市場心理と行動ファイナンス
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投資における心理面の重要性
普段「自分はいついかなる場合にも理性的に行動する」と思っている人でも、例えば「株に投資したが100万円の損失になった」という現実に直面すると、
「よし一発逆転だ」とよりリスキーな投資に走ったりすることがある。また、多くの人は「一攫千金」を夢見て宝くじを購入したり、馬券を買ったりする。
しかし冷静に考えればわかるように、このようなギャンブルは胴元が購入者から集めた資金の何割かを受け取ってその残りを購入者に再配分するので、
期待利得は必ずマイナスになる。このように、行動の結果として金銭的な損得が絡むと、人々は客観的には正しいといえないような行動をとることがある。
このような投資における心理面の法則を把握しておくことは、投資のパフォーマンスを上げる上で極めて重要である。
自分の投資行動にどのような心理的要因によるバイアスがかかるかを常に意識しておくことが肝要である。
市場心理とは
「市場心理」は金融市場の振る舞いを左右する投資家やトレーダーの感情や感性のことを指す。それは投資意思決定や市場トレンドに影響を及ぼす一連の心理的要因を包含する。
市場心理には以下のような側面がある:
- 群集心理:これは金融市場に共通の現象である。投資家は独自の意思決定をするよりも他人のすることを真似る傾向がある。この振る舞いにより、人々が恐怖や欲に駆られて熱狂の中で金融商品を売買すると、市場バブルの形成や崩壊につながる。
- 恐怖と強欲:これらは市場心理に影響する強力な感情である。価格が下落している時に、恐怖はパニック売りにつながる。一方、価格が上昇している時に、強欲は過剰な買いや投機を誘発する。どちらの感情も不合理な市場行動に結び付く。
- 自信過剰:投資家は自身のトレード能力や市場予測において時々自信過剰になる。これはしばしばリスキーな投資や市場の警告の無視につながる。
- 確証バイアス:これは投資家が自分に都合の良い情報のみを集め、都合の悪い情報を無視する傾向をさす。このバイアスは投資家の視野を狭めて、最適でない投資判断を誘発する。
- アンカリング(係留効果):投資家は特定の価格の点や過去の値に固着しがちである。それは投資意思決定プロセスに影響する。例えば、投資家は株を損失となる価格で売るのをためらい、(市場条件が変化しているにもかかわらず)それを買った価格まで戻るのを待つ。
- 市場センチメント指標:「恐怖と強欲」「消費者信頼感レポート」といったさまざまなツールや指標が、市場の全体的なセンチメントを計測するのに用いられる。これらの指標は投資家が市場の支配的なムードを理解するのに役立つ。
- 心理学的取引戦略:トレーダーは市場の動きを予測するために、テクニカルやファンダメンタルズ分析と共にしばしば心理分析を用いる。これは市場トレンドや投資家行動の背後にある心理状況を理解することを含む。
市場心理を理解することは投資家やトレーダーにとって重要である。それは投資における感情的な意思決定の影響を認識し緩和するのに役立つ。これは金融・経済・心理学にまたがる分野であり、いかに人間の感情や認知が金融市場に大きな影響を及ぼすかを示している。
行動ファイナンスとは
「行動ファイナンス」は、「なぜ人々は非合理的な金融意思決定をするのか」についての説明を与えるための、心理学の理論と経済・金融を融合させた学問分野である。
- 心理的要因:行動ファイナンスでは、いかに心理的要因とバイアスが投資家や金融実務家の金融行動に影響するかを考える。これには恐怖と強欲や、自信過剰・アンカリング・確証バイアスのような認知バイアスを含む。
- 市場の変則性:伝統的金融理論では説明できない市場の変則性を探求する。これらには過剰なボラティリティ、大きな出来高、資産価格が必ずしも本質的価値を反映しない事実などがある。
- 経験則:投資家は意思決定をする際にしばしば経験則をよりどころにする。これは系統的な過ちやバイアスを生み出す。例えば、投資家は資産の将来パフォーマンスを予測するのに直近のパフォーマンスを強調しすぎるかもしれない (直近誤差)。
- プロスペクト理論: D. カーネマンとA. トベルスキーによって開発されたプロスペクト理論は、行動ファイナンスの重要なコンセプトである。それによると人々は収益と損失を別々に価値づけする。それは一貫性がなく時として不合理な意思決定につながる。例えば、個人はしばしば収益による幸福感よりもそれと等価な損失による喪失感の方が強くなる(損失回避)。
- 企業行動ファイナンス: この分野は企業内の管理者や財務役員の行動バイアスに焦点を当てる。それは投資・財務・配当支払い・M&A等の意思決定に影響する。
- 金融市場への含意:行動ファイナンスによれば、金融市場は常に効率的とは限らず、価格は投資家の行動により本当の価値から偏る。これは投資戦略・市場予想・経済バブルやその崩壊への含意を持つ。
行動ファイナンスは発展し続けており、金融市場が如何に理解され、投資戦略が如何に構築されるかについて顕著な影響を及ぼす。それは金融と心理学のギャップの橋渡しをして、金融意思決定のより包括的な理解を提供する。
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