マスカットeyes






 尖った指先で皮を剥ぐ。
 露出した果肉から蜜が滴る。
 艶やかな舌が伸びて汁ごと絡め取り
 口に収まる葡萄はマスカット。




 光を透かす薄茶色の髪
 過ぎた時間分だけ背中に長く垂れる。




 自覚のない麗しさを
 誰にも明かさぬまま大人になって
 私の前でこんなにも無防備な君。




 いずれ新しい風が吹き
 心を占める者が現れたら
 軽やかに飛び立つのだろう。
 どこか遠い場所へ。




 「ムウ。」
 名前を呼んだらこっちを向いた。




 「おいしい。シャカも食べないか。」
 マスカットしか見えていないな、君は。




 緑の眼差し。
 大粒の果実。
 誰にも触れさせぬまま大人になって
 私の前で今、無防備。
















 20031216






 ウチのムウ様は、金色に近い薄茶の髪に、緑の瞳。






   はちみつlips






 今日はどうして笑わないのか
 その理由を尋ねたら




 「唇が荒れて痛い」なんて




 「笑った拍子にビリッとくる」なんて言うから




 はちみつを塗ってやった。




 珍しく大人しく言うことを聞く
 乾いた唇




 軽くなぞるだけでうすく血がにじむ。




 シャカ。




 ほかの誰かの前でも
 そんな顔をすることがある?




 知りたくないから聞かないけれど。




 甘いはちみつ
 すぐに柔らかく染み込む。




 だからもう
 笑顔を我慢しなくていい。










 20031217







 ウチのシャカは普段からけっこう普通に笑う人。





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