機内にて

日記を書いていてふと表紙を見ると

   2000年9月21日(木)8時頃起床。仕度をして、3回部屋を見回してチェックアウト。ハイドパークへ向かう。途中インド人の経営するお店の前を通ると、日本語の活字が目に入る。読売新聞。隣は日経新聞。日経を買ってハイドパークに行き、ベンチに座って読もうとしたら、朝露でびっしょり。ジョギングや散歩をしている人たち。池を鳥が泳いでいる。ピットロッホリーの水鳥を見たのが遠い昔のようだ。鳥を相手に、セント・アイブスで買った鳥笛を吹くが、チラッと見ただけで無関心。都会では鳥まで他人に無関心なのか。
でもこの無関心は、ケーナを吹くにはもってこいだった。私はジョギングする人、笛には無関心。いや、自分の好きなことはお好きにどうぞ。その代わり自己責任で。広いし、何の気兼ねも無く吹ける。


 いよいよ時間だ。大きく背伸びをし、少しでもイギリスの空気を吸い込もうと深呼吸をする。『グアーーーーー。』
ハイドパークを後にして地下鉄経由でBritish RailのPaddington駅に向かう。これは息子が「Paddington からなら地下鉄より Heathrow Expressという直通列車がいいよ。」と教えてくれたもの。
ちょうどな成田エクスプレスみたいな感じで、社内はとてもきれいで空いており、快適だった。最近開通したらしい。それにしてもどこで調べたのか。家にあるイギリス関係の本は旧いし、インターネットか?

Heathrow 空港について、ヴァージンのカウンタに並ぶ。ここはイギリスにしては比較的手際がよいので助かる。チェックインが終わって、搭乗券をもらって、手を振って、歩き出して、カウンターの女性何か忘れてないかな・・・・? パスポートを返してもらっていない。カウンターに戻って、「他にもらうものは?」とニコっとして聞くと、一瞬驚いてニコっとして”Oh!! Sorry!”。この一瞬の間(マ)における相手の気持ちの変化が楽しくて、ついこういうことをやってしまう。

  お土産を買ったりしているうちに搭乗の時間がきてしまった。座席は中央側のさらに真ん中。両隣は若い女性。
機内ではCDを聴いたり、日記の続きを書いたりしていた。ところが右側の女性の様子が何か変。とても寒がって、毛布をかぶっているのでエアコンの噴出し口をふさいであげたりしていたが、その度に「ありがとうございます。」と蚊の泣くような声でいうのだが、しばらくすると鼻をすすって泣いている様子。とてもつらいことがあって、ちょっとした人の親切が、また悲しみを思い出させて泣いてしまう。そんな感じなのだ。かってに想像して、これは失恋に違いない、好きな彼を追ってイギリスまで来たものの、結局想いかなわず失意のうちに機中の人となり・・・・・。そういう時はね、スコットランドのずっとずっと北の果てに行き、氷のように冷たい海と荒涼とした山並みを、自分がその中に溶け込んでしまうまで眺めているといいんだよ。てな言葉をかけたものかどうか考えたが、前提条件がはずれたらこちらが馬鹿みたいなので止めておいた。結局は自分自身の回復力を待つしかないのだから。

 今回の旅の間に描いたスケッチを見たり、少し手を加えたりしていたが、エディンバラの本屋で買ったノートに日記を書いていて、何気なくその表紙を見ると・・・・・。
1995年にケンブリッジを訪れた時にスケッチしたのとまったく同じ構図ではないか。思わず、「あっ。同じ!!。」と声を上げたので、左の女性がビックリした様子。(右側の人は相変わらず毛布を被ったまま。)
照れくさくなって、「いやあ。実はね。」と言って訳を話し、取り出した絵葉書を差し上げた。




ため息の橋 素描 ため息の橋 油彩15号

UK2000シリーズ本当に終わり
2000年11月18日(土)UP

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