このお話は、作者の純粋な楽しみのために書かれたものであり、 作中の登場人物や設定は、実際のものとは全く関係ありません。 また、彼らにまつわる著作権やプライバシーを侵害するために作ったものでもありません。 爪痕 abp 終章 出発 深夜二時。 私はあなたの部屋のドアをそっとノックする。 三回。 少し間を空けて、また三回。 それが私たちの合図。 すぐにあなたが、ドアを開けてくれる。 私は回りを少し気にしながら、あなたに肩を抱かれて、 部屋に入って行く。 久しぶりに会うあなたは、ちょっと強引だ。 まるで会えない時間を埋めようとするかのように、 奪うようなキスを繰り返す。 私も、それに応える。 もう後戻りできないことも、 彼の指に光る指輪のことも、 全て忘れて、私たちはお互いに没頭していった。 *** いつから、こんな関係が続いているんだろう。 自分の優柔不断さに腹が立つ。 一言、妻に言えばいいことだ。 好きな女性がいる、君と別れたい。 それを口に出すのは、本当に難しい。 妻を愛しているといえば、嘘になる。 本当は、もう愛情などなかった。 僕たちの間には、娘がいて、 僕は娘を心から愛している。 彼女のためにも、そして、自分のキャリアのためにも、 今は、妻と別れられない。 なんて、言い訳に過ぎないんだろうか。 街を歩けば、僕と妻と娘が仲睦まじく映っている 雑誌をいくらでも見つけることができるだろう。 心とまるで正反対の写真を。 僕は、長年ともに仕事をしてきた 女性を、心から愛してしまった。 誰にも言えない、知られてはいけない恋に、 踏み出してしまった。 ――――――でも、そんな日々も、もうすぐ終わる。 XFが終わる日は、僕たちの秘めた恋が成就する日だ。 僕たちが僕のトレイラーで想いを確かめ合った日を、 僕は一生忘れない。 僕は長い間ジリアンの気持ちは自分にはないと誤解していて、 彼女も僕の気持ちは自分にないと誤解していた。 その悲しい誤解が、まるで春を迎えて雪が溶けるように やさしく、お互いの体温で溶けた。 * ** 「行こう、ジル」 「どこへ?」 「僕の想いを、証明しに」 デビッドはジリアンの手を引いて、車に乗り込み 海沿いの瀟洒な白い家に彼女を連れて行った。 ジリアンは車から降りると、その家を見上げた。 「ジル、こっちだよ。ここは僕の別荘なんだ」 デビッドはジリアンの肩を抱いて歩きながら言った。 玄関を入り海に面した広いリビングに足を踏み入れた瞬間、 ジリアンは思わず声を上げた。 「素敵だわ」 「ありがとう。・・・ジル、ジル、愛してる」 デビッドは扉を閉めた途端、後ろから彼女を抱きしめた。 ジリアンは彼の抱擁に応えながら、涙を流した。 「こんな日が来るなんて・・・」 「僕も、夢にも思わなかった。 僕は君への悲恋を忘れようと必死だったから」 彼女の首筋にくちづけながら、デビッドは言う。 「ベッドへ行こう」 そう言って彼女を抱き上げようとしたデビッドを、 ジリアンは優しく制する。 「いやよ。あなたとティアが寝たベッドでなんて・・・ いやだわ」 デビッドは優しく笑って首を振った。 「ここにティアが来た事はないよ。 それどころかここの存在も知らない。 ・・・・一人になりたい時にね、よく来るんだ」 「あら、じゃあ私が来て良かったのかしら」 「君だけは特別だ」 デビッドは少し腰を屈めてジリアンを抱き上げた。 彼女は腕を彼の首に絡める。 「ねえ」 「ん?」 「ティアよりも、私を愛してる?」 デビッドは幼子を諭すように顔を近づけて、 彼女の額に自分の額をくっつけた。 「そんな、分かりきったことを聞かないで。 君より愛してる人なんて、この地球上にはいやしない」 「じゃあ、証明して」 「喜んで」 デビッドはドアを足で蹴り開けて寝室へ向かった。 愛し合った後の怠惰な時間は、二人にとって贅沢すぎる幸せだ。 ジリアンはデビッドの腕に抱かれながら、静かに涙を零した。 「泣かないで。僕まで悲しくなるよ」 「しあわせすぎて、勝手に涙が出てくるのよ」 「僕の想いは、証明できた?」 「ええ、十分すぎるほどにね。だから涙が出るの」 「君の想いも、この僕の背中の爪痕が証明してくれたよ」 ジリアンは、デビッドの体を裏返して、自分が夢中で残した 彼の背中の数本の爪痕に、そっとくちづける。 血こそ出ていないものの、紅く腫れていた。 「ごめんなさい。痛かったでしょう」 「全然。君の思いがどれだけ深かったか、身に沁みたよ。 ・・・嬉しかった。ずっと消えなければいいのに」 言ってデビッドは、ジリアンを後ろから抱きかかえた。 「またいくらでもつけてあげるわ」 「今度はもう少し爪を切って来てくれると、嬉しいんだけど」 「やっぱり痛かったのね」 「いささかね」 デビッドは後ろから、ジリアンの耳を甘く噛んだ。 彼女の甘い吐息に、彼を呼ぶ声が混じる。 「ねえデビッド・・・・」 彼は身を起こして、彼女の顔を覗き込んだ。 「なんだい?」 ジリアンはデビッドの方に向き直り、胸に顔を寄せた。 「無理は、しないでね」 「無理?」 「ええ。あなたは全てを捨ててもいいと言ったけれど・・・ それはきっととても、大変なことなのよ。 もしあなたが無理をしているのなら、私は・・・」 デビッドは溜息をついてジリアンを見た。 優しく微笑んでから口を開く。 「ジリアン、まだ遠回りするクセが抜けないの? 今目の前にある幸せは、僕らが自分の力で掴んだものだよ。 もう絶対に逃がしたりしない。誰を傷つけても。 約束するよ。僕がXFを降板したら、ティアと離婚する。 そして君と、結婚する。 XFを続けていれば、君とは結婚できないから。 きっと他の連中がうるさく言うだろうからね。 それまで少しだけ、我慢させるけど・・・」 ジリアンは美しく微笑んで、目を閉じた。 「今までの時間を思えば、そんなの一瞬だわ」 「確かにね。本当に長かったから。 最後に君を抱いたのは、いつのことだっただろう」 「そうね・・・5年以上は前のことね」 「でも僕は君の肌を覚えてたよ。どんな女性よりもすべすべで 僕の肌と相性がぴったりなんだ」 「それはあなたの常套文句なのかしら、女性を口説く時の」 「まさか。こんなこと恥ずかしくて君以外には言えない」 ジリアンは少し笑ってから、デビッドの胸にためいきを落とした。 「あなたのいないXFなんて・・・辛すぎるわ」 ジリアンは睫毛を伏せてそう言った。 デビッドは枕に肘を突いて、彼女の顔を覗き込んだ。 「ジル、そのことなんだけれど、僕は君から逃げたい一心で XFを降板すると言ったんだ。その時実は、このシーズンで 終わらせて、その後は映画にしないかとクリスに言われた」 「そうなの?」 「ああ。でも僕は・・・分かるだろ。君の側にいるのが辛くて 降板すると言ったんだから、映画にも出ないと答えた。 それでクリスは番組を続けることになったんだ。 でも今は違うよ。もう君の気持ちはここに在ると分かった。 僕がXFから逃げる理由はどこにもない」 「デビッド・・・じゃあ」 「ああ、これからは映画だよ」 「映画に出るのね」 「当たり前だろう。君と堂々と共演できるんだ。 きっとクリスはこのシーズンで終わらせるだろう」 ジリアンは大げさに溜息をついた。 「あなた中心にまわってるのね、何もかも」 「そんなことないさ。僕は我侭を言って困らせてるだけだ」 「まったくだわ。・・・でも、映画で続けるのはベストね」 「そうさ。映画の方がずっといい。モルダーとスカリーは両想いで テレビを終えて、愛し合う捜査官が主役の映画が始まるんだ。 映画だったらいくらでもラブシーンができるぜ。下品な言葉も言える」 「ふふ、私は何も知らなかったわ。あなたなしで続けるとばかり・・・」 「ごめんよ。何度謝っても謝りきれないね。 僕の我侭が、君を今まで何度も傷つけた」 「いいのよ。ひとつだけ、約束してくれるならば」 「なあに?」 ジリアンは一つ息を吸い込んで、デビッドを見た。 デビッドはその翡翠の瞳でジリアンを促す。 「もうどこへも行かないで。ずっとここにいて」 「もちろん」 「もう・・・もう、私を二度と不安にさせないで」 「誓うよ。きっとそうする。 君は何が欲しい?僕のこの誓いを表すために何が欲しい?」 「何も要らない。約束も要らない、形にしてくれなくても構わない。 デビッド、私の欲しいのは数えられるものじゃないのよ。 あなたの心よ」 デビッドは軽く笑った。 「なら、もう君にやってある。とっくの昔に」 それから彼らは、XFが終わる時まで、人目を忍んで会った。 それは思った以上に神経をすり減らさせるものであったが、 愛する人に会える喜びは、そんなものよりもずっと大きかった。 今までの長く辛い時間を消すかのように、二人は愛し合った。 時折、二人が晴れて一緒になれる日を待ちきれないデビッドが 苛立ったように愚痴をこぼすときも、 ジリアンは優しく笑ってそれを諌めた。 彼女にはもう、何も恐れるものはなかったから。 永遠に続くかのように思えた気の狂うほどの辛い日々も、 デビッドがくれる優しい言葉がすべて消し去った。 彼はもう、勝手気侭に飛び立って行く鳥ではないのだ。 ずっと彼女の側で、抱えきれないほどの愛をくれる。 その事実がジリアンを強くさせた。 ジリアンは、彼の言葉にいつも支えられていた。 今はデビッドを、心の底から信じられた。 忍んで会うホテルの部屋は、いつもしんと静かだ。 二人の発する言葉だけが、風を運ぶように浮かんでは消える。 「まいったな」 「なあに?」 「愚痴をこぼすのはいつも僕だ。早く君と堂々と会いたいって、 そうやって泣き言を言うのは僕ばかりだ」 「私は強くなったもの。昔は弱かったわ。いつも泣いていて、 スカリーが羨ましかった。彼女の強さが」 「僕は今でもモルダーの強さが羨ましいよ」 「でもね、知ってる?」 「何をだい?」 「モルダーとスカリーが、どうして強いのかを」 「それは・・・心が強いから?もともと強いんじゃないのかい?」 「いいえ。生まれつき強い人なんていないわ。 彼らは、側に愛する人がいるから、強くなれたのよ。 私もそうだわ。あなたが私を強くしてくれたのよ」 デビッドはじっと彼女の顔を見つめた。 「僕も強くなったよ。撮影中に君に抱きつかないで済むくらいには。 そういう点では男は、恋愛に関しては女にかなわないんだ。 普段は冷静で知的な僕も、君のこととなると・・・」 「取り乱してNGを連発しちゃうってわけね」 「それはまあ・・・君のせいだけじゃないけど」 ジリアンはひとしきり笑って、真面目な顔になった。 「・・・一緒に強くなりましょう、デビッド」 「ああ。君がいないと僕は弱虫だから」 「違うわ。弱虫は人を強くさせることなんてできないでしょう? 私はあなたのおかげで強くなれたんだから」 「ジル・・・・僕はもう、君を失うこと以外は、何も怖いものなんてないよ。 これって強いってことかな」 「そうね。きっと、そうよ」 デビッド単独の降板を待たずに、XFは終了することになった。 モルダーとスカリーは思いを確かめ合い、 残されたいくつもの謎は、映画に引き継がれる形となった。 これで、時間に拘束されることなく、思う存分に XFの世界を構築できる。 それは誰もが望んだ展開だったに違いない。 全ての撮影が終わった日、デビッドとジリアンはまずクリスに打ち明けた。 「僕たち、結婚しようと思うんだ」 少し照れたようにデビッドが言うと、ジリアンも微笑みを浮かべる。 クリスは笑って、言った。 「僕が気付いてないとでも思ってたのか?」 二人は驚いてクリスを見る。 「ずっと前から、イライラして見てたんだ。 いつこの二人は、思いを通じ合わせるのかってね」 「クリス・・・」 「おっと、僕を責めないでくれよ。僕は傍観者だ。 君たちは自分自身でこの幸せを勝ち取ったんだ。 僕は初めから何も言うつもりはなかった。 自分達でお互いの想いに気付くまで、そっとして置こうと思った」 デビッドは嬉しそうに笑って、クリスを抱きしめた。 「この、根性悪!」 「良き理解者と言ってもらいたいな」 「クリス・・・あなたは私達を、軽蔑しないの?」 「軽蔑?どうして?」 「だって色んな人を傷付けるわ・・・」 「仕方ないだろう。人を愛する気持ちは何より強い。 それを引き離す方が罪だ。・・・・幸せにおなり」 デビッドにはもう一つ仕事が残っていた。 ティアに別れを告げること。 家へ向かう足取りは重かったが、彼の気持ちは変わらなかった。 ドアを開けると、はいはいをして愛しい娘がやってきた。 デビッドは優しい目で彼女を抱き上げ、キスをした。 そして、ティアの待つ部屋へ入って行った。 「おかえりなさい、デビッド」 「ティア・・・」 「今日でXFの撮影も終わったのね。お疲れさま」 そう言って笑顔を見せるティアに、デビッドは静かに言った。 「・・・別れて欲しい」 ティアはデビッドから娘を抱き上げた。 「ようやく言ったわね」 「・・・・」 「待つのも案外疲れるものだわ。 あの子でしょ、あなたの長年の相棒」 「そうだ。僕はジルを愛している。 ティア、済まない・・・本当に悪いと思っている。 でも僕は彼女を愛している。もう嘘はつけない」 きっぱりと言ったデビッドを、ティアは見つめた。 「あなたは最初から、ジリアンを愛していたわね。 いつかの授賞式で彼女を見るあなたを見たとき、 全てを悟ったわ。あなたがあんなに自棄になっていた訳を。 あなたは彼女の恋人を、殺しそうな眼で見てた。 そしてジリアンを彼から奪うように、キスをしてた。 あの日から私は、全て知っていたのよ。 でも、自分から別れようなんて、絶対に言ってやらないと思ったわ。 あなたがジリアンとの恋に破れて、ぼろぼろになって帰ってきたとき、 その時私は冷たい声で、別れましょうって言ってやろうと思ってた。 それが私に出来る唯一の復讐だと思ってたわ。 でもあなたは、彼女の愛を手に入れたのね。 ・・・私は復讐の機会を失ったってわけね」 デビッドと目を合わせようとせず、ティアは言った。 彼はティアを愛娘ごと抱きしめた。 「きっと僕は一生、君とこの子への罪を背負って生きていくよ。 この子が僕の愛する娘であることに変わりはないし、 君も、僕にとって大切な人だ。これからも。 君には言葉で言い尽くせないほど感謝している。 君に出会わなかったら、僕は多分どうなっていたか分からない。 僕を立ち直らせてくれたのは君だよ」 「でもあなたは立ち直って、ジリアンの元へ行くのね」 「・・・・・・」 「幸せになってなんて言わないわ。でも不幸になればいいとも思わない。 私をふったんだから、それに見合うだけの人生を送ってちょうだい」 「幸せになる。約束する」 「もうこれ以上女性を泣かすんじゃないわよ。 あなたほど罪深い男もいないわね」 ティアはそう言って笑って、デビッドを抱きしめかえした。 デビッドも思いを込めて、彼女の髪を撫でた。 彼女の細い肩が震えているのを、デビッドは見ない振りをした。 それが最後の、優しさだと思った。 「・・・早く行って」 「ティア、ありがとう。幸せに、なって欲しい」 「たまにはこの子を見に来てやって」 「もちろんだ」 ティアは後ろを向いた。 デビッドはその背中に、そっと呟いた。 「さよなら、ティア。ありがとう」 XFの終了を記念して、盛大な打ち上げパーティが開かれた。 キャストやスタッフはもちろん、マスコミも大勢参加していた。 主役の二人は美しく着飾って、フラッシュを浴びていた。 二人とも終始しあわせそうな笑顔を浮かべて、人々は その美しさに溜息をつくのだった。 クリスがグラスを持ち、乾杯の音頭を取る。 「ここにいるみんなが愛してやまないこの素晴らしい番組に、 そしてXFをこんなに愛されるものにしてくれた、 主役の二人に、乾杯!」 あちこちでグラスのぶつかる音があがる。 デビッドはジリアンのグラスに自分のグラスを合わせた。 「ジル・・・綺麗だね。今までで一番に綺麗だ」 「デビッド・・・」 ジリアンの瞳がもう潤み始めるのを見て、デビッドは笑った。 「本当に君は泣き虫さんだ。・・・待ったかい?」 「ええ、とても長いこと待ったわ。もう待てない」 「僕だって、もう待てない。今日がその日だよ」 壇上ではクリスのスピーチが続いている。 “それじゃ、主役の二人に登場してもらおう、デビッド、ジリアン!” クリスの声が二人を呼ぶ。 「行こう」 デビッドはジリアンの手を取って歩いて行く。 マイクの前に立ち、二人は微笑んだ。 大きな拍手が二人を迎える。 デビッドはにこやかにマイクの前に立つ。 「僕たちが今までこのショウを続けてこれたのは、 ここにいるスタッフを始め、応援しつづけてくれたファンの皆のおかげです。 僕も彼女もこのショウを通して、かけがえのないものをたくさん手に入れました。 この素敵な“陰謀”に参加できたことを、心から光栄に思います」 笑いが巻き起こる。 ジリアンも笑いながら、マイクの前に立つ。 「私がこのショウに出会えたのは、神が下さった奇蹟です。 スカリーに励まされたことも数え切れません。 7年一つの役を演じたことは、私の大きな自信です」 そう言ってジリアンは、スピーチを終えようとした。 しかしデビッドは、またマイクに近づいた。 怪訝な顔でジリアンは彼を見た。 「デビッド?」 「僕たちがXFから得たものは、それだけじゃない。 もっと素敵なものも、手に入れたんだ。 生涯愛しつづけられるかけがえのない人を見つけた」 会場がどよめく。 「僕はジリアン・アンダーソンを愛している。 モルダーとスカリーのようにドラマチックな恋は出来なくても、 彼らよりもずっとずっと深く、愛し合っています。 ここにいるあなたたち全員が証人だ。僕らの愛を証言してくれ。 もうすぐ僕らは、結婚します」 「デビッド・・・!」 驚いて彼を見たジリアンの腰を抱き、デビッドは その唇にくちづけた。 一瞬会場は水を打ったように静まり返り、少しして 割れんばかりの喝采が二人を包んだ。 「ありがとう。この次は映画で会おう。 モルダーとスカリーのラブシーンは期待しといてくれよ。 地で演じてみせるからね」 そう言って、デビッドはジリアンの肩を抱きながらステージを降りた。 その間中、ずっと拍手は鳴り止まなかった。 ジリアンは涙が止まらなかった。 色んな人からの祝福を受けながら、二人は歩いた。 眩しいカメラのフラッシュがあちこちで光る。 おりしもデビッドが先日離婚を発表したばかりだったので、 このパーティにはいつも以上にマスコミが押し寄せていた。 そして先ほどのよだれが出るようなスクープに、記者達は目の色を変えている。 「本当に結婚されるんですか!?」 「いつからそういう関係だったんですか!?」 「ティア・レオーニは何とおっしゃっているんです?」 矢継ぎ早に繰り出される質問に、デビッドは一言で答えた。 「僕たちは愛し合っている。他にどんな答えがある?」 僕が君を振り返れば、君はいつでも微笑んでくれる。 いつでも君の愛が僕を支えてくれる。 それ以上に確かなことが、この世の中にあるだろうか。 迷ったり悩んだり、回り道をしたけれど 僕は今ようやく、一番大切なものを手に入れた。 眩しいフラッシュの中で、デビッドはジリアンの耳に囁いた。 「愛しているよ、ジル」 「デビッド、あなたって・・・」 「僕が何だって?」 「大胆なのね」 「これだけ待ったんだ、少しくらい派手なことをしたって 罰は当たらないさ。それに楽しいだろ?明日の見出しを想像するの」 「モルダーとスカリー、結婚って?」 「きっと一面のトップだ」 「大統領選よりすごいニュースかもね」 「そうさ、ブッシュやゴアが泣いて悔しがるぜ」 フラッシュの中で微笑む二人はもう、モルダーでもスカリーでもなかった。 Fin やっと本当の あとがき ようやく、ようやく、ようやく終わりました。 ここまでお読みくださった皆様に感謝します。 最初で最後のデビジリFicは、思いの外長いものになってしまいました。 なんだか話しの流れもこじつけという感じで、 見苦しい点も山ほどありますが・・・。 XFの終わり方は、私がこうだったらいいなーと思うものを書いてみました。 時間の流れなど、かなり無視してますが、お許しください。 少しはDDを情けない男から脱出させられたでしょうか? 実は、序章の文は、最初二人の不倫関係に 重点を置いて書こうと思っていたのでこうなったんですが、 書いていくうちに不倫の場面はほとんどなくなってしまって 本章と関連のないものになってしまいました。 だから終章で慌てて序章の文をこじつけてみましたが はっきり言って全然つながってないですね。 まああの序章は見切り発車ということで(笑)、ご容赦ください。 最後になりましたが、このFicにインスピレーションを与えてくださった Eveさんはじめ、裏Ficライターさんたちに感謝いたします。 そしてこの長い長いお話にお付き合い下さった方々、 本当に、本当に、本当にありがとうございました。 abp verytime@infosea.zzn.com