このスト−リ−は私の妄想の産物であって、事実とは一切異なります。 その点を理解して頂ける方のみ読み進める事をお願い致します。 TITLE:The End AUTHOR:裏猫 「えぇ、そう・・・わかったわ、クリス」 静かに受話器を置くと、私は窓の外を見つめた。 沈みかけの太陽が空を包んでいた。 その様子が何だか・・・切なかった・・・。                ――――The End―――― 「XFはS8で最後になります」 クリスはマスコミに向けての緊急記者会見の席で、そう告げた。 そのニュ−スは瞬く間に世界中に広がり、大きな波紋を呼んだ。 連日FOXのスタジオには記者が押しかけていた。 「あっ、ジリアン、今シ−ズンで最後という事ですがその事についてコメントを」 記者はあっという間に私の周りを囲み、いくつものマイクを向けて来た。 「すみません、これから撮影に入るので記者の方は出て下さい!!」 私の側にいたエ−ジェントのテレサが、大きな声で言った。 「はい、下がって下さい!!」 テレサの声を聞きつけて、警備員が記者たちを追い出しにかかる。 「ジリアン、コメントを!!」 記者の叫び声を聞きながら、私はスタジオの奥へと入った。 「凄い騒ぎだな」 人事のように彼が告げた。 「・・・あなたのせいよ、デビット」 忌々しいげに、彼を見つめる。 「僕のせい?」 少し驚いたように、彼は眉を上げた。 「・・・モルダ−が降りるなんて言い出すから、視聴率は落ちる一方、そして、挙句の果てには 打ち切りよ」 皮肉たっぷりにそう言い、私は彼の前を通り過ぎた。 彼がXFに復帰してから数週間が経つ。 番組の視聴率はまた前のように戻り始めた。 でも、それが、何だか、悔しい。 役者として、私は彼に嫉妬していた。 彼の存在の有無で番組が左右される。 まるで、スカリ−のように私はいつだってモルダ−に振り回されるのだ。 彼がこれ以上、モルダ−を演じるのは難しいと言うのはわかる。 正直、私もスカリ−でいる事に、疲れを感じ始めていた。 しかし、だからと言って、途中で放り出すようなマネをしていいのか? 今シ−ズンが最後なら、全てのエピに出るのは主役の一人としての彼の責任だ。 「・・・ジル?」 「えっ」 彼への怒りを募らせていると、声がした。 「・・・デビット・・・何か?」 きつい表情で彼を見てしまう。 「・・・台本の読み合わせしたいんだけど・・・」 私の様子に少し遠慮がちに彼が言った。 私は無表情に、台本を開いた。 『スカリ−・・・僕について来てくれるかい?』 モルダ−の表情で、彼が私を見つめる。 『・・・モルダ−・・・私は・・・何て言ったらいいのか・・・』 私は台本を見つめたまま、セリフを読み上げた。 『・・・愛してるんだ』 『えっ!』 台本と違うセリフに、思わず、彼を見つめる。 「デビ・・・セリフが違うわ」 そう言った瞬間、彼の唇が私の唇に重なった。 突然の事に、大きく目を見開く・・・。 そして。 バシッ!! 彼の頬をおもいっきり、平手うちした。 「どういうつもり?」 赤くなった頬に触れている彼を睨む。 「・・・君が僕の方を見てくれないからさ・・・。君はスカリ−になっている時以外は 僕を見ようとしない・・・だから・・・」 ヘ−ゼルの瞳が悲しそうに私を見つめていた。 「・・・君が僕に怒っているのは知っていたよ。確かに、僕は勝手な男だ。だけど、僕にはもう これ以上・・・モルダ−をやっていく自信がないんだ」 自信家の彼が初めて私に弱い面を見せる。 「・・・デビット・・・」 何て言葉をかけたらいいのか、私にはわからなかった。 「・・・すまない・・・変な事口にして・・・」 一言そう告げ、彼は控え室から出て行った。 ”これ以上・・・モルダ−をやっていく自信がないんだ” それは僕にとっての真実だった。 ずっと、彼女を愛してきた。 役者として、かわいい後輩として・・・。 だが、それだけではすまない気持ちに気づいてしまった。 いつからか、彼女を共演者以上に見るようになっていた。 この気持ちが何を意味しているのか、気づいた時、僕にはもう、娘がいた。 妻がいた。 だから、僕は彼女から逃げる事にした。 「・・・デビット、さっきはごめんなさい」 撮影の合間に珍しく彼女の方から話かけてきた。 「頬、痛む?」 心配そうに僕の頬に触れる。 「・・・大丈夫さ、この位・・・僕が殴られるような事をしたからいけないんだし」 さっきの彼女の唇の感触を思い出す。 胸の中に切なさが広がった。 こんなに彼女を愛しいと思うなんて・・・僕のこの思いをどこにやればいい?。 「・・・デビット?」 「えっ、やあ、クリス・・・」 彼の気配に気づき、ジリアンからクリスへ視線を切り替えた。 「例の件について・・・話がある」 そう言われ、僕はセットを抜け出し、彼の後に続いた。 彼への嫉妬・・・違う、私が怒っているのはそんな事ではない。 自宅への帰り道、車を走らせながら、ずっとそんな事を考えていた。 彼が今回のシ−ズンを半分でなかった事で、私は思い知らされたのだ。 自分が彼に共演者以上の気持ちを抱いていた事を・・・。 今回程、スカリ−を演じていて、寂しいと思った事はなかった。 スタジオに彼がいない。 それは私をどんなに不安にさせてきた事か・・・。 ずっと、彼が私を支えてきてくれた。 シ−ズンが始まった頃からずっと・・・。 彼が”大丈夫”と言ってくれていたから、私は自信を持ってスカリ−を演じてこれた。 でも、今は、どうスカリ−を演じたらいいのか・・・わからなくなっている自分に気づく。 彼が再び戻って来るまでは毎日演じる事へのプレッシャ−で潰されそうだった。 私はそんな自分自身に怒りを感じているのだ。 彼がいないと駄目だなんて・・・私にそう思わせる彼が憎いとさえ思えた。       「クリス・・・ありがとう。要求を飲んでくれて」 クリスから最終話の台本を受け取り、そう告げた。 「デビット・・・彼女が好きなのか?」 躊躇いがちにクリスが聞く。 僕はその質問には何も告げず、ただ笑みを浮かべた。 「・・・最後のシ−ンは君とジルに捧げるよ」 クリスはそう呟き、僕の肩を軽く叩いた。 「最高のラストを演じるよ」 夜中に部屋のドアを叩く音がした。 「デビット!!」 ドアを開けると、彼が立っていた。 「こんな時間にどうしたの?」 彼が私の元を訪れてくる事は彼が結婚してからはなかった。 「やあ、君にこれを渡したくてね」 軽く笑みを浮かべて、彼は封筒を差し出した。 「・・・これは・・・」 中を開けると、台本が入っていた。 「最終話の本だ。君に直接渡したくて・・・今、読んでくれるかい?」 ジルは僕を部屋に通すと、カウチに座り、黙って台本を読み始めた。 僕はその様子をじっと見つめていた。 「・・・これは・・・一体・・・聞いていたラストとは違うわ」 本を読み終わると、戸惑い気味に彼女が僕を見つめた。 「クリスに頼んで・・・無理に変えてもらったんだ。これがモルダ−とスカリ−の答えであり、 そして、僕と君の答えでもある」 彼女への精一杯の気持ちをこめて見つめた。 「・・・デビット・・・私は・・・」 彼女の蒼い瞳が涙に染まる。 「・・・何も言わなくていい」 彼女の涙に触れ、そしてその華奢な体を引き寄せ、抱きしめた。 彼女の香りと温かさが伝わってくる。 「・・・君への思いを込めて、最後を演じるよ・・・」 涙がなぜか止まらなかった。 このラストを読んだ時、私の心の底に埋もれていた思いが再び、私の心を 覆い尽くしていくのを感じた。 言葉にしてはならない彼への思い・・・。 自分をずっと誤魔化してきていた。 この本の中には素直な私の気持ちがある・・・。 そして、彼の私への気持ちも・・・。 表には決して出してはならない二人の思い。 その夜、一晩中、私は彼の腕の中で涙を流していた。 「クリス・・・どうして、このラストを?」 スタッフの一人が驚いたように、僕に聞いた。 「・・・せめて、ドラマの中だけでも・・・思いを通じ合わせたくてね・・・」 「えっ?」 スタッフは不思議そうに僕を見た。 「このラストは思いを遂げられなかったある俳優に向けての、僕からのメッセ−ジさ」 そう、このラストは彼らに捧げたのだ。 僕はずっと、カメラ越しに彼らを見つめていた。 その表情からは役以上のものが伝わってきた。 そして、彼らが愛し合っている事に気づく・・・。 もう随分前から・・・。 僕はそんな二人をずっと見続けてきた。 ”せめて、ドラマの中だけでも・・・” それはデビットが言った言葉だった。 思いつめたような彼の表情があった。 だから、僕はこのラストは彼らに向けて書いた。 役の下の彼らの思いを・・・。 そして、この番組を愛し続けた人々への思いをこの脚本に託した。                                    The End _______________________________________ 【後書き】 Eve様のS8ラストのカキコを見て、無償にこういうものが書きたくなってしまいました。 何か、よくわからないダラダラスト−リ−になってしまいましたが・・・。 クリスは一体どんなラストを書いたんでしょうね?(笑) もっと深く掘り下げて書きたいとも思ったんですけど・・・ドロドロしてしまいそうなので、やめました(笑) ここまでお付き合いくれた方、ありがとうございました。 裏猫