フルートの音の出し方(1)

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フルートの音の出し方(1)

始めに

私は小中学生の頃、リコーダーならそこそこ上手い方だったと思う。
それなりに練習もしていたし、何よりリコーダーは笛の発音部が
固定だから、発音に関しては、吹く強さだけを注意すればいい。
もちろん、ブレスとかタンギングとかヴィブラートの要素が入ってくると
違ってくるけれど、「音を出す」ということに於いては吹く強さのみだ。
要するに音を出す程度なら誰にでも出来るということ。
しかし、その代わり表現力はかなり制約される。
逆にオーケストラで使うような楽器は、発音そのものがかなり難しく、
音が出る様になっても楽音として通用する音を出すが更に難しい。
そういう意味で、特にフルートは憧れの楽器であった。
とはいえ、私は、フルートの演奏家として生きて行こうと考えていた
訳でもなく、専門はマイクロ・コンピュータや電子工学関係と決めていたし、
アコースティックな楽器よりは、ミュージック・シンセサイザーに興味があった。
単純に趣味で吹ける様になればいいなあ、くらいに思って小遣いに余裕が
出てきたあるとき5万円ほどの楽器を購入した。
当時、偏見もあったとは思うが、日本の演奏者の吹くフルートは、
なぜか音色が丸く弱いように感じていた。
ある意味お行儀が良過ぎて、楽器の持つダイナミック・レンジが生かせず、
これだったらリコーダーと変わりないじゃないか・・・
などと思っていたこともあって、恐らく習ってもこういう丸い音色しか
教えてもらえないだろうと思っていた。
そういう一方で、ジャズ・フルートは、確かに運指さばきも鮮やかで
パワフルなものが多いけれど概して掠れていて自分が目指す音色とは違っていた。
その道を目指すなら、音大にでも入って自分が演奏を聞いて憧れが持てる
人の元で学びたいと思うし、それが正しいと思う。
しかしまあ、趣味でやるのだし、ある意味楽器の発音に関しての興味だけが
異様に高かったので敢えて独学にすることにした。
結果は、挫折だったが、ある時あるきっかけでまともな音が出せる様になってきた。
住宅事情もあり、自分の腕では場所代を払ってまで演奏する値打はないと思い、
年に1〜2度、実家に帰った時に数日だけ練習して楽しんでいる。

音が出ないことと教本と

5万円もの楽器を買ったものの、最初は本当に音が出なかった。
小さい頃、田舎の祭りで使われる竹で出来た牛鬼の笛も、ブオ〜ンと
鳴らすことが出来なかった思い出がある。もちろんフルートを
手にした時は、それも鳴らせたし、ソテツの実をくり抜いて作った
笛も鳴らせていた。
けれどフルートは、鳴るには鳴るけど、とても楽音にならない。
無駄に息を使って、酸欠でフラフラになるくらいになっていた。
最初使っていた教本の図は稚拙で、雰囲気で描いてあった様だ。
ある意味その図を間に受けてその図の通りにして音が出ないと
思っていたような節もある。教本から得られた情報は、息を
アンブシュール・ホールのエッジに当てるということだけだった。
芸術関係の教本には、まともなものがないと思った。
やはり吹ける人に手取り足取りという方法しかないのだろう。
逆にそれで済んでしまうから、演奏のためのフルートの発音原理を
書いた本がなかったり、まともに理論化する人が居ないのだと思う。

少し良い教本との出会い

掠れながらも、何とか低いG音周辺とその上のオクターヴの音が
出せるには出せるというくらいになったときだったか、別の教本を購入した。
外国人が書いた本で、ある意味教本としては、良い方だと思った。
アンブシュールに口を当てる時に、こうするとほぼ平均的な位置に
唇を当てられるといった方法とか、調整方法が色々と書かれていた。
それでも、幾らかましにはなったものの、根本的な部分は解決されなかった。
当たり前過ぎて書かないようなことでハマっているのだろうかなどと
思ってみても、何も糸口は掴めなかった。
教本で楽器の調整方法などを知ることが出来たのはある意味プラス
だったが、逆に微妙な調整方法を知ったことで、工夫が仇になり
かえって悪い癖をつけてしまったように思う。
本来直すべきことに気づかずに代償的な方法で問題を解決する
といったことも素人にはよくあることなのだ。
とはいえ、自分が出したい音色は明確にイメージがある。
そのイメージが上達を妨げていることは間違いなかったが、
敢えてフルートを吹く意義からその音色に向けて進むしかないと思っていた。
この段階での私の目標は、まだ一度も楽音として通用する音は出せていない訳で
そのレベルの音でいいから、
1. 無駄な息を使わないで音を出すこと
2. 掠れを少なくすること
3. 音に張りを持たせること
4. 一番低いC音から3オクターヴまで吹き分けられること。
といったことだった。
一番低いC音については、スキンパッドの気密性が悪くて出ない場合が
よくあるということを聞いてKEYを調整したら、確かに出し易くなった。
一番低いC音が出せるというのは、初心者の一つの課題と言える。
低い音は、気流の速度が遅いため大きな音が出せないのだ。
この頃悩んでいた問題は、オクターヴ毎に吹き方を変えるべきかという
ことだったが、教本には楽器を回して息の角度を変えるとか幾つかの
方法が書かれていたが、私の考えでは、アンブシュールは出切る限り
固定にして無駄な操作を省くべきだと考えていた。
そうでないと後々やっていられないと思うことと、リコーダーと
原理が同じだとすれば、息の流速だけでオクターヴは変えられるだろう
というのがその根拠だった。
しかし、そう思っても思う様にならないと一度出来たフォームを崩して
あれこれ模索して良い音探しが始まるのだ。
そんな中、教本より何より一番参考になったのが、ランパル氏をはじめとする
一流演奏家のソロ演奏のCDだった。(実際は協奏曲)
ある程度吹ける様になってくると、音から口の形、気流の速さなど
多くの情報が音から直接イメージで読み取れるようになっていた。
しかし、真似してみると物凄くテンションが高い。
どこでどうやって緊張感を保っているのかが分からないが、何もかも
張り詰めた様にコントロールされている。
よくこの流速を保ったまま音が掠れないものだと思った。
気流の速さが分かっても、それをコントロールする方法は分からなかった。
それでも、掠れたりオクターヴ裏返りながらも音を真似していると
演奏を聞いてから30秒くらいのごく短い間は、1レベル上手くなって
いるような感じだった。しかし、変なところに力が入って無駄が多く、
かなり疲れて持続して練習するのも難しかった。

何がどう難しいか

オーケストラに使うような楽器の多くは、体の一部を楽器として使う。
フルートの場合、唇から口腔を楽器の一部として使う。
気流を作るのも吹き口にそれを当てるのも人がコントロールしなければならない。
その時の基準となるものが少ないというのが問題だろう。
仮に、位置や角度を測定して数値化したとしても、その数値を入力すれば
正確に再現出来るというものがない限り数値化しても無意味なのだ。
だとすれば、人に分かりやすい基準や確認方法を発見しなければなるまい。
もう一つの難しさとしては、変化させるべき点と固定すべき点が
入り乱れているというところにあると思う。
特に、安定した音を出すために固定すべき部分は非常に重要だが、
それがそれと分かるまでにはなかなか固定出来ないものだ。
恐らく、音色が甘いまま上達しない人は、その固定した部分が
妥協して得た甘い位置のままになっているのだと思う。
本来自由な形に出来る唇を演奏に適した気流を得るためにある形を
わざと作って固定する。吹く強さを変えても、息をの角度を変えても
その形は固定しなければならないが、気流の太さはオクターヴによって
微妙に変えなければならないとしたらそれなりの器用は必要だ。
更に固定するためには、持続的な唇の筋力が必要であり、湿って
滑らかな唇の内側の粘膜を使うことで掠れのない良い気流を
作り出すとすれば、外側の乾いてガサガサの唇が影響しない様に
しなければならず、そういったことでも唇の緊張は大きなものだと思う。
強く吹くと上下の唇が気流で押し広げられるので、左右から気流が
漏れ易く、しっかりとそれを唇の筋力で押さえられないと、それも
音の掠れになってしまう。低音だと気流が緩くなるが、気流に合わせて
唇の緊張を緩めると良い音にならない。

[何が難しいかのまとめ]
1. 基準がないから
2. 制御が微妙で難しい
3. 変化させてはならない部分と変化させなければならない
 部分とがあり、使い分けが必要
4. 明確な支持力と筋力が必要

ケーナとの出会い

フルートを吹き始めてから、ある時革新的に音色が良くなった事件があった。
それはケーナを吹いたことだった。
ケーナは、アンデス地方の民族楽器である。
ケーナで音を出すことは、フルートよりも難しいと思った。
その反面、一度良い位置が分かると再現し易いと思う。
この楽器もリコーダーとは違い、気流は唇で作り出す。
ケーナは縦笛で、フルートより風を切るエッジが鋭く、気流も平たくないと
乱れて音にならず、直線的な気流でなければならなかった。



フルートの場合、上唇を被せる様に下唇より前に出すと音が安定する
ポジションがあるのだが、恐らくそれは気流を真直ぐでなく下にカーブ
させていたのだと思う。ケーナを吹いた後は、その癖が取れたようなのだ。
ケーナを吹くことによって、下唇の張り方や、その他多くを学ぶことが出来た。

吹いているところを横から見た写真



楽器の口への当て方(正面)



ストローを使った実験

10年以上前にフルートは、ロボットによってまあまあな音を出せて
いるのをテレビで見たことがあった。
そういった記事まで扱ったあるフルートについて書かれた本を本屋で見つけ
それにストローを使った音の出し方が出ていたので私もやってみた。
以下に、音が安定して出た形そのものを写真に示す。

 ホールを正面から見た図

 標準的な位置

 開口端をエッジ近付けた図

 角度を深くした図

気流の目標地点は、アンブシュール・ホールのエッジでありこれは常に一定。
変化させるための2つのパラメータは、
1. ストローの角度
2. ストローの開口端とアンブシュール・ホールのエッジとの距離
色々と変な試行錯誤をしていたが、結局変化させるべきはこれだけか、
とある意味スッキリした。
しかし、実際に吹く時にこのような角度で吹き込んでいるか分からず
何かきちんと対比させる方法はないかと考えたが、ストローを1cm
くらいの長さに切って唇に挟んで吹いてみた。
やってみると案外真直ぐストローを加えるのが難しく、またその方向を
アンブシュール・ホールのエッジに当てるのも困難だった。
結局、鏡を見ながら位置を修正してくわえたストローからの気流で
音が鳴るところまでたどりついた。
これにより、気流を真直ぐに保つことと気流の方向を把握する感覚が
得られたと思う。
これも良い経験になったと思う。
ヘッド部分だけを使って、ストローで吹くと口で吹く時より高い音で鳴る。
オクターヴ上ではなく5度くらい上だろうか。これもちょっとした発見だった。
現在、オクターヴ調整は、運指と気流の強さだけでほぼコントロール
出来ていると思う。
気流をアンブシュール・ホールのエッジというよりも内壁に当てる
くらいにすると張りのある音になり低音もしっかりしてくるように思う。
そのためには、吹き込む角度を深くしなければならないが、そうすると
気流(下唇の内側)をアンブシュールからかなり持ち上げられた位置に
置かなければならないため初心者はその位置を把握することが難しい。
アンブシュール・ホールのエッジと気流の開口端は、近付けると
弱い気流でもオクターヴ上が出し易いが音に艶が無くなる。
逆に、離すと掠れ易いが強い気流をぶつけることが可能になり音に張りが出る。
従って音の艶を保つためには開口端を離して強い気流にし、掠れに関しては
唇をしっかりと締めて乱れないような気流を作る様にすべきだろうと思う。
口の中は、舌先が唇の内側で自由に動けるような感じにして、
気流を絞り込む様に気流の通路は先になる程細くする感じがいいと思う。

私が求める音色について

楽音として表現力に必要なのは、音量変化よりもむしろ音色変化だと思う。
既に、音色については、思ったような音色が得られている。
ただし、現在のところ練習不足のため安定して持続することはやや困難である。
三角波に近い丸い音色から、やや寂し気な感じのする3倍音を強く持った
張りのある矩形波っぽい音が、私が欲した音色である。
以下に、自分で演奏した音から取ったその1周期の波形と、フーリエ変換した
図を示す。



アナログ・ミュージック・シンセサイザー全盛の時代にフルートの音と
言われているのは、左の三角波に近い方だが、VCOの元波形を三角波にして
VCFで削ったのでは、右のような張りのある音は出ない。
道理でフルートの音が一般論で作って似なかった訳だ。

フルートの材質によって音色が変わるというが、そこそこまともな音が
出せる様になったので比べてみたい気はするが、あまり変わらない様な
気もする。恐らく楽器の応答性はかなり違ってくると思うが。

また少し上達(これまでのまとめ)

ケーナの練習は、フルートにとっても、とても良い。
リコーダーみたいな笛口を唇と楽器で構成するという発想で練習していたが、
エッジに対する角度がシビアだということがよく分る。
ケーナの場合は、縦笛なので息の方向がとても分かりやすい。
練習を重ねるうちに、出来る限り素直に息を通すというのがとても大切だと
いうことを実感して来た。
習い事は、何でもそうかもしれないが、素直でないと身につかない場合が多い。
悪い癖というのは、その素直さから外れたもので、多くの場合は、悪あがきの
小細工によって作られるものだ。
フルートの場合は、横笛なので素人にとってみるとホールに対してどういう角度で
息を吹き込んでいるのかがとても把握しにくいという難点がある。
これが、多くの教本では、曖昧なイラストで説明されているから困りもの。
よってフルートでより素直に息を通す場合どうすればいいか、なかなか分らない。

あるWeb記事で「フルートは、コーラのビンをブオーーツッと鳴らすのと同じだ」
と言っている人があるのだが、これは違うだろう。
開管楽器と閉管楽器という大きな違いがある。
例えば、500ミリ・リットルのペットボトルに息を吹き込んで、ブオーーッと
鳴らすとしよう。これは簡単に鳴る。
しかし、底にちょっと穴を開けてしまうと鳴らなくなってしまう。
閉管楽器は、吹き込んだ息が出て来る気流と吹き込んだ気流の衝突でエア・リードが
構成されて音が鳴るのだが、開管楽器は、吹き込んだ息をエッジで切ることによって
エアリードを構成する。
当然吹き込む角度も違えば、共鳴の仕方も違う。
はるかに、開管楽器の方が難しいのだ。
補足:開管楽器でも、空気の粘性で閉館楽器と同じ様に吹き戻しが起きてエアリードが
形成される様だ。明らかに閉じた管の方が吹き戻しが大きいため音が出しやすい。
吹いた息はエッジで切られて何パーセントかが管に入り吹き戻しが発生する。
少なくともコーラのビンの吹き方では、エッジは、その量を調整するのに使われる。
開管楽器の発音原理は、コーラのビンより、風で電線が鳴る原理に近いかもしれない。
フルートの場合には、頭部管の口を塞いで閉管にするとコーラのビンと同じになる。
→発音原理ではなく、共鳴原理ではないのか?
→フルートの頭部管の開口端を手で塞いで閉管にしてもさほど鳴らし方は変わらないだろう。
 コーラビンとは、吹き戻しの量が違うだけではないのか?


最近、風呂場でフルートを吹いてみるととてつもなく大音量で鳴ってくれることに気付いた。
しかし、増幅された音を聞くと、ちょっとでもエッジを外れた音は、芯がなく、
声で言うと裏声のようになっていることに気付く。
下図のように、素人発想では、口の位置を動かさず、唇の開口端を支点に回転させ、
息の方向を変えようとするかもしれない。しかし、これは原理的に大間違いだ。
息を当てるのは、エッジの一点だけなので、唇のリップ・プレートからの距離(高さ)を
変えながら右図のように息の角度を調整する必要がある。




吹き方は、様々で、中途半端な音を出すにはとにかくバリエーションがある。
しかし、多くは強く吹くと破綻したり、狭いオクターヴ範囲しか出せない結果になる。
自分の経験では、リップ・プレートと平行に掠めるような浅い角度で吹くと、高い音を
出し易いが、これはあまり良くなくて、裏声的な音になる。
むしろ、息を絞って穴の中に吹き込むような感じでエッジを狙った方が良いと思う。
唇がエッジから遠いと息が乱れ易くなるが、その場合はやや息を太くしてみる。
息の束が乱れるからといって、唇をエッジに近付けても駄目だったりする。
この辺りの調整がこれからの課題になる。

下唇の使い方は、自分のイメージでは枕だ。
アンブシュール・ホールを半分くらい塞ぐというのも大きな役割のようだ。
自分の場合、下唇の楽器への当て方は、
アンブシュール・ホールの下端が唇と肌の境界に来るのが概略良さそうに思う。
下唇は、若干めくるようにするのがいいかは別として、張りがあるのが望ましい。
アンブシュール・ホールがなぜ角取り四角形なのかというと、恐らく低音を安定して
出すのが主目的だろう。低音を出すには、太い息を作るより、幅が広い息を作る
方が良い音が出るということだ。
上唇は、ケーナもそうだけど、そっと被せるような感じになる。
場合によっては、上唇によって気流を下向きに曲げて力強い音が出ることがあるが
果たしてそれは良いのかどうか自分にはまだ分らない。

一部の点については、きちんと調べて理論で説明すると大きな間違いが防げる。
また、原理を意識することで、勘によって探り当てるような作業も減るだろう。


更に上達

下から数えて3オクターヴから4オクターヴくらいの音を出すのは、テンションが
高くて難しくなってくるが、低音域と高音域で全く別のアプローチをしていたのが
次第に統合されて来た。ある本でランパル氏の唇の形について書かれていたのを
参考にしたが、これにより今まで下唇のたるみをどう処理すればいいか困っていた
問題がスッキリと解決出来た。唇は、弛んでいてはいけないのだ。
下唇は、下顎をやや前に出すことによってたるみを取ることができる。
非常に奇妙に感じる口の構えになるが、今までにないノイズが少ない音が出る様になった。
最近では、かなり強い気流を吹き込むことが可能になって来て、唇の筋肉で
それを押さえて絞っている。唇の筋肉を鍛えなければ強い良い音は出ないのだ。
気流で唇が広げられるのを感じられるくらいに唇で気流を押さえ付けている。
現時点で、気流をぶつける向こう側のエッジの位置を把握するのは難しい。
気流は細く平らにしているが、かなり精密にエッジに当てなければならない。
唇を当てる位置を変えたり、楽器を回転させたりして調整するしかない。
息の中心をエッジに当てなければならないので、息の太さを変える場合、
上唇だけの調整では、息の中心がズレてしまうので、下唇の側も調整が必要。
ということは、音域や表現によって息の太さを変えるのは現実的でない。
張り(テンション)のある強い音色を欲しがっていた自分としては、
息の流速こそその鍵だと思っていたのだけど、流速を速くすると乱れてしまい
時として息を太くすることで乱れを軽減できると感じていたこともあった。
最近の進歩では、下唇の弛みをなくしたことで細く強い気流が得られた。
唇の筋肉による押えが不可欠だが、唇の開口部がラッパ状になっている
イメージのときに気流の乱れが少ない様に感じる。
ラッパ状の付け根の部分から細い息をエッジに向けて吹き出す。
1mmにも満たない細いスリットの気流を得るために、やや大袈裟な
ラッパで気流の乱れを解消している感じ。
イメージとしては、下図のような感じになる。



低い音程流速が緩いため、ラッパの中にエッジを押し込むくらいのつもりで
エッジを近付ける必要がある様に感じる。
また、調整方法としてラッパの上下を均等に閉じれば、スリットの開口端が
エッジに近付くことになる。
このような感じで、ほぼ同じ唇の構えで広いオクターヴをカヴァーでき、
アンブシュールも安定して来た様に思う。
しかし、唇の構えは本当に微妙でちょっとしたことで見失ってしまう。
これは、エッジの位置と息の方向、唇の張りなどをチェックしながら
練習を積み重ねて習得する以外ないだろう。
自分の第一の目的は、フルートの音楽性豊かな楽音ではなく、とにかく
テンションが高い強い音を得ることである。
オクターヴが裏返ったり奇声に近い周囲に迷惑な音と隣り合わせにある
この音の追求は、お行儀が良い普通の習い方では本来のそれを殺してしまう
懸念を強く持っていた。
唇の形を得るにも、表現のために変えなければならない部分もあれば、
どんな場合でも保持しなければならない部分もある。
何を固持し、何を柔軟に構えなければならないかが分らないものだ。
教えられると良い部分も削ぎ落されて、初心者としてお行儀が良い
枠に填められて、気がつくと表現力を失っていたということになる。
原理的に自然で強い音は殺してはいけない。
感情を込めるためにも、最大パワーで制して鳴らす術は必要。
その辺りに本物があると思うのだが・・・
さて、方法だけ述べて私がどのような音を出しているか謎なので、
現在の音を公開する。ただし、音を出すのに精一杯で運指なども
満足に練習出来ていないため、曲になっているかどうか・・・
断片的なフレーズを4つ用意した。

SAMPLE1.mp3 (120K bytes)
SAMPLE2.mp3 (120K bytes)
SAMPLE3.mp3 (232K bytes)
SAMPLE4.mp3 (140K bytes)

楽器: Pearl flute NC-330EN
録音機: OLYMPUS DM-10 (WMA format)
マイク: SONY ECM-MS908C
録音日: 2005.5.6


指笛をヒントに

エッジに正確に息を当てて、エッジで息を切るということが一つの重要な
要素であることは確実だと思う。しかし、それだけでは説明出来ないものがある。
ランパル流の口の形といい、何かまだ足りないものが・・・。
その疑問を抱えつつ、ふと指笛がヒントになるのではないかと思った。
指笛も、なかなか難しくて、良い音が出せたことは出せたがなかなか再現が難しい。
3〜4通り違った指の当て方で音が出たり、それが特定の音程でなければ
ならない形であったり、音程を変化させられる形であったり・・・。
ある程度コツをつかんだ後で、フルートを吹いてみると、強い気流で
安定した音が出しやすくなっていることに気付いた。
指笛との類似点としては、ランパル流の口の形と似た形で良い結果が得られている。
最初は、口の空洞で共鳴させるのかと思ったがそうではないらしい。
よくよく考えると、強い整った気流は、振動しにくいと思う。
これを振動しやすい気流に変化させることが必要なのではないかと思う。
唇のスリットがラッパ状になっていると、下図Aのような気流になりやすいのでは
ないかと思う。指笛の考察では、ホイッスル(下図B)では、回り込んだ副流が、
横から主流を揺らす様に働いているのではないかと思う。
フルートの気流でも、下図Cのような気流を口の中で作ると、非常に強い気流を
強く確実に振動させられる様に思う。



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