X-FILESの著作権は、FOX、1013に帰属します。
当作品は、事実に基づいて作られたフィクションです。←S1調(笑)
Xファイルがまだ始まったばかりの頃、君はいつも怯えていた。番組の視聴率が上がり、
世界中で放映されるようになった頃、FOX TVのお偉方や番組のスポンサーが撮影を見に
来た時、君は僕のシャツを掴んで離さなかった。
「大丈夫だよ、Gillian。いつも通りにやるんだ。」
僕が震えている彼女にそういうと、僕を見上げて、少女の様に弱々しく微笑んで、さらに
僕のシャツを強く掴んだ。
君を理解できるのは僕だけ。そう思っていたから・・・だから君から妊娠をうち明けられ
たときはショックだった。
「お願い、誰にも言わないで」
君は泣きながらそう言ったね。そして僕は約束した。君がきちんと自分で話すんだ。それ
までは僕は誰にも言わないよ、と。 君はそれまで一人でずっと張りつめていたんだろう。
僕が約束した途端、君は僕の腕の中 で泣き出した。きみとヤツがつきあっていたと知って
いる者は一部だったし、まさか本気だとはそれこそ思っていなかったのに。
僕はその頃、色んな女性と楽しんでいた。ステディな恋人もいるにはいたが、別に恋人で
あろうがあるまいが構わなかったんだ。美しい女性なら、手当たり次第に寝た。愛する、
なんて感情は誰にも湧いてこなかったし、無縁だとさえ思っていた。だが僕は君をかわい
い後輩と思って見守っていた。だから女としてみたことなんて一度もなかった。
君が妊娠するまでは。
君はヤツと結婚し、娘を産んだ。君にうり二つの美人だ。幼いPiperは僕にもなついてくれ
ている。僕はそれでも分からなかった。自分の本当の気持ちに。
あなたは私の頼れる父であり兄であり先輩であり、そして憧れの人だった。困ったときは
電話をした。泣きたいときは胸を借りた。あなたがいたから、わたしは今までスカリーで
いられたのだ。わたしとはまるでちがう、器用な女、スカリー。どんな弱い感情もその小
さな体に押し込めて、全てを自信というエネルギーに変換できる彼女に。
あなたは私には遠い人。憧れの先輩。男性としてみたことなんて一度もなかった。彼の娘
を身ごもったとき、私はあなたの胸でいつもの様に泣いた。結婚して娘を出産して数年後
に夫と別れたとき、やっぱりあなたが傍にいてくれた。
でもそれでも私は分からなかった。自分の本当の気持ちに。
Long Way by Eve
謝辞: DD/GA妄想暴走仲間、七草さまFicタイトル命名。
心より感謝致しております。m(_ _)m
Draft 2 as of 19th Sep. 99
1.
二人が初めて結ばれた夜、Davidは言った。
「ジル、愛しているよ」
私も勿論答えた。
「私も愛しているわ」
二人が愛という言葉を口にしたのはあれが最初で最後だった。
「今つきあっているTeaとは別れるよ。そして、君と・・・」
将来の約束した翌日の夜、あなたは電話をくれた。
受話器の向こうで押し黙るあなたに、私は何となく彼の次の言葉の検討がついていた。
そしてあなたは私の予想通りのセリフを言うの。
「Teaが妊娠している」
2.
「David、お嬢さんの誕生、おめでとう。」
「ありがとう、Gillian。」
「今度こそ・・・ほんものね。」
「・・・・・」
Gillianからの出産祝いのプレゼントを手に受け取って、Davidは久々にGillianに笑顔を
向けた。
「Teaが妊娠したから結婚する。」
そう彼に言われてたった一度の夜だけで終わってしまった二人。Teaの妊娠はゴシップ雑誌に流れ、
インターネットのメーリングリストでもどんどん広がっていった。愛していないTeaとつきあってきた
自分の愚かさをひきずったまま、Teaの知名度を考えDavidは婚前妊娠の噂を否定した。
時間は人に癒しを与える。
「妊娠説は嘘だった。遊び呆けていた、あのDavidが腰を落ち着けたため、そんな噂が流れただけ。」
と、噂の中身は 変わっていった。
妊娠がTeaの嘘だった事が分かったのは二人が結婚した後だった。
でもその時は遅かった。GillianはDavidを忘れるためにつきあっている男性がいたし、
ちょうどシーズンオフを迎え二人は会えない日が続いたこともあり、互いの心は離れて
いった。
3.
あれはいつの事だっただろう。
自分の本心にすら嘘を言い聞かせていたと、二人同時に気付いた日は。
リハで半年ぶりにあった日。広いリハルームは満員で熱気がむんむんしていた。
それなのに、彼らは二人きりだった。お互いしか見えなかった。
いけないこと・・・・。小学生だってわかること。
Gillianには娘がいた。Davidには妻と娘がいた。
けれど愛し合いながらも別れた二人は、もう誰にも止められなかった。
Davidのやさしい声が、切ない愛撫が彼女の理性をうち砕く。
ベッドでの幸せの絶頂の中、彼女はすすり泣いた。
それが愛される幸せのせいなのか、PiperのためなのかTeaのせいなのか、
もう思い出すこともできない。
再会し、お互いの気持ちが不変であった事を確認しあった夜から、
Xファイルの撮影があろうが無かろうが、多くの時間を一緒に過ごすことが
当たり前になってしまった。
4.
私たちはいつも思っていた。
モルダーとスカリーが寝ないのは不自然だ、と。
あんなにも愛し合う二人が何故、嫉妬と拒絶を繰り返すのか?
お互いの気持ちなんて当に分かり切っているはずなのに。
私たちが愛し合った朝は、罪悪感が伴う。
彼らにはそんな障害もない。
「愛し合う者同士がいつも結ばれるとは限らないのに。あなた達は何の 障害もないのに、何故?」
それは私たち二人の叫びだったのかもしれない。
日の光の下で結ばれることを許されない私たちの。
そんな朝は、わたしはいつも彼の胸で泣いた。 彼は私の髪にキスを繰り返し黙って抱き寄せるだけ。
けれど私は知っていた。 彼もまた泣いていることを。
5.
「Cut!」
Chrisの声で私は現実に引き戻された。現実って・・・別に眠っていたわけでもないのに。
彼の声のあと、スタッフが全員、別の彼に走り寄る。
「お疲れさま、David。これで全シーン撮影終了だ。」
「よかったよ。最高だった。」
人混みの中で最高の笑顔を振りまくあなた。
とうとうこの日が来てしまった。
分かっていた。覚悟はできていた。だから平気。
そう・・・平気。
スタッフに挨拶をしたあなたが、私の所に近づいてくる。
「Gillian、長い間世話になったね。」
「David。次の撮影からあなたがいないのは寂しいわ。」
「君のこれからの活躍を期待している。躰に気を付けて頑張ってくれ。」
「えぇ、あなたも。」
あなたはそれだけ言うと、別のスタッフに挨拶に行ってしまった。
私の心には大きな、埋めることなどできない大きな風穴が空いてしまった。
6.
母に預けてある娘に電話をかけた後、Gillianは久しぶりにタバコを吸った。
ニコチンを肺に吸い込んで煙だけをゆっくり吐き出すと、タイミングよく電話の音。
Gillianは火を消して、電話にでた。
「Hello.」
「ジル、僕だ。」
「David?どうしたの?」
「今、ロケでシカゴに来ている。」
「シカゴ?」
「君の生まれた街だろ?今から来れないか?今仕事はないはずだよね?」
「えっ・・・ええ。」
もう会わない方が良いのに。Gillianはそう思いながらも、二度と聞くこともないと
思っていた声が聞こえて、やはり喜んでいる自分に気が付く。
「来て・・くれないか?」
これは多分、彼の最後の「お願い」。
Gillianは短く答えると、シャワーを浴び、パッキングを始めた。
7.
撮影を終えたDavidが空港に迎えに来てくれて、GillianはDavidが泊まって
いるホテルに向かった。最上階のペントハウスだ。
「今日はちょっと冷えるね。温かいワインでもどう?」
「いただくわ。」
海辺に現れた白い粉雪ががペントハウスのテラスに一つ流れ込む。
それはあまりに儚げで、Gillianのシフォンのドレスの裾を、やさしくはためかした。
雪が降るほどの気温のはずなのに、不思議と寒くはない。
「スカリー」
「David?」
「愛しているよ、スカリー」
その瞬間あなたの気持ちがあふれ出す。
私たちの周りの景色も空気も、何もかもが動きを止めた。
だから私もこう言うの。
「私も愛しているわ、モルダー」
だが、彼らはモルダーとスカリーではなかった。
Davidは大きな手でGillianの白い頬をそっと包み込む。
その手があまりに大きくて優しくて切なかった。
優しい声で、モルダーと同じこえで、彼はささやいた。
「プロポーズできなくてごめんよ。」
絶望の淵を歩いている私たちに、あなたはその言葉でまた救いをくれた。
「もう何万回もしてくれているわ。」
Gillianの柔らかなピンクの唇に姿を隠したDavidの言葉は、白い粉雪と一緒に彼女の肩に降りて消えていく。
モルダーとスカリーなら良かったのに。
彼らなら結婚できる。幸せな家庭だって持てる。
私がスカリーならダイアナなんて目じゃないのに。あんな過去の女。
例えモルダーの昔の女だろうが、前妻だろうが、構わない。 だって二人は結婚してハッピーエンドになれるんだから。
スカリーは本当に馬鹿な女・・・。
どうして私たちはモルダーとスカリーじゃないのだろう?
もう7年も彼らとして生きていたのに。
何も答えないGillianを、Davidは彼女の細い躰が砕けてしまうかと思うほどの力で
抱きしめた。
「ジル」
彼はGillianの細い顎をしっかりと掴んで持ち上げる。
「泣かないで、ジル」
「そんなのムリよ。」
「こうするしかないんだ。」
「わかっているわ。これ以上一緒にいるのは辛すぎるもの」
「何を言ってるんだ?」
Davidは彼女の躰を離し、顔を覗き込んだ。
「もう、私と一緒にいたくないんでしょ?だから・・・番組を降板したのでしょ?」
「ジル?」
「私がバカだったのよ。気が付くのが遅かったんだわ。」
「僕もだ。」
「わたしが・・・降りるべきだった。なのに、あなたは私のために」
「誤解してるようだね。僕は君と別れる気はないよ。」
「えっ?」
Gillianは驚いてDavidを見上げた。
「Xファイルを降りたのは、君と続けていくためだ。」
「どういうこと?」
「僕たちがこのままの関係を暖め続け、娘が成長し僕が将来離婚する時、もしまだお互いの気持ちがかわらなかったら、僕は君を妻にしたいと思っている。でも、このままXファイルで君と仕事を続けていたら、君との関係は続けられない。そうだろう?」
「・・・ええ。」
「君はどこかの雑誌に本音を漏らしていたじゃないか。僕との関係は複雑な ものだ、って。」
「あなたが降板するという噂を聞いた直後だったし、疲れていたから、つい。バカな事を言ってしまったと後悔しているわ。でもハッとしてすぐ笑顔を作ったの。雑誌には笑顔で載っているはずよ。」
「でも、どんな男が良いのかって記者に聞かれたときの君の答え。あれはまさに僕だな。ばらすつもりかと思ったよ。」
Gillianがいたずらっぽい声で笑い出す。
彼は笑い上戸な彼女の、この声が聞きたくてあの手この手で仕掛けてくるのだ。
「自信家ね、David。」
「当然だろ?君のお眼鏡に適うのは、この世で広といえども、僕一人だけだからね。」
8.
Davidはやさしく笑って、彼女の肩を抱いた。
「ねぇ、ジル」
「なあに?」
「Xファイルが終わって、世界中のファンが僕らを忘れた頃、いきなり僕たちが結婚したなんて報道されたら、どうなるかな?」
「きっとみんな喜んでくれるわ。だって本編じゃ、そうなりそうもないもの。」
「モルスカ結婚、なんて見出し、でるかな?」
「きっと出るわよ。」
DavidはGillianのふくよかな胸を手で包み込んだ。
「シフォンのドレスっていいね。男が脱がせたくなるためのドレスだな。」
「あなたが去年、バースデーに買ってくれたのよ。」
「それを着た君を、脱がせたかったんだ。」
「モルダーなら、絶対そんなセリフは言わないわよ。David。」
「だって僕はスカリーの恋人じゃない、Gillian Leigh Andersonの恋人だからね。」
冷えた小さな体をその腕に軽々と抱き上げると、Davidはテラスから部屋に戻っていった。
これからの二人を祝福するかのように、やわらかな雪がやさしく降り続けていた。
End
【Eveの回想録】
不倫だけは大嫌いで、「マジソン群の橋」なんて私の大嫌いな作品の典型だけど、今回はFicということで現実逃避!(笑)
今のところ現実にはそうじゃないけれど、でも私の中では あの二人は愛し合っていて、 でもタイミングの悪さでうまく行かず、ってことになっているので、私の妄想そのままの FanFicにしたかったのでした。
「子供が大きくなってから」というのは道徳的な意味合いではなく、今現在、現実には カップルじゃない二人の理由を付けたかっただけ。
だめだ・・・倒錯の世界に入っているわ、わたし。現実をFanFicで理由付けして 自分の妄想を正当化しようとしている。危ない状態だぁ〜。(笑)
Hope you enjoyed.
Love fm Eve
追伸
作品中、二人の会話に出てくるインタビューの話は、雑誌「ビデオでーた」に掲載されたGAのものです。