フルートの音の出し方(2)

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前書き

昨年(2006年)8月、新しいフルートを買ってだいぶ理解が深まった。
良い笛は、演奏者を育てるというが、実感出来たと思う。

理論(新説?)

フルートは、エアリード楽器である。
ならば、より強いエアリードを作ることが、フルート演奏にとっての
最も重要なテクニックだと考えられる。
そういう意味で、まず息の気流でエッジを切るということを考えた。
しかし、エッジを切るだけで空気の振動が生まれるとも思えない。
そもそも、エアリードはどのように形成されるのか、そこから考え直してみた。

電線が風で鳴るのは、電線の背後にエアリードが構成されるからである。
電線で切られた空気が電線の背後で合流してそこに振動が生まれる。
振動の原因は、渦が出来ることに関係しているようだ。
ところが、フルートの場合は、歌口のエッジの前にエアリードが出来るのだ。
以前のページで、口の中で2つの空気の流れが合流するようにすると、
明確な音が出せるようなことを書いたのだが、どうやらその合流を
口の外で起すのが正しいらしい。
要するに、エッジで切られた息のうち、外側の気流はそのままだが、
内側の気流は筒の中に吹き込まれることになる。このとき気流が笛口から
吹き戻され、その吹き戻しの気流と外に流れ出る気流の合流でエッジの手前に
エアリードが形成されるということだ。



色々試して分かったことは、外側に吹き流す気流の圧力と吹き戻しの
気流の圧力が等しくないと強いエアリードが形成されないということだ。
フルートの教本では、唇の楽器への当て方などについて書かれてあるが、
どうも静的、固定的なイメージで唇の当て方さえ正しければ音が出るように
書かれている。
しかし、この圧力バランスは、息の角度、息の位置(上下のズレ)、息の太さ、
気流の速さ(強さ)などの要因によって変動するので、これらのバランスを
動的に調整出来ないとエアリードが形成される条件が整わない。
これがフルートの難しさと言える。
とはいえ、圧力バランスを取ることさえ知っていれば、
音が鳴る状態を見失っても、鳴らない状態からどうすれば鳴る状態へ
持って行けるか、指針がつかめるのである。
固定的な口の形、唇の楽器への当て方を教わっても、それがズレたとき
どう直したら良いか分らないよりずっと良い。
この圧力のバランスを取る第一歩は、気流の角度を一定の良い角度に
保つことだ。
以前使っていたフルートでは、エッジを狙って息を吹き込むことまでは
分かってもどの角度が最も適切なのか把握出来なかった。
新しいフルートは、丁度唇を当てる辺りの歌口の構造が唇の当て方によらず、
エッジに対して適切な吹き戻しが起る様に設計されている様に思う。
新しいフルートを買って3ヶ月くらいしたとき楽器が息を吹く角度を
この角度にしろ、と自分に命令するようになった。
  当然、笛が命令する訳ではないが、ある角度で抵抗なく素直に
  良い音が鳴るので、演奏者はそれに従う様になって来るのだ。
ここから圧力バランスの問題に気付くきっかけになったのは、
1オクターブ高い音を出すことだった。
以前買った外国の和訳教本によると、楽器を回して角度を変える様に
書いてあったのだが、これは正しくない様に思う。依然として楽器は、
一定の角度で息を吹くことを要求する。
しかし、何か変えないとそのままでは、1オクターブ上がきれいに出ない。
息の流速を速くするだけでは解決しない問題なのだ。
敢えて角度でごまかすとすれば、1オクターブ高い音を出すには、
穴の内側から外に向けて吹くようなイメージになったのだが、
唇がかなり低い位置に来てうまく行かない。
分かっていることは、低音は細い息でも鳴るが太い息の方が力強く鳴る、
高音は、太い息では鳴らないということ。
それでも色々と工夫するうちに、圧力バランスは、息の角度を変えず位置を
上下に並行移動させることで調整できることが分かった。



この位置調整は、練習の結果、唇の外側は変えず、下唇の内側を
持ち上げる様にして無意識に調節するようになっていた。

エッジでの吹き戻しの気流の圧力は、唇の当て方、下唇での穴の
塞ぎ方でもだいぶ変わって来る。穴を塞ぐと吹き戻しが多く確実になり、
丸いピュアーな音色になる。
しかし、吹き込む量はあまり多く出来ないので音量が小さくなる。
弛んだ唇で穴を塞ぐと吹き戻しがスムーズに起らない様だし、
この辺りにも配慮が必要そうだ。

まとめると
1. エッジに向けた息の角度は、全音域を通じて最適な一つに定まる。
2. 下唇の穴を塞いだ面が良い吹き戻しを起す様に滑らかであること。
3. 「外側に吹き抜ける息」と「穴から吹き戻された息」の
  圧力バランスを取ること。
これが、芯のある力強いエアリードを形成するコツだと確信した。
これを習得した後、以前使っていたフルートを吹いても
よく鳴ることが確認出来た。

音の出し方の実践

理論は、所詮理論である。
理屈が分かっても出来ないのでは意味がない。
ということで、まず、土台となる息の方向を確立したい。
多くの教本、書籍は、下図のように顔が向いた方に真直ぐ息を
そう受け出しているような図を描いているように見える。


そう描いているつもりはないのかもしれないが。

実際は、斜下が正しいのではないかと思う。少なくとも初心者が最初に
低音を吹く時には適していると思う。
また、色々な奏者を見ると上唇を穴にかぶせる様に吹く奏者は多い。
そこで下図のように口の形を作ってみる。



写真では、息の方向を示すために煙を吹き出しているのだが見えるだろうか。
息の素直な通り道を考えると、斜下というのも納得出来る様に思う。
息は喉から舌を迂回して上顎から上前歯の内側を通ってくるので上前歯の向きに
息を出すのが一番スムーズにも思える。そこで上唇を使わず、上唇を上げた
状態で下唇と上前歯だけで音を鳴らすことに挑戦したことがある。
その結果、音をうまく鳴らすことが出来、息の方向を把握するのに役立った。
ただし、息の方向は下唇で前方向に折り返されている感じだった。
前歯を使った吹き方の時もそうだが、イメージや感覚は、息がかなり斜下を
向いているように感じるのだが実際は、お椀のイメージほど下向きではない。
息の向きは、下唇を前に出すと前(上)向きに、下唇をこちらにに引くと
下向きに向きに変えることが出来る。
また、楽器の向きを一定に保持すると顔が前向きか、うつむいているか
によっても息の方向は変わってしまうから注意が必要だ。

これまでの試行錯誤

前のフルートで上達が遅れたのは、毎回エッジに対して息の角度を変えて、
良い角度を探し、結果それが見付からなかったことによる。良くない角度でも、
特定の音域では、かなり鋭い(ある意味良い)音で鳴ってしまうのが罠だ。
少し音域が変わると良い音が出ないので演奏に使えない。
よって、口の形をあまり変えないで広い音域の音が出せる
「グローバルポジション」を得ることを目的にしなければならない。
しかし、前のフルートでは、良い息の角度がどう頑張っても見付からなかった。
「グローバルポジション」なんて無理。
倍音成分が多い音を求めて、不安定なエアリードで無理矢理音を出していた
時期もあるがそれは良くない。
結局強いエアリードで安定した正弦波を作り、それによって楽器そのものが
最大限振動した時に倍音成分も最大になるということらしい。