愛がかなう日(第6話)
直江は枯れた草をかき分け、杭につなげられているボートを見つけた。 ひもをほどき、川の真ん中までボートを進めたところで仰向けに寝ころぶ。 目をつぶると川の音が聞こえた。 直江はこの音が好きだった。 まるで胎児のように丸まり、直江は眠りについた。 そのまま川を下り、水門を越えた所で直江はふと目が覚める。 「わぁー、ホントだすごいタンポポ!!ありがとー!!」 倫子が小学生ぐらいの男の子と一緒にはしゃいでいた。 早速タンポポを掘り返し始めているのが見える。 ───バサ、バサバサ、バサバサ… カモメの羽音に目を向けた倫子が直江を見つける。 「せんせぇ…。直江先生!見て下さい、こんなにたくさん!」 全身を使って喜びを表現している倫子を、直江は一言も発せず見つめていた。 太陽が直江の綺麗な横顔を照らしている。 「先生!ココ来てみて下さい!」 嬉しそうな倫子の声が静寂を破った。 とたん、直江は"ガッ"っとオールを掴んだ。 そして…… 「ちょっと先生、何で逃げるんですか!!」 「だってお前に近づいたら俺まで引っこ抜くだろ!」 「何を引っこ抜けって言うんですか!?」 「×××××」 「なっ…/// あんなモノどうやって…!」 「よく言うだろ!『コック引っこ抜いて水銀ブち込むぞ!』って!」 「知りませんよ、そんなこと!」 「うわっ、ダッセー!!」 そんな低レベルな争いをしながらも、直江のボートをこぐ手は止まらなかった。 その時、倫子はあることに気が付いた。 「先生!そっちは滝ですぅ!!」 「そんなこと言ったって俺は騙されねぇぞ!バーカ、バーカ!!」 しかし直江は取り合わなかった。 あぁ、ムカツク。 しかし見殺しには出来ない。 倫子が心の中で葛藤しているうちにボートはドンドン流されていった。 「先生!危ないっ!」 ───ガックン… 「ぎゃぁぁぁぁぁ……!!!」 「だから滝だって言ったのにぃー!!」 「そういうことは事前に言えー!!」 「言いましたー!!」 「う゛おぉぉぉぉぉ……」 ───…ポチャン… その滝では時々、河童と戯れる美貌の青年が目撃されると言う…。 |