雪間 強い風が吹いていた。まばらに雪が混じっていた。 密度の薄い吹雪をくぐり、ふたりはようやく家に着いた。 ムウは厚い革の手袋で、紫龍の肩や胸に貼り付いた雪を払った。ポンポンと音を立てて叩くたび、濃紺のダッフルコートから粉雪が跳ね上がる。 目深にかぶったフードにも雪は薄く積もっていて、撫でるように払い落としてから両手で脱がせると、潰れ加減の前髪が数本、静電気で揺らいだ。 鼻が赤くなっていた。目が少し潤んでいた。 寒さのせいかもしれないし、そうじゃないかもしれない。 いつも唇に当たるはずの睫毛の動きを頬に感じて、ムウは訊く。 「背伸びしている?」 紫龍が答える。 「してません。」 「じゃあ…少し、伸びたのかな…。」 今どれくらいあるのかと問えば、予想以上に大きい数字。 そんなものか、とホッとしたり、もうそんなに、と思ってみたり。 紫龍は言った。 「やっと着いた。」 湿った睫毛がムウの頬をくすぐる。 「ここまで、遠かった。」 手放しで喜べるほど幼くはない。 連れてきてしまった。 腕の中で、背中が震えた。寒さのせいかもしれないし、そうじゃないかもしれない。 どっちでもよかった。 けれどやっぱり寒さのせいかもしれないと、ムウは思った。口の中もかじかむものなのだと、頭の隅でぼんやりと思った。 20050120 か、駆け落ち…!? |