素人の火星観測

6万年に一度といっても、他の接近と視直径にしてどれくらい違うのか、
いまいちピンと来なかったが、火星が金星くらいの明るさに見えたのは確か。
普段なら木星や土星ならともかく、手持ちの望遠鏡で火星を見てもつまらない、
というのが正直なところだが・・・。
あまり興味はなかったが、折角望遠鏡を持っているのだから・・・と
引っぱり出してきて見ることにした。
天体マニアと呼ぶと嫌がる天体愛好者の中にあって、「天文ファン」という
呼称が好きでない私は正真正銘のマニアであろう。

火星大接近で望遠鏡を買う人

ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡があるこの時代に、個人の小型望遠鏡で
火星を見てどうなる、と思うかも知れないが、肉眼で星を見るのは神秘である。
とはいえ、このために望遠鏡を買ってはみたが・・・という人が多いのではないかと思う。
案外難しいものかもしれない。

1. 口径
 安い望遠鏡は、倍率だけを売り文句にするが、高い倍率を得るためには口径が大切。
 高倍率にすると、口径不足による光の干渉の影響、レンズや反射鏡の収差、光軸などの
 調整不良などの影響が大きく出るので、それらが倍率とみあっているかどうか判断が必要。
 また、倍率を上げると像が暗くなるのだ。
 価格的には、屈折式よりニュートン式反射望遠鏡の方が有利。
2. 導入の難しさ
 火星を望遠鏡の視野に入れるのはとても難しい。
 火星だとぼんやりした星雲を導入するよりは簡単だけど・・・。
 当然、屈折望遠鏡よりニュートン焦点の反射望遠鏡の方が難しい。
 低倍率のファインダーがついていても、調整不良だったり、ファインダー視野の中央に
 持って来るのも暗視野(または明視野)照明の十字線がないと案外中央が分からない。
 何とか導入しても経緯儀だと・・・。
3. 架台
 望遠鏡そのものが高性能でも落ち着いて星を見るのは難しい。
 なぜなら地球は自転しているから、経緯儀や三脚で望遠鏡を固定したら、視野の中に
 火星を入れてもすぐに視野から外れてしまい、追いかけるのに2軸の調整が必要でとても難しい。
 こういった観測でも赤道儀は必需品でしょう。最近の赤道儀にはほとんどモータードライブが
 ついているので導入しさえすれば、火星は視野の中にとどまってくれる。
 もちろん、ちゃんと極軸を合わせないとズレてくるけれど。
4. シーイング
 これが一番の問題。
 地球には、大気があり真夏の大気のゆらぎたるや、夜中でも火星の視直径くらい平気で揺らぐことになる。
 夏の暑い日に地面から昇るかげろう(陽炎)や、蜃気楼をイメージすると大体同じだ。
 反射望遠鏡では、筒内で空気が対流することもありこの安定を待たなければならないこともある。
 これは、気流、湿度、天候などその日のコンディション、見る時刻により違ってくる。
 コンディションが悪い日は、揺らぎのためにほとんどピントが合わない。
 コンディションが良い日は本当に少ない。
 まだ眼視ならいいが、写真を撮るのは苦しい。

撮影した映像

 望遠鏡は、高橋製作所のCN212のカセグレン焦点にペンタックスのハイアイポイントの
 14mmアイピースをつけて、無限遠・最望遠に固定したデシタルカメラ ニコンCOOLPIX-5000 で
 コリメーション撮影。カメラはアイピースに当て手持ちで撮影。
 たいした映像にはならないと思ったので、詳しい記録はとっていない。
 右上に「南極冠」と呼ばれる白い南極の氷が見える、これはドライアイスで光を強く反射している。
 今回、これが見られたのも大きかったが、肉眼では一本筋の様に模様を確認出来た。
 左下の青っぽいのは、収差の影響かと思ったが、ハッブル望遠鏡の写真も同じだった。
 しかし、これは右上が赤いのでやはり色収差か。

  火星 2003.8.10 撮影

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