Uluru 物語 
(17)キャノン訪問

 2008年9月24日。毎週水曜日はメガロスのストレッチがある日で、先週はNHK放送センターに行ったために行けなかったので本当はストレッチに行きたかったが、早乙女兄の熱心な姿を見ていると断りきれず、たまたま行き先が品川という近さもあってキャノンマーケティングジャパン竃{社を訪問した。

品川駅港南口に12時45分待ち合わせ。

京急品川駅を、いつも乗り降りするJR連絡改札口ではなく一旦第一京浜国道側に出て、跨線橋を上って広い中央通路を渡り港南口に出た。港南口を出たところで携帯電話が鳴った。早乙女君からだった。「今どこにいるの?」「港南口を今出たところ。」などと話しているうちに、何だか聞き取りにくい携帯電話の声に混じって聞き覚えのある肉声が聞こえてきた。辺りを見回すと、5メートル後ろに彼が受話器を持って立っていた。「え? どこ?」

ポンと腕を叩いて、「ここだよ。」

「オー!! 何だ。そこにいたのか!!」「うん。肉声の方が良く聞こえたので。」

会話を続けながら2階の歩道を歩き出す。「実は、今朝から腹の具合が悪くて、3回もトイレに行ってしまった。」「大丈夫? オーストラリアに行ったらトイレはそんなに無いよ。置いて行っちゃうよ。」

すると、いきなり前を歩いていた背の高い人が振り返った。「何だ! 後ろにいたのですか? オーストラリアという声がしたので思わず振り返ったら、二人とも要るじゃないですか。」

一期下の横山君だった。

品川の西口は変わりようがないが東口はすっかり変わってしまった。

東京で街ごとすっかり変わってしまったのは、古くは新宿西口、池袋、恵比寿、有楽町、六本木、五反田、大手町・・・・。機能的、近代的にはなったが生活の匂いはしない。人が住んでいないからだろうか。

横浜だってみなとみらいなども変わってしまった。でも、高層住宅が立って人が大勢住んでいるのにもかかわらず生活の匂いもしない。生活の匂いがするかどうかは人が住んでいるいないに関係ないようだ、などと思っているうちにすぐ着いた。

 そのまま2階の歩道から本社ビルに入って展示コーナーで製品を見ながら時間調整をする。

「一眼レフのような高級な機種は我々には使いこなせないし、重たいし、必要ないね。コンパクトカメラで充分だね。」「VTRもあると良いね。」などと好き勝手なことを述べ合う。

「そろそろ良い時間じゃないかな。」「1階受付に行こう。」

 

 広い一階のロビーで待つこと1分。すぐにNTT営業本部長の富田さんが来られた。セキュリティーの厳重な出入り口を抜けてエレベーターで8階へ。会議室には広報部長の上野さんが待っていた。

二人とも肩書きの割りにお若いなあと思っていたが、考えてみれば自分はとうに定年を過ぎている年齢だから、自分より若いのは当たり前だ。やっぱり、現役でバリバリ働いている姿はいいなあと思う。

 話の方は、上野さんの「で、どの機種が良いですか?」という質問からして分かるように、もう機材を貸してくれるのは当然、という感じだった。

「その前に、前提として何か私達に出来ること、協力できることはありますか?」と尋ねると「いや、このような楽しいお話にお手伝い出来るだけで結構です。」という。

新機種が出ると、報道向け貸出し用に何台か機材を確保してあって、その中から貸し出すので無料で構わないという事だった。機種を選択する中で、先ほど3人で打ち合わせていたとおり、コンパクトカメラとVTRをお願いすると、「コンパクトカメラは記念写真やファミリー用で、もっとインパクトのある写真を撮るには一眼レフでないと。」とその良さを熱心に説明してくれた。

私は「一眼レフってなあに?」というくらいのカメラ音痴で、どこがどう違うのか分からない。

「でも、私達の腕はど素人もいいとこなので・・・。操作が難しいんじゃないですか?」

「いや、大丈夫です。シャッターを押すだけで写せますから。」

ということで、「ivisビデオカメラ」と一眼レフの「EOS kiss X2」 を夫々2台ずつ無償でお借りすることになった。

 本社ビルの1階にギャラリーがあったので早乙女君が「例えば、ギャラリーをお借りして遠征の写真を展示するというのはいかがでしょうか?」と聞くと、幾分笑いをこらえながらという様子で「あそこは2年先まで予約が入っていまして。著名な写真家が使われるようです。」とのこと。

『私達の撮った写真をギャラリーに展示する。』という案はあっけなく崩れた。

さらに、「仲間の一人が、個人で買いたいと言っているのですが・・・。」と聞くと「これまた良く聞かれる質問ですが、実は私どもを通して買うと帰って高いものになってしまうのです。」「私達社員も、例えばヨドバシカメラとかの量販店で買っているのです。」ということであった。

 

 こんな訳で、何の見返りを期待されることも無く、VTR2台、一眼レフカメラ2台を無償でお借りすることになった。

帰りがけのエスカレーターからもう一度ギャラリーを見ながら、「全員で写真を撮りまくれば、中には出会い頭で良い写真も撮れるかも知れない。それを展示したらどうかなあ?」などと諦めきれない様子。

「でも、そこが素人の悲しさ。どれが良い写真か分からないのではないかなあ。たくさんあり過ぎるとね。」


続く
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