コッツウオルズのタクシードライバー N0.39

 2000213日日曜日 18:20

  

No。14の続きになります。

 1994年9月21日。ミクルトンからブロードウェイまで歩こうとしたが、イギリスは一見平坦な丘に見えても結構アップダウンがありそんなに生易しいものではない。また、緑の牧草地でもフットパスを歩くとなると、ぐちゃぐちゃだったり、遠くから見るのと実際に歩くのとは大違い。

昨日はフットパスを登り、山のてっぺんまで行き着いたところで道がなくなり、農家の(といってもとてつもなく広い)鉄条網を越えてリュックサックを向こう側に投げ入れ、人っ子一人いないのを確かめ(といってもこんな山の中にいる訳はないが、家がある以上いないとも限らない)やっとの思いで乗り越えて行った。アメリカならこんな所を見つかったら”Freeze”とか言って拳銃で撃たれるのではないか、などと考えながら農家の前をこっそり抜けていった。だって今更もとバス停まで戻るわけには行かない。そうこうするうちにまた、深い森の中にと道が続いてゆく。うっそうとした森で、右側は急な斜面、昼でも薄暗い。ロビンフッドのいたシャーウッドの森のようだ、ここで谷に落ちても誰も気付かずに死んでしまうのだろうな、などと考えながら歩く。途中、狐やウサギも見ることが出来たが、でもイギリスは不思議な所で怖いと感じたことはない。

そんなことがあったので、今日は歩くのはやめてB&Bのおばさんにタクシーを呼んでもらい、朝8時に迎えが来た。えっ。これがタクシー。何の変哲もない普通の乗用車ではないか。勿論ロンドンの黒塗りのタクシーが来るとは思っていなかったが、それにしても。・・・

このおじさんが陽気な人で、実によく喋る。まず、荷物を後ろの座席に載せて、楽しく行こうではないか助手席に座れという。

おじさんの説。健康の秘訣は、Always laughing −笑うこと。昨日の嫌なことは忘れる。明日のことは心配しない。Only Enjoy Today だそうだ。

ブロードウェイに着くまでの30分間、昨年あった日本人のおばさん3人のグループがパンクをして立ち往生していたので直してあげたら、とっても丁寧なお礼状をもらった、生まれて初めてあんな手紙をもらった、日本人は何て礼儀正しいのだ、とか、ずっと喋りっぱなし。正確な運賃は忘れたが、とにかくべらぼうに安かった。

ブロードウェイで小雨の中しばらく待ってバスに乗り、チェルトナムのバスセンターに着く。どこもそうだが、シティーセンターと列車の駅は離れており、20分以上歩いてやっと駅に着くと、駅員が”You have just missed a train” 40分待って列車に乗る。コッツウオルズとさようなら。

ミクルトンのB&Bはとてもキレイな部屋で、おまけに近くに素敵な村のパブがあり、昨日は村の楽団と大いに盛り上がったこともあって、1997年息子と一緒に泊まろうと、記憶をたどりながら車で探し回り、やっと見つけたのですが予約で一杯でした。ここの近くの教会をスケッチし、15号の油絵にしました。それがコッツオルズ(1)の絵です。

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