___________________________________________________ DISCLAIMER:The characters and situations of the television program "The x-files" are thecreation and property of Chris Carter, FOX Broadcasting and Ten-Thirteen productions ,No copyright infringement is intended. TITLE:Last scene 前編 SPOILOR:The sixth Extinction:Amor Fati AUTHOR:裏猫 注意:これは私の勝手なficなので、事実とは全く違う点をご理解 頂いた上でお読み下さい。          _____________________________________________________ 「いよいよ、今日で最後ね」 ジリアンはそう言って、デビットに笑いかけた。 「あぁ、そうだな・・・」 デビットは感慨深そうにジリアンを見つめた。 〜〜〜Last scene〜〜〜 ーTake1ー 「・・・モルダー、そこでスカリーを見つめる。 ・・・・・・違う!カットだ、カット」 クリス・カーターはそう言うと、苛立たしそうに、監督席 を立った。 「どうした。デビット、今日の君はモルダーになれて いないじゃないか」 クリスはデビットに近づいて言った。 デビットは無言でジリアンを暫く見つめ、一言口にした。 「・・・時間を下さい」 そう言うとデビットはセットから抜け、スタジオを無言の まま飛び出した。 「また、デビットのスタンドプレーかよ」 スタッフたちは口々にそう呟き、ため息をついた。 「よ〜し、それじゃあ、モルスカの絡みは後にして、 スカリーのシーンを先に取ろう」 クリスはスタッフ達にそう言った。 「ジリアン、君もそれでいいかい?」 「・・・えぇ、私は構わないわ、クリス」 ジリアンはいつもの笑顔を浮かべた。 ーTake2ー なぜだ、なぜ・・・今日はモルダーになれない! デビットは控え室に行くと、鏡をじっと見つめた。 鏡に写る自分の情けない姿に、彼はため息をついた。 「・・・あぁ、わかってるよ、そうだよ、その通りだよ」 デビットは鏡の中の自分に呟いた。 「・・・そうさ、俺は彼女を、共演者としてじゃなく、一 人の女性として見ていた事に気づいたんだ・・・あの日に」 ーTake3ー あの日、ジリアンは何度もNGを出し、スカリーになりき れず、その日の撮影は次の日に持ち越しになった。 「ジル、どうした?」 僕は一人スタジオに残って、必死でスカリーになろうと しているジリアンに声をかけた。 「デビット、私には二人の気持ちがわからない!」 ジリアンは今にも泣きそうな表情で、僕を見た。 彼女の悩みが相当深い事を知った僕は、側に 在った椅子に座り、彼女と向き合った。 僕は共演者として、俳優の先輩として、彼女を助けたかっ た。 「落ち着いて、まず、台本を一緒に解読していこう」 僕は彼女を安心させるように笑った。 「・・・えぇ、お願いデビット」 ジリアンは微かに、笑みを浮かべた。 僕たちは台本の一行、一行を慎重に読み取った。 そして、最後のシーンになると、ジリアンが呟いた。 「ねぇ、デビ、スカリーはどこまで、モルダーを好き なのかしら?」 「えっ、どこまでって・・・」 突然のジリアンの問いかけに、僕は少し戸惑った。 「スカリーはいつもモルダーに何かあると、必死で彼を 助けようとするわ、それはモルダーも同じでょ」 「・・・あぁ、そうだな。モルダーとスカリーは互いの 危機を必死で救おうとする。それが何か?ジル」 「・・・つまり、二人の絆はその辺の恋愛映画の主人公 よりも、強い。なのに・・・二人にはそういうシーンが 出てこないわ」 「それは、クリスが二人をくっつけたくないからだろ?」 「そうね」 そう呟いてジリアンは笑った。 「・・・ねえ、デビ、モルダーとスカリーはやっぱり愛し 合っているのよね、表面には出さないけど」 ジリアンは僕を見つめた。 「そうだな。彼らはきっと・・・自分の気持ちを表に 出せないんだよ、やっぱり、自分たちのパートナーとして の関係を崩したくないから」 「・・・不器用なのね」 ジリアンは冗談ぽく笑った。 「・・・二人はお互いの気持ちに気づいていると思う?」 「さあ、どうかな・・・二人とも鈍感そうだからな」 僕の言葉を聞くと、ジリアンは立ち上がって、セットの中 に入っていった。 「ねぇ、来て、今日私ができなかったシーンをやりたいの」 ジリアンの言葉を聞くと、僕は彼女の側に立った。 『・・・何を信じていいかわからない、あなたを救う方法 を探している時は気にならなかった・・・でも、今は 何もわからない』 ジリアンはセリフを言いながら、徐々にスカリーの表情 になった。 僕は彼女をモルダーの眼差しで見つめた。 『・・・今朝、ファウリーの他殺体が発見された。 私、疑ってた。・・・でも、彼女のおかげで、あなたを 助けられた』 ジリアン、いや、スカリーの瞳には涙が浮かんでいた。 『・・・残念だわ、あなたのいいお友達だったのに』 深い後悔で、彼女の瞳は涙で一杯になった。 僕は台本通りに、彼女の手を掴み、抱き寄せた。 彼女の鼓動が聞こえた。 『スカリー、僕も一度誰を信じていいかわからなくて、 別の道を選んだ。別の運命。妹のいる別の人生』 その時、なぜか、このセリフが僕の、デビットとしての 気持ちを表しているように思えた。 別の人生。 僕にもあったんだろうか・・・。 彼女との人生が。 いつも、考えてはいけないと、心に言い聞かせていた。 僕はモルダーじゃない。 ジリアンが気になるのは、彼女がスカリーだからだ。 彼女はただの共演者なんだと。 そういつも、心に言い聞かせていたんだ。 でも・・・。 『そこは訳のわからない滅茶苦茶な世界だったけど、 一つだけ確かだった事がある』 僕は自分の気持ちを背けるように、モルダーになる事に 集中した。 『それは、いつも君が真実を語ってくれた』 僕にとっての真実とは・・・。 考えてはいけないと、思えば思う程、心に浮かぶ 自分の気持ち。 『闇の中で君が照らしてくれる光だけが頼りだった』 そう、君はいつも僕の側にいた。役者として、スカリーと して・・・君がいたんだ、初めて会った時から、僕の 心の中に・・・。 『・・・私もそうよ』 彼女がそう言った時、視線が重なった。 僕は逸らす事ができず、彼女の真っ直ぐな瞳を見つめた。 そして、ゆっくりと、僕の額に彼女がキスする。 台本通りに・・・。 僕は瞳を閉じ、彼女の唇の感触を感じた。 ーーー唇に! 驚き、目を開けると、彼女の美しい顔が側にあった。 唇をゆっくりと離すと、彼女は何も言わず、じっと僕の目 を見つめ、切なそうに微笑んだ。 その笑顔がスカリーとしてのものなのか、ジリアンとして のものなのか、僕にはわからなかった。 ーTake4ー 「カット。OKだ。ジリアン、素晴らしかったよ」 クリスは満足そうに言った。 「それじゃあ、2時間休憩だ」 クリスはスタッフたちに、そう呼びかけた。 ジリアンは今撮ったシーンをチェックするため、 一人、モニターをチェックしていた。 「おい、聞いたか?デビットが降番する本当の理由」 スタッフの一人の声がジリアンの耳に入った。 「えっ、モルダーに飽きたからじゃないのか?」 「俺もそう思ってたんだけどさ、実は違ったんだよ。この 間、偶然、デビットがエージェントと話していたの が聞こえちゃってさ」 「それで、降番の理由って?」 「・・・ジリアンと仕事がしたくないんだって」 ジリアンはその言葉を聞いた時、胸の奥に痛みを感じた。 「えっ!?あの二人ってそんなに仲が悪かったけ?」 「さあな、本人同士じゃなきゃわからない事だって あるだろ、さて、そろそろ次のシーンの準備を しなきゃな」 そう言うと、話していたスタッフたちはセットの方へ と移動した。 ジリアンは凍りついたように、その場を動けなかった。 ーTake5ー 「デビット、契約の事、考え直してくれないか?」 デビットのエージェントのエドワードは、彼の控え室に入 ってくるなり、そう言った。 「エド、悪いがもう決めた事なんだよ。僕はもうこれ以上 このショーを続けていく自信がないんだ」 デビットはそう言って、ため息をついた。 「・・・ジリアンか」 エドは神妙な表情をした。 「そうだ。この間話した通り、僕はもうこれ以上、 彼女とやっていく自信がないんだ」 デビットはそう言って、エドを見た。 「なぜだ、君たちはこの7年間うまくやってきたじゃない か・・・それを急に」 エドは納得がいかないというふうに、デビットを見た。 「それは・・・」 デビットはそこまで言いかけて、言葉を飲んだ。 「それは何なんだ?僕は君が売れない頃から、君をいろん なところへ売り込んできた。そして、やっと、君は、いや 、僕たちは栄光を掴んだじゃないか・・・それなのに、 XFを降りるなんて・・・せめて降りる理由を僕にはちゃ んと言ってくれないか、苦労を共にしてきた僕には・・・」 エドは真剣な表情でデビットを見た。 「・・・エド、わかったよ」 デビットは静かに口を開いた。 「僕はこのショーが成功しすぎて、デビットという人格を 失いそうになった。ショーが終わった後でも、どこにいっ ても、僕はデビットじゃなく、モルダーとして見られるん だ。そして周りは、当然、モルダーとスカリーはくっつく と思っている。それがプライベートでも・・・。いつも、 インタビューを受ける時に聞かれるんだ。ジリアンとの 関係は?ってね。 それが僕には苦痛で・・・だから、無意識の内に ジリアンを共演者としてしか見ないようにしてきた・・・ でも・・・」 デビットはそこまで言うと、切なそうに、目を細め、 眉間にしわを寄せた。 「ある時気づいたんだ・・・僕は、彼女を、ジリアンを ただの共演者としてなんて、見ていなかった事に・・・」 エドはデビットの言葉に息を飲んだ。 「デビット、それって・・・つまり」 「ああ、それ以上は言わないでくれ・・・言葉にしてしま うと、自分を止められそうにないから」 そう言って、デビットは寂しそうに笑った。 「君も知っての通り、僕には妻もいるし、愛する娘も いる・・・だから、これ以上、ジリアンに関わりたく ないんだ。僕には今の生活を壊す勇気がないから・・・」 「・・・デビット、ジリアンは君の気持ちに気づいて いるのか?」 「いや、それは全くないと思う。僕の気持ちを知っている のは君だけだよ、エド」 「そうか・・・、わかった。契約の更新はしないよ、後の 交渉は僕に任せてくれ」 そう言って、エドは控え室を出て行った。 ーTake6ー 彼が私を疎ましいと思っていたなんて・・・。 ジリアンはセットの裏で一人になると、瞳を静かに潤ませた。 デビット、どうして? 私はいつの間にかあなたに嫌われていたの? なぜ? あなたを頼りすぎたから? それとも、私のあなたに対する想いがただの共演者以上 だということに気づいたから? わからない、あなたの気持ちが・・・。 私はどうすればいい? ジリアンは涙を拭くと、何かを思い立ったように、 歩き出した。 ーTake7ー 「デビット、大変だ!!」 エドが血相を変えて、デビットの控え室に入って来た。 「どうした?」 「ジリアンが、突然、スカリーを降りるって言い出した んだ、とにかく来てくれ」 エドはそう言って、デビットの手を掴んだ。 ーTake8ー ジリアンはクリスを見つけると、彼を真っ直ぐに 見つめ、口を開いた。 「クリス、話があるの」 「何だい?ジリアン」 「ここではちょっと・・・上のあなたのオフィスで 話したいんだけど」 ジリアンはスタッフの目が気になった。 「えっ、そうか、わかった・・・それじゃあ、先に行って てくれ、5分後に行くから」 クリスの言葉を聞くと、ジリアンはスタジオを出て、 スタジオの上の階にあるクリス・カーターのオフィスへと 向かった。 ーTake9ー 「やあ、おまたせ、それで話しって?」 ジリアンがオフィスでカウチに座って待っていると、 約束より、3分程遅れて、クリスが現れた。 「私、今のシーズンが終わったら、スカリーを 降りたいの」 ジリアンはとても落ち着いた冷静な声で言った。 To be continued ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後書き S7第六の絶滅Part2の最後のモルスカシーンから、 無理矢理このficを書きました。 私、あのシーンが凄く好きなんですよね〜。 特に、モルにキスするスカリーの表情、そしてキスし終わ った後のスカリーの表情が大好きです。