ウェールズ(2)
カーディフからPorthmadog

Porthmadog
前号と同じく1998年の16枚のスケッチの1枚です。
橋の欄干をイーゼル代わりにして描いていると50代くらいの夫婦連れが声をかけて来た。

前回のカーディフ城の多少不良っぽい、でも美しい、少女達と別れて翌日。

昨日見たMt.スノードンを見たくて、ふもとをとおるバスに乗る。町を出たころは何人か乗客もいたが、町を外れると4〜5人になってしまった。雄大な山の景色を胸いっぱい吸いながら、バスはかなりのスピードで走る。途中、バス停でもないのに手を振るおばさん達がいて、当然のごとく止まる。3人連れ。どこの国でもおばさんは強い。1時間ほど走って終点。ここで乗り換えて
Porthmadogに向かう。今日の目的は、PorthmadogからNarrow Gage の蒸気機関車にのってMt.スノードンを遠くから一回りすること。

Porthmadogについて時刻表を見ると一時間半ほど間があるので港をスケッチする。橋の欄干をイーゼル代わりにして描いていると、50代くらいの夫婦連れが声をかけてくる。別れ際に、記念にと私の絵葉書をあげると、”I must pay.”と言い出すがどうも本気らしい。思わず苦笑。”Just for our memory.

日本だとこうはいかない。背後霊のように何時の間にか後ろに立って、やがて音もなく去って行く。人の気配は何となく感じるもので、いつまでも無言だと気味が悪い。
しかし。 数ある中には例外もあり、とても楽しいこともある。4年くらい前、山下公園で20号の、野外写生としては大きい油絵を描いていると、小学校4年の男の子が熱心に見ていて、あまり熱心なので声をかけると、「とても絵が好きで、休み時間に鉛筆で友達を描いたり、家でお母さんやお父さんを描いたりするが、お母さんはすぐ動くので描きにくい。そこで昼寝をしているときに描くようにしているが、それでもすぐ寝返りを打つので描きにくくて困る。家が横浜の小机駅の近くで、田畑が多く、蛇も出てくる。今日はお母さんと一緒に遊びに来ている。・・・」というようなことを延々と話してくれた。子供の話とも思えないようなところがあって、感心しながら聞いていたが、この子は素晴らしい才能を持っているような気がした。

しばらくしてお母さんがやってきて、「邪魔してはいけませんよ。」と言っていたが、邪魔どころか、その子の純粋さがとても感動的であった。

日比谷公園で描いているとき、すぐ隣にも描いている女性がいて人だかりがしているのに、自分の所には人は来ないし、来てもすぐいなくなってしまうことがあった。描きはじめの頃は人に見られるのがとても恥ずかしくていやなものだが、ある程度なれると苦になるどころか励みになる。そんなわけで、正直言ってあまりいい気がしなかったが、その原因がわかった。ラジオ短波
「城戸麻亜子の絵画教室」の写生会があり、彼女が公園を回りながら指導しているのであった。
人が途切れた時に隣に行くと、私が絵筆を持っているのを知って彼女から話し掛けてきて、お話をしているうちに、私の絵を見せてくれということになり、無料で指導までしてもらい、「会に入りませんか。」とか、「東急文化村で展覧会をやりますから来てください。」とか、とても気さくな方でした。(おまけに背が高く、美人で、少しかすれた声が素晴らしい。) というようなこともあります。  

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