************************************ CAUTION=必ず、お読みください=  X-Filesの登場人物・設定などの著作権は全てクリス・カーター、1013、 20世紀FOX社に帰属します。  また、この作品はすべて作者個人の妄想のであるFictinであり、実際の人間関 係を何ら示唆するものではありません。この作品について不愉快な思いを抱かれ る事がありましても、あくまで個人の趣味という事でご容赦ください。 ************************************ TITLE 『8月8日』 AUTHOR 今日子 DATE  12/AUG/2000 ************************************  夜の気配が身近に迫るころ、Gillianはリバーサイドにたたずむホテルに足を 踏み入れた。そしてそのまま、真っ直ぐにエレベーターに向かい、日差し除けと いう本来の目的なら、もうとうに必要のないサングラスをようやくはずす。  扉が開くまでのほんの数秒に間に、そのミラーになっている扉に映った、少し 乱れた髪を手櫛で整える。そう、これから逢う彼のために・・・。  一人でエレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押すと、彼女はそのまま小 さな箱の、右側にもたれかかり”ふっ”っと溜息を吐いた。  安堵と罪悪感・・・そして・・・。 ”一年に一度だけ・・・それでいい。それでいいって、二人で決めたから・・・。だか ら、どうか今日の二人を許して・・・。”  それは、神への祈りなのか、はたまた二人を取り巻くすべての人への懺悔なの か、自分でもわからないままに彼女は心の中でつぶやいた。  彼から知らされている部屋をノックすると、中から扉のレンズを覗いている気 配が伝わる。 ”It's me.”Scullyのいつもの台詞を口にしたくなるが、そう思うまもなくドア が開き、彼女は強く腕をつかまれ、部屋に引きずり込まれた。  彼は、そのまま彼女の唇をふさぎながら、練習したのではないかと思うほど、 器用に片手でドアのロックとチェーンをかける。 「痛いわ、David。」そう言いながらも、彼女はオレンジがかった赤い爪が映え る指を彼の背中に滑らせる。 「僕の一年分の心の痛みだよ。」 「ひどいわ。私だって痛いのに・・・。」 ささやきながらも、唇は互いに求め合う・・・。 「そうだな・・・ごめんよ、Gillian。」 「いいの。何も言わないで・・・。」 ************************************  部屋には、すでにディナーのルームサービスが用意されていた。シャンパンを 注ぎながらDavidが言った。 「昨日は、何人もの人と乾杯をしたけど、僕がうれしいのは今からのだけだよ。」 「私は明日、何人もの人と乾杯しないといけないのに。」 Gillianは、艶やかに微笑んだ。 「一日早い、お誕生日おめでとう、Gillian。」 「一日遅れの、お誕生日おめでとう、David。」 「今年も、残念ながらプレゼントは無しだよ。」 「いいわ、わたしが望んでそう決めた事なんだから。」 ”・・・そうよ、私が望んだの・・・。だって、私のプレゼントを彼女の目から隠さな いといけないでしょ、David。それが、辛いの・・・。” 「誕生日が、2日違いでよかったわ。」 「どうして?」 「シーズン1の頃、二人分が一緒に祝えて安く上がったわ。あの頃は、まだお金 もなかったし・・・。」 「あぁ、そうだな。」 「そして、今はお互いに大切な人ができても、真ん中の日なら、いつまでも会え るでしょ。誕生日気分のままで。」 「もう、そろそろ誕生日って年でもないんだけどね。・・・恋人できたの?」 「できたら紹介するって言ったじゃない。」 「今夜は、僕がいるよ。」Davidは少し上目遣いに彼女を見つめた。 ”ったく、誰が最初に、小犬顔なんて呼んだのかしら・・・。ScullyはMulderの小 犬顔に弱いなんて・・・。違うわ、この顔に弱いのは彼女じゃなくて私ね。” 「どうしたの?食べないの?」 Gillianの食事が進まないのに気づいたDavidが聞く。 「うん、なんか食欲なくって・・・。」 「ルームサービスのフルコースなんて、冷めてしまえばどんなに高級なものでも 美味くはないよな。」 「そんなことはないわ。美味しいわよ、David.」 「だけど、いつか二人で食べた出来立てのパスタの方が美味かったろ。」 Gillianは、数年前”一度くらい外で二人で食事がしたい!”とわがままを言っ た事があった。Davidは、目立ちもせず、それほど高級でもないが、格別に美味 しいパスタを食べさせてくれる店を探して、彼女を連れていった。 「それはそうね。美味しかったわ、あの店は。」 「僕も、もう、満腹だ。どう?シャンパンは、まだ入るかい?」 「えぇ、いただくわ。」 「じゃぁ、こっちで飲もう。」 そう言って、Davidは窓際のソファーへと彼女をいざなった。 「そう言えば、どうしてこのソファー窓の方を向いているの?」 Gillianは、普通なら部屋の中央へ向いているはずの、椅子を見て彼に聞いた。 「いいから、座って、Gill。もうすぐだから。」 彼は、シャンパンを手渡しながら微笑んだ。 「もうすぐって、何・・・!」 ドンドンドン!!! Gillianが、何があるのか聞こうとしたとたんに、対岸に花火が上がった。 花火は、様々な色を夜空に描きだしている。 「さぁ、座ってゆっくり見よう。」 「知らなかったわ、今日ここで花火が上がるなんて・・・。貴方知ってたの?」 「まぁね。」 二人は、ソファに腰掛け、もう一度乾杯をした。彼は、彼女の腰に腕を回し、耳 元に口づけた。そして、そのまま、首筋に唇を這わせる。 「ん・・・David・・・見ないの?花火・・・きれいよ。」 「花火も見たいんだけどね。君の方が、きれいだから・・・。」 「バカ・・・。」そう言いながら、彼女の息が少し上がる・・・。 彼は、最初の内はチラチラと花火を横目で見ていたが、彼女の体温が上がるにつ れ、その唇は激しく、彼女を求めた。 「Ah...David.」 Gillianが思わず、自分から唇を重ねようとするのを、彼は制して言った。 「駄目だ。君は、花火を見ていて。見ていて欲しいんだ。」 「どうして?」 「緑の大きな花火が上がったら、教えて、Gill。」  それは、不思議な時間だった。夜空を彩る光を見ながら、彼の愛撫に耐える彼 女は、まるで自分が空中に放り出されたような感覚にとらわれた。  その時、夜空にひときわ大きな花火が上がった。最初ブルーの閃光が後半に更 に鮮やかにグリーンに変わる。 「David,見て!最高にきれいだわ。」 彼は、その花火をちらっと見ると、急に彼女の手を取り、窓際に引っ張っていっ た。 「どうしたの?」 「最後は、仕掛花火のはずだからね。」 そういう間もなく、対岸に光の文字が浮かびあがった。 ”HAPPY BIRTHDAY TO GILL” 「たまには、こういうプレゼントならいいだろ、Gill。」  彼女は、しばし呆気に取られたように、彼と花火を交互に見つめたが、その大 きな瞳からいつのまにか、涙が溢れ出していた。 「David,今までの人生で、最高の誕生日プレゼントよ。」 二人は、どちらからともなく、熱いくちづけを再び深めていった。                                 Fin.   ************************************    本当は、8月8日に間に合えば良かったのですが、ちょっと間に合いませんでし た(^^ゞ。急いで書いたので、あんまり内容はありませんね(笑)。また、機会が あれば、デビジリ書いてみたいと思っています。  私が、誰だか分かった方、メールください(笑)。                        By 今日子