作用・反作用の法則の正しい理解

作用・反作用の法則

物体Aと物体Bが力を及ぼし合う時、相互に及ぼし合う
力の一方を作用と呼び、他方を反作用と呼ぶ。
作用と反作用は、同時に一直線上で働き、
この両作用の大きさは等しく、方向は反対である。

分解して理解すると

・作用、反作用は、作用線という一直線上で働く。
・作用と反作用の大きさ(絶対値)は、等しい。
・作用と反作用の向き(方向)は逆である。
・作用、反作用は同時に相互に作用し、片方だけが
 一方的に力を及ぼすということはない。

作用・反作用の法則は、ニュートンの運動の第3法則のことである。
反作用を英語では、reaction (リアクション)という。

衝突の例

 物体Aが物体Bに衝突した場合、衝突により
 物体Bが受けたものが作用であり
 物体Aが受けたものが反作用である。
 衝突前の運動に作用(反作用)が加わり
 それぞれの衝突後の運動が決まる。

離れて働く力の場合

 物が地面に落下する場合、物と地球は等しく引き合う。
 地球が物を引くのが作用だとすれば、
 物が地球を引くのが反作用である。
 同じ力で引き合っても地球は慣性質量が大き過ぎてほとんど動かず、
 反作用は観測することが出来ないため、物体が一方的に加速しながら
 地球に近付くのが観測されるだけである。
 (このため、見えない反作用を説明するために誤解が生まれる。)

言葉による誤解

・「作用と反作用」という名称
 作用が主で反作用が従という主従の関係と受け取る誤解がある。
 この2つは、対になった立場が違う対等の力である。
 一方が能動で他方が受動であっても、作用は相互に対等に働く。
・「反作用による押し返される」という表現
 この表現を使って教えるのには罪があると思う。
 相互に力を及ぼすということの行き過ぎた表現という感じがする。
 次のような場合は、誤解が少ない。
   向かい合っているA君とB君がいる。
   A君がB君の胸を手で押すと、B君は作用で押され後ずさりし、
   押したA君も反作用で後ろに押し返された。
 しかし、次のような場合は明らかに問題だ。
   ローラースケートに乗った人が壁を押すと、
   壁が反作用で人を後ろに押し返した。
 明らかに、壁は押し返したりしない。
 作用は、壁を押したことであり、反作用は人が後ろに加速することだ。
 壁を押した人は、自分を後ろ向きに進めるために押したと考えると
 押し返しでなく、反作用を期待して人が壁をよりどころにして自分自身を
 後ろに押しているのである。
 また、押し返すという言葉には、反作用が作用より遅れて発生する
 というニューアンスを持つことも問題だ。

もしも反作用がなかったら?

 もし、一方的に作用だけを与え、反作用を受けないとしたらどうだろう。
 荷物を持っても重さを感じないだろうし、何かを押しても自分は
 踏ん張る必要もなければ、反動を受けることもない。
 手応えがなく雲をつかむような世界になってしまう。

数式を使った説明

 言葉で表現すると曖昧になるので数式で説明するのだ、という人がある。
 しかし、数式は記号であり、馴染みがない人にとっては
 理解を妨げる暗号になっているとも言える。
 数式は、概念を記号で表現しているので、概念を理解した人は、
 等式を記号として扱うことができるが、概念を理解していない人が
 数式から概念を獲得しようとしても、それは本質的意味を持たない
 記号であるから記号からはその約束事は分らないのである。
 多くの初歩的な解説書できちんと説明すべきを数式をチョロッと書いて
 説明を省略しているようなケースが多いと思う。
 結局そういう場合は、何も説明していないのである。

実例を検証して理解を深める

科学の基礎は、実験と観察を行って事実に矛盾しないよう検証することである。
理論は、今までの理論で説明出来ない新たな現象の発見により、
それを統合して説明出来るものへと発展して行く。
概念理解というのも、理論を色々な事例に照らし合わせることで
その全貌が見えてくると言える。

【正しい例】
○大砲を発射すると反動で砲台は後ろに下がる。
 これは砲弾を発射した反作用によるものである。
○質量が同じ鉄球A、Bがある。静止している鉄球Aに
 移動して来た鉄球Bが衝突したら、作用により鉄球Aは、
 「元の鉄球Bの移動速度」で移動し始め、鉄球Bは、
 元の運動が反作用で打ち消されて衝突した場所に静止する。
○杙に結ばれたロープを人が1kg重の力で引く時、
 人は、1kg重の力で引っ張っており、同時に
 杙は−1kg重の力で引っ張られている。

【間違った例】
×壁を手で押しても動かないが、これは壁が反作用で手を押し返して
 その力がつり合っているから動かないのである。
×Aさんは荷物を1kg重の力で引くと
 荷物は、−1kg重の力で引き返す。
 よって、ひもには、2kg重の張力が働く。
×物体Aが物体Bに作用する場合、物体Aが物体Bに作用を与えているのだが、
 物体Bから見ると作用と反対の大きさの力で反作用を与えている
 という見方もできる。
×2kgの荷物がある時、手で2kg重の力で持ち上げようとしても、
 反作用で打ち消されてしまうため2kg重より強い力で引かないと
 持ち上がらない。

Date: 2006.5.2

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