SE/30貧乏グレースケール化計画(その2) 前回その1の実験結果とその考察を基に、改善実験を行いました。その結果をここに記述します。 結果から言うと、再現はできたが安っぽい回路相応の画像品質でした。そして理論的にはさらなる 改善すべきポイントが見えましたが、回路が複雑になる為さらなる回路検討が必要になりました。 1.負荷抵抗と直列のL1をショートさせて観測 結果変わらず、高域での振幅特性悪いまま。ゲイン1/2位のまま。 但しオシロスコープで見た所、L1と負荷抵抗の接続部にはかなりの映像信号が現れているので、 ショートすることにより、この観測された映像信号が負荷抵抗にかかることになるのでいいかなって 思いました。 でも今までのこの考えはまちがいで、各種資料で調べたら、むしろ高域の帯域補償の手法のであることが 判明しました。これは並列ピーキングという高域周波数特性を改善させる帯域補償の1つで、まさにこの 負荷抵抗に直列にLを入れる回路でした。 従って、このL1については純正回路そのまま使用とすべきと判断しました。 2.シンクセパレータLM1881による複合同期の分離 今回はこの回路は必要なくてもよい方法がみつかったので、実験は後回しにしました。 又、このLM1881での複合同期分離回路は、私自身別の実験での使用実績があるので、今回実験 しなくとも、理論とおりに簡単に再現できるとおもっているので。と、以下に新たな発見です。 新たな発見:それは、LCシリーズ等、IIciよりちょっと新しい機種になると、12インチモードでの 出力に、複合同期と垂直/水平分離同期が同時に出ているという事実です。これは、Mac使いのある 人からの情報を基に実際の確認(LC2)をして確証しました。AppleのIIciからIIsiやLCシリーズ のデベロップメントノートを読みました。いずれの機種のノートでも12インチモードでは複合同期信号 が出ると書かれています。12/13インチモードは複合同期、15インチかそれ以上のモードでは 分離同期だよ、と。しかし12/13インチモード時に、IIci以外のノートには分離同期が出ないとは 書かれていません。っていうか書いてないだけっていうか・・・。で逆手に取ると、実際出てたりする わけだ。私は手持ちのLC2では分離・複合の同時出力をオシロスコープで確認しましたが、他の機種 では確認してないので判りません。あとIIciは分離は出てないって事実だけ。 あと、LC3も両方でてるようです。なぜなら、どこかのWebページで旧98用モニタをLC3に 接続するアダプタの製作紹介があり、その回路は分離同期信号を利用した配線になっているからです。 てなわけで、今後の実験にはLC2を用いる為、複合同期分離回路は必要なくなりました。 実際、この手の改造をする場合、LC475等上位機種のロジックボードを使う事が多いでしょうから。 3.13インチモード(35kHz)へ追従できるか。 今回実験した結果の感触からでは、現時点の判断では無理っぽいです。 以下に示す実験結果を読んで頂けると感触がつかめるでしょう。 でも、VGAモード(31kHz)なら可能性はあるかな? 元々の9インチって水平同期周波数22.7kHzだったんですねえ。てっきり12インチモードと 全く同じ解像度で24.5kHzだとばかり思ってました。 横は一緒でも縦の解像度はちがってたんですね。ネットスケープ2での一般設定のダイアログで、 9インチだと下のOKボタンなどが見えずキーボードのEnterを押して設定してましたが、 12インチだとなるほどこのOKボタンが見えるのでマウスで押せますね。 でも、アップルのスペックデータベースだと12インチの解像度で書いてある。アップルのうそつき? 4.映像信号のカップリングについて 前回の実験の考察で、映像信号はDCカップリングしなければいけないと思っていた。と書きましたが これはその時点でACカップリングでもいいと思ったからです。でもこれは半分あたりで、半分はずれ でした。 結論は、基本的にはDCカップリングですが、ACカップリングの場合はクランプ(直流再生)回路を 使用する必要があるということです。例えばシンクチップクランプやペデスタルクランプ回路を用いる ことで、ACカップリングでの、失われたDCレベルを復活(再生)させるというものです。 従って、前回の実験での初段ICアンプへの入力のコンデンサによるACカップリングは、IC内部に クランプ回路が内蔵されていたので正しい使い方でした。しかし、ICとトランジスタの結合に、やはり コンデンサを用いてACカップリングをしたのは間違いでした。トランジスタにクランプ回路は付加しな かったからです。そのため実際に以下の不具合が発生しました。 その不具合とは、ファインダを表示している通常の白基調の画面時に、適切な明るさになるように輝度 調整をしてあるときに、スクリーンセーバが動作して黒基調の画面になたとき、画面が黒ではなく灰色に なってしまうというものです。 というわけで前回の実験でのIC−トランジスタ間のコンデンサでのACカップリングは失敗でした。 具体的対策はいずれ考えようっと。 5.SE/30のモニタの「わな」 調べるにつれて、アップルの設計者にやられたという感じです。っていうかよくここまで手抜きというか コストダウンの為の設計がなされているということが判りました。これは私の思い込みが、今回の計画の 困難を予想出来ない原因でした。 思い込みとは、SE/30の中は、ロジックボードから一般的なモニタ分離型のマシンの映像出力用 コネクタに出ている信号と同じ信号が出ていると思ったからです。だから、他機種のこの一般的な映像 信号をSE/30のモニタへぶち込めば、あとはグレースケール映像のリニア増幅だけ処理すれば簡単に 写るとおもっていたからこの計画を実行したのですから。 ロジックボード --> アナログボード --> CRT(CRT後ろの基板を含む)という接続は、すべて1つの 筐体内でクローズされているので、外部の汎用的信号にする必要がないくもっとも単純な回路で再現できる ように設計されているからです。ロジックボードでは、自己のビデオ回路のドットクロックを用いてCRT でちょうど都合のよい表示位置制御信号を供給できる為、CRT側はロジックボード側から自分に都合の よいそのまま使える信号がくる事を想定した、ほんとうに単純な必要最小限の回路のみで、独立した一般の CRTモニタのような色々な回路は一切ありませんでした。ここが今回の計画のネックの一つです。 うーん。やっぱりやられた。 6.水平同期信号の観測・比較 問題の中でまずは水平同期信号の違いでした。何が違うかというと同期パルス幅・デューティー比です。 実測するまで違うとは判りませんでした。なぜなら、回路図上は、垂直同期信号(H sync)、 水平同期信号(V sync)という一般的な映像信号の同期信号名と同じ信号名だったので。 測定結果は以下のとおり。 機種:水平同期の周期(周波数)、LOレベル期間、HIレベル期間、デューティー比LO、 水平同期の立ち下がりと映像信号開始位置までの時間(1周期に対する%) SE/30:44μS(22.7kHz)、18μS、26μS、41%、11.2μS(25.5%) LC2 :41μS(24.4kHz)、 2μS、39μS、 5%、 7.2μS(17.5%) という結果でした。水平同期のLOレベルの期間の長さが・デューティー比が全く違いますね。 これは、一般の水平同期は同期タイミングのみ伝えればよいので、パルス幅はせまく、その幅の基となる 規格は多分、TV信号規格のRS−170Aにあり大体比率が近似していると思います。 しかし、SE/30では水平同期のタイミングと、偏向電力やCRTの高圧発生元となるフライバック トランスへ与えるドライブ信号を兼ねているのです。トランスをドライブして電力を得る為にはある程度の ON期間、つまり水平同期信号のLOレベルの期間が必要です。厳密にはちがうかも知れませんが、 この期間が50%位が最も正弦波に近く最大の電力が得られるはずです。このLO期間が短くなれば当然 電力は減りますね。実際今回の実験中にLO期間の幅を狭くしていくと、ある期間以下になると出力に現 れる電圧は低下していくことを確認しました。また、この水平同期LO期間は、水平偏向用ノコギリ波の 発生に深く関係しますので水平画像位置に影響があり、それも考慮する必要があります。 LC2の水平同期信号をそのまま入れると、LO期間があまりにも短い為、電圧はほとんど出ず、バシバシ という異音がフライバックトランスから発生します。いかにも部品に悪影響を与えているぞという音です。 あーおそろしや。当然画面は出ません。 尚、垂直同期はざっと見た感じでは大きな差異はないようなので、今はほっときます。 7.水平同期信号に幅を持たせる回路の実験(1):ワンショットIC 水平同期信号からフライバックトランスをドライブする為の信号を作る為に、水平同期信号をタイミング の基準にして、適切なデューティー比をもった信号を作ります。つまり水平同期信号のLOレベル部分の 幅を広げます。色々な方法が考えられますが、まずは最も簡単でポピュラーなTTL ICのワンショット ICと呼ばれるモノステーブル(単安定)マルチバイブレータを用いた回路で実験しました。 使用したICは、74HC123です。まずはこれに160kオームの抵抗と390pFのコンデンサで LO期間のパルス幅を約19.5μS・デューティー比47.6%としました。 この値での実験では、みごとうまく動作しました。LC2からの出力で画像も現れました。成功です!! しかし、あらたな問題が発生しました。それは画面の水平位置のずれです。 この後、後で出てくる水平位置ずれ対策(3)ともっとも相性の良い値の結果値は、120kオームと 390pFのコンデンサで、13μS・デューティー比31.7%となりました。 (注意:ここでのコンデンサの値は記録が不明確なので正しくないかもしれません。また、この抵抗と コンデンサの値は、使用するICのメーカやロットによって値を調整する必要があります。) 8.水平位置ずれ対策の実験(1):ワンショットICの調整 あらたな問題の画面の水平位置のずれですが、画面が左にずれて、右側が約1cm空いていて、左側は 2cm位紙を折り返したように重なって映っています。これは入力映像信号の水平同期周波数が異なるの と、同期信号に対する映像信号のタイミングが異なっている為です。 これを補正する為に、HC123での水平同期パルス幅を調整してどこまで位置をずらせるか実験しま した。結果は調整範囲に限界あり、この方法だけでは完全調整はできなかったです。パルス幅を狭くなる 方向にしてやると少しですが右側に移動します。しかし、パルス幅をだんだん狭くするとあるパルス幅 以下でフライバックトランス出力の30V電源電圧が下がり始めてしまい、このギリギリの所でもまだ ずれたままです。別の対策方法が必要です。 9.水平位置ずれ対策の実験(2):ワンショットIC2段 ずれの要因は、水平同期信号の立ち下がりと映像信号の始まりが純正より時間的に早いためです。 従って理屈の上では、映像信号の時間を遅くするか水平同期信号の立ち下がりを早くするかすればいい 事になる。そこで、入力水平同期信号の立ち下がりから次の水平同期信号立ち下がりの直前に変化する ような、つまり約1周期遅れでいてその1周期より少し早いタイミングで立ち下がる信号をHC123で 作成する。これを基準にして、これまでの水平同期入力信号に幅を持たせる回路に接続する。 その結果、基本的に画像位置をずらすことには成功。しかし!画像にジッタ多くてだめでした。 画像の垂直の端が1ドット分位、左右に水平1ライン毎にばらつき・ふらつきが発生している為、鑑賞に 耐えない画像が映し出されました。 この要因として、CRの時定数でパルス幅を決めているHC123の特性や、使用したCの特性、ICの 電源ラインへのパスコン未挿入、配線長の長い空中バラック配線、映像回路との共通電源等々、色々な 事が考えられます。HC123以外の要因であればそれらを改善することができますが、その実験はまた 後で。HC123の信号2段重ねが悪いのか?結局この改造はボツという事で元に戻しました。 トラ技等の記事では、水平のタイミング程度ではHC123の出力をそのまま使っているものが多いよう ですが、垂直同期等時間的に長いものは水平同期でラッチでタイミングを取ったり、高級な回路だと映像 信号のドットクロックを水平同期からPLLを用いたゲンロックICを用いて発生させて、それを基準に デジタルカウンタ・コンパレータでやっているようです。この回路を組むとなると、またまた部品数が増 えて、貧乏計画ではなくなってしまいますしねぇ。やれやれ。 10.水平位置ずれ対策の実験(3):水平偏向共振コンデンサ 最近(1998年)はやりの12インチモニタの改造に使われたのと同じ手法をやってみました。結果良好。 この方法は私自身が過去にPC−9801用24kHzモニタのVGA対応をやったときにも行なったし 実績があるし、NECのPC−TVxxxていう15/24/31kHz3スキャン用TV兼用モニタは ここのコンデンサをリレーで切り替えるような設計になってるし、いいんでないでしょうか。 但し、元の純正ロジックボードでの画面位置は当然逆にずれますね。=兼用できないってこと。 変更箇所は、アナログボードのC12コンデンサ。表示333、つまり0.033μFの400V耐圧。 これを手持ちのコンデンサの並列・直列の組み合わせで色んな容量で実験した結果、以下のとおりになり ました。但し、これは水平同期パルス幅が13μSの場合です。 C12の容量 0.0165μF:もう少しってとこでだめ。 0.0139μF:左ギリギリ。 0.0121μF:バッチリOK!オリジナルの約1/3の値ですね。 0.0104μF:少し右へ。 0.0082μF:さらに右へ。 C12コンデンサの容量を減らしていくと、輝度が下がってきて、コントラストも落ちてくるような 気がします。むやみに値を減らさないほうがいいでしょう。 注意1:ここは供給電源電圧とは比較にならない程、共振現象で高電圧がかかっています。さわらない ように。また空中放電もありうるので、リード線の狭い間隔や、半田のとんがりを作らないように。 注意2:C12コンデンサの容量を減らすと輝度が落ちる為、いつもの輝度調整ボリュームで輝度を上げ るんですが、この輝度を上げた状態でコンデンサを元に戻すと輝度が高すぎ、どこからか「バチバチ!」 と放電の音がします!元に戻すときは輝度調整もさげておきましょう!おーこわ。 注意3:使用するコンデンサは充分な耐圧のものを使用しましょう。絶縁破壊でショートしたり、破裂や 出火の危険性もあります。ちなみに私の手持ちのは1.5kVでした。 11.ACカップリングの対策実験:発光ダイオードによるDCカップリング ごめんなさい。ここの記録ってまじめに取ってなかったです。だから電圧とかわかりません。 てなわけで、初段のICと次段のトランジスタのベースの接続を電解コンデンサでACカップリング させていましたが、スクリーンセーバの動作で不具合が発覚したので対策します。 ここに使った初段ICのNJM2267ってこの回路にいまいちですね。入力はACカップリングで シンクチップクランプが付いて、6dB増幅迄はバッチリですが、出力は75オームドライブのAC カップリングを前提になっているのが今回のにあわないです。この出力がACカップリング前提の為、 出力電圧にDCオフセットが掛かっています。で、数VのDC電圧の上に、信号がでます。この数Vの 電圧は、入力信号のシンクチップクランプした0.3Vの6dB倍(2倍)の0.6Vではなく約2V位 です。本当の対策は適切な出力のICに置き換えるか、ACカップリングでクランプ回路を設けるべきで しょうが、回路が複雑になってしまうのでやりたくありません。 そこで、対策としてダイオードの順方向ドロップ電圧(正確な名前忘れた)いわゆるVfを利用します。 で、試しに普通の整流用やスイッチング用のシリコンダイオードでやりましたがVfが0.8V程度の為 あまり変りなし。ではVfの大きい発光ダイオード(LED)でやってみました。実験は成功です! 色は赤を用いました。Vfのもっと大きな黄色や緑もためしましたが、Vf大きすぎの感じです。 色々な赤LEDを実験しましたが、各種特性の違いか映像の見た目が違って見えます。映像が加わると、 薄暗くLEDも光ります。多分この使用方法ってインチキかもしれないですが、類似回路をトラ技の記事 で見た事があるのでまあいいか。だれか正しい知識でアドバイスお願いします。 最終的には映像の見た目がいい、手持ちの赤LED1個になりました。 12.映像信号グレースケールの再現性 今までの実験で映像は正しい位置に表示され、グレースケールもまあまあ再現されてます。しかし、 グレースケールのコントラストとリニアリティがよくありません。 コントラストは、トランジスタ出力部ですでに高い周波数でのゲイン低下が観測されてるし、もともと 2値で30Vスイングをグレースケールで約27Vで表現しているのでしかたないと思います。 リニアリティは、コントロールパネルのモニタで、グレースケールの16階調にし、その時の16階調 グレースケールバー?の階調が中央部のグレーはほぼ良いが、白と黒に近い極端が殆ど一緒の階調に なってしまっています。これは入力に対するゲインが大きすぎるのか、それともトランジスタのベース 入力に対する低い方の立ち上がり(黒側)と飽和状態側(白側)のリニアリティがよくないという事だと 思ってます。古いCRTの同サイズの規格を東芝ハンドブック調べたら、約30V〜40Vはコント ラスト確保に必要なようです。また一般的にはCRTカソード駆動に電源として60V〜80V位掛けて いるようです。てことはこれを解決するにはトランジスタに加える電圧を上げるしかないかあ。 13.その2実験結果の、まとめ 今回のその2実験で、基本的には表示はうまくいきました。特に水平同期信号の処理については、 今回行なった実験の74HC123でパルス幅をもたせ、画像位置ずれはアナログボードのC12コン デンサ値変更で実用十分でしょう。 グレースケール増幅・CRTドライブは、リニアリティとコントラストがいまいちです。これは、その 回路の電源電圧(30V)を上げてトランジスタの特性のいい中央部のみを使い、また電圧をあげること による充分な信号のスイング電圧を確保してコントラストを上げる必要があると感じました。 あと、今まで述べませんでしたが、垂直同期もちょいと対策が必要かも。というのは画面最上部位に スキューか位置ずれが、ほんの少し発生しています。気になる人には気になるでしょうから。 14.新たな対策回路の検討 今迄の実験や記事をよんでの学習で、以下の新たなる実験がひつようかなあって思ってます。 ・映像信号の、プリアンプ・CRTドライブ段間のDCカップリング・クランプ回路の再検討 ・映像信号のCRTドライブ段、電源電圧の変更(昇圧)でのリニアリティ・コントラスト向上 ・垂直位置ずれ対策:水平ラインをカウンタで数えて、完全に一致した新たな垂直同期を作る回路。 ・水平位置ずれ対策:L/Bドットクロック利用とデジタルカウンタ・コンパレータを用いた回路 ・水平位置ずれ対策:ドットクロックの発生とデジタルカウンタ・コンパレータを用いた回路 結局お金をかければそれなりの、かけなければまたそれなりの画像ってことでしょうかねぇ。 実施はいつになるやら。いいかげん疲れと飽きが出てきました。 以上(その2)終わり