X-FILESの著作権は、FOX、1013に帰属します ジリアンちゃんお誕生日記念Fic(のつもり・・・)です。 『 I'll Always Be Right There 』      by Marine 今日も撮影は長引いている。 この分では終わる頃には空が明るくなっているのだろう。 女優なんて一見華やかな世界に見えるけれど、とんでもない。 これは立派な、そして過酷な肉体労働だ。 もうすぐ一日の変わり目になるというのに、こうしてスタジオに 拘束されて同じシーンを何度も何度も繰り返し演じている。 もう長いこと続けている仕事だけれども、ふと疲労感に襲われる。 特に今日は初めて出演する若い俳優が何度もNGを出している上 クリスもなかなかOKを出さない。次第にみんなが苛立ってくる のが分かる。 .......こんな時Davidがいてくれたら.......... 以前なら雰囲気が重苦しくなってくると、すかさず彼がジョークを 言ってみんなを笑わせてくれたのに・・・・・・・ と、その時、突然スタジオのライトが落ち、真っ暗になった。 「!? 何? 停電?」 急な暗闇に目が慣れずその場に立ちすくんでいると、やがて、 ざわめくスタジオのあちらこちらからぼうっと揺らめく灯りが 灯り始めた。 「?」 私にはまだ何が起こっているのか把握できなかった。    「Happy Birthday!! Gillian!!!」 クリスがそう叫ぶと共に一斉にクラッカーが鳴らされた。 「!!!!」 驚きのあまり声を出せずにいると、スタジオの隅からロウソクが 灯されたバースディケーキがスタッフに抱えられてきて私の前に 止まった。 「みんな、、、、、、」 「さぁ! ジリアン願いごとをしてくれるかい? できればこの シーズンも高視聴率が取れますようにって願ってくれると嬉しい んだけどなぁ」 クリスの言葉にみんながドッと笑った。 「ありがとう。。。 じゃあそう願うことにするわ」 そう言ってしばらく目を閉じたあとロウソクに息を吹き掛けた。 「おめでとう! ジリアン!!」 あちこちから上がる祝福の声。 そしてスタジオに眩しい光が戻ってきた。 「驚いたかい?」 「もちろんよ! 私すっかり自分の誕生日のこと忘れてたもの。」 「だろう? 私の計画は成功って訳だ! ホントはね、、今日の 撮影が長引いたのも計画の内なんだ。おっと、怒らないでくれよ。 順調にいくとみんなで君のバースディを祝えなかったから、少々 イジワルしてOKを出さなかったんだ。ごめんよ。」 「もうっ クリスったら。。。 でも、すごく嬉しいわ! ホントにみんなありがとう!!!」 「お誕生日おめでとう!ジリアン」 そう言って次々にスタッフからプレゼントを手渡される。 私の為に遅くまで残り、クリスの計画に加担することを快く承諾 してくれた愛すべき仲間たち。。。 花束やプレゼントの山に埋もれながら私は思わず涙をこぼした。 「さぁ これは僕からのプレゼントだよ。」 そう言ってクリスが差し出したのは見事なカサブランカの花束と ひまわりの花束だった。 「ふたつも?」    「ひまわりはモルダーから預かったんだ。。。」 そう耳打ちするとケーキの周りに集まっているみんなの元へと 歩いて行った。 .....David.....  愛しいその名前を胸の内でつぶやくと新たな涙が溢れた。 結局その日の撮影はそれでおしまいとなった。そして次の日も (と言っても既に今日になっていたが)クリスの一身上の都合 とやらにより突然のオフと決まった。 それは彼らしい2つ目のプレゼントだった。    撮影中いつも利用するホテルに戻ったのは午前1時を30分程 過ぎた頃だった。 フロントでキーを受け取りエレベーターへ乗り込む。 ボタンを押そうとした時、信じられない人物が滑り込んできた。 「!!!!!」 唇に人さし指を当てると何食わぬ顔をして箱の隅へ移動した。 私は扉を見つめ、お互い見知らぬ同士の振りをした。 何故ならこのエレベーターには第3者の目、防犯カメラが設置 されていたから。      ......遅い。 このエレベーターはこんなに遅かったかしら? じりじりした気持ちで数字を見上げる。 ようやく最上階に着き箱から出ると、足早に部屋へと向かった。 もどかしくドアを開け彼を招き入れる。 「Happy birthday Gill.......」 腕に抱えていたひまわりの花束ごと抱き締められた。 「david.....」 「どうしても君と二人で君の誕生日を祝いたかったんだ。。。」 「でも、、、」 「・・・彼女はMadelineを連れて撮影に行ってる、、、」 「そう・・・・・」 いけないという気持ちと嬉しいという気持ちがないまぜになり 私は泣き笑いの顔になってしまった。 「ほら、またそんな顔する。。。 今日は君の誕生日なんだよ。 君が主役なんだから笑って・・・・・」 「ん、、、」 そうね。今日だけはもう何も考えないようにするわ。 「シャンパン持ってきたんだ。パーティーしよう!」 そう言って紙袋からごそごそとボトルを取り出す。 「じゃあ少しだけ待ってて。シャワー浴びたいの。今日の撮影も ハードだったから、、、」 「OK ゆっくり浴びておいで」 彼はそう言ってくれたけど、一分一秒がもったいなくてゆっくり なんてしてられなかった。 手早くシャワーを浴びると髪を乾かしバスローブを着た。 だがさすがにこのままの姿で彼の前に行く訳にはいかない。 私達は長年連れ添った夫婦ではないのだから・・・ ワードローブの前で何を着ようか迷っていると、彼がひょっこり 顔を出した。 「まだ?」 「・・・だって、何着ればいいのか分かんなくて、、、、」 「もうこんな時間なんだよ。シャワーの後はバスローブのままで いいんじゃないのかい? 僕だってこんなにラフな格好だしさ。 それにパイロットのエピを思い出してゾクゾクしないかい?」 強引に腕を取られてリビングへと向かった。 テーブルの上には軽くつまめるようなスナックと小さなケーキが 乗っていた。 「どうしたの? これ」 「ルームサービスだよ。シャンパンだけじゃつまらないだろう?」 「あなたが注文したの!?」 「大丈夫。今夜はポールがいてくれてる。彼なら信用できるだろ?」 ポールはこのホテルのかなり上のクラスに位置する人物で、一流の ホテルマンだった。客のプライバシーを漏らすようなことは絶対に しない。だから私達はこのホテルを定宿にしているのだ。 今夜は彼がいてくれたからDavidもここまで来れたのだろう。 「そうね。彼なら、、、、」 「よし。じゃあここに座って。栓を抜くよ?」 「あ、ちょっと待って」 私はあわててバスルームへ行くとひまわりの水切りをして、大きな 花瓶にそれを生けた。そしてうやうやしく捧げ持ちテーブルの上に 乗せた。 「ありがとう。David ひまわりって大好きなの」 「あぁ。君の誕生花だろう? 太陽に向かって真直ぐに伸びる所が まるで君みたいだ。明るくて、見てるだけで幸せになれる所も…」 「あなただってこの花が誕生花なのよ。。。」 そう言ってから後悔した。 私は2日前の彼の誕生日に何もしてあげてなかったから・・・ もちろん以前は必ずプレゼントをあげて二人でお祝いをしていた。 でも、彼が結婚してからはカードすら送ってなかったのだ。 「ごめんなさいDavid..... 私あなたの誕生日に何もプレゼントして あげてないわ。 遅くなったけど、、、お誕生日おめでとう、、、」 「そんなこといいんだよ。40にもなった男はプレゼントなんて 必要ないんだから。だって自分の年齢を思い知らされるからさぁ。 ・・・それに、君がいれば僕は欲しいものなんてないんだ。」 「David......」 また潤みそうになった私のまぶたに彼は優しくキスするとにっこり 微笑んだ。 「さ、今度こそパーティーの始まりだ」 シャンパンの栓を景気よく開けてピンク色の液体をグラスに注ぐ。 「おめでとう。君のこれまでと君のこれからに乾杯、、、」 「あなたにも、、、おめでとう。。。。」 気の利いた言葉が浮かばず、それだけを言うと小さな泡をたてる つめたいそれを口に含んだ。甘くてどこか切ない味がした。。。 しばらくお互いの仕事について語り合った。 XFを離れ自分のやりたい仕事が見つかった彼はとても嬉しそうに 新しい仕事のことを話している。 本当は彼のいない現場が寂しくてしょうがなかったけれど、それは 口に出さずにいた。 彼の為にも、そして私達の為にも彼の選択が 正しかったのだと思っていたから。でも彼が『だけどさぁ、すごく 変な気持ちなんだよ。隣に君がいないとしっくりこないんだ。プロ としてはマズいんだろうけど、偽らざる気持ちなんだ。』と言って くれた時は正直ものすごく嬉しかった。 「あ、そうだ。 ねぇ、ケーキ食べたくない?」 唐突に彼がそう言い出した。 「え? ええ。そうね。せっかくあなたが準備してくれたものね」 本当はもう入りそうになかったけれども、小さなケーキに書かれた Happy Birthdayの文字と彼の笑顔を見ると断る事は出来なかった。 「じゃあ君が切り分けてくれないか?」 「あら、主役にそんなことさせるなんて、サービス悪いわね」 「まぁまぁ。 僕が切るとぐちゃぐちゃになりそうだからさぁ」 「あはは それもそうね。 じゃあ切るわよ。」 まず半分に切り分けようとナイフを入れると、真ん中の辺りに固い 感触がありナイフが先にすすまなかった。 「? 何か入ってるのかしら? 中に何か固いものがあるの」 「フォーチュンケーキなんじゃないのかい?」 「フォーチュンケーキ!? なにそれ〜 ヘンなのぉ〜」 私はゲラゲラ笑いながらも必死にナイフを動かした。既にケーキは 無惨な様相を呈してきた。 「あーあ。 下手くそだなぁ〜 よし。僕が切ってあげるよ」 ナイフを奪われ、彼が慎重にケーキを切るのを笑いながら見ていた。 「ほら! やっぱりフォーチュンケーキだったよ。中におみくじが 入ってる。 さすがに汚れないように箱に入ってるよ。じゃあさ、 目をつぶって!」 「え〜〜〜? すぐに見たいわ」 「ダメ。 ほら、つぶってってば。」 「うふふ 分かったわ。 なんだか子どもの頃みたい〜」 彼は私の手を取るとそれを掌に乗せた。 ・・・・この手触りは・・・・・・・・ 「目を開けてもいいよ」 そこにはベルベットの小さなケースに収まった指輪があった。 「・・・・・・・・・」 「ポールに頼んでたんだ。君が帰って来る前にこのケーキに仕込んで くれってね。すごくいい仕事してくれただろ? 君の薬指に合わせてある。 このオリーブグリーンが、時々見せる 君の瞳の色に似てる気がしたんだ。8月の誕生石だって聞いたし…」 彼は私の左手の薬指にそっとその指輪をはめた。 「今はまだ君に正式にプロポーズできないけど、、、何年先になるか 分からないけれど、、、君にこれからも辛い思いをさせてしまうけど 、、、、、それでも僕は将来君と一緒になりたいんだ。自分勝手な男 だけど、僕の今の正直な気持ちだ。。。 受け取ってくれるかい?」 私は視界が曇って行くのを止められないまま深くうなずいた。 「裏にLOVE D って彫ってある。スカリーが元恋人に贈った時計の エピのパクリだけどね。」 「こんな時に笑わせないで、、、、」 「僕はいつも一緒にいられないけれど、、、この指輪が僕の代わりに いつでも君のそばにいるよ。。。」 「David..........」 「Gillian... 愛してる」 まっすぐに私の目を見つめ、力強く、まるで宣誓するかのように愛の 言葉をくれた。それは何よりも欲しかったバースディプレゼント。 「私も、、、いつでも、あなただけを愛してるわ、、、、 素敵なプレゼントをありがとう・・・・最高の誕生日だわ、、、、」 「Gillian やっぱり僕にもバースデープレゼントをくれないか?」 「何が欲しいの?」 「君」 私はゆっくり立ち上がると彼の手を取った。 「私はタダだわ。あなたからのプレゼントと釣り合わないわよ?」 「君はこの世で最高の宝石だ。 何ものにも代え難い最高の・・・・」 彼は私を軽々と抱きかかえるとベッドルームへと歩を進めた。 私達の上で夜はその蒼さを深めていった。                              END ********************************* ハラヒリホレ・・・ やっぱり暗さが滲んでしまいました。ーー; ジリアンちゃーんっ 誕生日おめでとう〜〜〜〜〜〜〜〜〜! こんなモン書いてしまってごめんねっっっっ これからもその美しさで私達を魅了してください。     Maline