リビー、君を想えば僕は、どんなに今が苦しくても、耐えていかれる気がしてた。
ねぇリビー、今でも君は僕を待っていてくれてるの?
そして君は僕だけを信じつづけて、その長い髪を風に揺らしているの・・・?
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「ハリー」
チャコティの呼ぶ声で、僕はようやく、眠りの淵から意識を呼び戻された。
「どうした?・・・まだ目が覚めないのか・・・?」
「・・・。・・・平気・・・・。・・・。」
チャコティの部屋で目を覚ました僕は、昨夜、床の上に脱いだバスローブを拾う・・・。
ここで目覚める朝は、もう何度目だろう。
僕はバスローブをズルズルと引きずりながら、ソニックシャワーに向かう。
・・・頭の中に、靄がかかっているようで、いまひとつ、スッキリしない。
昨夜は・・・
確か、任務があけて・・・夜はチャコティと食事の約束をしていたから
僕は・・・この部屋に来たんだっけ・・・。
そうだ、あのワイン・・・チャコティの選んだワインのラベルは、
どこかで見たことがある、と思ったんだ・・・。
・・・リビーの・・・彼女の好きだったワインと、同じ物だったんだ。
それで僕は、彼女を思い出して・・・泣いたんだ・・・。
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いつ終るとも知れない、航海の中で、彼女との絆だけが、僕の支えだった。
だけどどんなに強い絆も、逢えない時間の長さが、それを不安に変える。
愛する人に、愛されたい、愛する人に、必要とされたい。
そしてそのことを、この肌で実感したい。
・・・そんな「思い」が叶わないままに、時の流れだけが、残酷に過ぎていく。
だから僕は・・・僕の心は彼女を裏切って・・・
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「ハリー、どうした・・・?ワイン、少し飲みすぎだぞ・・・。」
食事中に、ぼんやりしていた僕に、チャコティが心配そうに訪ねた。
「ちがうよ・・・チャコティ・・・僕ね・・・思い出しちゃったんだよ・・。」
「・・・・?」 「・・・リビーのこと・・・」
僕が地球に、婚約者を残したまま、デルタ宇宙域に来てしまった事実、
この艦に乗っている、誰もが知っていることだ。
「フィアンセ・・・か・・・。」
眉間に少し、皺をよせてチャコティは立ち上がり、僕の椅子の左側に立った。
同時に僕も、椅子から立ち上がり、ふたりは向かい合い、見つめ合った・・・。
「だけどね・・・僕はもう・・・彼女のもとへは・・・」
「・・・それでは・・リビーに悪い・・と思っているのかい・・?」
「・・・」
答える言葉がみつからない僕を、チャコティが抱きしめた。
頬の涙を吸うように唇をよせられて、
僕はまるで リビーを裏切ってしまった罪悪感を断ち切るように
激しく くちづけを返した。
不安が大きすぎて、なにもかも忘れてしまいたい程、僕は弱い・・・
チャコティ、君は・・・こんな僕でいいの?
「ハリー・・愛している・・・ハリー」
何度も名前を呼びながら、僕の髪を撫でるチャコティ。
その手は首筋から肩先を掠め、ゆっくりと下へ移動していく、、、
体の中心を、じらすように避けて、腰から両脚の先まで
僕の肌の中で、チャコティの手の平が触れない部分がなくなるまで
やさしく、大きな、暖かい愛撫は続いた・・・。
1度か2度なら、抱き合う事も、アルコールのせいにしてしまえるけれど、
それ以上の関係は、惰性なのか、それともこれが、真実の愛なのか
僕には・・・わからない・・・わからないよ、チャコティ・・・。
はちきれそうになって僕は、チャコティの体に馬乗りになり
指先を、そして手の平を、彼の頬に、肩に、胸にと這わせながら懇願した。
「僕を・・・愛してると・・・言って・・・
僕が・・・必要だと・・・言って・・・お願いだよ・・・
お願いだよ・・・チャコティ・・・!」
・・・チャコティは何も言わず、僕の肩先を後ろへと、押し倒す。
僕はされるままに倒れ、大きく開いた両脚の間に、彼を迎え入れた。
こんな風に、まるで女とするみたいな格好で
僕を何度、抱いたっていいんだチャコティ・・・
君が僕を、必要としてくれるのなら。
「愛してるよ、ハリー。・・・俺には・・・誓って・・・おまえだけだ・・・」
「・・・チャコティ・・・」
掠れる声と、荒い息づかいの中、僕はチャコティを受け止める。
信じるよ・・・もう涙は流さない・・・だから・・・
チャコティ、君は僕を、しっかりと受け止めてよ、いつも、いつも。
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リビー、すぐに君のもとへ、帰ると言ったよね。
守れなかった約束は、時の渦に巻き込まれて、やがて消えてゆくのかな。
リビー、確かにあのとき、僕は君を愛していたよ。だけど・・・
さよなら、リビー、僕はもう、君のもとへは、戻らない・・・。