★とーぜんですが、全部妄想。  『会議室』  「おいおいクリス、キミねえ、もうちょっと考えてくれなきゃ困るよ」  世紀末のある冬の朝、LAのFoxテレビの重役会議室でお歴々がシブイ表情で顔を付き合わ せていた。 「見ろよこの講義メールとfaxの山!制作局の電話回線はもう2週間近くジャックされたまん まなんだぜ」 大げさに‘世も末’なポーズで食って掛かっているのはドラマ制作部長のハリスだ。 「今更そんなこと言うなよ。だいたいXファイルはうちが完全に仕切ってんだから、ストー リーについてまでFoxさんに口出しされたくないね」 鼻を鳴らして言い返したのは、制作会社1013の総帥・クリスカーターである。  「それは事故がなかったときの話しだろ。こういう異常事態を引き起されたんじゃ、脚本を うちで作るしかないね」  横から口を挟んだのは営業局のワトソンである。 「大げさなこと言うなよ、たかだか1話のことじゃないか。それに肝心の数字は取れてるんだ ろ?」 「いいえ、これは深刻な事態ですよ」 クリスの反論をすぐさま切り返したのは広告代理店のケンドリック。 「この前のストーリーに猛講義してる視聴者が、とうとうスポンサーの不買運動まで起し始め てますからね。このままではスポンサーが手を引きかねませんよ」 「それにだ」 さらにワトソンが追い討ちをかける 「数字、数字ったってシーズン6あたりから下降曲線ただってるじゃないか。ERに抜かれ、 アリーに抜かれ、いまにテレショップQにだって抜かれるんじゃないか?」 「あんたねえ、さんざんこれまで持ち上げといて、今になってよくそういうことを言いますね」 さすがにクリスは頭に来たらしい。  「ともかく」 重々しく口を開いたのは正面に構えるFox社の社長だ。 「このままではいかん。視聴者離れを食い止める意味でも脚本にテコイレをしなくてはならん」 「お言葉ですが社長、シーズン8は始まったばかりなんです」 「じゃあ、これから主役の二人にハッピーエンドが用意されているんだな?」 「え、いや、それは…」  こんどはハリスがまゆをひそめた。 「ちょっと、ちょっとクリスちゃん、だめだよ。またスカリーの身の上になんか起こるなんて いうんじゃないだろうね。勘弁してよ。スカリーが流産したりモルダーが死んだりしたらそれ こそ…」 「それはいかん。これ以上スカリーになんかあったらうちの局はテロられるぞ」 社長は結構真顔だ。 「しかしですね、モルダーが帰ってくるまでの間をなんとかつながなきゃいかんわけですよ。 毎回お笑い流せって言うんですか」 「あ、それいいね」 合いの手をいれたケンドリックを、クリスはぎろりと睨んだ。 「しかしそれにしても、もうちょっと視聴者を引きつけるようなプロットがあるんじゃないの か?」 「そうですよ。視聴者はロマンティックな展開を望んでいるわけですからね」 ワトソンとケンドリックの営業組みは、何としても視聴者を離す訳にはいかない。だがクリス も意地になっている。 「あんたら、Xファイルを三文色恋ドラマにする気か!」 「え?そうじゃなかったのか?」 「……社長」 「それにしてもカーターくん、なんでキミそんなにスカリーをいじめたい訳なのかね?ああ ん?」 社長の言葉にクリスが答えようとした直前、ハリスが言い放った。 「性癖だよな」 「なにっ、カーターくん、キミそういう趣味の持ち主かね」 「そういう、って?」 「サディストだよっ」 おとぼけケンドリックにワトソンがいらだたしげにつっこんだ。 「おまえなあ!」 クリスはハリスに怒鳴りかける。 「キミが○○○○が好きだろうが★★★★が好きだろうが知ったこっちゃないが、脚本に持 ちこむのはやめたまえ。んなこた、プライベートで存分にやってくれ」 「社長!いい加減にしてくださいよ。こっちは毎回毎回大変な思いで制作してるんですよ」 「そうはいっても結果がすべてだよ。キミのしょーもないサドなストーリーのおかげで局に までこんなに抗議が来たんじゃどうにもならん」 「しょ、しょーもない…じゃあ、あんたが書いてみろ」 クリスカーター、ついにキレた。 「キミぃ!その言い方は何だね。いやしくも私は社長だぞ。なんでもいいから脚本を全面的 に書き換えろ!色恋ドラマで結構だ!」 「ああ、これだから何にもわかっちゃいない!モルダーがいないのにどうやって色恋ドラマ にするっていうんです」 「そこをナントかするのがキミの仕事だろうが。ホントに才能あるのかね?」 「勝手なことを言わないでくれ!じゃあ言わしてもらいますがね、そもそもこんなことにな ったのは、あんたがドゥカブニーのギャラをピン撥ねするような真似をしたからでしょう」  これには社長、おおいに気色ばんだ。 「なんちゅうことを言う!あれは単なるギャラ交渉だ」 「何にしてもあんたが制作費をケチったりするからこうことになるんだ」 「ひとつのドラマに莫大なカネをかける余裕はないんだ!ただでさえマードックに乗っ取ら れて財務状態はキュウキュウなんだっっ」 「ともかく、このままじゃスポンサーはつけられなくなりますよ」 ケンドリックが割って入った。 「いっそ、打ち切るか?」 飽き飽きしてつぶやいたワトソンにハリスは青ざめた。 「それはダメだ。ここまで来て打ち切りなんてできるか!この8年間をフイにする気か。冗 談じゃない」 「ともかく、一話でも早くもモルダーを復帰させることだ」 社長の言葉にハリスがぼそっとつぶやく。 「そうなったらもう一回ギャラ交渉せざるを得ないでしょうな。本人は相当出演を嫌がって ますからね」 「むぅぅぅ…仕方あるまい。1話につき25%増しだ。それで文句言うようなら、ジリアン とのあんなことやこんなことをタブロイドとワイドショーにリークすると言ってやれ!」 「さすが社長、いざとなったら手段は選びませんね」 ハリスがニヤリとした。 「お世辞かね、ハリスくん。いいか、カーターくん、ラブロマンスだ」 「まあ、モルダーが帰ってくるなら、いくらでも作れますがね」 いくぶん嫌そうに、いくぶん諦め顔でクリスはつぶやいた。 「そうかそうか。いや、さすが天下のクリスカーターだ。キミの才能には羨望の念を抱いて おる」 「どうでしょう、社長…」 苦い顔のクリスの隣からケンドリックがニヤリ顔でこう言った。 「このシーズが終わったらムービー2でモルダーとスカリーのホットなシーンを作るって言 うのは」 「それは断固拒…」 「いいねえ」 ハリスが答えた。 「さわりをちょっとCMすればもう、観客動員力はバッチリ。第一、その企画書見ればどれ だけスポンサーがつくことか」 ワトソンが嬉しそうに身を乗り出した。 「ムービ−1の倍は軽いな」 「とんでもない、CM次第では10倍だって入れて見せますよ」 「そのあとの放映権やビデオ化も…うひひひ」 「けけけけけ」 ふたりの「とらぬたぬき」が続いている。それを見て社長はポンとクリスの肩をたたき 「まあカーターくん、視聴者第一。お客様あっての番組だよ」 と、重々しく語った。 「たく、よく言うぜ。このぢぢい」 とは言えないクリスカーター。抵抗空しく「クールなストーリー」を「ハッピーロマンス」 に手直しさせられたあげく、ムービー2のアダルトシーンまで書かされる羽目になったのだ った。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★  ぬゎんてコトにならないもんかねぇぇ…。