秘密






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 印章の店で注文していた品物を受け取ってから粉屋で麦粉を3kg買い、薬屋へ薬草を届けた後郵便局へ回って、最後に市場で肉と野菜とガチョウの卵を買った。
 これで今日の用事は終わりだ。
 俺はいつもの店で駄菓子を選ぶ。そして野良猫のいる廃材置き場に行く。




 市場の裏の廃材が積んである所に、ただ集まっているだけなのか住みついているのかは知らないけれど、いつも野良猫がたむろしている。
 気の合う仲間で群れているのかもしれないし、もしかしたら家族なのかもしれない。毛色の違う猫が何匹も、寝そべったり子猫同士追いかけ合っていたり、ときには喧嘩のようなことをしたりしている。




 村へ来るたび俺はここで猫と一緒に、今さっき買ったばかりの駄菓子を食べるのが習慣になっている。
 俺が紙包みを開くやいなや猫達は寄り集まって来て、一途な目で見上げてくる。可愛らしさにほだされて、つい包みの中の大半を与えてしまい、自分の口に入るのはほんのわずかということもしょっちゅうだ。
 頭を撫でると耳を寝かせ、うっとりと目を細める。もっと撫でろと催促するように反らせた喉がゴロゴロ鳴り、望みのままにそうしてやれば満足げにニャアと鳴く。
 計算ずくかどうかはともかく、猫という動物は、自分がどんなに愛らしく人目に映るかをよく知っているのではないかと思う。




 白い猫がこっちに近付いて来た。この間までお腹が大きかった猫だ。
 後ろからやはり真っ白な子猫が3匹、コロコロと転がるように飛び出した。
 食べ物を欲しがる素振りも見せず、何となく俺の周りをウロウロした後、親子はどこかへ消えて行った。産まれたばかりの子猫のお披露目に来てくれたのだろう。




 使いに出される帰り道、毎度猫に囲まれて菓子を食べていると師匠に知れたら、俺は絶対叱られる。家にいるときでさえ、立ったまま食べるな、座って食べろ、手は洗ったかと細かいことを言うムウ様だ。外で、それも廃材に紛れてゴミやら空き缶やら雑然とした場所で、しかも猫を触った手で直に食べ物をつかみ口に入れていると知ったら、きっと驚く。そして怒る。




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