"DISCLAIMER: The characters and situations of the television proguram ""The X-Files""" " are the creations and property of Chris Carter,Fox Broadcasting and" Ten Thirteen Productions. Auther: Mebius Title:  Champagne 一部キャラクターが引用されていますが、これはあくまでも作者の想像によるもので、 事実とはかけ離れております。 ******************************************************************************* 「行ってきま〜す。」 「気を付けてね、楽しんでくるのよ。」 娘が母とともに出かけていくのを見届けると、すこしガランとしたリビングに戻った。 1人であることが、なんだかとても寂しく思える。 まだ、昼にも早いことを考えるとちょっと気が咎めたが、昨日の残りのシャンペンをグラスに 注ぐと、リビングのカウチにゆったりと身体を伸ばした。 ガラスの窓から見える青い芝生に眼をやりながら、冷たくちょっと気が抜けたシャンパンに 口を付けると、喉を微かな刺激が滑り降りていく。 明るい日差しに照らされながら瑞々しく光る芝生から、目を離せなかった。 どの位そうしていたのか、気が付くと遠くで車が止まる音が聞こえたような気がする。 忘れ物でもしたのかと、起き上がりドアに向かうと途中でベルが鳴った。 母なら鳴らすわけがないと、ちょっと不審に思いながらドアに近付くとそっとスコープを 覗き込む。 スコープは、真赤に染まっていた。 「?」 チェーンをかけたまま、そっとドアを開ける。。。。。 そこには、思ってもいなかった人が立っていた。 「David?!どうしたの、いったい?」 質問には答えず、スコープを真赤に染めていた紅い薔薇の束を私に差し出した。 重く甘い薔薇の香りが私を包んでいく。 まるで、夢のような瞬間。 薔薇を受け取ろうと手を差し出すと、その手を強い力で引き寄せられた。 バサッ 音を立てて薔薇がホールに落ちる音を、私は彼の腕の中で聞いたような気がする。 静寂な午後。 今の状況が、現実離れしているような気がした。 白昼夢? 強く抱きしめられながら、そんなことを考えていた。 「夢じゃないよ、Gill。」 耳元で甘く囁く声が聞こえる。 これは現実なの? 夢見ごこちの私の顔を覗き込んで微笑む彼の表情が、抱きしめる暖かい手が、 夢ではないことを私に教えていた。 「どうしたの?いったい。」 驚いて同じ言葉を繰り返す私を見詰めるポーカーフェースが、どんどん近付いて来る。 気が付くと私の唇は塞がれていた。 まるで自分のものだと言わんばかりに、私の唇を奪う。 なのに優しく暖かい。。。。 安心できる温もりに包まれながら、終わることのないKissに応えていた。 一体どの位時間がたったのか? 新鮮な空気を求めてお互いが離れるまで、周りの時間は止まっていたらしい。 玄関のホールが薔薇の香りで溢れていたことが、短い時間でなかったことを示す。 彼は私を抱く手を緩めると、床に落ちた薔薇を拾い上げて、私に差し出した。 「Happy Birthday、Gill。」 「。。。。ありがとう。そして、あなたも。。。」 今度こそ花束を受け取ると、彼を空いた腕で強く抱きしめた。 とびきり紅く、私を祝うように咲き誇る薔薇の香りに酔いそうになる。 「Happy Birthday、David。とても、うれしいわ。」 「ちゃんと年の数は有ると思うよ、ちょっとおまけして余計にあるけどね。」 ウインクすると、私の頬にKissをした。 「でも。。」 「直接、渡したかったんだ君に。」 そう、会いたかったのは私も同じだった。 お互いの置かれた状況を考え、思わず俯くと唇が髪に寄せられる。 「こんな日の高いうちから、いい香りをさせてるじゃないか?」 「これは、昨日の。。」 「まさか、一人で祝ってたんじゃないだろ?」 唇に残ったシャンペンの香りに気がついたのだろう。 からかうように笑いかけた。 「平和な休日を祝ってたのよ。」 「?」 「母があの子を連れていっちゃったから、わたしが疲れてるみたいだって。」 「。。。じゃあ、疲れてるところ悪いけど僕に時間を割いてもらえるかな?」 「だって。。」 「Birthday Partyだよ。いや?」 「違うわ、でも。。」 「僕の頼みは聞いてくれないのかい?」 「私は、Scullyとは違うわ。」 「僕だってMulderとは違うよ。これは僕が君に叶えてほしいことなんだ。」 そういいながら、表情はしっかり子犬顔になっていたけれど。 その顔に弱いのはScullyだけではないことに、とっくに気が付いてやっている。 本当に知能犯だわDavid。あなたも、Mulderも。 「そんなこと言うけど、あなたはMulderとうまく折り合いをつけてるみたいじゃない?」 「君は、Scullyと仲が悪いのかい?」 「私は。。。」 思わず苦笑した。あなたの我侭を聞くのに理由を探していることに。 何故、彼の誘いに頷かないのだろう、これではまるでScullyと同じだわと考える。 一瞬耳元で、Scullyが「失礼ね!」と言ったような、気がした。 「良いじゃない、Gillian。素直になれば」 それは、私の心の声。 「どうしたの?」 独り言でもいっていたのか、Davidがきょとんとした顔で私を見詰めていた。 「ごめんなさい、何でもないの。さあ、何をご馳走してくれるのかしら?」 「そうこなくっちゃ。さあ、出かける用意をして。時間を無駄に出来ないんだ。」 「ちょ、ちょっと、どこに行くつもりなの?」 「内緒だよ、あとのお楽しみだ。」 まるで、MulderとScullyのようなやり取りに思わず苦笑しながら、彼に降参よと手をあげると、 出かける支度をするために部屋に向かった。     ************************************************************* 隣で黙って運転する横顔をそっと伺う。 前だけを見詰めて運転を続ける、その端正な横顔を。 「何か、僕の顔についてるのかい?」 「やだ、なんでわかるの?」 「君のことなら何でもわかるよ。」 思わず紅くなる頬に当てようとした手は、途中で彼の手に絡め取られた。 包むように握られた手から、彼の暖かさを感じる。 何も言わなくても、お互いの気持ちを感じ取ることが出来た。 振り返り、後ろのシートに置かれた紅い薔薇に微笑みかける。 なんだか、幸せな時間。 その間も、車はスピードを緩めることなく、ひたすら走り続けた。 「お待たせ、着いたよ。」 彼の手の暖かさに安心したのか、何時の間にか眠ってしまっていたようだった。 寝起きでボーっとしている私に笑いかけ、頬にそっとKissをした。 外を見渡せば木しか見えない、深い森の中のようだった。 彼が開けてくれたドアから降りて周りを見ると、うっそうとした森が広がり、その中に埋まるように 小さなコテージがあった。 いったいここは? 不安げな表情の私の腕を取ると、コテージにいざなった。 中は見た目より広く作られており、木の香りが感じられなんだか安心する。 ゆっくりと見ていきたいのに、ずんずん私を引っ張っていく。 「ねえ痛いわ、そんなに引っ張られたら。」 私の声など聞こえないかのように、腕を取ったまま進んでいく。 そして、リビングに通じるらしいドアを開けると、彼は突然立ち止まった。 勢い余って転びそうになるところを、そのまま抱きしめられた。 「僕は。。。離さないよ。」 「David、そんなに力を入れると息ができない。。」 私の言葉など聞いていないかのように、更に力を込める。 ふと、言外の意味に気が付くと、厚い胸に顔をうずめた。 いつのまにかこみ上げてきた涙を悟られないよう、更に自分でも彼を抱き寄せる。 私が泣いていることに気が付いているのだろうけれど、何も言わずに髪をなで続けていた。 「さあ、Gill。」 私が落ち着いたことを確認すると部屋のほうに向けて、私を開放した。 「あ。。。。」 開いた唇から、言葉を発することが出来ない。 森の中だとばかり思っていたのに、リビングの窓の外の芝生の先には、 蒼い海があった。 あまりの意外さにに驚いて立ち尽くしていると、後ろから抱き寄せられた。 髪にKissしている彼の胸に素直に寄りかかる。 「驚いた?」 「ええ、まさか海だなんて。。」 「僕だってMulderに負けないくらい、君を驚かすことができるだろ?」 笑いながら、肩越しに私の顔を覗き込む。 「素敵なところだわ。」 「気に入ってもらえて、良かったよ。君の好きなシャンペンも用意したから乾杯だ。」 リビングに入ったときに、気が付いていた。 ガラスのテーブルに置かれた銀のワインクーラーと、そこから覗くボトルには。 「ええ、でも今は、しばらくはこのままでいて。」 「ああ、そうだね。」 互いに微笑みあうと、また窓の外の海を眼を向ける。 このときが永遠であるように、また訪れてくれることを祈らずにはいられなかった。 同意するように、まわされた腕にに力がこもる。 私たちが同じ気持ちであれば、いつかそんなときが訪れるのかもしれない。 どれだけ海を見詰めていたのか、急に抱き上げられて時間の経過に気が付いた。 だめだわ、David。あなたといると時間がいつの間にか過ぎてしまう。 Mulderだったら、時間の喪失とでもいうのかしら? すっかり、私もScullyだわ。心の中で苦笑してしまった。 そう、貴重な時間は刻々と失われていくのだ。 抱かれながら、彼の顔を仰ぎ見る。 まっすぐ前を向くヘーゼルの瞳。 長い睫。ふっくらとした唇。 ひとつひとつが、愛しくてたまらない。 「David。」 「ん?」 「Kissして。」 唐突な私の言葉に驚く風でもなく、立ち止まると抱いたままの私の唇を塞いだ。 唇の暖かさが、私を泣きたいような気持ちにさせる。 全て自分のものだとでもいうような、主張を込めた長いKiss。 ゆっくりと私の唇から離れると、抱いていた腕の位置を直した。 「まだだよ。まだ、時間はある。」 私にというより、自分に言い聞かせるような言葉に微笑むと、彼の首にしがみ付いた。 この先にどんな結末が待ち受けているか、誰もわからない。 2人だけの時間が、今は全て。 幸せな時間に、乾杯することにしよう。 ぬるくなってしまっているだろう、あのシャンペンで。 。。。。。Fin 初めまして(?)、Mebiusと申します。 思わず暗くなるDDGAながら、書かずにはいられなかったりして。。。 ご意見・ご不満は、mebius_mulder@hotmail.comまでお願いいたします。