"DISCLAIMER: The characters and situations of the television proguram ""The X-Files""" " are the creations and property of Chris Carter,Fox Broadcasting and" Ten Thirteen Productions. Auther: Mebius Spoiler: Non Title: Gin Tonic 一部キャラクターが引用されていますが、これはあくまでも作者の想像によるもので、 事実とはかけ離れております。 ******************************************************************************* ドアを開けると海に落ちようとする夕日が一杯に差し込んでいた。 ペンキをぶちまけたような、部屋に踏み込むのを少し躊躇した。 「ふっ」 少し息を飲み込むと足を前に進める。 キッチンに行き大きめグラスにGordon Ginを注ぎ多目ののTonic Waterで割った。 冷蔵庫の隅にあったライムを少し加え、グラスを持ったままリビングに向かう。 まだ、残る夕日を眺めながら、乾いた喉に流し込んだ。 ふと香る、微かなオレンジの香り。 「こんな時間から?関心しないわね。」 グラスを手にする私の横で、腕組みをするもう1人の私がいた。 Dana Scully…もう7年も演じているもう1人の私。 ただのキャラクターというよりは、私の良心といえるかもしれない。 「困った人ね。」 あきれたように言う彼女に苦笑しながら、グラスを口にした。 あまりアルコールを取ることの無い私が飲むときは、決まって彼のことを感じたときだ。 撮影現場を去るときに、精一杯の演技で彼に声をかけた。 どんなシーンだってあんなに緊張するものではない。 でも、それを彼に気付かれてはならなかった。 自分の演劇キャリアをかけて、本当の自分を押し殺す。 出口に向かうとき、入り口近くに愛犬とともにたたずむ姿が見えて瞬間から。 自分が自分ではなくなった。 愛犬に微笑む彼の柔らかな表情が。 まなざしが。 そして、その端正な横顔を見た瞬間、私の意識は遠くに飛んだ。 近付いていく私に彼は気が付いている。 恐ろしいほど彼を意識している私には、それがわかった。 だけど。 「お先に、David。」 私の口からやっとの思いで絞りだされたのは、月並みなセリフだった。 一刻も早くその場を去ろうとしていた私の背中に、彼の視線が突き刺さった。 痛みを感じたのは、私だけだったのだろうか? 「TeaもMadelineもいるのよ。私にも・・…」 何時も繰り返し唱える呪文のような言葉を思い出す。 彼は忘れようとしているだろうけれど、一時的に私達は恋人同士だった。 本編の中では中々結ばれることの無い2人だが、演じている私達には区別が既に つかなくなっていた。 彼には相手がいて、私にも気になる相手がいて、私達は単なる共演者のはずだった。 「また、思い出してるの?」 「ちょっとね。」 「そうかしら?」 「Mulderと愛し合っているあなたにはわからないわ!」 Scullyにあたるつもりはなかった、彼女は私の分身なのだから。 しかし、きつい口調で言われても、彼女にはひるむ様子は無かった。 「だから、あなたにも」 「いいの。」 思わず彼女の言葉をさえぎると、カウチに座りこんだ。 撮影の疲労がアルコールであぶり出されてきたようだ。 快い疲労が足元から、這い上がってくる。 カウチに疲れた頭を預けると、目を閉じた。 ******************************************************************************* 「Gillian。ちょっといいかな?」 「な、なにかしら?」 遠い記憶がよみがえる。 遠い? 役と自分が混乱していた頃を。 そして、彼を愛し始めたときを思い出した。 ふと頬を伝う感触に手を寄せると、自分が涙を流してることに気が付く。 涙? 懐かしいから?彼を忘れられないから?もう、遅いと感じているから? 何度も自分に問い掛けてきた言葉は、「どうして。」 どれもが私には、当てはまるように思えた。 止まることなく流れ落ちる涙に、自分が彼を愛していることを思い出す。 普段はあらわすことなく、心の奥底にしまっている感情が溢れ出した。 「本当に、素直じゃないんだから。」 自分のことを棚に上げた彼女の言葉が、心に突き刺さった。 彼女に言われなくても、とっくに気が付いている。 「彼を愛しているわ。ずっと。。。」 「。。。。別にあなたを責めてる訳じゃないの。」 そう、どんなときでもScullyは私のことを理解してくれている。 いつかこの気持ちに結末をつけることが出来るのだろうか? 結末? まだ涙は、止まらなかった。 すっかり温くなってしまった、Gin Tonicをテーブルに置くと、シャワーを浴びるために 立ちあがった。 窓の外には、星が輝きはじめていた。 。。。。。Fin