白熱灯




 与えられるままの季節は過ぎて
 同じだけの享楽をもたらせるよろこび
 指先で辿っても舌先でなぞっても
 同じだけの旋律が奏でられる手ごたえ


 「上においで…」
 「…うまく出来ないから…」
 「この間上手だったよ。」
 「……嘘。」
 優しい嘘は許される 暗黙の了解


 水面に浮かぶごと両腕を投げ出して
 白壁に映るのはまぎれもない事実
 目を背けずに見なければいけない
 電光が暴くのは赤裸々な真実


 「もう少し力を抜いて。」
 「…………」
 「…いい子だ…」
 「……あ、……」
 空々しい褒め言葉 それさえも黙認


 冷徹な白熱灯
 宙に散る髪の毛 宙に飛ぶ汗
 容赦のない影絵
 宙に霞む声 宙に消える吐息


 「こう…?」
 「そう。」
 「本当に…これで良い?」
 「綺麗だよ。」
 続けざま試みる黙契を交わして


 一度見つけたら忘れない定位置
 手探りでつかむのは新しい秘密
 二度と出逢えない偶然の交点
 まなじりに浮かぶのはうるわしい合図


 求められるままの季節は去って
 同じだけの情痴を露呈するよろこび
 爪先でさすっても鼻先で掠めても
 同じだけの脈動が止まらない熱影


 指先で辿っても舌先でなぞっても
 同じだけの旋律が奏でられる手ごたえ







 20060701




 せっくす。


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