"DISCLAIMER: The characters and situations of the television proguram ""The X-Files""" " are the creations and property of Chris Carter,Fox Broadcasting and" Ten Thirteen Productions. Auther: Mebius Spoiler: Non Title:  I will 一部キャラクターが引用されていますが、これはあくまでも作者の想像によるもので、 事実とはかけ離れております。 ******************************************************************************* 「打ち上げにいかないか?」 「今から?」 まるで、Mulderのように唐突に口に出してしまった。 きっと、彼女は断ってくる。 そう確信していた。 「どこで?」 自分で言っておきながら、帰ってきた返事にちょっとびっくりした。 折角の彼女の気持ちが変わらないうちにと、自分の車にいざなう。 運転している間、助手席に座った彼女はじっと前だけを見詰めていた。 口を開こうとしない彼女に、話し掛けるだけの言葉が見つからず運転に専念した。 お互いに話すこともなく到着したのは、僕の部屋。 。。。。。かつて、何度も彼女が訪れた部屋。 「噂になるわ。。。」 「何が?」 僕の言葉に顔を上げると、僕を見詰めた。 一瞬、戸惑ったような表情をしていたが、ため息をつくとソファに座り込んだ。 あたりを初めて来たかのように、見回していた。 キッチンに向かう背中に、声が聞こえた。 「あまり、変わってないのね?」 「ああ、変える気もないしね。」 彼女が最後にこの部屋に来たのは、一体何時のことだっただろう???? 問いかけが、僕に幸せだった過去を思い出させた。 そんな物思いを振り切り、彼女に声をかける。 「外だと。。。うるさいとおもったからさ。」 「。。。。David、今の方がよっぽど噂になるわ。」 「僕は気にしないよ。」 その言葉に安心したわけでもないのだろうけれど、彼女はそっと頷いた。 言葉を捜すように、睫を伏せたままでいた。 用意していたシャンパンを持ってくると、気を引き立たせるように派手な音を立ててあける。 「さあ、打ち上げだよ。乾杯だ。」 彼女は、ちょっと戸惑った表情のまま、僕からグラスを受け取った。 静かな部屋に、泡のはじける音だけが響いていた。 時間が止まったように感じられる。 僕達は、しばらく見詰め合っていたのかもしれない。 泡の音がしないことに気が付くと、ステレオのスイッチを入れた。 静かな部屋に、ゆるやかな室内楽の音が満ちていった。 気を取り直して、向かい合うとグラスをかざした。 「お疲れ様、そして新たなシーズンのために。」   にっこり笑うと、自分のグラスをそっと僕のそれに合わせた。 「お疲れ様、あなたが無茶をしないように。」 「なんだい?それは。僕はMulderとは違うよ。」 「そうかしら?もう一人のあなたなんじゃないの?」 くすくすと笑いながら、グラスを口に運んでいる。 そうだ、7年もやっていれば彼らのことは自分の一部になってることなんて、お互いにわかっていた。 でも、彼らとは違う。 「そういうところも、あるかな。」 彼女の隣に腰をおろすと、グラスに口を付けた。 何を話すでもなく、もちろん見詰め合うでもなく、ただただ黙ったまま前を見ていた。 そんな空間をピアノの音が静かに埋めていった。 僕達はそれに包まれていた。 かつてのように、会えば求め合っていたときとは違う安らぎにも。 「ねえ、」 「ん?」 「もう帰らなくちゃ。」 「来たばかりじゃないか?」 「。。。。」 そう、君の戸惑いはわかってる。 今の僕達の状況ではありえないことだから。 決断してしまった僕に何も怖いものなどなかったけれど、唯一怖いものがあるとすればそれは 彼女の反応だった。 「もう少しだけ。。いいだろ?」 「わたしは、Scullyとは違うわ。Mulderの言ってることをあんなに聞いていられないもの。」 口調とは反対に、席を立とうとはしなかった。 僕は彼女の方にそっと向き直った。 まっすぐ前を向いたままの、冷静な表情を見詰め続けた。 「何?」 「いや、我侭を聞いてくれてありがとう。」 「いやね。」 向き直ると苦笑しながら、僕を見詰める。 ふと、いつもつけている彼女のコロンの香りが鼻をくすぐった。 仕事以外でこんなに近くに彼女を感じたのは、何年ぶりだろう。 そしてその香りは、いつも僕を狂わせた。 「ちょっと。。。。David。苦しいわ。」 気が付くと、僕は彼女を抱きしめていた。。。。無意識のうちに。 少し掠れたような声が、自分の胸元から聞こえてくる。 柔らかな彼女の身体を抱きしめながら、自分がとても安心していることに気が付いた。 離す気なんかさらさらない僕は、更に抱いた腕に力を入れる。 次の瞬間、彼女が身体の力を抜いたのと同時に僕の背中にそっと手が添えられた。 「やっぱり、あなたとMulderは似てるわ。それを許してしまっているんだから、私もScullyに 染まってしまったのかしらね。」 「長い付き合いだからね、彼らとは。。。。僕は、もう慣れたよ。」 「。。。。」 「Gillian、話があるんだ。」 抱きしめたまま、耳元に呟くとびくっと身体が震えた。 耳元に顔を寄せたまま、彼女の反応を確かめていた。 どれだけ、そうしていたのか?彼女の声にふと我に返った。 「David、やめて。。」 「何が?」 「だめよ、言ってはいけないわ。。。。やめて。。。。」 「。。。。。。。」 僕が言おうとしたことは、彼女によって封じられてしまった。 永遠にもう告げることはできないのだろうか? 「お願いよ、それ以上。。。。」 抱きしめられた腕から逃れ様ともせずに、彼女は呟いたあと涙をこぼした。 白い頬をすっと流れた涙が、言わずとも全てを語っている。 長い睫が揺れると同時に、ゆっくりと瞼が上がり僕を見た。 涙で潤んだ蒼い瞳が僕の心を覗きこむように、僕をしっかりと見据えた。 瞳の中に強い意志があった。 「君に会えたことは、運命だと思ってる。」 「。。。。。。。。」 そう、君を諦めることなんてできるわけがない。 今の状況を差し引いたとしても。 すでに、僕は自分の本当に気持ちを知ってしまった。 でも、君は? お互いに回した腕をほどこうともせず、僕達はただただ抱き合っていた。 何も言葉を交わすこともなかったけれど。 僕を見詰めるたびに、涙をこぼす彼女の頬にKissをした。 まわされた腕に力がこもる。 抱きしめられた反動で目の前に差し出されたようなふっくらした唇に口付けた。 懐かしい感触に我を忘れる。。。。。 そう、僕にとって大事なのは君だけ。 手に入れるためだったら、何でもできる。 「David。。。。」 僕の胸をそっと押し返すと、唇がはなれて再度見詰めあう。 すでに乾いた蒼い瞳をじっと僕に向けると、わななくように唇が動いた。 「。。。。ごめんなさい。」 「何を謝るんだ!君が悪いわけじゃないだろ。」 そう、悪いのは周りの状況を省みない僕だ、君じゃない。 お互いの気持ちを封じ込めるように、ただただ抱き合っていた。 ふと、気が付くと流れていた曲は、『I will always love you』。。。。。 しっとりとしたその曲を聴きながら、お互いの鼓動を確かめ合う。 そして、過ぎ去った日を。 乾いたはずの蒼い瞳から、再び涙が零れ落ちる。 まるで、スローモーションのように。 「踊らないか?」 唐突な僕の言葉に一瞬びっくりしながら、涙をたたえたままの瞳でにっこりと微笑んだ。 彼女を抱いたままCDを探し当てると、プレーヤーをONにする。 抱き合って、お互いを見詰めたままソファから立ち上がると、彼女の手を取った。 もう片方の手を腰に回して、更に抱き寄せた。 首に回された白い手の感触。 曲にあわせて、静かに身体を揺らす。。。。。 まるで永遠のように時が過ぎていく。 何度もリピートする曲にあわせて、ただ寄り添っていた。 時間が過ぎることも、お互いの立場も全て意識の外にあった。 寄せ合ったお互いだけが、全てだった。 「愛してる。。。」 彼女の方にそっと頭を持たせかけると、呟いた。 首に回した腕がこわばるのに気が付いたけれど。。。。 答えを求めるつもりはなかった。 お互いの気持ちは、わかっていたから。 急ぐ必要はないのだ、ということも。 俯いたままの彼女の頬にそっと口付ける。 恐る恐るあげられた視線の中に、自分と同じ感情を認めて安心する。 そう、急ぐ必要はないんだ。 。。。。。。。I will always love you. 歌詞の内容とは違う未来があることを信じて。 。。。。。Fin