ゆれる季節






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 「じゃ、わが研究室は〜今年も『コンピュータ手相占い』ってことで決定ね!」
人影まばらな学食に、ミロの元気の良い声が響いた。
「操作のほうは全部シュラさん達が仕切るって言ってるから、俺は呼び込み、リアはチラシ配り…と。んで、紫龍は、キレイめのカッコして接客ね。」
学園祭実行本部への提出用紙に決定事項を書き入れる手を止め、紫龍が顔を上げた。
「ミロさん。キレイめのカッコって…まさか、女装しろってことですか?」
「ちっげーよ。お前何言ってんだよ!」
ミロとアイオリアがゲラゲラと笑う。
「いやぁしかし今年も大盛況間違いなしだな〜。紫龍は初めてだから知らないだろうけど、女の子ってホンっト占いが好きなんだぜ。階段まで長蛇の列!」
「まったくだよな。あんなのただランダムに適当な文章出力してるだけなのに…」
「チノパンとかでもいいですか?」
会話を遮るように紫龍はまたとんちんかんな質問をしてしまい、2人の笑いを誘った。
「いいよ、なんでも〜!お前ちゃんと先輩の話聞けよ〜〜」
「すみません。」
「かわいい子には絶対打ち上げまで残ってもらうんだからな!お前口下手だし、しゃべりには期待してないけど、とにかく愛想良くしてな。」
「女の子っていうのは、お前みたいに大人しい男に優しく微笑まれると警戒心を解くものなんだ。とにかく1人でも多く、しっかり引き止めておけよ。」
 女、女、女…どうしてこういつも女の話になるんだ…。紫龍はイライラした気分が顔に出ないよう必死でこらえた。在学生の9割が男子というこの大学。女子との交流に血道をあげる学友達の何と多いことか。
 学生の本分は勉学だ。いや、学生でなかったとしても、異性との交際に現を抜かし、更に言えば当然その延長にセックスがあるとデフォルトで思い込んでいる昨今の若者の風潮に、紫龍は嫌悪の情を抱いていた。
 女嫌いというわけでも、逆に男が好きというわけでもない。
 ただ、紫龍には、潔癖の傾向があった。





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