生まれてきちゃいけなかった人間なんて、誰一人いないのだと……信じたい。
――信じさせて?

「存在理由」

「ねぇ、ジーク! 私の買い物に付き合って!」
「………いや、俺はすぐ戻――」
「さぁ行こーっ! 早く早くっ!」
「………仕方ないな…」

 腕をがっしり組まれ、向きかけていた方角と真逆の方向へジークは歩き出す。
 溜め息と共に出された一歩は、それでも結構軽やかで、隣を歩くエリーを見る表情は穏やかだった。

「ねぇ……、ジークは…」
 普段の有り余る元気さを感じさせない声音に、ジークは目線を僅かに下にずらす。続く言葉を言い出せないでいるエリーは、どこか遠くを見るような目。
 少女は静かに組んでいた腕を外し、そのままジークの数歩先で立ち止まった。
 振り向かない彼女の言葉を、青い髪の青年は急かすでもなくじっと待つ。
「ジークは…、もし…もし…時を守るためにどうしても私を殺さなくちゃいけなかったら…そしたら……」
 その先は言わないでもジークには分かった。

 時を守る事を最上のこととしているジーク。
 それを考えれば、自分の問いに対する彼の答えは自ずと決定する。どうしようもない問いだったと、エリーは少し後悔しながら笑顔で振り返る。
「ごめんっ、今の忘れて!」
 その笑顔にぎこちない何かを感じると共に、ジークの胸に奇妙な痛みが走った。
 昔の自分なら決して浮かばない考え。決して紡がない言葉。「俺も変わったな」と遠いところで思う。

「別の方法を考えるさ」
「えっ!?」

 笑顔から一変して、驚いて目を見開いているエリーに、ジークは大股で近づく。
 彼女なら数歩だった距離が、彼なら三歩。
 一瞬で自分の目の前に来た青年を、エリーは呆けたように仰ぎ見ている。

「別の方法を考えるさ。お前を殺さなくて済む方法を、もちろん時も必ず守る」

 何が言いたいのか理解したと同時に、エリーの頬が赤く染まっていく。嬉しさや恥ずかしさが入り混じったような不思議な感情が体を駆ける。
 高潮した頬を見られたくなくて俯いた少女を、穏やかな気持ちで見ていられる自分に、ジークは心地よさを感じた。
 それは決して昔の自分には……、時を守ることだけを大事な事だと考えていた頃の自分には、なかった感情で。知るきっかけをくれた目の前の少女と、彼女を守る少年に少なからず感謝した。
「エリー…、買い物はいいのか?」
「えっ!? あっ、行く! 行くよ!?」
 勢い良くあげた顔はまだ赤みが差していて。照れ隠しのように早歩きをするエリーを、ジークはゆっくり追いかけた。

「ジーク…、ありがとねっ」
 前を向いたまま放たれる言葉は、さっきとは全く別物で。
 彼女の明るい声にジークも自然と笑みが浮かぶ。


 その後、上機嫌のエリーが買った膨大な量の買い物袋を、青い髪の天才魔導士が持つことになったのは、想像に難くない。

二次創作↑

初めてTUG以外の二次創作をしました。
前々から書きたい書きたいと思っていたRAVEです。
エリーとジークが一緒にいて、一歩離れた場所でジークが微笑ましくエリーを見ている感じが好きです。とても好きです。
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