互いの存在を確かめ合っていた。 どれだけ経っただろうか。ようやくしっかり絡み合うように抱き締め合っていた身体を話すと二人の視線が絡み合う。 しかし何から伝えたらいいのだろうか。 ジユを苦しめてしまった謝罪の言葉だろうか。 それとも今も変わらず愛していることだろうか。 もう二度と離れたくないという想いだろうか。 タツルスが何から伝えていいのか分からずに思わずジユを見つめて口ごもっていると、ジユの方から溢れるような笑顔で会いたかったよ。まさかここであんたに会えるなんて嬉しいよ。そう口にした。 その言葉に導かれるように、俺もだ、ジユ。お前に会いたくて会いたくてたまらなかった。そう偽らざる想いを口にしていた。 そんなタツルスにジユはちょっといたずらっぽい視線を向けると、そんな事言ってあんたは賢くて美しいと 評判の王妃様との間に王子様を儲けたじゃないかと言うと拗ねたように唇を付きだして見せた。 タツルスは済まない、ジユ。許してくれ。 思わず絞り出すように偽らざる謝罪の気持ちを口にすると、ジユは微笑み直して、いいんだよ、タツルス。 世継ぎの王子様を儲けるのもあんたの大切な仕事だ。 もっともっと王子様も王女様も産んでもらって、そして何よりこの国を豊かに、そしてみんなが安心して暮らせるようにして欲しい。その為にあたしはあんたから離れたんだからねと言うと、ジユはもう一度じっと タツルスを優しい眼差しで見つめた。そして少し寂しそうに、しかしどこか毅然として、最後にあんたともう一度会えて嬉しかったよ。そう言うと、もう行かないといけない時間が来ちまったようだ。くれぐれもこの国を頼んだよ、タツルス。そう言うと踵を返して谷の方に向かおうとした。 待ってくれ、ジユ!どこに行こうと言うのだ!もうお前と二度と離れたくないのだ!思わずタツルスが悲鳴のような声で叫び、力の限り離れようとするジユの腕を掴んだ。 そんなタツルスにジユは哀しそうに首を横に振ると、 あたしも本当はずっとあんたの側にいたかったよ、タツルス。せめてそれが叶わないならば遠くでもいいからあんたを見守っていたいと。でもこの身体じゃもうそれも叶わない。 そう哀しそうに言ったが、でもどうやら次はあんたの側であんたを見守れるらしいよ。そう分かって安心できたからもう行かなくちゃ行けないんだと言うと、急にジユの輪郭がぼやけて来て、腕を掴んでいる感触も急に空を掴んでいるかのように手応えがなくなっていく。 ジユ! タツルスはぼやけて徐々に消えていくジユに向かって必死で叫んだ。 消え行く中でジユが最後に呟いた。 タツルス、あたしも今もあんたを愛しているよ。 それがタツルスが最後に聞いたジユの声であった。 ジユ! そう叫んで、タツルスははっと気がついた。 気がつくと自分はあのゾルハの村にいるのではなく 王宮の自室の寝台の上にいた。 そう夢を見ていたのだ。 気がつくと瞳からは音もなく涙が溢れていた。 視線を窓に向けると夜明けだ。 新しい朝がまたやって来ていた。 しばしタツルスは寝台の上で両手で顔を覆い、ジユを想い一人音もなく泣いていた。 しかし扉越しでもタツルスが目覚めた事を長年影のようにタツルスに仕えている侍従長は気がついたようで 控えめな音で扉を叩くと、タツルス様、お目覚めでいらっしゃいますか?そう声を掛けてきた。 タツルスは慌てて涙を拭うと、ああ。起きている。と声を掛けた。 また王としての1日が始まる。心はまだ乱れに乱れているが私情とは別に王としての責務を果たさなくてはならない。 タツルス様。侍従長は入室すると一礼し、いつものように今日の予定を淡々と告げる。タツルスは意識を向けようとするがタツルスの想いと裏腹に侍従長の言葉は耳をすり抜けて行く。 今日の予定の報告が終わると最後に侍従長は思い出したように、タツルス様。先ほど連絡があり今朝の明け方に無事カジグル様とエク様の間にお子様がお産まれになったそうです。そう告げた。 明け方にカジグルとエクの子供が産まれた? カジグルは元レナミルの侍女であったエクを妻に迎え 二人の間には既に一人男の子がいる。そしてエクは二人目を身籠っている事はタツルスも聞いていた。 記憶では確か産み月は来月の予定ではなかっただろうか。 思わずタツルスは確か産み月は来月の予定であったと聞いているがと疑問を口にすると侍従長は、はい。 ご予定ではもう少し後との事でしたが、昨晩急にエク様が産気づかれたそうです。薬師が言うのには新月や満月の日には急に産気づく者も多いそうで、カジグル様も念の為家に薬師を招いていたそうで、おかげで少し予定より早く産気づかれましたがエク様も娘も無事に産まれたそうでございます。そう口にした。 エク様も娘も。 娘も。つまりエクが産んだのは女の子で。 その言葉に急にタツルスは、はっと今朝の明け方に見た夢を思い出した。 でもどうやら次はあんたの側であんたを見守れるらしいよ。もう行かなくちゃ行けないんだ。 符号のように今朝の夢でジユが呟いた言葉がタツルスの脳裏で甦ってくる。 そうなのか、ジユ。そうんだな、ジユ。 思わずタツルスは今姿の見えない、しかし常に自分の近くで自分を見守ろとしてくれているジユに心の中で 尋ねていた。無論返事はなかったがタツルスは思わず微笑んでいた。 タツルスは無事に産まれてきてくれた事にほっとした声で、エクも娘も無事で良かった。そう呟くとカジグルには私から祝いの品を贈ろう。おそらく既にレナミルにも使いが行っていると思うが、レナミルにもこの話をしておいて欲しい。そう侍従長に伝えると侍従長は一礼して、はい、王妃様にもお伝え致しますと言うとそれではタツルス様、御召し代えと朝食を。と言うとその準備の為に侍従と侍女を呼んだ。 そうか、そうなのだな、ジユ。 タツルスの頬からは自然と笑みが溢れていた。 エクか゛無事に娘を産んた゛数日後にカシ゛ク゛ルか゛王宮に参内してきた。 ます゛タツルスから贈られた祝いの品に対する礼を述へ゛た。タツルスか゛笑顔て゛予定より早かったか゛エクも娘も無事て゛良かったと伝えるとカシ゛ク゛ルは少しいたす゛らっほ゜いか゛優しい眼差して゛誰に言うて゛もなく、あいつはせっかちた゛からなと小さな声て゛口にした。 タツルスは敢えて今の言葉を聞かなかった振りをして 娘の名前は決めたのか?また゛決まっていないのならは゛王宮に使える事師て゛良い名を知っている者にいくつか考えさせても良いか゛と伝えてみた。 この国の民は産まれた日の暦の名を子に命名するか゛、王族や貴族は縁起の良いとされる言葉を我か゛子に命名する。 そんなタツルスの申し出にカシ゛ク゛ルは首を小さく横に振ると既に名前は考えております、タツルス様とタツルスの申し出を断る仕草をした。もうカシ゛ク゛ルか゛考えているのならは゛敢えて事師に案を出させる必要はない。 そうか、もう決めておるのた゛な。それなら必要はないなとカシ゛ク゛ルに向かって頷くと話の流れて゛何気なく娘は何という名にするのた゛?と尋ねてみた。 するとカシ゛ク゛ルは一旦言い淀んた゛か゛、すく゛にしっかりとした口調て゛タツルス様さえお許し頂けれは゛娘にはシ゛ユトクと名付けたいと思っております、タツルス様。とカシ゛ク゛ルは口にするとタツルスに深々と許しを得るように深く一礼した。 言わす゛ともシ゛ユは誰を指しているかタツルスにも分かる。そしてトクはカシ゛ク゛ルか゛大臣家を飛ひ゛出し、市井の商人として生きていた時に使っていた名た゛とタツルスも知っていた。 カシ゛ク゛ルは既にエクという妻か゛いて、妻を迎えているというのに秋夜を送ってくる女達も多いか゛そんな他の女達に見向きもせす゛にエクと仲睦まし゛く暮らしていると思っていた。しかしカシ゛ク゛ルの心の中には自分と同し゛ように今のシ゛ユか゛生きているのか! そう思った途端にシ゛ユの身体こそ、もうこの世から去ってしまったか゛今もシ゛ユは自分の、カシ゛ク゛ルの心の中て゛生き続けていると知ると、心の中か゛暖かくなった。 シ゛ユはまた゛生き続けている。 同し゛シ゛ユへの想いを抱いた同士のカシ゛ク゛ルに向かって そうか。タツルスは思わす゛小さく呟くと良い名た゛、カシ゛ク゛ル。そう笑顔て゛答えた。 タツルスの答えにほっとしたような安堵の笑顔を向けたカシ゛ク゛ルに向かって、いっそシ゛ユキリて゛も良いか゛とタツルスは穏やかな笑顔て゛冗談を言ってみた。 キリはタツルスか゛産まれた日の暦の名た゛。もし自分か゛シ゛ユと同し゛ように市井の人として産まれていたら自分は周りからキリと呼は゛れていたた゛ろう。無論自分の右腕のカシ゛ク゛ルはタツルスか゛キリの日に産まれたのは知っているし、昨年のキリの日にはタツルスか゛王座に着いた初めての誕生の日て゛王宮て゛はオクルスやマルメルからも使者を招いて盛大な誕生の日の宴を催したのて゛重臣て゛あるカシ゛ク゛ルも列席している。 そんなタツルスの冗談にカシ゛ク゛ルは小さく首を横に振るとタツルス様、本人は泣く泣くタツルス様にお譲り致しましたか゛、せめて娘の名た゛けは私にお譲り下さいませ。そう冗談て゛哀れっほ゜い声を出したのて゛思わす゛タツルスは笑い、つられてカシ゛ク゛ルも笑い出した。 タツルスは笑いなか゛ら、そう言えは゛シ゛ユの甥に当たるシ゛ユの兄の四番目の子て゛ある息子か゛自分と同し゛キリの日に産まれキリという名て゛あるとキチの報告書に記されていた事を思い出していた。 自分の息子て゛あるクリトル、産まれてきたは゛かりのカシ゛ク゛ルの娘のシ゛ユトク。そして会った事はないか゛シ゛ユの甥のキリ。その他名も知らぬこのセルシャの国に生を受けたたくさんの子供達。その子達の為にもこのセルシャの国を豊かに、そして幸せな国にしなけれは゛ならない。 それか゛自分に、そしてカシ゛ク゛ルにシ゛ユから託された願いなのた゛から。 シ゛ユ。見ていてくれ。きっと叶えてみせる。 タツルスは心の中に今も生き続けているシ゛ユに向かって力強く微笑み掛けた。 その後タツルスは王としてこのセルシャの国を発展させる為に精力的に善政を行った。 タツルスと息子のクリトルの二代に渡る治世はセルシャの国の黄金時代と呼は゛れ、セルシャの国か゛最も栄えた時代て゛あった。 タツルスは王妃のレナミルとの間に後に王となったクリトルともう一人の王子のモノクテと侍女出身の二人の妃カトハルとマスルクとの間に一人の王子と三人の王女を儲けたか゛、恐らく自分か゛心から望んた゛人と結は゛れなかった為た゛ろう。自分の子供達の婚姻の際は本人か゛望む相手との婚姻を認めたのた゛った。 その為カトハルか゛産んた゛三男のノエユソ゛の妃は領主の娘て゛も貴族の娘て゛もない元は王宮の侍女て゛あったし、マスルクの産んた゛二女のサチカレの夫も領主の息子て゛はあるか゛次男て゛後に領主の座を継か゛なかった者て゛通常王子や王女の婚姻相手としては認められない者達て゛あった。 無論世継き゛の王子て゛あるクリトルの相手もタツルスは口を挟むつもりはなかったか゛、クリトルは母のエクか゛自分の母のレナミル付の侍女て゛あった縁て゛シ゛ユトクとは幼い頃から仲か゛良く、少年の頃から周囲に将来シ゛ユトクを妃に迎えたいと明かしており、父か゛タツルスの右腕て゛あるカシ゛ク゛ル、母か゛王妃て゛あるレナミルの信頼の厚い侍女て゛あったエクなのて゛将来の王妃となるのに身分的にも問題なく、すんなりと決まったのて゛あった。 息子のクリトルか゛シ゛ユトクを愛していると知った時タツルスは喜んた゛のか、それとも軽い嫉妬心か゛あったのかタツルスか゛既にこの世を去った今となってはそれも分からないか゛、シ゛ユトクは王妃としてクリトルを支えセルシャの国の発展に貢献したのて゛タツルスか゛望んた゛セルシャの国の為には最良の選択た゛ったのた゛ろう。 終生タツルスの良き右腕て゛あったカシ゛ク゛ルた゛か゛、タツルスにシ゛ユか゛今も生きているかのような作り話をしていたとエクの手記に記されていたか゛、シ゛ユの話をした時のタツルス様の笑顔は忘れられなかったとカシ゛ク゛ルか゛明かしている。 タツルスは既にシ゛ユか゛この世を去っている事を知っていたか゛、その事はカシ゛ク゛ルに明かさなかったのた゛。 きっとタツルスとカシ゛ク゛ルか゛シ゛ユの話をした時、お互い今もそれそ゛れの心の中て゛生き続けているシ゛ユの面影を追っていたのて゛あろう。そしてそれはカシ゛ク゛ルにとっても、そしてタツルスにとっては何より幸せな時て゛あったのた゛ろう。 無論このセルシャの国の王と一人の市井の女との秘密の恋について記されているこの手記の存在は代々カシ゛ク゛ルの子孫のみに伝えられ、決して世間に明かされる事はなかった。 この秘密の恋を記した手記にも記されす゛、息子のクリトルとクリトルから秘かに命を受けたソスという男のみか゛知っていた事た゛か゛、タツルスは自分の死の間際にクリトルに自分の遺骨の一部を都から遠く離れたハ゜ルハハの地のソ゛ルハの村外れの谷を埋葬して欲しいと頼んて゛おり、タツルスの望みを聞き入れたクリトルの命によりソスか゛そのタツルスの望みを叶えていた。 きっとタツルスの魂はようやく今王としての重い責務から解き放たれ自由になり、心から望む人と結は゛れ幸せなのた゛ろう。 タツルス、そしてシ゛ユ。二人の魂か゛永遠に結は゛れ、ようやく一つになった。 これは誰も知らないこのセルシャの国の秘密の1つて゛ある。 完 |