「チャコティ、僕、いっそ女だったら よかったかなあ」
・・・おまえの言葉は突拍子もなく、いつも俺を苦笑させる。

俺の部屋のベッドは既に、休息をとる場所ではなく
おまえと愛し合うための場所に、なってしまったよ。

ヴォイジャーが、この遠い宇宙域に飛ばされた頃
おまえはいつも、不安な色の、瞳をしていた。
そして、それを他人に悟られまいと、必死になって
任務に集中しようとしていた。

なんとかしてやりたくて、初めて食事に誘った時
「マキ」に対するおまえの偏見が、俺の胸をえぐった。

俺が「マキ」であったがために、おまえの信頼を得られないとすれば
それはとても悲しいことだ、もっと俺という人間を見て欲しい、
それから、俺への態度を決めて欲しいという俺の言葉に
 おまえは素直に頷いてくれた。

★。、::。.::・'゜☆。.::・'゜★。、::。.::・'゜

気付いていたかい?
初めておまえを見た瞬間、俺が今までしてきた恋愛なんて
ただの「恋愛ごっこ」にすぎなかったかのように、どこかへ弾き飛ばされてしまったんだ。

この腕に、おまえを抱いたら、どんな顔を見せるだろう・・・
日毎に募る熱い想いと、夜毎に耽る不埒な刹那。

自分で自分を抑えることが、こんなに難しいなんて、
俺には初めての経験だった。

何度も何度も食事に誘い、他愛のない会話を交わし・・・
酒の勢いで部屋に縺れ込んだ夜は、
はっきり言って、どうにかなりそうに苦しかった・・・。
 

夢にまで見た、おまえの素肌を、この手の平に感じる。
酒のせいとはいえ、淫らに声を上げる、おまえの姿に
俺も高まりを隠せないまま、このまま時間が止まってしまえ!と願った。

「おまえの嫌いな・・・マキの男に抱かれる気分は、どうだ・・・?」
首を横に振るだけで、潤んだ視線で俺を見上げるだけで
おまえは俺を・・・虜にするのに充分だ。

「俺には、わかっていたよ・・・ずっと・・・
 ・・・こうしてほしかったんだろ?」
威圧的な台詞を口にすると、おまえの身体がビクン、と、しなった・・・。

★。、::。.::・'゜☆。.::・'゜★。、::。.::・'゜

あれからもう何度、今では酒の勢いを借りなくても
おまえを抱く事のできる関係に、俺達は、なったけれど・・・

「女だったら・・・?・・・どういう意味だい?」
「だって、女だったら、ずうっとチャコティと一緒にいられるじゃないか。」

「今だって・・・ずっと一緒にいられる・・・と思うが・・・?」
「だから・・・地球に帰ってもさ。結婚したりとか、さ・・・。」

俺はおまえの目を見つめながら、肩を抱き寄せた。
艶のある肌に指先を沿わせ、おまえの唇から漏れる
掠れた溜息の上に、ありったけの気持ちをこめてキスを重ねた。

よく聞いてくれ、『かたち』は、関係ないんだ・・・
ふたりの『かたち』で、愛し合って生きていかれるなら、それでいい・・・
いつも、どんなときでも、俺がほしいのは・・・

「おまえだけだ、ハリー。」・・・言葉になったのは、ひとことだけ。
それ以上は、もう何も・・・愛(あい)しすぎて愛(いと)しすぎて
伝える術が、みつからない・・・

(終)