連載コラム
第3回 最近のバスルーム事情

 私達がこどもの頃は、パスタという言葉はあまり知られていなくて、スパゲッ ティ(ミートソースかナポリタンの2種類が基本)とマカロニくらいしか知りませんでした。ごはんのおかずにスパゲッティミートソースという家庭もあったのではないかと思いますし、アルミの弁当箱にぎっしりスパゲッティナポリタンが詰込まれていた友人もおりました。どうやら洋風肉そばという感覚で食べられていたのかもしれません。数年前、北京の屋台でハンバーガーを買ったら、概ね肉まんでした。逆に今やラーメンは日本の代表的な食文化のひとつになってきたようで、知己の中国人もラーメンは日本が一番だといっています。

 和様化のプロセスというのは、古来から様々な日本文化が生まれるためのひとつの形式でありました。中国やインドから持ち込まれた寺社の建築様式も年月を経て日本式にアダプト(適応)して数々の名作を生みました。異文化のコピーから始まっても、適応するプロセスを経ることで、オリジナルと成り得ると考えてよいのかと思います。ケンタッキーやマクドナルドのようなファストフードですら、本家より日本のほうがおいしいといううわさもありますね。

 さてさて、本題です。「洋バスと和バスどちらが好みですか。」住宅の打合せでの話題になります。そこで、ゆったりした洋バス(ホテルのバスルームみたいな)がよいが、洗い場と追炊きもほしいというのがポピュラーな要望のようです。洋バスだと寝室と一体であったり、ロフトやペントハウスに置かれたりと自由自在なのですが、洗い場とか追炊きということになればとたんに防水や湯気の問題で密閉したオフロバにならざるをえません。壁の仕上げもタイルやFRPといった硬質なものになりますし、お風呂を焚くという感覚から蓋をするために浴槽の縁は平らでなければなりません。追炊き可能な洋風バスタブという高価な国産品がありますがどこかしっくりこないのは生活様式のアダプテーションが未消化であるためと考えられます。

 しかしながら、せっかくの新居ですからそれぞれの家庭の要望を叶えるべく様々な組み合わせを検討しています。ちなみにFLATS A+Bでは洋バスで追い炊き無し、洗い場無しですがバスルーム全体(洗面、トイレと一体タイプ)の床にヒノキ板を敷いています。水が流せるように床下は防水コンクリートになっていますので晴れた日に丸洗いするとヒノキの香りがとてもきもちいいです。ガラス張りのサンルームのようなつくりなので冬の日の午後にはバスルームやそこから連続するサービスデッキの床で母子が読書を楽しんでいます。GAPでは家族がバスタブでくつろいでいる横で奥様が洗濯乾燥機を使うのは日常の生活シーンだそうです。強化ガラスのスクリーンによって囲われたバスタブからはリビング上部の吹き抜けに視線が抜けるため開放感も抜群です。
和洋バスタブ、リネン置場、洗濯機、洗面ボウル、便器からテラス、窓、間仕切り材まで無限のバリエーションがあるわけで、ひとつづつ住まい手にアダプトするデザインを開発することでユニークな住空間ができるのだろうと考えています。

 

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