いつか誰かに聞いた、青い鳥の話。幸せを運んで来るという鳥のはなし。
誰に聞いたのかは、忘れちゃったけど……でも…。

もしいるならお願い。今すぐここへ飛んできて。
私に…私達に幸せを運んで来て頂戴。あの頃のような…………。

「アオイトリはもういない」

「ねぇ、赤」
 普段の彼女からは想像できないような、か細く消え入るような声だった。もしかしたら空耳かも知れないと思いつつ振り返り、赤は彼女を見やる。
 その目が真っ直ぐ自分に向けられているのを見て、やっと先刻の言葉は空耳ではないことを悟った。
「なんだ?」
 ぶっきらぼうで、威圧感さえ含んでいる声。だけど金髪の彼女は知っている。その目に映っている人物が、本当は不器用な優しさを持っていることを……。
 きっと、自分の独白を何も言わず、黙って聞いてくれるだろう。だけど彼女はそこまで出かけている言葉を続けることは出来なかった。

 私もう耐えられない。

 口に出して言う代わりに、心の中でそっと……いや、力の限り叫ぶと、
 チェルシーは赤の背中に頭をうずめた。
「見ないで…。少しだけだから…………」
 背中を通して、小刻みに震えているのが赤にも伝わり、やるせない気持ちになる。何が彼女をこんなに追い詰めているのか、赤には分かっていた。多分、公司の中で一番赤が彼女のことをよく知っている。

 華泰は変わった。
 公司創立メンバー皆が、口には出さないものの感じているだろう。きっと、チェルシーも……。
 むしろ一番チェルシーが分かっているかもしれない。
 巫女の護衛役として、華泰が変わっていくのをその目で見ている。それに多分彼女は華泰のことを………。
 だけど、自分には止めることが出来ない。

 だからせめて、この小さな声にならない叫びを聞き続けよう。
 お前が少しでも、楽になれるように。



「ねぇ、幸せの青い鳥はどこにいるの?」
「青い鳥はね――――――」

二次創作ページへ

初めての二次創作。
チェルシーが赤に弱音を言う……というシチュエーションを書きたかったんですが、チェルシーは言ってくれませんでした。
言わないよね、チェルシーは。
チェルシーと赤のコンビは見ていて安心します。というか燃えます。
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