ムウ×紫龍的観点で原作を読む。
     ■かなり曲解(いや歪曲…むしろ捏造)しております。
     ■抜け落ちている部分もあるかもしれません。
     ■台詞はなるべく忠実な再現を心掛けましたが、その実態は意訳です。






 出会い

 星矢と自分2人分の聖衣を担ぎ、この世でただ1人聖衣を修復出来るムウの住むジャミールへとやって来た紫龍。
「聖衣の修復には聖闘士の血が必要。ざっと見積もってこの場合、君の体内の1/2量の血液が要る。人間の体は1/3の出血で死に至るが…よろしいか?」
そう問いかけるムウの前で紫龍はためらうことなく自らの手首を切り、盛大に出血。
 友情のためなら命を捨てることも厭わない真摯な姿に感じ入ったムウ、精魂込めて2体ともバッチリ修復。血の気の失せた体で生死をさまよい続ける紫龍だったが、7日後、ムウの手厚い看護と紫龍自身の小宇宙パワーで見事生還。
「ありがとうムウ…あなたのお陰で復活出来ました。」
「フフ…礼には及びません。」
見つめ合う2人。
 この7日間でムウはひたむきな紫龍にすっかり心を奪われていた。そして紫龍は恩義が愛情に昇華し、気がつけばムウのことばかり考えている自分に戸惑いを覚えるように。
 荒涼としたジャミールに咲く恋の花!
 だが紫龍は行かねばならない。
「くれぐれもケガをしないように…無理をしないように。わかったね、紫龍。」
「ありがとう…わかっています。」
いまだ万全でない体を案じ心配顔のムウと、はにかんだ笑顔で出発する紫龍。
 復帰戦は対ブラックドラゴン。高性能な新生聖衣に感嘆しながら戦う頭の中で鳴り響くのは、ユーミンの「仕事もできるオートナの彼なの〜♪」って歌!そしてビシビシ伝わって来る、ムウの思いやり。貧血状態の紫龍にかすり傷ひとつ負わせまいと、驚くべき防御能力を聖衣に与えてくれていたのだ。もうドッキドキ14歳。
 そんな姿をムウは陰ながら見守り続け、得意の超能力を駆使して追っ手からテレポーテイションさせてやるなど、その後も深く紫龍と関わってゆくのだった。




 実は私も聖闘士で

 五老峰で晴耕雨読の日々を送る紫龍。ある日老師のもとに、聖域からの刺客・蟹座の聖闘士デスマスクが現れる。アルゴル戦で失明していた紫龍だったが、師に拳を向けるデスマスクに敢然と立ち向かう。
 初めのうちは井の中の蛙呼ばわりして紫龍を小馬鹿にしていたデスマスク、しかし予想を超える昇龍覇の威力にたじたじ。
「くっ…この俺様を本気にさせるとは…噂以上に優秀な奴!」
途端に異様な小宇宙を燃やし出すデスマスク。戦いを見守る老師の顔色が変わり、あれっもしかして紫龍ピンチ?
 そこへ牡羊座の黄金聖衣を着用したムウが颯爽と登場!
「デスマスク。大人気ないことはやめなさい。」
恋しい人の懐かしい声に驚く紫龍。
「紫龍を討つ者は私が許さない。それとも私と戦うか?」
すごすごと引き下がるデスマスク。
「ムウよ。お陰で愛弟子が殺されずにすんだ。お前は紫龍の命の恩人だ。」
礼を言う老師。
「ムウ…あなたは黄金聖闘士だったのですね。」
戸惑いを感じながらも、紫龍は再会出来た喜びを隠せない。
「実は俺、聖闘士廃業しようと思っていたんです。でも、あなたも聖闘士とわかって…俺は…」
「紫龍…。」
 衝撃的ながらも甘ずっぱい、聖闘士どうしでの初めての対面。豪快な五老峰の滝の音も、2人にとってはロマンチックな愛の調べ!
 だが視覚を失った紫龍には、ムウのアリエス聖衣を着けた雄姿は見えない。ゆえにムウは、「何故ヘッドを被らず小脇に抱えているんですか。」と核心を突いた質問をされずに済んでいるのだった。




 いつもあなたが

 ニセ教皇討伐のため、仲間とともに十二宮を突破することになった紫龍。まず最初は白羊宮だ。
「あれっ、牡羊座の聖闘士ってムウだったの?」
ビックリしている青銅達の中で紫龍1人が浮かぬ顔。ムウを倒さなければ前へ進めないことを考えると、どうしても気が滅入ってしまうのだ。
 しかしムウは最初から紫龍達を素通りさせてやるつもりでいた。更に全員の聖衣を親切に修復、その上「小宇宙の正体セブンセンシズなり。」と温かな助言まで。
「ムウっていい人だな。」
「ああ、それにすごい腕前だ。見ろよ、この生命力あふれる聖衣を。」
「うん。まるで聖衣の息吹きが聞こえてくるようだね。」
口々にムウを称える仲間達。まるで自分が褒められたかのように得意顔の紫龍。
 けれどこの恋は誰にも秘密なのである!
「あとで連絡する☆」
こっそり合図を交わして白羊宮を飛び出す足取りも軽く、最終目的は世界平和なんだか逢引なんだか、とにかくさっさと前へ進むぞ!
 後に巨蟹宮で因縁あるデスマスクと対戦時、ムウのアドバイスを胸の中で大切にしていた紫龍、小宇宙を究極まで高め放った昇龍覇で見事金星。
「さっきムウに小宇宙の真の意味を語ってもらったからだ…ムウ、あなたはいつもこうして助けてくれる…。」
 心の中がほっこり温かくなる紫龍に、五老峰の老師からお祝いメッセージが。
「よくやった、紫龍よ。ところで、いつの間にか目が治っているようじゃな。」
「あっ本当だ。見えるぞ!」
いいぞ上げ潮だ!ようしこの調子で急げ急げ進め進め!
 一方、白羊宮前に立ち紫龍の進行状況に思いを馳せるムウ。視力が回復した紫龍から「何故ヘッドを被らず小脇に抱えているんですか。」と突っ込まれる瞬間が近付いていることなど、まだ知る由もないのだった。




 今すぐ助けに行きたいけれど 

 十二宮の戦い後、しばらく入院していた紫龍。しかしその回復を待たずして、新たなる戦いのときが訪れる。
 五老峰で決起集会を開く青銅聖闘士達。
「でもなー。聖衣、壊れちゃったからな〜…」
思い悩む少年達の前に、ムウの弟子・貴鬼が新生聖衣を運んで来る。
「ムウ様が、すっげえ聖衣を仕立ててくれたよ!」
新しい聖衣は強度も増し、全員に大好評。
 だが予想以上の苦戦を強いられ、紫龍も満身創痍、再び視力を失いながらかろうじて敵に勝利するという有様。
 一方聖域では、 黄金聖闘士達がヤキモキしながらこの戦況を見つめていた。加勢に行こうとするアイオリアと、「黄金聖闘士、聖域を動くべからず。」という老師の指示を守るべきだと主張するムウは真っ向から対立、険悪なムードに。
 もちろんムウだって今すぐ飛んで行きたい。けれど知っていたのだ。みすみす紫龍達を見殺しにするかのような老師の言葉の奥に秘められた真実と、厳しい決断の意味を。
「だが、このままでは紫龍は死んでしまう…!」
涙を流すムウ。辛い…実に辛い!
 やがてアイオロス、カミュの意志が援軍として聖域を飛び立って行く。故人である彼等に、老師の指示は強制力を持たなかったのだ。ムウはひそかに安堵し
「どうか紫龍達を助けてやってくれ…」
と祈ったのだった。




 初めて「お前」って呼んでくれた

 完治しない目と体…五老峰で静養する紫龍。平和な時間も束の間、あるとき老師の小宇宙が五老峰より消えたことに気付く。
 不吉な予感に駆られ聖域へ馳せ参じれば、そこにはムウの師・シオンと対決する老師が。援護を試みるも絶大なるシオンの力の前で途方に暮れる紫龍。その背中を師の声が押す。
「ここはいいから、早くムウの後を追って敵をけちらせ!」
 だがムウがいるはずの巨蟹宮へ着いた紫龍は、パピヨンによるシルキィスレードの中で気絶するムウの気配を感じ取ることが出来ない。やむなく先を急ぐ紫龍と、紫龍が去った後シルキィスレードから脱出出来たムウ。
 すれ違う2人がようやく対面を果たしたのは、処女宮・沙羅双樹の園前。シャカの死に涙しながらという辛い再会だった。
 沈痛な面持ちでサガからシャカの形見を受け取るムウ。アイオリアに罵倒されるムウ。…紫龍はそっと愛しい人の傍らに寄り添い続ける。
 そして緊迫の中始まった、サガ組対ムウ組のアテナエクスクラメーション。双方互角!たまらずムウ組に加わろうとする紫龍を、ムウは懸命に退避させようとする。
「早くこの場から避難するのだ!!黄金聖衣をまとっていないお前の体では、この衝撃に耐えられんのだ!!逃げろ!!」
思わず「お前」と呼んでしまった照れ臭さ。そして呼ばれてしまった気恥ずかしさ。ゆっくり味わうことを許されぬこの非常事態が、ああ口惜しい恨めしい!
「いいえ、この紫龍、お役に立てるのなら死んで本望!!」
静止を振り切り放った紫龍の昇龍覇が大爆発を呼んだところで激突は終了。
 がれきの中、紫龍を探し回るムウの耳に、同僚のつぶやきが突き刺さる。
「死んだのかもな…。」
 動揺おさまらぬうち状況は目まぐるしく変化、ついに潜入したハーデス城でネズミとりに引っかかってしまうムウ。敵の手により落とされた冥界で、紫龍の生死も知らぬまま、地獄の最終地「嘆きの壁」を打破すべく他の黄金聖闘士達とともに力の限りを尽くす。
 同じ頃、実は生存していた紫龍は、仲間と冥界に乗り込み激戦を繰り広げていた。
 着実に前進する紫龍だったが、嘆きの壁へ辿り着いたのは壁に突破口が開いた後、すなわちムウ達黄金聖闘士が逝った後のこと。
「黄金聖闘士が開けてくれた突破口をムダにするな!」
そう叫び、壁の向こうの最終決戦地「エリシオン」を目指す少年達。
 しかし紫龍だけがそこに残る。愛するムウ達が命をかけて残した壁の入口を守ろうと1人決意していたのだ。
 万感の思いを込め、迫り来る敵に打つ百龍覇。
 やがて氷河の迎えでエリシオンへ進む紫龍…死してもなお自分を見守るムウの魂を感じながら戦い続けるのだった。



     (いや、よくもまあ…)





    20040731






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