ナツちゃん / おてがみ 


「おじいちゃん、おばあちゃん、げんきですか.ナツだよ.おまつりにつれていってね.」

ナツちゃんは、幼稚園でひらがなを習ったので、秋田のおじいちゃんとおばあちゃんにはじめてのおてがみを書きました.
お昼前にお母さんのお買い物について行って、郵便局で切手を買ってもらい、ポストに入れました.
郵便屋のおじさんはナツちゃんの字を読むことができないので、封筒の宛名は、勿論お母さんです.

ナツちゃんが遊んでいるすきに、お母さんは秋田のおばあちゃんに電話をして、ナツちゃんのはじめてのおてがみの内容を話しておきました.
お母さんは、ナツちゃんに話を聞かせてもらっていたので何が書いてあるかわかりますが、秋田のおばあちゃんはナツちゃんの字を見ても何がなんだかわかりっこないからです.

おやつのを食べていると電話がかかってきました.
お母さんは、どうも秋田のおばあちゃんと話をしているようです.
「ナツ、秋田のおばちゃんからだよ.」
「おばあちゃん、ナツだよ.」
「ナツちゃん、字を習ったんだね、おてがみを読んだよ.おへんじを書いてあげるからね.」
秋田のおばあちゃんは、ナツちゃんに着せるゆかたの大きさを聞き漏らしたので、お母さんさんに電話をかけてきただけなのですが.

「もう、おてがみ、ついたんだ.」

ナツちゃんは、赤いスクーターに乗った郵便屋さんが夕方に配達に来るのを知っています.
おやつのすいかを食べ終わると、近所のおともだちが、少し離れた公園に遊びに行こうと誘いに来てくれましたが、郵便屋さんが来るのを待たないといけないので、今日は、マンションのなかの広場で遊ぶことにしました.

夕方、郵便屋さんが配達に来ました.
ナツちゃんは、郵便屋さんの配達について歩きましたが、ナツちゃんちのポストは素通りです.
「ナツですが、おばあちゃんからのおてがみ、来ていませんか.」
郵便屋さんは、黒いかばんのなかを念入りにを捜してくれましたが、 ナツちゃん宛てのおてがみはありません.
「おばあちゃんからのおてがみ、どっかへ行ってしまった.」
ナツちゃんはべそをかきました.

出したばかりで着いてももいないおてがみをおばあちゃんが読んでくれたために.


清水祥太のおもしろくても塾に戻る