ポンピング法によって作成したゼラチンスポンジのみで塞栓しています。治療効果に関してはデータを治療成績に
示していますので参照ください。UAE前に腺筋症病変が完全梗塞になるかどうかを見極めることは現時点では困難です。
またUAE後に完全梗塞が得られても腺筋症は再発することがあります。それでも、UAEにより今までのつらい月経がうそ
のように楽になったと訴える患者さんが大部分であるためUAEを施行する価値はあると考えています。
では腺筋症に対するUAEの治療効果はどの程度なのでしょうか。2003年から2009年までにUAEを行った76症例を検討して
みました。 UAE後の経過観察期間は1-77ヶ月で平均30.8ヶ月です。
累積症状コントロール率をKaplan-Meier法で表しました。これをみると判るように時間が過ぎると少しづつ症状が再発してい
ることがわかります。大体3年で70-80%が症状コントロールされているといえます。これは全体の症状コントロール率で症状
再発といっても軽くて鎮痛薬をのまなくて良い程の月経痛からとても痛くてがまんできないような月経痛も一緒になっています。
そこで、月経痛があるも軽くて鎮痛薬は必要ない、もしくは市販の痛み止めを1-2回のめばいい程度の月経痛の場合は
コントロールされていると定義した場合は
3年で85%以上、5年で75%以上の患者さんが症状コントロールされていることになります。
次に、梗塞率の違いによって症状コントロールに差が出るかどうかを検討してみます。
UAE後1ヶ月で造影MRIを撮り、腺筋症病変部が完全梗塞:GroupA(47/76=61.8%)、50-99%梗塞:GroupB(15/76=19.7%)、
50%未満梗塞:GroupC(14/76=18.4%)と分けてKaplan-Meier法でグラフにすると完全梗塞を得た場合3年で90%以上の
無再発率となることがわかります。ところが梗塞率のよいB群は3年以上経過すると梗塞率の悪いC群より症状コントロール率
が悪くなってしまいました。Log-rank検定をしたところA群とB群、A群とC群との間には有意差が認められたのですが、B群とC群
との間には有意差が認められませんでした。これは統計的には完全梗塞以外は皆同じと言うことです。
つまり腺筋症のUAEでは完全梗塞が得られた場合とそうでない場合とに分かれて、症状コントロール率に差が出ると言うことになります。
上のグラフは累積無再治療率です。再治療はGnRHa、低用量ピル、デイナゲスト、子宮全摘をさしており、鎮痛剤の服用は含めていません。
やはりB群とC群とには有意差がありませんでした。A群つまり完全梗塞の場合は5年で80%の患者さんは再治療が要らないということになり
ます。つまり5年たっても症状は再発しないか、再発しても鎮痛剤を飲む程度でいいということになります。一方完全梗塞でない場合は3年で
40%近くが何らかの再治療を要すということになります。腺筋症のUAEの治療効果を上げるためには完全梗塞率を上げればいいということに
なります。2009年以降14名の腺筋症患者さんにUAEを施行し、完全梗塞は11名、したがって2009年以降は完全梗塞率14/11=78.6%でした。
症例
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