Uluru 物語 
(7)入院中に携帯電話が鳴って


 さて、今まで書いて来たことは「過去または過去完了」の事柄であるが、これから書くのは現在または現在完了」の事柄である。思い出して書くという作業ではなく、自分のブログに書いたことを整理しなおすという作業に近いが、どちらも事実ばかりである。

 2008年になり、浅井君がエクセルを駆使して綿密なスケジュール案を作ってくれてから急に計画が具体的になって来た。3月には石坂、石垣両先輩が遠征隊に加わってもらえることになった。

4月、桜がすっかり散った頃にはホテルの予約も確保出来た。5月になると旅行会社の人を交えて打合せを行い、航空機の手はずも決めた。

そんな中で、レンタカーの手配だけは難航していた。四輪駆動のランドクルーザーとなると現地での手配が難しく、しかも当初の案では1台はダーウィンで借り出してシドニーで乗り捨てということなので料金が高い。2週間1台55万円という見積もりだ。さらにウルルから後発隊用に1台追加借り出し、アデレードからさらにもう1台を必要とした。
いろいろな方策を皆で考え、色んなところに当ってみた。

 車両が難航している6月6日金曜日の晩、喉が痛くなり翌土曜日に急遽耳鼻咽喉科に駆け込んだ。「喉のこことここが腫れていて、このままだと腫れが広がって喉がふさがり、食べ物は通らず、息も出来なくなるところでした。扁桃腺もただれてます。今日は土曜日ですから、あと30分遅かったら閉まってしまい、日曜だったら救急車ものでした。」

ということで即入院となった。入院イコール手術かな思ったら、点滴と抗生物質投与なので一安心。3日間で退院したものの痛みと腫れは引かず、水曜日に外来に行くと先生が「どうも気になるなあ。ちょっと突いてみましょう。」と言って喉を突くと膿が出て、結局手術となり、それからさらに3日間再入院となった。

 再入院の最終日。病室で点滴を打っていると携帯電話が鳴った。1年先輩の石垣さんだった。「車両のことで大進展があって至急連絡するようにメールを出したのに見てないのか?」「えっ? 今入院中で点滴を打っているところで、ずっとメールは見られない状態だったので・・・。」

車両を借りられるようになったので至急仲間に連絡を取るように、石坂先輩および如水会本部に至急趣旨書を届けるように、という急展開、大進展の嬉しい知らせだった。

左手に点滴の針を打ったまま、右手で携帯電話を手に仲間に電話を掛けまくった。(看護婦さんに確認したら「病室では携帯電話は自由ですよ。」と教えてくれた。)

二人部屋だが幸い相部屋の青年は私の点滴が始まる前に嬉しそうに退院していったばかりだった。耳と口が不自由な青年だったが、とても勘が良く、他の人がしゃべっている口元とわずかに聞こえる耳でほとんど理解しているようだ。
来年卒業で、彼の入院中に同級生と思われる男の子と女の子一人ずつがお見舞いに来た。3人とも手話で話をしていた。

3人とも好青年で、横になりながら会話を聞いていたがとってもすがすがしい気持ちになり、その余韻に浸っている最中に、その嬉しい電話の音が鳴った。


続く
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