フィギュア・スケート


フィギュア・スケートにも幾つかありますが、ここで取り上げるのは
フリー・スタイル・スケーティングのうち、特にシングル・スケーティングの分野です。

フィギュア・スケートは、曲線のスケートです。
フィギュアとは図形のことですから、氷の上を色々な図形で滑るのが
元々のフィギュア・スケートなのです。
私は、滑る人の姿勢やその姿も美しいと思いますが、氷に残された軌跡(トレース)が
美しいことこそフィギュア・スケートの神髄だと思います。
トレースを整えると自ずと滑る姿も美しくなるという気がします。
色々な図形を滑るためには、両足それぞれのエッジをうまく使い分ける必要があります。
その基礎となるのが、コンパルソリー(スクール・フィギュア)でしょう。

コンパルソリー (compulsory)

昔は、オリンピックなどの正式競技種目でしたが、今では見られなくなりました。
2つまたは3つの同じ大きさの円を直列に隣接した円、またはその上に配置した
カーブ図形(ターンやループ)を滑ります。
基本となるカーブは7種で、実際に滑る図形はこれらを組み合わせたものとなります。
図形は、17種類、41課題あり、各課題は、a(右足)スタート、
b(左足)スタートで、それぞれで滑ります。
片足、1スラストで1つから1つ半の円周を滑ります。
要求されることは、
 右足、左足それぞれで同じ図形を同じ様に滑れること。
 円の大きさが整っていて、きれいな真円であること。
 ターンは、正しいエッジを使い、その位置と角度が正しく図形が歪んでいないこと。
 エッジの深さ(傾き)が適切であること。
 摩擦が少ない、クリーンなエッジで滑り、擦ったり、ふらついたりしていないこと。
などでしょう。

コンパルソリーのカーブ
カーブ スペル 意味 図形
サークル circle 身長の約3倍の直径の円。
チェンジ change 同じ足、同じ滑走方向で、インとアウトの乗り換え。
スリー・ターン three turn 外エッジ→内エッジ、内エッジ→外エッジ。
同一円上のターンで、ターン図形先端が内側を向く。
ブラケット bracket 外エッジ→内エッジ、内エッジ→外エッジ。
同一円上のターンで、ターン図形先端が外側を向く。
カウンター counter 外エッジ→外エッジ、内エッジ→内エッジ。
別の円に移るターンで、侵入側のカーブに対して
ブラケットのように入る逆半回転のターン。
ターン図形先端が第2円の中心を向く。
ロッカー rocker 外エッジ→外エッジ、内エッジ→内エッジ。
別の円に移るターンで、侵入側のカーブに対して、
スリー・ターンのように入る順方向半回転のターン。
ターン図形先端が第1円の中心を向く。
ループ loop サークルの内側に長い方の直径がおよそ等身大で
長軸:短軸が3:2のだ円を滑る。

エッジ・ワーク (edge work)

フィギュア・スケートでは、エッジの使い分けがとても重要になります。
一見似た様な動作でも使用するエッジが違うと、全く別の技術になるのです。
これはジャンプについても言えることです。
エッジの使い分けによって、多くの技のバリエーションが生み出されるのです。

エッジ・ワークの表記法
文字 英語 意味
left leg 左足
right leg 右足
forward skating 前進滑走
backward skating バック滑走
inside edge 内エッジ
outside edge 外エッジ

例)LFO 左足前進外エッジ

ジャンプ

フリー・スケーティングでジャンプというと回転ジャンプを指します。
フィギュア・スケートの滑走は、左右どちらかに片寄ることなく、均等に練習することが
要求されますが、ジャンプとスピンの回転は、選手によって回転方向が決まっています。
主に右利きの人は反時計回り、左利きの人は時計回りというのが一般的です。
ここでは、圧倒的に反時計回りの人が多いので反時計回りに限定して説明します。
主要なジャンプには、アクセル、トウ・ループ、ループ、フリップ、サルコウ、ルッツの
6種類がありますが、この6種類すべてのジャンプは(反時計回りの場合)RBOで着地します。
このうちアクセルだけが前進滑走からジャンプし、他のジャンプより半回転余分に回ることになります。
残る5種類のジャンプの見分け方は、まずトウ・ピックを突くかどうかがポイントになります。
(トウ・ピックを突くといってもこれは補助であり、基本的に両足でジャンプする形となります。)
その他は、踏み切るエッジの違いとそれに起因するアプローチの仕方で判断することになります。
通常クロスオーバー等によって加速し、ターンを経て体勢を整え、行おうとするジャンプに適した
カーブに乗ってアプーチをかけます。この間体に回転力を貯えて踏み切り後に一気にそれを解放します。
踏み切り前に回転するのは、良くないことだと言われています。
また、回転終了前にはチェックという動作で回転を止めることが必要です。
着氷は、氷面の位置を確認するかの様に体重をかける前にトウを先について、それから
エッジに移行して体重をかけてRBOに乗るという感じでしょう。
見ている人にとっては、これら一瞬の出来事です。

ジャンプの回転数などの呼び方
用語 スペル 意味
シングル single 1回転
ダブル double 2回転
トリプル triple 3回転
クアドロプル quadruple 4回転
ソロ・ジャンプ solo jump 単独のジャンプ
コンビネーション・
 ジャンプ
combination
jump
連続ジャンプ。
着氷した足でそのまま次のジャンプを踏切る。


主要なジャンプ
ジャンプ スペル 方向 踏切足 トウ 着氷足 説明
トウ・ループ
(チェリー・フリップ)
toe loop
(toe assisted loop)
(cherry flip)
右外 右外 左足を深く引いて、トウを突き
滑走している右足が追い付きつつ、
両足を挟む様に閉じながら両足踏み切りする。
サルコウ Salchow 左内 × 右外 通常、スリー・ターンから入り、
右足を後ろに引いて、前に振り出しながら
左足で踏み切る。
ループ
(リットバーガー)
loop
(Rittberger)
右外 × 右外 一般的には、両足滑走でアプローチをかけ
左足を右足の前でクロスする様にしながら
右足で踏み切る。
フリップ
(トウ・サルコウ)
flip
(toe Salchow)
(toe assisted Salchow)
左内 右外 トウ・ループの左右反転(フリップ)版。
ルッツ Lutz 左外 右外 後ろ向きの長い滑走が特徴。
コンパルソリーのカウンター図形の
エッジ・ワークで踏み切る。
このジャンプは、アプローチ・カーブと
ランディング・カーブが逆向きになる。
アクセル Axel 左外 × 右外 前向き踏み切りのため他のジャンプより
回転が半回転多い。

補足

日本の一部でトウ・ループのことを、「チャーリー」と呼ぶ場合があるようです。
調べてみると、どうも人名ではなさそうです。
代わりに「チェリー・フリップ」という呼び方が見つかりました。
英語発音ですから、チャーリーとチェリーは似ていると思います。
「チェリー・フリップ」という呼び名ですが、なるほど、トウ・ループの昔の
フォームだと、2つのさくらんぼの実がブランと左右入れ替るのに似た動きだと
思い感心してしまいました。

各ジャンプを最初に行なった人
ジャンプ名 スペル 人名 備考
シングル・アクセル single axel Axel Paulsen 1882 スピード・スケートにて
シングル・サルコウ single salchow Ulrich Salchow 1909  
シングル・ループ single loop Werner Rittberger 1910  
シングル・トウ・ループ single toe loop Werner Rittberger 19XX (おそらく)
シングル・フリップ single flip Bruce Mapes 1920 定かでない
シングル・ルッツ single lutz Alois Lutz 1913  
ダブル・ループ double loop Karl Schafer 1925 練習中
ダブル・ルッツ double lutz Karl Schafer 1926 練習中
ダブル・サルコウ double salchow Gillis Grafstrom 1926 練習中
ダブル・アクセル double axel Dick Button 1948 オリンピック
トリプル・ループ triple loop Dick Button 1952 オリンピック
トリプル・サルコウ triple salchow Ronnie Robertson 1955 世界選手権
トリプル・ルッツ triple lutz Donald Jackson 1962 世界選手権
トリプル・
 トウ・ループ
triple toe loop Thomas Litz 1964 世界選手権
トリプル・アクセル triple axel Vern Taylor 1978 世界選手権
クアドロプル・
 トウ・ループ
quadruple toe loop Kurt Browning 1988 世界選手権
クアドロプル・
 サルコウ
quadruple salchow Tim Goebel 1998 ジュニア・シリーズ
(ファイナル)
information source from: http://www.frogsonice.com/skateweb/faq/people.shtml
  by Sandra Loosemore
  e.t.c. ...

スピンとステップ

フィギュア・スケートが「ウインター・スポーツの華」と呼ばれる理由は、
ジャンプよりもむしろ、体の柔軟性をアピールする女子のスピンとステップ・シーケンスに
よるところが大きいと思います。

シット・スピン sit spin
(Jackson Haines spin)
キャメル・スピン camel spin
レイバック・スピン layback spin ビールマン・スピン biellmann spin
スパイラル(ステップ) spiral スプレット・イーグル spread eagle

[備考]
これら3DCG(3次元コンピュータ・グラフィックス)画像は、モデリングなどすべて手作りです。
ちなみに、このページの画像については、LightWave3D(Mac版)を使用して作りました。
人物は、華美な衣装や、ヴァーチャル・ビューティー的な表現を避け、フィギュア・スケート独特の、
体の動きが持つ意味と本質的美しさを表現するために抽象化してあります。
人物のポーズは、オリンピック、世界選手権、NHK杯などの競技会の映像をよく観察して、
若干のスケート経験を元に、自分なりに技の持つモチーフを理想化して表現しています。
重心位置や微妙な調整は不十分なところもあります。一流選手が見ると分かるでしょう。

参考文献

成美堂出版 図解コーチ・フィギュアスケート
平松純子/上野衣子著
ISBN4-415-00438-5 C2375 \560E

参考にしたURL

http://frog.frogsonice.com/skateweb/

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