tell a graphic lie
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(2002.1.4)-1
切り貼りする記憶の紙上に付け加えておきたいものもいくつかあれ。抱き眠るに足る色形したものもいくつか。そして行け。泣かずに行け。
(2002.1.4)-2
広辞苑を買った。はい、そこ!呆れない!そこっ!笑わないの!んもぅ、まったく。で、だから今ぼくは胡坐をかいて、広辞苑を乗せて書いているよ。別に何も変わらないけれどね。とにかくぼくのやっていることはあんまりお金がかからないから、このくらいはいいんじゃないかなぁ。
(2002.1.4)-3
芥川龍之介の始めのもの(羅生門、鼻等)を読んだので、一言。といっても、菊池寛の言葉を載せるだけだけれど。「人生を銀のピンセットで弄んでいる。」これ以上の言葉はちょっと考えてみたけれど、無理でございました。綺麗な男とはこういう人間を指して言うのだろうね。
(2002.1.5)-1
参ったな。ボツった。供養してやろう。
(2002.1.5)-2
 ケケケケ。串刺し。串刺し。ケツに突っ込んで、口から出すんだ。押しつぶすように低く、この地を中心として広がるまっ平らな雲に、夕日が映りこんで、臙脂と黒灰の斑を作り、地獄色のキャンバスの態をなしている。串は枯れ木の様にぼつぼつと不規則に生え、その一本足を中心に滴り落ちた血が赤黒く、根のように広がっている。また、そのいくつかでは、中の燐が燃えて口元から青白い微かな炎を上げ、けぶり、小さな靄を溜め込んでいる。臓腑は屍肉を喰らう大鳥によって既に喰い尽され、あばらの真中を通る串の幹が露出している。だがそれも既に闇の一部となり、その陰影のみが赤橙色の西の空を黒く切り取り、分厚い雲の上からは音無しの闇がゆっくりと被さり、地表に達する。
 夜の度に、地中に染み込んだ血は凍って霜の柱となり、土を盛り上げ、また地表に戻る。月の有る夜であれば、その光を受けて赤く輝き、荒涼たる大地に描かれた百個の薔薇の華となる。屍に残る僅かな血もまた、同様の変化を循環し、肉は腐るよりもはやく、その収縮によって皺だらけになり、遂にはひび割れ、徐々に崩れ砂となってゆく。が、今宵は時折、氷柱の地面を割って出る乾いた音が、際どく張り詰めた薄い大気を震わせるのが辛うじて判るだけである。それはあなたには新しいことだろうか。無風の闇の中でパキパキという小さな音を立てて、赤黒い酸化した血が土や砂や塵を巻き込みながら凍るのである。忌まわしい儀式の犠牲になった一塊の生はそのようにして、そうではないものになってゆくのである。天に召されることも叶わず、冥府からも拒まれたものは、加工され、そうではないものになる他ないのである。そう、それはあなたには新しいことだろうか。それとも古本屋に並べられた100円の文庫本の挿絵程度のものだろうか。ぼくはその加工機械だ。
 そこに棲む蜥蜴がある。皺のような細かくて深い鱗で、大地が雨で湿った時の色をしている。茶色い倒れた草ばかりで、青草の一本も見当たらぬ地肌の上を、少し走ってはひたと、作り物のように硬直して止まり、舌だけちろちろさせている。眼前の小石の向こうには突き立てられた串の内の一本が生えており、あの日以来そこがこの蜥蜴の狩場なのである。言い忘れていたが、死体の周りには大鳥のほかに大小さまざまな屍あさりが群れ集まり、更にそれを目当てにするこの蜥蜴のようなものも現れ、なにやらひとつの小島のようになっている。血が固まり微かな音を立て柱を立て伸ばす夜の、その上では音も立てずに這い回る小さな蟲やらなんやらが彷徨して、喰うだの喰われるだのを忙しくやっているのである。蜥蜴はその血痕の島で主に蜘蛛を狩っていた。数種類の蜘蛛がそこに集まって来ている。巣を張るもの。陰に潜み昆虫などを狩るもの。蜥蜴はそれらを舌で狩って喰っているのだった。
 血痕の縁までやってくると、その赤黒く染まった土から微かに立ち昇る錆びた鉄に似た臭いが鼻先に付いた。そこで蜥蜴はぼくの代わりに考え事を始めるのである。
 ああ、今宵は月も無く、低くたち込めるこの雲が狭っ苦しく、嫌な夜だ。風もこの雲に阻まれて吹き込めないものとみえる。それにしてもこの臭いは何とかならないものだろうか。この臭いに誘われて黒蝿やら蛾やらマイマイやら屍肉をあさる甲虫やらが集まってくるのは知っている。そして、そのおかげで俺は好物の毛の長い蜘蛛や、他にも足の長い蜘蛛、紫色の蜘蛛やらをさして労せずに頂けるのだ。それにしてもこの臭気、これは一体何の臭いなのだろう。この赤茶、いや赤黒い土から臭ってくるのは何の臭いなのだろう。今宵は風がないので、臭いが鼻に長く留まるようで我慢ならぬ。
 蜥蜴はそっと血の染みた土に前足の片方を乗せた。血痕は早や凍りつき始めており、僅かに盛り上がっている。そして、ちょっと異様な冷たさがある。
 この土の触り心地もどこかおかしなものだ。色がおかしく、臭気を放つばかりでなく、もっと背骨の芯辺りに響くような嫌なものがある。あまりひとところにじっとしていると足の先から何かが上がって来て、俺の身体をどうにかしようとしているような恐ろしさを感じる。だいたい俺はこの中にいる間中誰かに睨まれているような気がしてならぬ。俺を狙いに来た梟かと、はじめの内は何度も物陰に走り込んで辺りの様子を窺ったりしたが、落ち着いて見れば羽音も、空を滑る気配もせぬ。何かもっと別のものの気配なのだ。俺を狙うような鋭いものではなくて、取り囲み、じっとりと毒をすり込み、弱らせ殺そうとするような陰惨な意思の気配だ。今は風が無いが、風のある日でもそれは揺らぐことをせずに、じっと近寄ってくる気がする。意識すれば寄って来る。振り払えばまた遠くにある。実に嫌なものだ。しかし、この先にはまだ食物が多くいるのだ。それにしても、もう4度目になるが、毎度ここへ入ろうとする度にこうして躊躇うものであるな。そろそろ馴れてもよさそうなものだが。それにしても先夜に食べた若い毛の長い蜘蛛は旨かった。程よい肉付きで、みずみずしさがたまらなかった。ああ、今宵もあのような獲物を捕らえたいものだ。そうだ、いつまでもここで立ち止まって思案しているわけにもいくまい。旨いものがあるのだ。少しの我慢ではないか。
 首をぐるりとまわして、蜥蜴は血痕の島の中心目指して走り出した。臭気は無風のためにやはり滞っており、いちいち鼻に付いてまわる。尾を上げ地面から突き出た串の袂まで一息に走った。重々しく月の無い夜である。夜目の利く蜥蜴にもはっきりとは見通せるわけではないが、そこにはいくつかの生けるものの気配がある。もともと蜥蜴は視力に頼って狩りをするのではなかった。鼻を使うのである。鼻で獲物の臭いを嗅ぎ分け、鼻先でそれらの挙動が産む空気の流れを感じるのである。串の根元にたどり着いた蜥蜴はその木の肌を舌でチロリと舐め、這い上がっていった。先夜好物を捕らえたのはからからに乾いた屍肉の陰なのである。運が良ければ、今宵またもう一匹捕らえることができるやも知れぬ。そう考えて辺りを探すことはせずにまず串を這い上がったのであった。上ってもまだ、臭気は鼻に纏わり付いた。淀んで、相当な高さまで堆積しているようである。2度ほど蜥蜴は立ち止まり、辺りの気配を確かめた。

(2002.1.5)-3
ちょっとでもほんとのほうがいいに決まってるじゃないか。寂しい寂しい寂しい寂しいぶつぶつぶつぶつ。。。。。。
(2002.1.5)-4
お?これはちょっとやばい感じか?
(2002.1.5)-5
書くことなんて選べませんよね。ぼくは大人になったら選べるようになるのだと思っていたよ。いや、まだ「大人」でないだけかな。
(2002.1.5)-6
平行に伸びてゆく時間の、それはレイルのようね。たどり着く場所は同じでも、お互いが触れ交わり、抱き合って休むことは。渡して欲しいな。
(2002.1.5)-7
ボツってしまってすることが無い。で、実家からデジカメをかっぱらって来たことを思い出したので、写真を取ってみる。ズームが付いているなかなかいいやつで、「夜景」モードなるものがあって、暗闇でも取れるのでいい感じなのはいいんだが、取るときに見る液晶には何にも映らない。どうも、プレビューは「夜景」モードになってくれないらしい。うむむ。これじゃあなにとってんのかわかんねぇだろ!使えねぇ。しかもすぐ電池切れるしー。20枚くらい適当に取ったらピピピってなりやがった。メモリには500枚とか入るくせに。使えねぇ。しかも、充電式じゃないし。使えねぇ。手ぶれ補正かかんねぇし。使えねぇ。あ、でもこれは俺が設定法を知らないだけかも。シャッター押した瞬間に取れるわけじゃねぇし。使えねぇ。でも小心者なんで、人がいないとこじゃないと取れないんで、使うほうも、使えてねぇ、って感じなんですけどね。あはは。それで、駒沢公園まで行ってきました。うむ、実に初心者チック。行ったはいいんですが、そんなわけで、まともに取れたのは、これだけでした。いや、これもまともではないんですけどね。いや、写真は難しい。→
(2002.1.5)-8
まぁ、そんでお出かけ前に性能チェック。自分の顔とってみた。普段自分の顔かいてるけど、まともに観察したこととかほとんどねぇし。頭の形かなり悪いね。鼻低いね。ニットキャップやっぱ似合わないね。やっぱ部屋かなり黄色いね。髭剃れや。あはは。似てねぇなぁ。美化しすぎー。→
(2002.1.5)-9
ああ、頬骨がどうのこうのとか、眉が薄いとか、歪んでるとか。そういうのはもう知っているから。
(2002.1.5)-10
て、いうか、酒飲みてぇ。マジ飲みてぇ。気が付くとこないだ二子玉で見かけたウェストキュッのタンブラーにバランタイン17年を注いでうっとり、芳しくてうっとり、一口含んでうっとり、おめめドロンでうっとり、余計なことも喋りまくりでうっとり、みたいなことしか考えてない。あー、マジでこのまま一生飲まねぇつもりかなぁ。。。。。。。。。。。。無理だろ、それ。あー、飲みてぇ。飲みてぇ。飲みてぇ。飲みてぇ。チクショー、いっぱい捨てたからなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。悔しいんだよなぁ。申し訳ねぇしなぁ、捨てた酒に。あー、しかしながら、ワタクシ、まっこと、酒が飲みとぅ御座いますです、ハイ。ああああああああああああ、飲みに行こうぜぇ!!嘘!嘘!嘘!嘘だよ!断酒だよ!断酒!
(2002.1.5)-11
のみて
(2002.1.5)-12
ど、どうしよう。書いたのがほんとにまずかったらしい。明日、あのタンブラーと、バランタイン17年を買ってきてしまいそうです。どうしよう。酒ってうめぇよなぁ。飲まないくらいなら死んだほうがマシだよなぁ。あ、書いちゃった。まずいなぁ。ホントまずいなぁ。まだひとつきもたってねぇのに。
(2002.1.5)-13
覚悟。ああ、そうね、それだね。ぼくの半分を渡す覚悟と、君の半分を預かる覚悟と。でも、それはウソの上のホントだね。床板をはがすと違うことが書いてある。それでも信じる?ぼくはそれでも信じさせるの?ああ、それも覚悟か。罪を美しいなどと口走らないでくれたまえ。
(2002.1.5)-14
一秒でもほんと。あなたと別れるまででもほんと。ぼくが死ぬまででもほんと。世界が終わるまででもほんと。君に嘘をつくことがぼくのほんと。ぼくに騙されるのが君のほんとの望み。それもほんと。ぼくは弱くてそれから逃げる。それもほんと。やさしく手を握りたくもなるさ。これは嘘。
(2002.1.5)-15
浮気されると気が楽になるってほんとかしら。してもそうなのかしら。
(2002.1.5)-16
ねぇ、ひとのいない路地は冷たかったよ。ぼくが邪魔だって。
(2002.1.5)-17
眠れない。
(2002.1.6)-1
あのね、このところね、古臭い往年の現代小説ばかり読んでいるからさ、なんかね、書くのがね、おかしくなっちゃってさ。んじゃこりゃ、おかしいべ。な、これ、おかしいべさ。奇妙奇天烈。奇奇怪怪。ブタもおだてりゃ木に登る。難易もまともに見分けられない、ケツの青いのこれなんの。あ、やっぱりちょっと古い感じ。なんて、しみじみ思ったりしてしまうものでして、んー。これわ戻さんといかんな。気持ち悪いです。しゅわるつねっがーが箸を器用に使う様は、握った箸がやたらと小さく見えて、日本人は慎ましく暮らしているなぁ、などと全然直接的でない感慨がわいたりして、妙に感心するも、自分でも少しおかしく思うので、人にも話せず、ひとり小さく笑いて、あらCM。そんなような気持ち悪さ。きまりが悪い。ばつが悪い。こそばゆい。蕎麦食いに行ったときだけ、やおら通になるってなもんでして。あ、これもわかんない?こりゃ失礼。すまんすまん。ねぇ、でもあんた、高校生じゃあないんですから。2秒で影響されて喋り口まで変えてしまって、さぁやるぞと取り掛かったはいいが、はじめの数行で、文体あわせに四苦八苦しているうちに夜が明けてしまいます。おや、徒労徒労。猿真似猿真似。その賞味期限はいつまでですか。今は何を廃棄するにもお金がかかるんですよ。はい、3000円。どかーん。あほか。これだから嫌なんだ。しかしあれだね、戻すなんて単純な作業のように見えるけれどね、意外とね、難しくてね。思い出せないんだ、実際。ん?ぼくは普段どんな形の文を書いていたのだっけ。えと、決まってるのは、一人称を、ぼく、と書くくらいだった気がするけれど。うーん、他なんかあったっけー。以上でご注文の品になります。え、まだ、秋刀魚来てないよ。秋刀魚、秋刀魚。一匹来るんだろ。え、これ?これ秋刀魚?何、小さいやつなの?子供?子供。バカヤロウ、これじゃあ干し海老じゃないか。あ、違う。干物、小魚の干物ね。間違えたんだよ!逆ギレでーす。ああ、なんだそういうのだったんか。どうりで時期が外れていると思ってたよ。あ、じゃあ秋刀魚はこれでいいや、我慢してやるよ。っでもよ、ホタテの何とかっての来て無いじゃん。んーーーー、ホ、タ、テ、はこのテーブルのどこにもみーあたりませんがー(得意げ尻上がり)。え、何?まじで!?俺そんなこと言ったっけ。ああ、そうだった気もするな。ああ、もう、確かに。やめて肉じゃがにしたんだった。そうか、そうだったかも知れませんです、はい。スイマセン、マチガエマシタ。んだよ、そんなのもう食っちまったよ。まったく。何つながりだよ、ホタテから肉じゃがて。そりゃそんなの憶えてねぇわ。(肉じゃがの碗に浮かんでいるたまねぎの切れ端をつまんで口に入れる。)ぶつぶつぶつぶつ。あー、酒はうめーなー。酒は友達だよなー。キャプテン翼だって言ってたサー。ボールは友達だっ!!てよー。確かに俺ぁサッカーやらねぇよ。ああ、やらねぇよ。でもよー、今の日本代表はみんな必ず一度は「どらいぶしゅーと!!」てやってるね。ああ、日向ファンはちょっとわからんけどね。そいつらはきっと波に向かってシュート打ってるね。絶対やってるね。突き破れるかっつーの。でも、日本代表になってるんだけどね。翼君のほうが巧いよね。あとね、顔面ブロックもやってるね。石崎君は、、、、あ、うるさい。そりゃスマン。。。あいつ、ちょっと思い上がってるよね。バカのくせに。トーシロのくせに。ねぇ。あなたは戻すとかいうほど固まったものを持っているわけではないのではないのですか。あれ、こは真に的を射たご指摘。俺って何書いてたっけ。あれれ。何書いてたっけ。おお、ウソ。嘘書いてた。"tell a graphic lie" 嘘ん中のホント。ホントには嘘なの。でもホントなの。ああ、それがぼくですよー、てしゃきしゃき言ってばっかおって。ねーちゃんにも振られてよー。ああ、つれぇ。ぶっ殺す!で、どれがぼくですかー、て訊いたら、これが、どれだかわからんですばい。持ってるような気もするけど、ずっとそんなものなんて持ってなかったような気もする。ぼくが大事に守っていたつもりのものってこんなものだったんだろうか。ねぇ、寒い。あなたにお尋ねしてもいいですか。そろそろウザイ感じになってきましたか。お腹いっぱいですか。でも、まだ行きますよ。まだ、終われない。終われないよ。まだ何も言っていない。まだ何も返していない。ぼくはいつも貰ってばかりで、そのくせお礼の言い方も知らないんだ。部屋の前の5mくらいの木が乾いた風に吹かれてさらさらいっている。丁度太陽のまわりにだけはぐれ雲がかかっていて、少し陽射しが柔らかくなっている。だから、ぼくは太陽を見て、直接には届かない、ということを取り扱って、それでも君には血直接言うべきだなんてことを。雲はぼんやり動かない。それはしかし、こうも考えることができる。ここは見せたくなかったのだ。ね、ここは。君にも渡せないんだよ。このぼくと、肉体のぼくと、繋げないで欲しい。繋がるかい?それとも、二人の男に見えるかい?どうだろうね、それは。その辺の境界はぼくにもよくわからないんだ。暗幕で被われた薄暗い廊下を通り抜けると、これを書くぼくになるのさ。その間に何が起こっているのか、何か付け加えられているのか、何か加工されているのか、何か取り払われていたりするのか、よくわからないんだ。ただ、ただね、それでも、ぼくはここを書いているんだよ。少し茶化そうか。眠っている間に落書きされておっはヨー!ん?何?何笑い噛み殺してんの?あら、あたしって寝起き美人?ウフ。(耐え切れず転がる二人)何よー。そんなにうけること無いでしょー。チョー失礼。朝っぱらから。お、いい天気じゃん。あの雲いい感じね。おら、この天気に免じてその爆笑は許してやるから、どっかでかけるぞー。(あまりにも不憫なので、ごめんなさいを言われる。しばらく固まったあと、鏡の前へ走ってゆく。悲鳴が上がるかと思いきや、静か。本当に切れている。なんてったって油性マジック。ああ、昨日は実に楽しい飲みで御座いました。今日は一日顔を洗って過ごしてください。)何が起こってるかなんてわかったもんじゃない。ところでねぇ、それはお気に入りの顔かい?ほんとの顔かい?ヒビが入ってる。ほら、ここ。もう使えないね。ごくろうさん。ねぇ、今度の不燃物の日にこのまま出すのと、今ここで粉々に割ってあげるのと、どっちがいいのかな。どっちがやさしいことになるのかな。よくわかんない。ぼくはね、あなたにやさしくする術を知らないのです。母さんもそれは教えてくれなかった。学校にははじめから期待はしていなかった。だからと言って、あなたに直接訊くわけにはいかないでしょう。だいたいあなたに何か喋るのすら精一杯なのだ。そんなこと訊けるわけがない。それはぼくのちっぽけなプライドにもかかってくるし、ぼくはあなたに何にも心配してもらいたくない。だから、そんなの訊けるわけないでしょう。訊くわけにはいかないんだ。でも、知ってはいるんです。やっぱりあなたに訊くのが一番なのでしょうね。ぼくは何をどんなふうに書いていたのでしたっけ。しかし、これも太宰の真似なんだよ。頓首。
(2002.1.6)-2
はい、これ。あなたの言葉。捨てたり忘れたりしてはいけないよ。ぼくはこれを杖にしたことがあった。
(2002.1.6)-3
ひとつも完全に知るものを持たない事を認めているのに、ああそれなら知っている、などというような顔つきをしてみるんじゃない。(誰か昔の言い方に訳して。俺失敗した。)
(2002.1.6)-4
力は無し。呼び声も無し。道はできれば遠慮したきものにて。それでもその終点は光り輝いており。はじめの内、不平たらたら、ぶつくさぶつくさ、そのうち面倒になりて飛び降りんと発するも、欄干も備えぬ人ひとり分の細き橋にて、底は深淵の彼方、分厚く立ち篭める青白く薄暗き霧、たちまち震え上がり、膝はガクガク、腰は両の腕で支えてやっとこ支える始末、まこと不恰好甚だしく、今は振り返ることすら恐れて適わず、へこへこ足を引きずり引きずり、渓谷の終わりと思しき地点を唯一心に睨みつけ、一歩一歩、心を励まし励まし進むばかりなり。ああ、大言壮語は吐くものに非ず、人間安寧の暮らしが最上。天才、偉人、どこかへ行っちまえ、神様真におはすならば、どうか無事に渡り切らせたもう。あほか。力は無し。呼び声も無し。道は実に詰まらなきものにて。我が生は長大息のみばかりなり。野良猫の晩飯に丁度良い。----嫌だ!
あー、いいねぇ。太宰節、書きやすーい。薬中バンザーイ。でも、年収60円(原稿一枚1円、タバコ一箱50銭くらいらしいから、どうなの?)は嫌だなぁ。
(2002.1.7)-1
あ、広辞苑の巻末付録には日本語文法が載っているね。勉強しよ。ああ、勉強。まことに芳しき響きなり。うっとりとりとり。学生現役の頃は授業なんてこれっぽっちも聴いてなかったのにね。ずっとらくがき。マンガ。無意味なおしゃべり。居眠り、お眠り。ぼくの全て。ぼくが全て。外のことなんて知りたくも無い。遠くを走る電車の数を上りと下りと数え数え、桜の花も「さくらんぼならないんだよ」って。大人はいいな。悟ってやがる。「まぁ、そのうち」なんて言うな!「今はそう思うかもしれないけど」クソくらえだ!俺に重要なのは今なんだよ!もぅ、そればっか。あいしんく。あいしんく。あいしんくあい。あいあいするあい。空っぽなのが恥ずかしくてね。でも、「ぼくがぼくになる前にここに他のものなんて入れないで。」それはそんなに間違っていないかもしれないなぁ。あ、昔話してる。あイター、老いたー。勉強しよ。
(2002.1.7)-2
しかし、ほんとになんか書くのがおかしいぞ。これでいいんか。どうなん?
(2002.1.7)-3
パリッと寒い。頬がつっぱるから上手に喋らないことにした。前を見ていても、左、右を見ても、後ろを振り返っても真っ平らに広がる、、、ねぇ、適当な名詞を下さい。それは人生というほど、命というほど、生というほど、大層で概念的なものではなく、路というほど、凛としたものでも、日常と呼ぶほど、しみったれたものでも、生活と呼ぶほど、切羽詰ったものでも、暮らしと呼ぶほど、血の通っているものでも、ないんだ。ただぼくがここにいてね。多分20年ちょっと前から、日本のさ、この辺にいてね、やっぱり、清人って呼ばれていてね、今も、もちろん変わらずそう呼ばれていてね、それを、、正確にいこう、もう23年もやっていてね、続けていてね、でね、やっぱりあんまりうまくいかなくてね、ああそれは愚痴だ、そんなことはどうでもいい、でね、ボクハココニイルンデスヨーて、まだカタカナで書かなくちゃなんなくてね、ああそれも愚痴だ、とにかくね、そういう風にちょっとあたりを見回して、俺いるかい?ねぇ。なんてやって、ちょっと心臓さわってみたりして、あ、馬鹿みたい。ねぇ、そういうのって、ひとことで言えてもいいよね。なんで、ぼくは知らないんだろうね。
(2002.1.7)-4
宇宙全体を3次元座標値で表してしまってね、それで、適当に座標値コールしてくの。で、うっかりぼくの心臓の位置が呼ばれたときにね、温度、あるかな。
(2002.1.7)-5
あれをするにはぼくはちょっと歳を食いすぎた。
いいか、あれは駆け上がるということだったんだ。熱狂と共振と犠牲と飢渇と羨望と嫉妬と錯誤とで以って、栄光と祝福と破壊と衝撃とを一身に享け、彼の地への門をぶち破る。ただ、やはり、青い。未熟で、稚拙で、ノウタリンだ。相応の生贄が要るのだよ。やはりそれが要るのだよ。無理をするのだからね。自分だけ行ってしまうのだからね。
(2002.1.7)-6
それからぼくは今回のラインをやはりそこに設定することにする。これはあそこで犠牲になった数を越えた時点で終わるべきものだ。人殺しに程度もクソもあるかと言うのはあまり面白い意見ではない。それはぼくのものと同じで、数百個の内のひとつに過ぎない。1か0、ONかOFF、真か偽、有か無、表か裏、白か黒、それで表せるのは一要素だけだ。そんなものひとつでできているものが一体この世の何処にあるというのだ。
(2002.1.7)-7
ぬ、偉そう。
(2002.1.8)-1
たまには外の話でもしてみようか。もう少しそういうの増やしてもいいかなぁ、とかちょっと思っています。戦争のこと以外は多分0に近いと思う。たまにポロッとやっているけど、今日もそんな感じかな。昨日はぼくぼくぼくぼく言うたことであるし。
(2002.1.8)-2
 ぼくが唯一買っている雑誌は広告批評という雑誌で、中身は雑誌名の通りの新しい広告の批評と、あと毎月、何かテーマを設けた特集記事からなっている雑誌です。批評のほうは、別にまったく面白くなくて、だいたい見たまんまの感想が書かれていて、批評になっていないんだけれど、特集のほうはとても面白い。広告関連の特集ばかりでなくて、一年の半分くらいは、映画やら、写真やら、小説やら、音楽やら、他の分野のことをやっている。
 で、その毎月の特集のテーマを、編集長、島森路子さんという、きれいなおばさんなんだけれど、明らかにその人の興味で決めている。特集と言ってもやることはその分野の人達を何人か呼んで来て対談してもらったり、インタビューしたりするだけなんだけれど、島森さんの興味で人を集めてきているので、島森さんがするインタビューが圧倒的に多い。こう書くとなんかろくでもない雑誌に聞こえるかもしれないけれど、この島森さんはインタビュアーとしてとても優秀な方で、とてもいいのです。島森さんの興味で呼んで来ているんだから当たり前なんだけれど、島森さんはインタビューする相手のしていることをとてもよく見ていて、それを良いと思っていて、だからとてもいいコメントをして、その上で話をさせるもんだから、もう皆さん舌滑らかん。で、それに島森さんはまたとてもいいコメントを返すもんだから、皆さんほんとにぺらぺらよく喋る。
 そう、みんな自分の話をするんだ。業界の話とかじゃなくてね。他の人間のやってることをどーのこーの言うんじゃなくてね。ぼくはこれまでこうしてきて、この辺はうまくいったけれど、この辺はうまくいかなくて、だから、次はこうしたいんだよ。こうなりたいんだよ。こうあらずにはいられないんだよ。って、丁寧に言葉を選んで話すんだ。結構青臭くさ。おもしろいよ。ああ、みんながんばっとるねぇって、結構みんなぎりぎりんとこでやってんだねぇって。がんばれよーって。
 でも、ぼくは他のそういったカルチャー系の雑誌とかを読んだりするわけじゃあないから、別に広告批評でなくてもそうなのかも知れないんだけれど。どうなんだろう。まぁ、とにかくぼくはお気に入りなのさ。
 で、なんで、ぼくがそんな雑誌を知ったのかというとですね、ある日、多分横浜のルミネの有燐堂かどっかで、広告批評のバックナンバーがバーって並べてあった時があってね、その中の一冊の表紙が、ジャージにジーパン、ニューバランスで、長い髪の女の子が、雑居ビルのエレベーターかなんかの前で、ポケ手してカメラに背を向けて立っている写真だったのよ。おお、すごい表紙だと思って手に取ると、その女の子はなんとCoccoではありませぬか。ぬ、やるなこの雑誌。まるで俺の好みを知り尽くしているかのようだ。素晴らしく生意気だな。などとほくそえんで、その号を買って帰ったのでした。で、そのおかげでCoccoが自分をあっちゃんと呼んでいて、あれ?何であっちゃんなんだっけ?飽きっぽいからあっちゃんだっけ?あれ?いかーん、Coccoファン失格で御座る。ま、それはおいといて、あっちゃんはほんとはバレリーナになりたいんだとか、あっちゃんは眠るために歌を歌っていて、歌わなくても眠れるようになったら歌を止めるんだとか、そういうことを知って、おかげで止めるときも、「おお、おめでとう」などと思ったりもできて、ああ、でも戻ってこーい!あ、失礼。まぁ、そんな感じでとても嬉しかったのです。で、しばらくしてから毎月買うようになったのさ。
 そういうことで、広告批評の宣伝でございました。なげぇなぁ。
site : http://www.kokokuhihyo.com 応答悪し、これ欠点。あと、内容も大したことない。ま、ちっこい雑誌だし、しゃーないか。
(2002.1.8)-3
今気付いたんだけど、ポケ手てどうなん?死語?いや、それ以前に一般に通じる用語?もしかしてローカル?これ使ってたのは、、、多分小学生くらいんときだから、あらやだ、もしかしてうちのクラスだけとか、そういう勢いだったりするの?ねぇ、ポケ手て。いや、ポケットに手を入れていることを表すわけですが、あ、それはわかりますね、どうなんだろう、なんかめちゃくちゃ自然に書いてたけど。当然一発変換できなくて、ごちょごちょ操作して作ったんですけど、そのときも気付かなかったし。なんか、年明けてからちょっと頭変だなぁ。大丈夫かしら。
(2002.1.8)-4
それから、インタビュアーって、聞くほうの人ですよね。じゃあ、されるほうは、インタビュイー?雇用者と被雇用者みたいに。と思って、調べてみたら、両方ともインタビュアーなんですね。どうも会って話をするという双方向のものみたいですね、英語だと。ふーん、文化の違いってやつだな。日本だとそういう感じじゃないよな、会見って。
(2002.1.8)-5
ああ、なんでこんな普段の雑念を書き付けているんだろう。
(2002.1.8)-6
 今、風呂ん中で人間を琵琶湖の青粉に例えて考えてみていたのですが、つまり湖沼の富栄養化によって大量発生する青粉と人口爆発とをかけてですね、青粉のように大量発生して大量死すると現象をはたして人類は回避できるのか、ということを考えてみました。いや、別に青粉でなくてもいいんですけどね、まぁ、今日の気分は青粉だったということで、我慢してください。
 青粉は夏に大量発生するそうですので、人口爆発かも知れない状況が始まったのは、、、、いつ頃からなんでしょうか、よくわかりませんが、西暦0年あたりからとしましょう、そうすると、一夏を2000年から3000年に換算することができそうだと言えます。それで、更に月あたりから人間の営みを眺めてみる。すると、ほら、人間が青粉に見えてくる。あはは。
 青粉が大量発生するのは湖沼に適正な繁殖に必要な量以上に栄養が存在するためです。大量死するのは、大量発生をした青粉が酸素を大量消費して、全員酸欠になるからです。人間の場合でも同じようなことが言えます。いや、ほんとはちょっとややっこしくて、この辺がこの話のみそで、暇つぶしになる理由なのですが、人間は青粉にとっての栄養を自身で製造する生物で、しかしながら、青粉にとっての酸素である、生存する領域や、製造するための原材料は有限であるわけです。青粉は栄養も酸素も自身ではコントロールする力が無いけれど、人間はその片方、製造すること、については少なくとも理論上はコントロールする力を有しており、もう一方、生存領域や原材料、についても厳密には有限とは言えず、それを新規開拓する力を有している。
 さて、人間は青粉のように夏が終われば1.大量死する運命にあるのでしょうか、2.そうはならなずに、穏やかな秋を迎えることができるのでしょうか。それとも、3.夏は永遠に終わらないのでしょうか。番号と、実際のシナリオを答えてください。
 ぼくの勝手な想像では20世紀的発想で行くと3番。でも、実際にはそれは達成され得なくて、このまま行くと、1番になってしまうのだけれど、21世紀的な発想が2番に向かわせてくれる、ことを祈る。といったところです。おお、そんな世紀やらなんやらまで出てくくる。今っぽい発想だよな。しかし、実にすばらしい暇つぶしですな。延々と続けることができる。
(2002.1.8)-7
補足問題としては、人間にとって適正な繁殖とはどのようなものであるか答えなさい。これも延々と続けることができる。
(2002.1.9)-1
今日もまた外の話。しかも、人の悪口。おら。
(2002.1.9)-2
 本を三冊買ってきました。あと、広告批評。昨日、あ、今月号出てたのね、と思ったもので。それで、その内の一冊は、村上龍の「限りなく透明に近いブルー」。処女作です。実は他の二冊もまた、処女作です。嫌味だね、俺。まぁ、それは置いといて、とりあえず今日は村上龍について、少し。
 ぼくはこの人によくない先入観を持っています。まだ、一冊も読んでないから、今もまだ持っていると言っていい。だから、こうなる前までは、読むもんか、と思ってました。
 で、そのぼくの村上龍に対する先入観はどんなものかというと、バレーボールとかバスケットボールとか入れておく籠ありますよね、あれにバレーボールなんていう生易しいものではなくて、黒い砲丸を山盛りにして、それを傍らに置いて、すごい速さでぶんぶん掴んでは投げ、掴んでは投げして、人をぶっ飛ばして、高笑いするように書く、最低の人に違いない、というようなものです。だって、そうでしょ、あの人の書くもののタイトルとか、広告に出ているようなフレーズを見た限りでは、重量系の単語を惜しげもなくばら撒いている。それはもう、マシンガンという感じですらない。ランチャー級の破壊力を、マシンガンの速さで撒いている。しかも、兵器に頼ってる感じじゃあない。てめえでやっている。そういう感じでしょ、あの人。ねぇ。
 そうだ、今回買った「限りなく透明に近いブルー」なんてもう見るからにそういう感じ。「限りなく」「透明に近い」「ブルー」。すごいね。ここまで気障な言葉を3つも組み合わせてよく赤面せずにいられるものだ。処女作のクセに。正直言うとこっちが赤面してノーサンキューってな感じですよ。新刊の広告とかに載っている、抜き出された一文もそういう感じで、ぎちぎちに狙った単語をぎちぎちの、断定の形で組んだものだし。テーマのチョイスもタイムリー、時代の最先端。社会問題。最新技術。時代の闇。どんと来い。ぎちぎちにベタな設定で、ハリウッドばりの王道な展開で、ぎちぎちにベタな結末で、しかも、読み終えた後に何か問題意識のようなものが残るように、実にもっともなやり切れないもの、も残す。一文一文には恐ろしくエッジが効いていて、曖昧でもやもやしたような感じなどおそらく皆無だろう。多分、超高解像度どの写真をわざわざ塗りつぶして、ぼかして、わからなくしているという感じの実にいやらしく狙いすました、美しく明快な不明が書かれているに違いない。言い訳すらびっちりと筋道を立てて、問題提起というような形に変形させているに違いない。男は男で、女は女で、女のような男は女のような男で、逆もまたそのとおりで、若者は若者で、年寄りは年寄りで、個人は個人で、集団は集団で、政府は政府で、企業は企業で、不安は不安で、悩みは悩みで、愛は愛で、正義は正義で、美しさは美しさで、醜さは醜さで、暴力は暴力で、狂気は狂気で、強さは強さで、弱さは弱さで、中庸は中庸で、妥協は妥協で、優柔不断は優柔不断で、混沌は混沌で、それらに付随してくるイメージも全てこの時代に合った最もそれらしいもので、つまりステレオタイプ中のステレオタイプ。何ひとつ意外なものが無い。何ひとつ不安定なものが無い。そうに違いない。それを本気でやっているに違いない。
 で、顔を見た瞬間、それが確信になった。濃い。揺るぎない自信と、有り余るバイタリティが顔にまで出てしまってる、気障なあの顔。動き。第一、名前からいって、龍だし。龍て、アンタ。ああ、もうだめだ。はいはい、あんたが一番。あんたが正しい。あんたが王道。いよっ、大将!憎いね、この。ああ、もうだめだ。
 なんてですね、ぼくのほうが村上龍をステレオタイプに押し込めているのであります。とにかくね、ぼくの正反対なのさ。彼は真中を胸を張って歩く人間で、ぼくは道の隅を押されて土手に乗り上げながら、言い訳しいしい、へこへこ歩く人間。ステレオタイプ。まぁ、嫉妬ってやつでさぁ。
 さて、これが「限りなく透明に近いブルー」を読み終えたあと、どう変わるのでしょう。楽しみなところです。変わんない気もするが。一定の評価ができますでしょうか。さて。
(2002.1.9)-3
ああ、すっきり。言ってやった。村上龍は多分、すごい人だよ。
(2002.1.9)-4
ぼくのように分裂していないんだ。
(2002.1.9)-5
あとの二冊は谷崎谷川と漱石。どうしよう、谷崎谷川は商売敵だ。間違いない。良い。止めてしまいそうだ。(なんか知らないが、ぼくは谷崎潤一郎と谷川俊太郎をよく混同する。ちなみに両方ともまともに読んだことは無い。谷崎もそのうち読むつもり。谷崎は商売敵ではなさそうだが。)
(2002.1.9)-6
ところで、ユニクロの広告って、人間顔が命ってなるか、いい生き方しないとだめなんだなってなるかのどっちかで、別にユニクロを買おうというふうにはならないような気がするのですが、気のせいでしょうか。いやユニクロに限らず、GAPとかでも一緒ですが。単にすれてるだけか、俺が。それから、最初ユニクロってユニバーサルクロージングの略かと思ってて、スゲー、かっけー、遂に衣料品でも日本発グローバルスタンダードをやるようになるのかー、でもなんでQなんだろ、とか思ってたんですけど、ユニーククローズの略だと知ってがっかりしました。ユニークじゃないじゃん。全然。減益、おめでとうございます。これで普通の企業の仲間入りですね。トヨタ目指して頑張ってください。
(2002.1.10)-1
星がりんりん鳴っていて。指さしてひとつひとつ潰してあげた。君とぼくは今離れていますか?君は確か、北に住んでいましたね。。じゃあこっちだ。。君とぼくは今離れていますか?ぼくの視線は君に着く代わりに、部屋に貼ったポスターにたどり着いて、それは止まって見えます。右半分に黒い影がかかっています。ねぇ、離れているのですか?それなら窓を開けて南の低い空でりんりんいっている白い星を見てください。ぼくも見ます。そして、指で潰してあげて。ぼくももう一度します。あの星とぼくと君とで三角形を作って、、そうすると、ほら、一本の線にしか見えない。三角形にはどう見ても見えない。つまりぼくらは。。。。。いや、やっぱり明日会いましょうか。
(2002.1.10)-2
新しい場所だから、こんにちは。ぼくは今ここにやってきました。選んで、決めたので、やってきました。こんにちは。これから、ここがぼくがいる場所になります。ここが本当のぼくの場所になるといいと思います。胸がすーっとしていて、少し抜けたような感じがします。それはぼくが今までのぼくの場所を置いてきたせいだと思います。もう一度言います。こんにちは。まだ他人のぼくの新しい場所よ。
(2002.1.10)-3
まだときどき熱を持つことがある。ゼロ点というような精神状態のときに。そうだ、それは確かに真中にあり、現に中央で燃えるのだ。ぼくは神経の全処理を皮膚から中央へと切り替えて、去れ、と低く言う。少し脈打ちながら黒く発熱するそれは、既に膿んでおり、忌まわしいことに、ぼくはその毒に酔うのだ。
(2002.1.10)-4
あいつはどうしようもなく嫌なやつだから、俺は完全無欠のいいやつでいられる。まいなすいちをかけて返せばいいだけなのだから簡単なものだ。しかし、こんなものは本物ではない。ネガとポジに過ぎない。日に日に俺はぶくぶくに太ってゆく。更紗のソファに深く沈んで、右手に銀の杯をかざし、左手に芸妓のくびれた腰を抱き、毅然とした面持ちで両手を広げてすっくと立つ俺の彫像を目の前に置いてうっとりと眺めている。見るがいい、その俺の恐るべき表情を。そのだらしなくずり落ちた頬、その緩みきった口元、ひくついている鼻、その目についてなどはとても書けたものではない。この壮麗な像を彫り上げたのはあいつだ。そして、今俺が沈んでいる更紗のソファは人型をしている。俺は無間地獄に落ちたのだ。
(2002.1.11)-1
今日は切り分ける気分の日。冬服に身を包んだぼくと、その外側と。内界と外界と。ぼくは異物で、外界はぼくの輪郭をなぞった形に歪んでいて、ぼくが動くと外界も歪み、形を変え、波立つ。おもしろいからぐりぐり動いてみる。外界はそれに合わせて、少しの間だけ、軌跡を残す。ぶんぶん足を投げ出して歩く。放物線形の波紋。くるくる回ってかき回してみる。渦状の波紋。タバコの煙を溜めて、ゆっくり吐いて、混ぜてみる。温度差が産む屈折率の違いがゆっくりと伝搬する。それを試している。観察している。ぼくは溶け合わない。君が客観化される。ディジタル化すらできそうな気がする。手を出すと少し歪んで崩れて、はじかれていった。無音を伴っていた。
(2002.1.11)-2
もう、禁酒は限界です。何で禁酒を始めたのかもよく思い出せません。いや、本当はそんなことは無いのですけれど、こんなことを書いていると思い出すものなんですけれど、、、、ああーーー。。。。。。。しかし、しかし、しかしながら、それでもワタクシ、お酒が飲みとぅございます。。あぶぅ。あぶぶぅ。ばぁばぁ。だだぁ。ばばばぁ。でゅびでゅわぁ。わぷっぷわぁ。あぶぶわぁ。だぁだぁだぁ。(乳児化して、なんとか収めようとしている。)そうだよ、お酒なんて知らないよ。おっぱいちょーだい。みるくちょーだい。くれなきゃ泣いちゃうぞ。わわわー。でゅっでゅわー。ああ、もう乳児の声じゃない。っていうか、なんでそういう風になってくのか。意味わかんない。あぶぶぶ。だぁ。ばぁばぁ。ばぁぶぅ。飽きた。。ぐあぁー、どーしよっかなぁ、おあつらえ向きに明日から連休じゃないですか。明日買いに行けば飲み放題じゃないですか。バランタインを抱いて、抱かれて寝れるじゃないですか。はぁはぁ。ど、どうしよう。。。ねぇ、カミサマ(星を見上げて両手を握り合わせて、猫なで声で。)、もうひと月経つよ。ぼく頑張ったよ。お正月もまたいだよ。ぼく頑張ったよ。ねぇ、頑張ったよね。ねぇ。ねぇねぇねぇ。ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ。これも飽きた。もういい。明日、おととい更に物色して発見した江戸切子のオールドグラスと、バランタイン17年と、おいしいスモークチーズを買ってこよ。ああ、俺は酒飲みだよ。もぅ、既にぐでんぐでんなんだよ!わりぃか、てやんでぃ。
(2002.1.11)-3
軽い感じだ。埋め合わせようとする、摩り替えようとする、そういった類のものか。ぼくは、ぼくがどうなろうとしているのか、教えてもらえない。ひとつひとつ書き留めて。それしかなく。自由ではない。「頭の中にある何か創造的な星雲めいたものを言語的に客観化しようとして、せわしない眼つきで自分が持っている言葉の畑の中を見廻して、急いでそこらのありあう言葉を次ぎつぎと掴み取って作られるという気味のある日本の現代作家の書いた小説を読むように読んだのでは、この作品の言わんとすることろも、その味も香も、風刺や反語も理解されまい。」「利他的個人主義はそうではない。我という城郭を堅く守って、一歩も仮借しないでいて、人生のあらゆる事物を領略する。君には忠義を尽す。しかし国民としての我は、昔何もかもごちゃごちゃにしていた時代の所謂臣妾ではない。親には孝行を尽す。しかし人の子としての我は、昔子を売ることも殺すことも出来た時代の奴隷ではない。忠義も孝行も、我の領略し得た人生の価値に過ぎない。日常の生活一切も、我の領略して行く人生の価値である。そんならその我というものを棄てることが出来るか。犠牲にすることが出来るか。それも慥に出来る。恋愛生活の最大の肯定が情死になるように、忠義生活の最大の肯定が戦死にもなる。遁世主義で生を否定して死ぬるのとは違う。どうだろう、君、こう云う議論は。」
(2002.1.11)-4
ぼくを他へ移す。
(2002.1.11)-5
名前がないのだ。名前が無い。それはぼくで。それはきっとぼくで。それはぼくで?もう少しで届きそうなんだ。顔の無いあなたの王子様を蹴っ飛ばして退場して頂き、何食わぬ顔してその役に収まるのだ。なに、完璧に演じてみせる。なぁ、見ているのはぼくだろう?それはぼくなのだろう?ぼくだと言ってくれ。この名を呼んでくれ。指し示し、確定してくれ。そうしてくるのなら、ぼくは湧き上がる歓喜の押し殺して、厳粛な最敬礼を以ってあなたを迎えることを、きっと誓う。
(2002.1.12)
飲んだ以上に吐いた。
(2002.1.13)-1
「リリー、車でドライブしたことあるだろう。何時間かかけて海とか火山に行くんだ。朝まだ目が痛い時に出発して途中景色のいい所で水筒からお茶飲んだり、昼には草っ原で握り飯食べたりしてそういうありふれたドライブだけど。
 その走ってる車の中でね、いろいろ考えるだろう? きょう出発の時カメラのフィルターが見つからなかったけど、どこにしまったのかなとか、きのうのお昼テレビに出てたあの女優の名前なんていうんだったかなとかさ。靴の紐が切れそうだとか事故でもやったら恐いなとか、もう俺の身長も止まったなとかね、いろいろ考えるだろう?するとその考えが車から見る動いていく景色と重なっていくわけ。
 家とか畑がどんどん近くなって、また後ろに遠去かるだろう? それで風景と頭の中が混じり合うんだよ。道路の停留所でバスを待ってる人達やヨロヨロ歩いてくるモーニング着た酔っ払いとか、リヤカーにみかんをいっぱい積んだおばさんとかさあ、花畑や港や火力発電所がね、目に入ってすぐにまた見えなくなるから頭の中で前に思い浮かべていたことと混じっちゃうんだよ、わかるか? カメラのフィルターのことと花畑や発電所が一緒になるんだ。それで俺は自分の好きなようにその見る物と考えていたことをゆっくり頭の中で混ぜ合わせて、夢とか読んだ本とか記憶を捜して長いことかかって、何て言うか一つの写真、記念写真みたいな情景を作り上げるんだ。
 新しく目にとび込んでくる景色をどんどんその写真の中に加えていって、最後にはその写真の中の人間達がしゃべったり歌ったり動くようにするわけさ、動くようにね、すると必ずね、必ずものすごくでっかい宮殿みたいなものになるんだ、いろんな人間が集まっていろんな事をやってる宮殿みたいなものが頭の中に出来上がるんだよ。
 そしてその宮殿を完成させて中を見ると面白いんだぞ、まるでこの地球を雲の上から見てるようなものさ、何でもあるんだから世界中の全てのものがあるんだ。どんな人でもいるし話す言葉も違うし、宮殿の柱はいろんな様式で建てられていて、全ゆる国の料理が並んでる。
 映画のセットなんかよりはるかに巨大でもっと精密なものなんだ。いろんな人がいるよ、本当にいろんな人が。盲人や乞食や不具者や道化や小人、金モールで飾りたてた将軍や血塗れの兵士や女装した黒人やらプリマドンナや闘牛士とかボディビルの選手とか、砂漠で祈る遊牧民とかね、全部の人が会場にいて何かしてるんだ。それを俺は見るわけさ。
 いつも宮殿は海の辺にあってきれいなんだ、俺の宮殿なんだよ。
 自分で自分の遊園地を持ってて好きな時におとぎの国に行って、スイッチを入れて人形が動くのを見るようなものさ。
 そうやって楽しんでいるうちにね、車は目的地に着いてしまってさぁ、荷物を運んだりテントを張ったり水着に着替えたり他の人が話しかけたりしてね、せっかく作った宮殿を守るのに苦労するんだ。他の人が、おい、ここの水はきれいだな、汚れてないね、なんて言うと台無しになるのリリーにもわかるだろう?
 ある時、火山に行った時ね、九州の有名な活火山に行った時ね、山頂まで行って噴き上げる火の粉や灰を見てたら急に宮殿を爆発させたくなったんだ。いや火山の硫黄の匂い嗅いだ時にはもうダイナマイトに繋いだ導火線には火がついてたよ。戦争さ、リリー、宮殿がやられるんだ。医者が駆け回り軍隊が道を指示するけどもうどうしようもないんだ、足元が吹っ飛ぶんだ、もう戦争は起こったんだから俺が起こしたんだから、あっという間に廃墟だよ。
 俺が勝手に作った宮殿なんだから別にどうなったっていいからな、いつもこんな風にね、俺はやってきたのさ、ドライブの時ね、だから雨の日に外を見ておくと役に立つんだ。
 この前さあ、ジャクソン達と河口湖行った時ね、俺LSDやってたんだけど、そのときまた宮殿を作ろうとしたらさ、今度は宮殿じゃなくて都市になったんだ、都市さ。
 道路が何本も走って、公園や学校や教会や広場や無線塔や工場や港や駅や市場や動物園や役所や屠畜場がある都市さ。その都市に住んでいる一人一人の顔付きや血液型まで決めたよ。
 俺は思うんだ、俺の頭の中みたいな映画を誰か作らないかなあっていつも思うんだ。
 女が妻のある男を好きになって、その男が戦争に行って外国の子供を殺して、その子供の母親が嵐の中で知らずに男を助けて、女の子が生まれて、その女は大きくなってギャングの情婦になって、ギャングは優しかったけど地方検事にピストルで撃たれて、その地方検事の父親は戦争中ゲシュタポで、最後に女の子が並木道を歩いてブラームスの曲が流れるっていうような映画じゃなくってさ。
 大きな牛を切ってこれくらいのステーキを食うのと同じようにさ。いやわかりにくいかな、いいや小さいステーキでもやっぱり牛を食ったわけなんだからさ。俺の頭の中の宮殿や都市を細かく切ってさ、牛を切るみたいに、一つの映画にしたような映画を見たいよ、絶対作れると思うんだ。
 でっかい鏡みたいな映画になると思うな。見てる人が全部映し出されるような大きな鏡みたいな映画になると思うよ、俺その映画見たいな、そういうのがあればぜひ見たいよ」
「その映画の始まりのシーンを教えてあげようか? ヘリコプターがねキリストの像を運んでくるのよ、どう? いいでしょ、
 あなたもう効いてきたのね、リュウ、ドライブしようよ、火山に行こうよ、また都市を作ってあたしに話して聞かせてよ、きっと雨が降ってるわね、その都市には。雷の鳴る都市をあたしも見たいわ、ねえ、行くわよ」
村上龍「限りなく透明に近いブルー」

(2002.1.13)-2
さて。切り出すべき理由があったようでもあるし、なかったような気もする。この小説の中でほとんど唯一のまとまりとして扱える部分だからだろうか。それともぼくと触れる唯一の部分であったからだろうか。融ける感覚を。ぎりぎりのところ。剣は両刃であった。背中を撫でる冷たい鉄の棒が。倒れて小さく痙攣する女の、傷口から流れ出る血を丹念にすくって全身に塗り付けた。性器に塗り付ける時、真っ赤に勃起している自分のものを見て、眩暈がして焦点が合わなくなり、何本にも分裂して揺れ動く真っ赤な自分を見ながらうめいていった。足の先まで塗り終わると、女は動かなくなっていた。血が乾ききる前にガソリンを同じ様に身体に塗り付けた。脱ぎ捨てたズボンのポケットからライターを取り出して、てかてかと光る真っ赤なその先端の下で火を付けた。恐怖は必要であり、痛みは確認のために用いられる。疲労。分解。舌を焼いて。匂いがする。手がべとべとして。剣。
(2002.1.13)-3
そんなことよりもこの小説は清潔なのだそうだ。そういう評価を受けたのだそうだ。どうしようか。レスポンスが返って来ない。キイワアドなのだけれど、どう扱っていいかわからない。近いのかね、ぼくは。
(2002.1.13)-4
ここんところ、ちょっと暖かいですね。ベスパが故障して止まっていました。いつもバリバリわめき散らして走り、すぐにご機嫌斜めになるあのわがまま娘には困ったものです。それでも綺麗なスクーターなので、仕方ありませんね。それから、環七を走る自動車の列には意思がないと思いました。そして、ぼくは意志が弱いです。
(2002.1.13)-5
 私はクレヨンを握って与えられた画用紙の上に私の大好きなたんぽぽのお花を描いた。あのお花の何十枚もの小さな花びら一枚一枚を私は知っているので、それを描き付けようとした。思い描いていた小さな綺麗なお花は、黄色いクレヨンの作る粗い線によってすぐに膨張して、画用紙一面に黄色い不恰好な円ができる。私はクレヨンは太すぎると思った。そして黄色一色では花びら一枚一枚を識別できるように描くことができないとわかって、クレヨンの箱の、黄色の隣の場所にあった青いクレヨンを握って花びら一枚一枚の輪郭をなぞってゆこうとした。クレヨンは太すぎて、私の手は私の思ったとおりに全然動いてくれなくて、そして青という選択はどうもよくないものだったらしくて、見る見るうちに不恰好な黄色い円はグジャグジャの青い線で塗りつぶされていった。私は腹を立てていた。こんなものはたんぽぽではないと思った。母にたんぽぽを描きたいと言わなくてよかったと思っていた。画用紙を丸めて引き裂きたい衝動に駆られたが、母が隣で洗濯物をたたんでいたので、それをすることができなかった。私はクレヨンが太すぎるのだ、もっと細くて柔らかい線が引けるような道具を使えばきっと今日、母に手を握られて歩いているとき見た田圃のあぜ道の端に咲いていたたんぽぽをそのまま描き出せるに違いない、春の陽気がとても暖かくて、今日はご機嫌だったのだ、あのたんぽぽを見たのだから描けないわけがない、クレヨンが太すぎるからいけないのだ、と思っていた。
 母が洗濯物をたたみ終えて、「何を描いたの?」とこちらを向いた。私は青と黄色でできた汚らしい楕円形を隠すこともせずに、少し顔を歪めて固まっていた。「これは何?お日さま?それとも、お花かしら?お花だったらたんぽぽね。」そう言って微笑んだ。私は混乱した。
 言い当てられた。この汚らしい斑の楕円形がたんぽぽだと。これがたんぽぽだと?そんなわけがないではないか。たんぽぽは、本当のたんぽぽは、今日見たそれは、もっと小さくて、綺麗で、複雑でそれでいて整然としていて、真直ぐに空を向いて、光り輝いていた。それがこれと同じとは、母の頭は狂っているのではないだろうか。確かに私はこれをたんぽぽとして描き始めた。しかし、失敗したのだ。たんぽぽにはならなかったのだ。画用紙の上に乗ったクレヨンの、青と黄色の、それだけだ。それをたんぽぽだと言うのか、このひとは。
 そうか、それは憐れみか。ああ、私はこんなものを描いて、憐れまれてしまうようなものだったのか。私はこんなものしか描けない人間だと思われているのか。それで仕方ないと思われているのか。違う。それは違う。私にもっといい道具を持たせてくれ。あのたんぽぽと全く同じものを紙の上に咲かせて見せる。クレヨンが悪いのだ。私を憐れまないでくれ。私はたんぽぽが描きたいのだ。描けるのだ。
(2002.1.13)-6
それはできれば言葉を使って表したくありません。どうしても口にしなければならないのなら、そう、「どうしてもするのだ」とだけ言いたいと思います。それを正確に言い切ってしまったら、多分ひどくそこなわれるものがあると思います。多分そこなってはならないものをそこなってしまう。それも正確に知ってはならないのだと思います。インターネットは、そこに映す自分の何かは、立ち昇り雲を作る水蒸気のように、循環し、形を持たず、形容することを受け入れない。それでも、もうそれを持ってしまったのだ。食べた林檎を吐き出すことはしないのだと。それを責められたのなら、私は青い唇をして許しを請うしかない。無くすわけにはいかないのだ。どうか、どうか、私をほんの少しでも慈しむ気持ちがあるのなら、それを許して欲しい。背くというものでは決してない。ただ、それは私にとってそこなってはならないものなのだ。私はそこに私の一部を、確かに一部を置き、それによって、何かの、ああ、それは言わせないで欲しい。どうか、お願いです。私にそれを持たせていてください。もうこれ以上は何も話せないのです。ですから、ただお願いするしかない。私からここを奪わないで。
(2002.1.13)-7
鏡のように反射する。
(2002.1.14)-1
なんとなく、今日は渋谷の街を肯定したく。いや、正確にはその中の一部分を肯定したく。あそこへ集まってくる人たちのその目的か、事情か、感情か、印象か、分類か、意志か、意図か、意識か、動きか、流れか、なんだかよくわからないのですけれど、あそこにいる人達に共通する何かを肯定したく。固まりとして肯定したく。それによって、ぼくは集団としてではなく、個として、あそこに来ている人たちを少し眺めてみれるような気がして。あれですかね、成人式だったからですかね。よくわからんのですが。
(2002.1.14)-2
射程外のことをやろうとしてないかい?
(2002.1.14)-3
間にクッションのようなものを挿んだ方がいいのではない?
(2002.1.14)-4
日記を書こうと思うのだけれど、手が回らない。いや、それよりもお酒について書きたいのだけれど、何を書いていいかわからない。
(2002.1.14)-5
ああ、とりあえずね、バランタイン17年はね、うまいよ。マジで。俺あんまりスコッチ好きじゃないけど、よくできてるよ、これ。ちょっと高いけどね。外で飲むとやたらめったら高いんだろうなぁ。っていうか、そういうことを書きたいんじゃあないんだよなぁ。ぼくにとって飲酒とはどういうものであるかを、そろそろまじめに取り扱って、結論として、ぼくは酒を飲むのだ、というところまで持っていく必要があるのだけれど、なかなか難しいね。やってることはただのバカだからね。多少強引な、パワー系の理屈がいるね。それは慣れていないから、難しいね。
(2002.1.14)-6
あの子が好きだっていったのと同じくらいかかるかも知れない。どちらもぼくの罪だよ。
(2002.1.15)-1
頭をこづく。何も出ず。今日はいっぱい仕事をサボってメールを書きました。ぼくはお酒を飲みます。
(2002.1.15)-2
不安になる。少し大股になりすぎた?人生ゲームの5つ進めとかはどこも嬉しくない。5マス進みたいときはサイコロ振って、1を5回出すか、5を1回で出すか、2と3の2回でやるかわからないけど、とにかくちゃんとサイコロ振らせて。振ってから進ませて。背中押したり、動く廊下に導いたりしないで。ぼくはヘタクソだけれど、ビリだけれど、自分で振って進むよ。
(2002.1.15)-3
コピーでなくなっていく気がする。コピーでいたい。
(2002.1.15)-4
冬の薄らいだ日の、見失い方。暖かいねと言い、少しだけ見せた。あなたは少し驚いて、私はあなたよりも驚いて。何か言おうとあなたは口を開けるから、私はそれを両手で塞いだ。私は気まずいおかしな顔して笑って見せて、それからそっと手をどけた。あなたは静かに口を閉じて、真顔で私の眼を見て。私はやっぱり気まずいおかしな顔して、笑いで応えて、それで私は始めて見るあなたの顔を作った。「まぁ、いいか」とあなたはその顔で呟いて、私はふっと、見失ったことを。
(2002.1.15)-5
あなたはずっとそれを憶えていた。私は、後悔を。
(2002.1.15)-6
次の日、晴れ切って冷たかった。頬を刺す冷気に負けて私はいつまでたっても電話をしなかった。暮れてゆく陽と、帰宅時の駅からの道のりとが重なっていた。紫に染まってゆくアスファルトの端を通る白線を踏みながら、小さな液晶にぼんやり映し出されるあなたの名前を出しては消した。名前を眼でなぞり続けた。ねぇ、あなたは笑うとどういう顔になるんだったっけ。なんどもなんども心で言った。あなたは応えない、あの顔で、あなたは。
(2002.1.15)-7
ねぇ、ねぇ、今目の前に来てよ。今なら謝るよ。謝らせてよ。笑ってよ。笑って返してよ。手を伸ばして頬を撫でるわ。その髭を触らせてよ。ねぇ、この名前、あなたの名前?わからないわ。ねぇ、あの顔、あなたの顔?ほんとにあなたの顔?ねぇ、私にくれていた顔は?どこへいったの?私じゃない他人にあげているの?ねぇ、わけがわからない。どうかしてる。笑って、触らせて、抱いて。どうかしてる。どうかしてる。
(2002.1.15)-8
身体を強張らせて部屋に戻り、靴を脱ぐと、次に何をしていいかわからなくなった。真っ暗な部屋で、唯一明るく、液晶に映し出されていたあなたの名前はタイムアウトで消えた。私は闇の真中へ手を伸ばし、そこにあなたの感触があることを願った。せめてあなたの体温を感じることができはしないかと思った。吸い込まれた私の指先には、一日空白でいた部屋の冷たさだけがあった。
(2002.1.15)-9
長い夜。眠ることを取り上げられていた。何百通りのあなたとの会話を考えた。あなたは決まってあの顔で静かに「まぁ、いいか」と言い、会話を終わらせた。
(2002.1.15)-10
二度眠った。涙を溜めて目覚めた。鼓動が大きくて、息が荒かった。
(2002.1.15)-11
ほんというと、何をしたのかはっきりとはわからない。でも、あなたはずっとそれを憶えていて。私には後悔があって。 / 冬の薄らいだ日の、見失い方。


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