開運だるまが誕生するまで
だるまさんは、江戸時代中期それまであった起上り小法師という玩具に、禅宗の高僧である達磨大師が座禅を組んでいる像を模して作られたものです。縁起物の代表格のだるまさんは、どのように作られているのでしょうか。ここでは、当店で扱っている武州だるまを例に、ご紹介させていただきます。(武州だるまは江戸時代より大師だるまとして人気があります。)
かどや開運堂 だるま工房見学
まず始めに、当店の武州だるまさんを作っていただいている方をご紹介いたします。
伝統工芸師 島田 和明さん
生年月日 昭和27年10月
島田家14代目当主
・良い作品を作ろうと日々考えられています。
・ご家族でだるま作りに精を出されています。
それでは早速だるまさんの誕生するまでを見て行くことにいたしましょう。
@だるまさんの生地
これが、だるまさんのもとになる紙で作った生地です。昔は木型に和紙を張って作りましたが、現在は金型で成型しています。(この作業が少し近代化されたところです。)
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土で出来た底を胡粉(かきの殻を粉にしたものを湯でといてニカワをまぜたもの)を使って取り付けます。このとき、まがりやずれのないよう注意します。この状態で1〜2時間かわかします。

はけ、またはどぶづけで胡粉をまんべんなく塗ります。胡粉塗りをしっかり行わないと赤い色を塗ったときの仕上りが汚くなります。

胡粉塗りを終えただるまさんは、弁慶と呼ばれる乾燥台にて半日〜一日、天日にて乾かします。(弁慶は昔、わらを使って作られたそうですが今は金属製。いずれも弁慶が矢をうけてもグッとふんばっている姿に似ているのでこう呼ぶのだそうです。)
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いよいよだるまさんが赤くなります。エアースプレーで赤い塗料を吹き付けます。(はけ塗りの場合もあります。)塗り終わりましたら、また弁慶にさして一昼夜乾かします。
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真っ赤なだるまさんの顔になる部分に白い塗料で色を塗ります。筆を使い丁寧に仕上げます。塗り終わりましたら、また半日〜一日乾かします。
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目のまわりにオレンジ色の塗料で化粧をします。
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赤い塗料で口を、墨を使って髭と眉をかきます。だるまさんを作るなかで一番難しい作業です。(髭かきには穂先の長い面相筆を使います。)口は日本一の富士山を、眉は稲穂(なにごとも実りがあるように)髭は鶴をあらわしています。大きいだるまさんは眉が亀をあらわします。
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目の周りと体全体に金色で模様をかきます。顔のわきは上り唐草といって運勢などがどんどん上に登って行くように、おなかの線は、竹の葉っぱや、漢字の八(末広がり)をイメージしているそうです。半日ほど乾かします。
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時間と手間をかけて開運だるまさんの完成です。みなさんの開運を祈ってお店に並び、それぞれのご家庭へ・・・どうぞ良いことがありますように。
いかがでしたか、それぞれのだるまさんには製作者のおもいがこもっています。大切に飾ってくださいね。最後に島田さんにいくつか質問をしてみました。
Q:一番難しい作業は何ですか。
A:髭と眉をかくのが一番難しい作業です。左右のバランスをとりながらかいて行くのに神経をつかいます。
Q:どのくらい修行すれば一人前になれますか。
A:だいたい10年くらいで一人前になれると思いますが、毎日、毎日新しい発見がありますから一生涯修行といえますね。
Q:一体つくり上げるのにどのくらいの日数がかかりますか。
A:季節にもよりますが5日から一週間くらいかかります。
Q:だるまさんをつくっていて辛かった事、嬉しかった事はなにかありますか。
A:辛かったのは先代がとつぜん髭かきをやめ、「明日からおまえ一人でかいてみろ」と言われたときです。お客様に喜んでいただける作品ができるのかとても不安でした。このおかげで今の自分があるのですが・・・。嬉しいのは、やはりだるまさんを誉めていただいたとき、また代々のお得意様が家族元気で顔を見せてくれたときですね。(私も同感です。)
Q:どのような思いをこめて、だるまさんを作られていますか。
A:自分のつくっただるまさんをみて「よしがんばるぞ」という気持ちを持って皆さんが努力してくださればと思います。世の中の人達が皆しあわせでありますように・・・。