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2003/01/01 |
| 企業の雇用問題が焦点になっている。背景には、企業の業績低迷に伴う人員削減、その結果としての失業率上昇という当面の問題とは別に、ポスト工業社会における企業の競争原理の変化という本質的な問題が存在している。 20世紀を支配した工業化社会における企業の競争力の源泉は、大規模な生産設備を持ち、多くの労働者を囲い込むことにあった。企業が規模と安定を求め、競って巨大化する中で、それにふさわしい雇用形態として定着していったのが、終身雇用である。これによって、企業は大量の人材を長期に確保し、個人は生活の安定と引き換えに忠誠心を提供してきた。 実は、終身雇用は日本だけの専売特許ではない。米国でも、高度成長が続いた1970年代までは、終身雇用は特別なものではなかった。 ところが80年代に入ると、米国企業は製造業を中心に競争力を失い、生産規模の縮小や人員削減を進めざるを得なくなった。さらに、比較的単純な生産や事務業務の効率化・標準化が進められた。その結果、これらの業務従事者を中心に終身雇用が崩れ、雇用の流動化が進行していったのである。そして、情報技術の発展がこの流れを加速していった。 今日、企業の競争力の源泉が、知識、技術、ブランドなどの知的資産に移行していく中で、知識労働者の価値が飛躍的に高まってきた。この層は組織への帰属意識は高くないが、挑戦的な仕事を通じて自らの能力を高める機会に恵まれ、公平な評価があることなどによっては、企業に最大級の貢献が可能となる。一方、その職場に失望すれば、進んで離職することなどから、もとより流動性は高い。 こうして、景気の良し悪しにかかわらず、経済・社会の構造変化によって労働力の流動化や雇用の多様化は確実に進行してくる。実際、日本企業においても、共通的な事務作業や単純労働にアウトソーシングやパートタイム社員を活用することは、もはや常識である。 しかし、流動化する知識労働者を確保するには、雇用体系や処遇の柔軟化・多様化だけでは不十分である。企業には、こうした人材を惹きつけて止まない魅力的な企業文化が求められている。 これからの企業と個人の関係は、お互いに切磋琢磨しながら、成長していく関係へ変化していく必要がある。 そして、こうした企業文化こそが、企業の最も重要な知的資産となる...。 |