− この子は、おととしの子.あの子は、去年の子.
ナツちゃんは、おともだちのおうちで飼ってもらっている金魚をながめて、言いました.
ナツちゃんは、夏祭りの金魚すくいの天才、でも、お父さんは、家で飼うことを許してくれません.
− 犬や猫も飼ってくれないし、お父さんは、生き物が嫌いだからなんだ.
と、ナツちゃんは考えています. 本当は、夏祭りの縁日の金魚は弱くて、死なせてしまうとかわいそうだからとのお父さんの優しい気持ちなのですが.
今日は、近所の神社の夏祭り. おともだちと待ち合わせた天才ナツちゃんの向かう先は、勿論金魚すくい.
田舎のおばあちゃんが送って来てくれた新しいゆかたのすそをまくり上げて、挑戦です.
おともだちみんなは、たった1匹もすくえないうちに紙が破れてしまいましたが、さすが、天才ナツちゃん、今年は15匹の新記録です.
− 家で飼うんだ.
ナツちゃんは、強い決心を心に秘めて家に帰り、お母さんがいないことを確かめて、お風呂の水のなかに金魚を放しました.
次の日、お父さんは少し離れたショッピングセンターまでナツちゃんを連れていって、大きな水槽を買ってくれました.
お母さんが、金魚がいることを確かめないでお風呂をわかしたらどうなってしまったかって?
仕事から帰ってきたお父さんが、お風呂に入れなかったことだけは確かです. |