アレルギー性皮膚炎の話
アレルギーによる皮膚の痒みは、最近非常に増加している症状です。来院される中で、皮膚炎を示す動物(特に犬が目立ちます)は大変多いので、この病気への取り組みの参考となるように、できるだけ分かりやすく述べたいと思います。
1)食物アレルギーとアトピー性皮膚炎
痒みの原因としては、まず外部寄生虫、特にノミやダニ(疥癬、毛包虫)、そして細菌などの感染が考えられます。これについては、駆除剤、抗生物質などで治ります。
これ以外の原因によるアレルギー性の皮膚炎は、食事性、アトピー性に分かれます。両者の比較を表にまとめます。
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食物アレルギー |
アトピー性皮膚炎 |
| 症状 |
顔面あるいはアトピーと同様 |
顔面に出ない、腋、内股 |
| 年齢 |
1歳未満 |
1歳以上 |
| 過敏症の型 |
IV型が主体 |
I 型が主体 |
| 除去食試験 |
症状消失あるいは改善 |
反応しない |
表中のI 型アレルギーとは、即時型免疫反応と呼ばれ、ハウスダストに代表される環境中の抗原に対して、肥満細胞と呼ばれるものが15分程度で反応し、ヒスタミンなどの物質を放出します。蚊に刺された際に出る膨疹(腫れ)と痒みも、これらによるものです。
続いて、6〜48時間かけてリンパ球や好酸球による反応がゆっくりと起こります。これがIV型反応と呼ばれる遅発型免疫反応です。I 型反応のような抗体(IgE)の関与はなく、肥満細胞に代わって好酸球が組織障害を引き起こし、Tリンパ球のTh2型細胞と呼ばれるものも浸潤します。
2)アレルギーの診断
アレルギーは、複数の原因がかかわっている場合も多いですが、まず、前述したような細菌、真菌、寄生虫などの感染の有無を適切に診断、治療しておくことが必要です。皮膚の感染症が治療されている、あるいは感染の可能性が低いのに痒みが無くならない場合、次は食物除去試験となります。
これは、原因である可能性のある食物を一定期間(約8週間)除去し、痒みや皮膚の病変の軽減を評価します。痒みを抑える薬等は、必要最低限に抑えて、除去食の効果を適切に判断します。仮に、除去食だけで完全に症状を抑えられなくても、投薬頻度が減少したり、低用量でも痒みを抑えることができた場合は、食物アレルギーの関与を積極的に疑えます。
除去食試験に用いる食事には、新奇蛋白(これまで摂取したことのない食物)を主成分としたフード、アレルギー反応を起こさないレベルにまで蛋白を加水分解した(低分子化)フードなどがあります。試験中は、盗食や間食(家族による給餌)などが起きないように十分注意することは言うまでもありません。
従来から血清アレルギー検査(抗原特異的IgE検査)が行われていますが、これは食物アレルギーの一側面を知ることは出来ても、確実な診断とはいえません。その理由は、食物アレルギーは、IgE介在性のI
型アレルギー反応以外に細胞介在性の遅発型(IV型)反応も関与していること、また体内でアレルゲン性を示す抗原と、アレルギー検査で用いられる抗原が必ずしも同一ではないので結果が偽陰性となることがあるからです。
いずれにしても、アレルギーを客観的にかつ確実に診断できる検査は無いといえます。
3)アレルギーの治療
治療法は、食事療法及び抗原の回避、薬物療法、シャンプーの使用が挙げられます。
(1) 食事療法及び抗原の回避
除去食により、食物アレルギーを除外します。また、アレルギー検査等で明らかになっていれば、ハウスダストや花粉、ある種の繊維など抗原となるものを回避します。
(2) シャンプーの使用
皮膚の状態によって、使用するシャンプーは選ばなければなりません。頻度は、治療の初期には週に2、3回行い、症状がある程度改善すれば、その後はこれを維持できる最低頻度で使用します。シャンプー療法は、皮膚のコンデイションを保つ以外にも、体表に存在する抗原物質の除去にも役立ちます。
(3) 薬物療法
1. ステロイド剤
消炎や免疫抑制作用により、痒みを抑えますが、一方で多くの副作用も知られています。多飲多食の他、副腎皮質機能の亢進にかかわることがあります。しかし、通常量を症状が治まるまでの数日間使用し、維持として減量し、さらに隔日、3日に1回などと頻度を減らすことにより、症状を抑えながら、副反応を軽度にすることが出来ます。
2. 抗ヒスタミン剤
I 型過敏症において肥満細胞から放出されたヒスタミンが、受容体に結合することを阻止します。ヒスタミンによって起こる毛細血管の透過性亢進、浮腫、痒みなどの抑制が期待できます。ステロイドと比べて、副作用の発現が少ないのですが、効果の判定に1〜2週間かかり、ヒトと比べて有効性が低いと言われます。しかし、必須脂肪酸製剤との併用で有効性が増したり、ステロイドの投与量や投与回数を減らすことが出来ることがあります。
3. 必須脂肪酸製剤
痒みの発生メカニズムの1つとして、必須脂肪酸のオメガ-6脂肪酸であるアラキドン酸が関与しています。このアラキドン酸の代謝を競合的に抑制することで、消炎作用を期待するのが必須脂肪酸の投与です。これは、表皮の脂質を補うことで表皮からの水分の喪失を防ぎ、皮膚のバリアー機能を保つ作用も期待できます。
必須脂肪酸製剤には、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などのオメガ-3脂肪酸と、リノール酸、α-リノレイン酸、γ-リノレイン酸などのオメガ-6脂肪酸の両者あるいは一方が含まれるサプリメントや処方食が販売されています。
4. 免疫抑制剤
免疫抑制剤として知られるシクロスポリンは、抗原刺激で活性化されたヘルパーT細胞に特異的に作用して、炎症作用を抑制すると考えられています。1日1回の投与で、治療開始から4週間後には改善が期待できます。やや高価な難点があります(商品名はアトピカ)。
5.外用薬
副腎皮質ステロイドホルモン剤が主体です。これを上手に併用することで、内服薬としてのステロイドの投与量を減らすことが可能です。塗布の際には、ガーゼなどを用いて、飼い主さんの手に直接薬剤が触れないように注意することが重要です。
以上に述べた治療法は決して根本療法ではなく、症状を抑える治療法です。そのため、その子の生涯を通した長期的な管理となりますが、治療により、症状を100%抑えることは困難です。副作用の発現しないレベルで症状を最小限に抑える取り組みを、飼い主さんは動物病院と十分話し合い、納得のいく治療法を選択してください。
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